やめて!!冬木市の復興予算はもうゼロよ!!   作:後藤陸将

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バーニングゴジラを初めて見た幼少期、自分はあの迫力に圧倒されました。
ゴジラが命を燃やすかのように赤く輝く姿。そして、血を吐くような熱線。
苦しげにもがきながらも、むしろこれまでのどのゴジラよりも強いと確信させられる『覇気』というか、『煌々と輝く命』と言いますか。

執筆にあたって一度VSデストロイアを見直したのですが、文句なしに歴代最強のゴジラでありながら、これから初代ゴジラ以来となる『ゴジラの死』を迎えることに違和感を感じないというところがやはりいいなと思いましたね。

私は今でも、デスゴジが一番大好きなゴジラです。


命の限界を超えて

 ゴジラの心臓部は原子炉に似た構造となっており、核分裂で得たエネルギーをゴジラは自身の生命活動の維持、熱線のエネルギーとして活用している。1968年にアメリカの原子力空母一隻と原子力巡洋艦二隻からなる艦隊がゴジラの襲撃によって撃沈されたのも、原子炉の核燃料を狙っていたためだと考えられている。

 ソ連とアメリカの原子力潜水艦がここ四半世紀で何隻か原因不明の沈没事故を起こしている理由としても、核燃料を狙ったゴジラの襲撃があると言われているが、こちらはゴジラの仕業とする証拠が不十分な案件が多く、殆どの事件では真偽のほどははっきりとしていない。

 また、ゴジラの細胞の一つ一つが放射能を食べる能力を有しており、ゴジラの細胞にとって放射能はほかの動物の細胞でいうところの酸素のようなエネルギー源であるという研究結果がイギリスの世界的科学雑誌に掲載されたことがある。論文の中では、ゴジラの細胞が有する驚異的な再生能力を支えているのも、豊富に供給される細胞のエネルギー源である放射能だと推察されている。

 通常、ゴジラの心臓部の核分裂はゴジラの体内の水分で制御され、呼吸によって外気から取り込む二酸化炭素によって冷却、コントロールされている。しかし、とある平行世界においてゴジラは生前、その体内の核分裂が制御できなくなったことがある。

 核分裂が飛躍的に促進された結果、心臓部が赤熱したため、胸を中心にゴジラの全身が赤く発光するという異常な状態となった。さらに、高温となった身体は蒸気を噴出し、熱線も通常の青白いものから、真っ赤な炎を思わせる色へと変貌した。

 核分裂を制御できないゴジラは暴走する原子炉そのものとなり、いずれは核爆発を引き起こしかねない存在となった。ゴジラが核爆発を起こした場合、その破壊力は大気に火がついて地球そのものを炎で包むという想像を絶するほどのものである。

 幸いにも、その平行世界には原発事故、または核攻撃を想定して作られた特殊兵器が存在したため、特殊兵器と完璧な攻撃計画によって原子炉の核分裂が制御され、ゴジラの核爆発の危機は回避された。

 しかし、核爆発の危機は回避されたものの、その時にはゴジラの心臓部の温度が900度を超えていた。核分裂が制御されたころには、既に炉心である心臓部が高温となり融けはじめていたのである。

 ゴジラの心臓部が融けだしたことにより、放射能を撒き散らしながら、周りのものを溶かし、水素爆発で地球に穴を開けてしまう『メルトダウン』の危機となったのである。

 核爆発は避けられたが、今度のメルトダウンも核爆発にも劣らない人類存亡の危機である。人類は、化学的にゴジラを葬り去ることができた唯一の兵器、『オキシジェン・デストロイヤー』によってゴジラを消滅させ、メルトダウンを回避しようとした。

 ただ、その当時の人類は、酸素原子を微小化させる『ミクロ・オキシゲン』を実用化していたが、その発明の先にある酸素破壊剤『オキシジェン・デストロイヤー』の開発には未だに至っていなかった。

 その時、稀代の天才科学者、芹沢大介博士の悪魔の発明をついに再現できなかった人類の前に奇しくも悪魔の発明の遺産を受け継ぎし生物が出現した。悪魔の生物(デストロイア)は『ミクロ・オキシゲン』を我が物の如く操り、ついには悪魔の発明『オキシジェン・デストロイヤー』すら再現するに至った。

