-艦これ- 超々々々弩級戦艦白石です! All the world's a stage 作:うかた
お願いします。
航弐少佐
話しながら、提督の執務室の前に着く。
部屋に入り、そのまま椅子に座るが……昼寝するにはちょうどいい陽ざしに、流石に眠くなった。
そして数日間も徹夜していた提督にとって、到底抗えるものではなかった。
(おいおい、こんな首脳陣が頭揃えてるとか、凄すぎだろ)
航弐は、驚愕していた。
本来、起こりうるはずのないことが目の前で起きている、事にではない。
第二航空戦隊司令官、山口多聞中将の柔軟性に、である。
彼がいるのは、昭和17年の、海軍省の一室である。
本来平成十○年生まれの彼が、この時間にいること自体おかしいが、なぜかタイムスリップした。
という理由で済ませられるだろう。
よくある、死んだと思ったら異世界や未来、過去にいたという、不思議現象である。
それが航弐という人物なのである。
海軍省の目の前でふと目覚めた彼は、まず目の前にいた人物と話を始めることにした。
その人物こそが、山口多聞中将である。
彼は、前日に『未来の日本』を夢で見ており、航弐には、それは戦後の日本の広島か東京かと思われた。(長崎はおそらく違う)
辺り一面瓦礫の山になっている町を見て、山口は焦った。
このまま戦えば、大日本国はこうなるのかと。
朝起きてから、何か打開策はないかと考え続けていた彼は、海軍省の前で――――光を見た。
そこから、見たこともない服を着た人間が落ちてきて、自分の名前を正確に言い当てた時、山口は確信した。
この人物こそが、大日本帝国の未来を背負う人物になると。
航弐が未来からやって来たことと、第二次世界大戦の海軍についてとても詳しく知っていることを聞いた彼は、来るべきミッドウェー海戦のために、第一機動部隊の主要な人物を、かき集めていた。
そして、その前でいきなり彼を紹介した。
当然ながら、ミッドウェー南雲忠一中将は、鼻で笑った。
「ふん、そいつが未来からやってきただと?馬鹿も休み休み言え」
「なら、これだけは言っておきますよ?海軍暗号書Dの内容が、敵にばれています」
「!?馬鹿な。そんなはずはないだろう」
それならば、と。彼はとっておきの情報を出す。
「ミッドウェー攻略に参加する艦船は、一航戦赤城、加賀。二航戦飛龍、蒼龍。同時にアリューシャンン列島の攻略を行い、そちらには小型空母二隻が同行する。五航戦は片方が被弾したために、戦闘に参加出来ない」
「…………」
「なんでしたら、アメリカの太平洋艦隊司令官ニミッツのフルネームも言えますが」
「分かった分かった。君が詳しいことは分かった。しかし、君自身がアメリカの密偵である可能性も拭えないはずだ」
「そうであるのだとすれば、海軍暗号書Dについて伝える必要はなかったはずです」
「……ふむ」
黙り込んでしまった南雲に代わって、山口がこう話す。
「ならば、こういうのはどうでしょうか。私が航弐の面倒を見ます。海戦についての知識も有しているようですし、ミッドウェーでの戦いの同行させてみましょう」
「……わかった。この件については、ひとまず君の預かりにしておこう」
それならばと、航弐はこれまで考え続けていた、未来から来たというアドバンテージを最大限生かすための作戦を伝えることにした。
「五つ、頼みたいことがあります」
「なんだ?」
「まず、海軍暗号書Dをつかい、敵機動部隊をおびき出します」
「なるほど、あえて偽った情報を伝えることで、敵の動きを先読みできるようにしようということか」
「そういうことです」
「しかし、そううまくいくものかね」
「敵はこちらが暗号が解読されていることに気付いていないと、考えています。この大きな隙は、敵機動部隊を壊滅させることが可能な域に達しているように思われます」
「…………」
「本当は、『第一機動部隊宛の郵便は『ミッドウェーへ』』という連絡が等が伝わってしまったからですが、別の放送で日付をずらした通達をすれば、間違いなくだませるかと思います」
