やめて!!冬木市の復興予算はもうゼロよ!!   作:後藤陸将

9 / 46
ヤツが……ヤツが来る!!
怪獣の王にして、人類の身勝手が生み出した災悪の化身、そして日本人のDNAに刻まれた戦争の、核の、破壊の権化が蘇った!!


怪獣王復活

「……なんでわざわざこんなところにまでつれてきた、臓硯」

 召喚陣の前で雁夜は臓硯を睨みつけた。

 事情も知らされず、ただ召喚のためだと言われて兄の運転する車で連れてこられたのは、北陸のとある海沿いの小さな町だ。若狭湾を臨むその町の峠に臓硯は召喚陣を敷いた。

「貴様のサーヴァントはとても貴様のような半人前以下の魔術師の魔力供給で戦い続けられるようなサーヴァントではない。故にじゃ。貴様では補えぬ分の魔力を外部から摂取する必要がある。最低でも、聖杯戦争を戦い抜けるだけの魔力をサーヴァント側で備蓄してもらわねばな」

「まさか……冬木で大規模な魂喰いをすることが難しいから、ここで何百人単位で魂喰いをしようって魂胆じゃねぇだろうな!!」

 倫理が一般人のそれとはかけ離れた魔術師であれば、特にこのような手段を気にすることはなかっただろう。だが、雁夜は魔術師になりきれずに魔術の道を捨てた男だ。自身の目的のためとはいえ、大規模虐殺をすることには抵抗があった。

「カッカッカ……そのようなことはせんよ。確かに、貴様の魔力不足を補うためには町ひとつやふたつの犠牲ではきかぬだろうが、それでは神秘の隠匿の原則に抵触する。この場所につれてきたのは、貴様のサーヴァントのスキルで魔力不足を補うためよ。見よ、若狭湾には彼奴の餌がたんまりとある」

 そう言って臓硯が杖で指し示した先に見えたのは、巨大な白い円柱状の建造物。

「原子力発電所……?」

 その時、雁夜の頭の中で全てが繋がった。餌は原子力発電所――東京湾から採取された触媒――化け物。日本人であれば、この3つの単語から『ヤツ』を連想することは極自然なことであった。

「まさか、臓硯……貴様、あの化け物をサーヴァントとして呼ぶって言うのか!?」

 雁夜は驚愕し、声を張り上げた。

「冗談じゃない!!あんなものを呼んで戦えば、冬木は滅ぶぞ!!」

「何じゃ雁夜。不満ならば別のサーヴァントを呼んでも構わんぞ。しかし、別にアインツベルンは前回の聖杯戦争で味をしめたらしく、今回も規格外の存在を呼ぶじゃろうし、それに対抗して遠坂の子倅も身に余るサーヴァントを呼ぶじゃろうて。並大抵のサーヴァントでは、貴様はまず勝ち抜けんぞ。ワシの本命は次の第五次聖杯戦争じゃから、貴様が下らない正義感を振りかざして敗北しようが別に問題はないがな」

 雁夜の脳裏に桜の姿が過ぎる。聖杯戦争に勝ちぬけなければ、命を賭けてここまで準備した意味がなくなる。自分の命などどうでもいいが、桜だけは救わなければならない。

 冬木と桜を天秤にかけ、雁夜は葛藤する。

「……あの化け物を呼べば、勝てるんだろうな」

「貴様次第じゃ。しかし、勝算はまぁ、なくはないといったところじゃろうな」

 自分にしか救えない少女のために、不特定多数の無辜の命を犠牲にする行為は確かに許しがたい行為であろう。それも、確実にその少女を救えるのならともかく、救えない確率の方が大きいのに多くの命を危険にさらすとなればなおさらだ。

 どちらを救うべきなのか。迷う雁夜の脳裏に浮かんだのは、虚ろな目をした幼馴染の娘の姿と、人を虚仮にしたような目でこちらを見つめるその幼馴染の夫の姿だった。 

「それで十分だ……」

 雁夜は覚悟を決めた。

 たとえ冬木の地が灰になろうと構わない。あの娘さえ、母と姉のもとで楽しく、平和に人間として暮らせるのであれば。そして、あの人でなしに制裁をできるのであれば。

 