 そこで人間たちは、この前門の(ゴジラ)、後門の(デストロイア)という窮地を逆手に取ることを考えた。デストロイアとゴジラを戦わせることで、ゴジラを化学的に消滅させようとしたのである。

 しかし、制御不能となった心臓部から核分裂によって溢れ出すエネルギーにも耐え、メルトダウンに近づきつつあるゴジラは人間の予想を覆す史上最強の怪物と化していた。デストロイアが放つオキシジェン・デストロイヤーでも葬ることができず、最後は逆にデストロイアを数百万度の赤色熱線を持って追い詰めたほどである。

 まさに、メルトダウン寸前のゴジラは『オキシジェン・デストロイヤー』すら超越した、天下無双、最強無敵の怪獣王と言っても過言ではなかった。

 最終的に、心臓部の温度が1200度を超えた瞬間にゴジラはメルトダウンを起こした。高熱に耐えられなくなったゴジラの身体は融解し、凄まじい放射能とチェレンコフ光に包まれて骨すら残さずに消滅したのである。

 人類がその場に集めうる全ての冷凍兵器をメルトダウンの瞬間にゴジラに集中させたため、メルトダウンによる目に見える物理的被害は最小限限度に抑えられた。だが、一方でゴジラが末期に発した尋常では無い量の放射能によって汚染され、東京は死の街と化した。

 

 このゴジラの末期が昇華されたものが、ゴジラの最終宝具、その名を『赤竜葬送曲・炉心融解(メルトダウン)』という。

 その効果は単純で、敏捷と幸運を除くゴジラのステータスを限界まで上昇させるというものだ。

 ただでさえ歯が立たない堅牢な表皮が耐久値EXランクの頑強さを得るだけではなく、数百度の高温に熱せられているため、低級のサーヴァントであればその皮膚に触れるだけで火傷は免れない。

 さらに、不滅のゴジラ細胞(イモータル・セル)もランクが上がり、これによって再生能力もさらに向上した。傷を負っても瞬時に治癒するため、一撃で霊核を破壊されない限りはまず消滅することはないといってもいいだろう。

 サーヴァントと化したことで生前よりも弱体化している今のゴジラでも、EXランクの耐久とこの宝具の効力があれば唯一ゴジラを葬りうる兵器『オキシジェン・デストロイヤー』にも耐えることができるのだから。

 生前同様怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)も強化されている。その温度は数百万度に達し、威力は評価規格外のレベルである。

 メルトダウンの寸前にはエネルギーを完全に制御できなくなり、背びれからも自然に体内放射となって怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)が漏れ出し、意図していなくても口から怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)が溢れるようになる。

 しかし、当然のことであるが、この強化には生前と同様のデメリットが発生する。心臓部の暴走により、核爆発するリスクを孕むのである。

 幸いにも、無頼コンビの撃ちこんだカドミウム弾頭のミサイルの効果によってゴジラの心臓部の暴走は止められている。しかし、心臓部の温度はこの宝具の発動と同時に900℃にまで跳ね上がっており、既に冷却が間に合わないレベルの高熱になっていた。

 何もしなくてもこの宝具の発動後は一日平均50℃から60℃ゴジラの体温は上昇し、ゴジラが攻撃などの刺激を受けたりすれば、さらにゴジラの体温は上がる。ゴジラの体温が1200℃に達した瞬間、ゴジラは生前同様にメルトダウンし、周囲に放射能を撒き散らして水素爆発を起こしながら融けていくのである。

 

 セブンも、モスラも、マスター達も自衛隊も、誰もがこの事実を知る由も無かったことは、かえって幸せだったのかもしれない。彼らには、迫り来る絶望を回避する手段がメルトダウン前にゴジラを完全に消滅させるという不可能に近いものしか残されていなかったのだから。

 

 

 

 

 

 ――間桐雁夜は、薄れ行く意識の中で赤い龍を見た。

 

 彼に残された令呪を全て解放した瞬間、雁夜の中で蟲がのたうちまわった。まるで水面に落ちた羽虫のように激しく身体を捩り、夏の終わりに道路に転がっている蝉の断末魔のような悲痛な声をあげている。