「なるほどな……」
「第二に、私にある程度に地位を与えて下さい」
「なぜだ?」
「山口中将が先ほどおっしゃったとおり、私は海戦に関する知識を多く有しております。できれば、現場に立ってその知識を最大限生かしたいと思っております」
「……まあ、ある程度の地位なら与えられるだろう」
「ありがとうございます。第三にですが、これは――――」
そして、六月七日。
航弐は、空母蒼龍の艦橋で、これからの作戦について思いを巡らせていた。
ハワイ島への奇襲で、アメリカの太平洋側での戦力はかなり減っており、しかし、数隻の空母を保有していることは間違いなかった。
そして航弐は、その空母四隻についての情報を伝えた。
正規空母「エンタープライス」「ホーネット」。そして、先日の海戦の損傷を突貫工事で修復した「ヨークタウン」。
いちおう、遠方で練度上昇のために演習中の空母「サラトガ」の事も伝えておいた。
単純な戦力比で言えば、四対三。しかし、こちらは指揮官となるべきの山本司令長官は大和に乗船し、はるか後方にいる。
出来ることなら横須賀の基地か、周辺にある設備の整った場所で指揮を降してほしかったが仕方がない。
このことは日本国の連合艦隊側に不利となり、すぐに連絡を取れない状況のせいで、敗因の一つとなっている。
「これが大きく響かなきゃいいんだがな……」
とはいえ、ミッドウェー防衛隊として派遣されてきたはずの敵機動部隊は、明日の夕方に大日本帝国の機動部隊がやってくるという誤報に踊らされているはずだ。
そこに関しては、おそらく初撃は奇襲という形で決まるだろう。
出撃前に、山本中将と航弐は、作戦に関しての詳しい確認をしていた。
「先に敵の空母を叩きます。ミッドウェー島の北西にいるはずの敵機動部隊は、もう少ししたら発見できるはずです」
『しかし、ミッドウェー島の基地はどうするつもりだ?寄席集めとはいえ、それなりの戦力になるのではないか?』
「それは大丈夫です。空母に一撃を与えた後に、一航戦の艦載機で攻撃するだけで十分です。計画通り行きましょう」
飛龍に乗船している山口提督と、艦同士で話ができるように、お互いに有線電話を使っている。
艦と艦の間に線を敷くのには苦労したが、使えるものとしてはかなり有効だ。
奇襲攻撃を企画しているため、無線封鎖をしているのも一つの原因ではあるが。
『索敵機から入電!!敵機動部隊を発見!』
にわかに慌ただしくなる船の上で、最後の連絡をした。
「これで有線の連絡を最後にします。有線では戦闘の邪魔なので、断ち切ります」
『うむ。死ぬなよ?』
「分かっております」
すぐにブツリと切れた電話に苦笑する。
「ただちに攻撃隊を発艦せよ!!」
「了解しました!」
航弐は、この蒼龍の作戦を、いくつか任されていた。
本来はあり得ない事であり、本人も辞退しようとしたのだが、海戦におけるテストのようなもので何故かかなりいい点数を取ってしまい、年齢で上がっていくことが主な(何か大きなことをやった人物や、中将クラスからの推薦を受けた人物を除いて)機構の中で少佐の座に就けられた(勿論、山口中将の推薦もあってだが)。
実質的に与えられた権限そのものは、大尉ほどのものだが、戦況を見ながら意見具申をするには十分な地位である。
「ひとまず護衛機を飛ばしておいて正解だったな」
「はい、これで即座に攻撃が可能となります」
「さすがだな、山口中将が貴官の事を推すだけのことはあるという訳だ」
航弐改め航弐少佐に話しかけてきたのは、柳本柳作大佐だ。
航空母艦『蒼龍』の艦長であり、部下の意見具申を聞き入れるだけの度量を持った人物で、航弍は安心した。
「爆撃隊と雷撃隊を即座に発艦、護衛機と合流し次第即座に突撃!」
「了解、発艦します!」
ついにやっちまった感の強い、『過去編』スタートです。
いくつかに分けるつもりですが、白石たちよりも長い話になりかねないかもしれません。