 一年前の雁夜であれば、同じ決断を強いられたとしても絶対に臓硯の提案を断り、自分の手で別のサーヴァントを探す決断をしたであろう。しかし、一年の間蟲に蝕まれ続けた今の雁夜は違った。自身の価値観がずれてきたことに雁夜は気づいていなかったのである。

 それに対して、勝ち目の薄い戦いのために自身の生まれ育った町ひとつを滅ぼさんとする決断をするほどにズレてきた自身の息子の変貌に愉悦を感じ、臓硯は内心でほくそ笑んでいた。

 

 そして、雁夜は召喚陣の前に立つ。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公」

 刻印虫が枷を取り払われた獣のように暴れはじめ、雁夜の血肉を代償に召喚陣に魔力供給を始めた。

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 雁夜は血が噴出し、紅く染まる視界を通して召喚陣に光が灯るのを見た。風が巻き上がり、鼓動のように光が召喚陣で瞬く。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ満たされる刻を破却する」

 次第に大きくなる召喚陣の鳴動。それに呼応するかのように刻印虫は一層凶暴になったかのように雁夜の体内を暴れまわった。

「――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 自分が臓硯に利用され、捨てられるであろうことは分かっている。だが、それでも彼にはやらなければならないことがあった。今も蟲倉で苦しんでいる桜を幼馴染に女性の下に返すこと、そして幼き娘を蟲倉に追いやった忌むべき男、時臣に誅罰を下すことだ。

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 さらに、ここで雁夜は一小節加えた。それは、召喚するサーヴァントに新たな属性を付与する言霊だった。

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者!!」

 身体中を暴れまわる刻印虫のせいで雁夜の身体のいたるところで血が滲み、骨は軋む。

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 召喚陣から溢れ出した光が、闇夜を照らす。そして、闇を払う光の中に、巨大なシルエットが浮かび上がった。

 身体を蝕む苦痛に耐えながら、雁夜は顔を上げ、それを見つめる。

 恐竜を思わせる鋭い牙の並んだ顎、白濁した瞳と凶悪な形相、山脈を思わせる背びれの並び、60m近い巨体を支える巨大な足と太い尾が見えた。

 最後にこの怪獣が現れてからおよそ四半世紀が経過し、人々の記憶からも薄れ始めているが、まがりなりにも報道に携わっていた雁夜がその存在を忘れるはずがない。

「これが……ゴジラ!!」

 足元で震える雁夜の姿など眼中にないかのように、天を見据えたゴジラは、己の存在をこの世の全てに知らしめるかのごとき巨大な咆哮を発した。

 

 それは、ゴジラの中に集う戦争で命を散らした数知れぬ怨霊たちの無念の叫びであり、自分たちのことを忘れている人々に対する復讐の宣言でもあった。

 

 

 

《サーヴァントのステータスが更新されました》

 

 

 

クラス:バーサーカー

 

マスター:間桐雁夜

 

真名:ゴジラ

 

性別:不明

 

身長:60m/体重:30000t

 

属性:混沌・狂

 

 

パラメーター

 

筋力:Ex

耐久:Ex

敏捷:D

魔力:A+

幸運:D

宝具:Ex

 

 

クラス別能力

 

狂化:B

 

パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる

 

 

保有スキル

 

怪力:A

 

魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性で、使用する事で筋力を一定時間ワンランク向上させる

 

 

魔力放出(放射線):A

 

自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させるスキル

ゴジラの場合、放射熱戦を体内に逆流させ、背びれから一気に放射することができる

このスキルの影響で、ゴジラは常に一定量の放射線をその身から放ち続けている

 

 

戦闘続行:A+

 

瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる

心臓のみであっても生存可能というしぶとさ

 

 

千里眼:C

 

視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上

音速で飛行する数キロ先の戦闘機を撃墜可能

 

 

 

宝具

 

怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)

 

ランク:A++

種別:対城宝具

レンジ:1~99

最大捕捉:1000人

 