 怪獣王が最終宝具の解放と同時に自己のエネルギーの補充として必要とした膨大な魔力は、令呪と雁夜の有する全ての魔力をもってしてもなお足りなかった。これまでのサーヴァントとの戦いで相当の魔力を消費したため、原発巡りをして溜め込んだ自前の魔力も半分以下に減少している。雁夜の身を蝕むことで刻印虫が生み出す魔力を加算しても、まだ僅かに足りない。

 怪獣王は容赦なく刻印虫が生存のために必要とする魔力すら徴収した。魔力の枯渇した蟲たちは今、雁夜の身体を抉りながら断末魔をあげているのだ。

 身体の中で暴れまわる蟲たちの痛みは、肉をかき回されている雁夜の痛みにもなる。しかし、今の雁夜は痛みも、苦痛も、疲労も全て感じない。身体が脳に伝える感覚は痛い、苦しい、辛いのどれかしかない。

 それにもかかわらず、雁夜は笑っていた。目の前で苦しげな咆哮をした赤い龍を見上げ、心からの歓喜に身を震わせていた。

「そうだ……殺せ!!焼き尽くせ!!街ごと全てを殺せばいい!!やつらに報いを与えるんだ!!」

 雁夜にとって、目の前の龍は自分の願いを叶えてくれる存在に他ならなかった。目の前の龍が作り出す、破壊が、死が、絶望が雁夜の中の負の感情をさらに湧き立たせる。

 雁夜自身の身体は既に限界を超えている。1年足らずで間桐の魔術師として、聖杯戦争のマスターとして最低限の実力を手に入れた雁夜は、代償としてその命を削っていた。聖杯戦争の開幕時点での余命は一ヶ月。雁夜は刻印虫が雁夜の肉体を保つための魔力を供給し続けられている間しかいきられない身体になっていた。

 刻印虫が喰らう肉が尽き、刻印虫から供給される魔力が尽きた時が雁夜の死期となる。そして、今、刻印虫すら生きられぬほどに魔力を吸い上げられた雁夜は死の淵に立っていた。

 しかし、死の淵に立っているのにも雁夜は既に自分の肉体のこととか、自分が死んだ後のこと、自分が参戦した動機である初恋の女性の娘のことも全く考えていなかった。彼の中に存在するのは、ゴジラに感化されたことで増幅された憎悪だけだ。

 もはやその対象を選ばなくなりつつある憎悪、怨嗟と、微かな痛み、それが雁夜という外面を被っているだけ。それが今この場所で狂ったように高笑いしている間桐雁夜という人のかたちをしたものの正体だった。

 故に、体内の刻印虫が死に絶え、身体から久しぶりに痛みが失われたことにも彼は気がつかなかった。死にかけの身体を支えてきた魔力の枯渇により、雁夜の身体はもう死んでいた。しかし、幸か不幸か憎悪と怨嗟に狂った彼は、自分の意識が薄れゆくことすら自覚することもない。

 雁夜は高笑いを浮かべながら倒れた。そして、間桐雁夜は聖杯戦争に参加した理由すら忘れたまま、誰に気づかれることもなく永遠の眠りについた。

 

 

 

 

 

 セブンは、後ろから立ち昇る凄まじい熱気にあてられ、背後を振り返って絶句した。

 先ほど倒したはずのゴジラが、身体をまるで火山からあふれ出る溶岩のように赤く染め、蒸気を吹き上げながら立ち上がっていたのだ。ゴジラが一歩踏み出すごとに地面は溶け出し、足跡には焼き焦げたアスファルトとコンクリートの残骸のみが残る。

 ゴジラは全身から熱気を発しながらまるで胸を締め付けるような激痛に喘ぐかのように痛々しい咆哮をあげる。ゴジラの大気を焼き尽くす烈火の如き怒りと、身体の底から震え上がらせる狂気の篭った咆哮に流石のセブンも威圧される。

 

 ――何が起こっている!?

 

 セブンは討ち果たしたはずのゴジラの復活に、そして何よりも赤く発光し凄まじい熱気を放つ身体に驚きを隠せない。しかし、セブンもかつてはたった一人で地球を守り抜いた戦士だ。すぐに思考を切り替え、冷静に目の前の光景を分析する。

 まず、最初の疑問、『どうして復活したのか』に対する答えはセブンもすぐに分かった。ゴジラの身体を観察してみると、先ほどアイスラッガーが刻んだ大きな傷跡も、闇を切り開く翡翠色の閃光(エメリウム・レイ)によって穿たれたうなじの穴もほぼ完治している。よく見なければ分からない傷跡くらいしか残っていない。どうやらゴジラの再生能力が急激に高まっているようだ。

 この国の戦闘機が撃ちこんだミサイルに搭載されていた何かによって弱体化させられていたステータスも、元に戻るどころか急激に上昇している。パラメーターはDランクの幸運値と敏捷を除いて全て評価規格外(EX)となっており、おそらくこの影響で宝具かスキルと思しきあの驚異的な再生能力がさらに強化されているのだろう。

 次の疑問は、『何故これほどまでに強化されたのか』である。令呪か宝具、又はスキルのいずれかが候補として考えられるが、聖杯から与えられた知識等を元に考えると、おそらく令呪ということはないはずだ。令呪はサーヴァントの強化にも使えるが、姿形を大きく変えることはできないからである。

 スキルにしても、変身している点が気になる。となると、まず間違いなく宝具の効果と判断していいだろう。ここからは推測になるが、ゴジラは生前、さらに一段階進化した姿が存在していたか、一時的にパワーアップする能力を有していた可能性がある。それらの能力が宝具として昇化されたとすれば辻褄があうのだ。

 成長によって姿形が変わり、戦闘能力が急上昇した怪獣と交戦した経験はセブンにも少なからず存在する。例えば、元光の国の戦士であったベリアルも怪獣墓場に漂う怪獣たちの魂を吸収してベリュドラへと変貌していたし、Uキラーザウルスも封印から解けたときにはUキラーザウルス・ネオに進化していた。

 一時的なパワーアップ形態を有する怪獣と交戦した経験はセブンにもないが、彼の後輩にはそのような能力を有する怪獣と交戦したものもいる。

 また、彼の後輩、ウルトラマンメビウスは「メビウスブレイブ」、「メビウスバーニングブレイブ」、「メビウスフェニックスブレイブ」といったパワーアップ形態を有しているし、彼の息子のウルトラマンゼロにも「シャイニングウルトラマンゼロ」というパワーアップ形態がある。

 ゴジラの様子を観察するに、ゴジラの体型などには大きな変化はなく、全身の発光と異常なまでの熱量以外には変わった点はない。進化にしては変化が小さすぎるため、セブンは長年の経験からこれは彼の後輩や息子が有するパワーアップ形態に近いものだと推察した。

 そして、最後に浮かんだのは『この形態は如何なる能力を有しているのか』という疑問だ。

 ステータスの向上、常軌を逸した再生能力から判断するに、あの強化形態は身体機能と宝具の威力の向上に繋がっていると考えて間違いない。だが、セブンの戦士としての勘が先ほどから狂ったかのように激しく警鐘を鳴らし続けている。

 ウルトラマンベリアルと対峙した時にも匹敵する――いや、下手をすれば上回るクラスの危機感。セブンは戦士としての勘と経験が鳴らしている警鐘から、この強化形態は単純な身体機能と宝具の威力の向上だけではなく、さらに新しい能力を有している可能性があると判断していた。

 ゴジラが背びれを赤く発光させる。怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)の発射の前触れを見たセブンは即座に『使役されし大怪獣(カプセル・モンスターズ)』たちに怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)を回避するように指示する。

 そして、ゴジラが怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)を吐き出す。標的となったのは忠実なる俊足の戦士(アギラ)だった。俊足を活かして避けようとした忠実なる俊足の戦士(アギラ)だったが、怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)は逃げる忠実なる俊足の戦士(アギラ)を追いかけるようにして飲み込んだ。

 ゴジラの口から溢れた怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)は、先ほどの人魂のような青白い炎から、地獄の炎を思わせる紅蓮の炎へと変貌していた。紅蓮の炎の奔流はまるで凶暴な大蛇が獲物を締め付けるかのごとく、忠実なる俊足の戦士(アギラ)を包み、断末魔の咆哮すら残さずに焼き尽くした。

 怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)が途切れるころには、忠実なる俊足の戦士(アギラ)がいたはずの場所は一面火山の火口のような風景に様変わりしていた。これまでとは比べ物にならない怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)の威力にセブンも戦慄する。