放射能を含む高温の熱線で、着弾した標的を悉く爆発させる

パワー最大時には渦巻状のスパイラル熱線を吐くことも可能

また、敵の光線などを吸収し、吸収したエネルギーを混ぜて熱線を強化して放つこともできる

発射前には背びれが発光するのだが、背びれの発光から放射までには平均1.26秒かかり、背後の左右45度、上下81度が熱線の死角になっている

 

 

不滅のゴジラ細胞(イモータル・セル)

 

ランク:A

種別:対人(自身)宝具

レンジ:0

最大捕捉:1人

 

ゴジラの全身を構成する細胞であり、不死に限りなく近い生命力の源

高い自己再生能力と、核エネルギーを摂取する能力ももつ

ゴジラ以外には制御不可能

 

 

赤竜葬送曲・炉心融解(メルトダウン)

 

ランク:Ex

種別:特攻宝具

レンジ:???

最大捕捉:???人

 

原子炉と同じ役割を果たしているゴジラの心臓部で核分裂が異常に活性化し、制御不能になる

背びれや胸を中心に紅く発光し、この時『怨嗟咆哮:放射熱線(アトミック・ブレス)』のランクはExランクに上昇し、パラメーターも全てワンランク上昇する。

この宝具を発動すると、最低でも5ターンでゴジラは核爆発を起こし、大気圏に火がつき地球を焔に包みながら消滅する

この宝具を発動したゴジラに攻撃することは火薬庫に花火をぶつける行為に等しく、攻撃は核爆発を早めることになる

核分裂を制御することは可能であるが、その場合でもゴジラの体温の上昇は止められないため、3ターン以内にゴジラの原子炉である心臓部が溶け出し、放射能を撒き散らしながら、周りのものを溶かし、水素爆発で地球に穴を開けてしまう

 

 

《捕捉》

 日本が世界に誇る最強の怪獣王。

 見た目はGMKゴジであるが、それだけだと宝具欄が寂しいのでVSシリーズのゴジラの能力も追加した。ご都合主義であることは承知の上。

 悪意の塊なので、ものすごい狡賢いからさらに性質が悪い。

 因みに、大東亜戦争で命を散らしたアメリカ人、日本人、その他のアジアの人々などの数知れぬ人間たちの強烈な残留思念、謂わば怨霊の集合体であるため、歴史の流れの中で戦争を忘れてしまった日本に自分たちの無念を思い出させるべく日本の街を狙う。

 マスターを失った場合、サーヴァント『ゴジラ』という軛からゴジラを構成する数知れぬ怨霊たちが解き放たれて変質し、周囲の者を内的世界に取り込む。取り込まれた者には自分たちが味わったヒトの本質である狂気の権化である戦争の「地獄」を見せる。

 数百万以上の怨霊、それも非キリスト教徒が過半であるため、聖言でも浄化は極めて難しい。おそらく、サーヴァントという軛から解き放たれた怨霊を全て浄化するにはExランクの洗礼詠唱スキルを持つサーヴァントが3体は必要と思われる。

 下手に追い詰めれば核爆発か数百万の怨霊の解放と物凄く物騒なサーヴァント。こいつが聖杯にくべられたら聖杯が変質する可能性もある。




GMKゴジ+デスゴジというもう悪夢としか言いようのない能力クロスゴジラ爆誕!!

冬木市に一番やさしくないゴジラにしたくて能力クロスさせた。どう転んでも冬木市を地獄に変えるえげつなさに少しやりすぎたかなって感じてる。


実際、聖杯戦争的な意味では歴代のどのゴジラより強いですね、コイツ。
手に負えません。多分、慢心なしギルにも勝機がある正真正銘の化け物です。

しかも殺されればアポのジャックのように怨霊化するっていう始末の悪さ。
ジャックの場合は多くて数千人の怨霊ですが、こちらは数百万の怨霊ですからもうどうしようもないっていうww

冬木市は焼き尽くされて放射能で汚染されて怨霊が住まう土地になるんや……何これ酷い

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。