 ――まさか、これほどまでとは……

 ゴジラの宝具である怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)が強化されていることは、セブンも想定済みだった。しかし、ゴジラの熱線の威力は想定を遥かに超えるものになっていた。

 一撃喰らえば確実に致命傷だ。口から放つ熱線でこの威力なのだから、近接戦闘で使用していた身体中から熱線のエネルギーを放射する技の威力も確実に上がっているはずだ。そちらも、当たり所が悪ければ一撃で致命傷となりうるだろう。

 しかし、このような状況下でありながら、セブンは既に一縷の希望を見出していた。それは、怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)を放ったゴジラの口にできた火傷である。怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)を放った際に口から漏れたエネルギーがゴジラの口内を傷つけていた。異常なほどのゴジラの回復能力によって口内の火傷は瞬く間に完治していたが、セブンの目は誤魔化せない。

 これは、怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)がゴジラにとっても耐えられないほどに強化されているということを意味する。そして、あの全身が発光してからというものの、ゴジラの咆哮には狂気の中に悲鳴と思しき色が混じっていた。

 サーヴァントに凶化の属性を付与した場合に理性の喪失と引き換えにパラメーターの大幅な上昇が得られるように、強化には代償が必ず必要だ。代償は魔力だったり回数制限だったりと色々あるが、とにかく、ゴジラの場合もこれだけの圧倒的なパワーアップを成し遂げた以上、それなりの条件は絶対に存在するはずである。

 セブンはその条件にも心当たりがあった。ゴジラの身体を巡る溢れんばかりのエネルギーの流れが、彼の知る後輩のある必殺技のそれによく似ていていたからである。

 その後輩の名はウルトラマンタロウ。そして、必殺技は自らの身体にエネルギーを充填させ、自爆とともに炸裂させる「ウルトラダイナマイト」だ。ただ、ウルトラマンタロウと違い、ゴジラは自らの身体に充填させたエネルギーを宝具の強化やステータスの向上に使用しているのだろう。

 そうすると、弱点も「ウルトラダイナマイト」とほぼ同様と見ていいだろう。この宝具の使用後はゴジラはエネルギーを使い果たして消耗すること、そして、ウルトラ心臓を持つタロウとは違い、自分の身体を流れるエネルギーと身体強化に自分の身体が耐えられずにダメージを蓄積してしまうことがこの宝具のデメリットと見て間違いないはずだ。

 この分析に基づいて考えれば、対処法を導き出すこともさほど難しいことではない。単純に、エネルギーを消耗しつくすまで待てばいいのだ。

 このパワーアップ能力と思しき宝具がゴジラにとって諸刃の剣だ。使えば使うほどにエネルギーを消耗し、身体はボロボロになる。ゴジラの怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)が直撃すれば致命傷という危険もあるが、モスラと共闘して撹乱する戦術を取れば時間を稼ぐことぐらいなら不可能ではないとセブンは考えた。

 

 ――誰もが必死に生きているのに、戦っているのに、私だけここで挫けていられるか!!そこに勝機があるのなら、私はそれを掴み取るまでのこと!!

 

 セブンは己に喝を入れて、『使役されし大怪獣(カプセル・モンスターズ)』と共にゴジラと相対した。

 

 

 ここに、聖杯戦争はクライマックスを迎えつつあった。




おじさん、死に際までザックリ省略されました。まぁ、ぶっちゃけた話、マスター勢が戦場と化して混乱する冬木の中で一人の冴えない男を見つけるなんて無理ゲーなんで、事故死か自滅以外におじさんが死ぬ可能性は無いに等しいんですがね。
それに、基本 ゴジラの尊厳死>>超えられない壁>>おじさんの孤独死 ですから。


因みに、拙作のゴジラはVSシリーズとGMKの能力融合個体ですので、厳密にはVSシリーズの個体でもGMKの個体でもありません。
冒頭のゴジラの生前も、VSシリーズとよく似た、それでいてちょっと違う平行世界におけるゴジラの結末なのです。ですから、VSデストロイアの設定と異なる点も多少あります。
つまり、このゴジラは映画とかとは違う、ジュニアとかがいない平行世界で大暴れして、メルトダウンで東京を死の街にして死んでいったゴジラなのです。
平行世界の数あるゴジラのうち、コイツが召喚されたのは神のイタズラか、おじさんの無自覚な狂気のせいでしょう。

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