-艦これ- 超々々々弩級戦艦白石です! All the world's a stage 作:うかた
十分ほど後、航弍は、無数の艦載機が敵空母に向かって発艦し、更に別の戦闘機が警戒隊として発艦していくのを見ていた。
因みに、この攻撃部隊はあの有名な『江草隊』だ。率いているのも当然、飛行隊長兼艦爆隊長である江草隆繁少佐となる。
一度だけ顔を合わせたが、ありがたやーと両手を合わせて祈りかねないほどに興奮した。
「ここから海戦の始まりだ。気を引き締めてかかれ」
「ええ、ですが、そろそろ周りの空母の動きも見ておかねばなりません」
航弐にとっての過去のミッドウェー攻略に参加した空母は四隻。
『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』である。
今輪形陣を組んでいるのも全く同じ艦であり、先だっての海戦で傷ついた五航戦の『翔鶴』を置いて、無事だった『瑞鶴』を参加させるべきだと意見具申したが、却下された。
艦載機の搭乗員が何人も死んでいるためだそうだが、それなら『翔鶴』の搭乗員を移せばいいじゃないかと考えたが、余計な波風を立てるにはいかなかった航弍はそこで諦めた。
更に数分後、少し遅れて『飛龍』から攻撃隊の艦載機が飛びだっていくのを見ながら、米国海軍の特殊な輪形陣を攻略する方法をもう一度考え直した。
空母を中心として、その周りに円形になるよう等間隔に艦を配置する。
その半径が、雷撃機が降下に入る距離であるため、雷撃隊が隙を見せた瞬間に機銃で撃ち落とすことが出来る。
これに対しては、外輪の駆逐艦を先に沈め、その周りの艦数隻に被害を与えた上で空母に対して攻撃するように伝えてある。
「『赤城』『加賀』の攻撃隊、発艦準備完了しました!」
「分かった、これよりミッドウェー島の航空基地を叩く!手筈どおり、なるべく滑走路を優先して攻撃するように!!」
この攻撃隊で、滑走路を使用不可能にする。
蒼龍からも何機かの警戒機を合流させる手はずだ。
「なるほど、彼が未来から来たというのも、嘘ではないのかもしれないな」
敵空母への『蒼龍』第一次攻撃部隊を率いている江草は、飛行甲板で会った少年の事を思い出していた。
普通に見ただけでは少年にしか見えないが、その目には何かを宿していた。おそらくそれが、山口中将の気を引いたのだろう。
『蒼龍』から発艦してからそれなりの時間が経ってから、敵艦隊発見の報告が響いたのが一分前。
右前を見れば、特徴的なシルエットを持った空母を囲むように、駆逐艦や軽巡洋艦が円を描いている。
航弐大佐の言葉通り、確かに駆逐艦等が、雷撃機が魚雷を投下する距離を狙い打てる場所にいる。
「まずは敵空母左舷の駆逐艦二隻をやる。急降下爆撃の小隊二つで叩け!」
数十機の零戦と九九式艦爆とが一気に飛び出し、敵駆逐艦を狙う。
敵空母からの艦載機の迎撃はなく、完全に奇襲の形が成功したようだ。
まばらな対空砲を潜り抜け、高高度から急降下した九九式艦爆により、一隻の駆逐艦の艦橋が吹き飛んだ。その左に居たもう一隻は、避けようとしているのか艦首の向きを変えようとしているが、その勢いは酷く鈍い。
一気に急降下した九九艦爆の攻撃により、どうやら真っ二つに裂けた駆逐艦は、轟音を轟かせた。あのままでは恐らく、轟沈確定だろう。
「できた穴から一気に行く!全力で当てろ!!」
海面ギリギリまで機体を下げ、停止している駆逐艦の隙間を縫って進む。
周りを見ても、他の九七式艦攻が大きくその機体を下げている。
「標準合いました!」
「もう少し近づく!」
江草の機の標準要員に怒鳴り返し、更に近づく。
徐々に大きくなっていく空母がようやっと対空砲を撃ち始めたようだが、その密度はあまり濃くはない。上を見上げると、機銃掃射で零式艦戦が気を引いているのが見えた。
視界のほぼ全てを空母が埋めた瞬間、魚雷を発射する。
軽くなり、浮き上がりそうになる機体を調整しながら、空母の前面へと抜ける。
戦果はあえて聞かなかった。十分な手ごたえを感じていたからである。
空母『ヨークタウン』艦橋
「ハルゼー中将!空母『サラトガ』他、数隻の駆逐艦が被雷したようです!」
「なにっ!?誤報ではないのか!?」
「はい!『サラトガ』は四本を被雷!傾斜復旧が間に合わず、更に爆撃による追い打ちで運行不能となった模様!轟沈の可能性もあるとのことです!」
「糞っ!!忌々しいジャップめ!!」
第十七機動部隊と、第十六機動部隊を率いるハルゼーは、空母『サラトガ』『ホーネット』『ヨークタウン』『エンタープライス』を軸とした部隊での、明日やってくるはずの日本の空母機動部隊を叩くべく、ミッドウェー島北西にて展開していた。
暗号が読み解かれているとも知らずにのこのこやって来た日本の空母を血祭りに上げるために、アメリカは今回の作戦で持てるすべての空母を集めていた。
本来は演習で練度を上げる必要のある『サラトガ』を、期間を切り詰めて実戦投入したのも、全力で迎え撃つためのものだ。
暗号が正しければ、六月八日、空母『アカギ』『ヒリュウ』『ソウリュウ』の三隻の空母を中心とした機動部隊で、ミッドウェー島を取りに来るはずだった。
怒りで真っ赤になっているハルゼーの下に、最も信頼する部下、知将スプルーアンスからの連絡が入る。
「エンタープライスより入電!『時刻ガ違ウトイウコトハ、敵空母ノ数モマタ正シイトハ言イ切レズ。注意サレタシ』、です!!」
「分かっておるわ!!」
スプルーアンスが言いたかったのは、暗号の解読に成功していることが、日本側にばれているかも知れないということだ。
しかしハルゼーには、ジャップそれを知ったうえで利用して、自分たちを躍らせたことなど信じられなかった。
「おのれ、ジャップめ!!ここで潰してくれるわ!索敵機をすべて出せ!!」
「了解しました!!」
指令を受けた人物が部屋を出ていくのと入れ替わりに、もう一人の人物が入ってきた。
「ミッドウェー島司令部より入電!!」
「今度は何だ!!」
「『ワレ敵ノ大編隊ヲ確認。目標ハミッドウェー飛行場ト思ワレル』!」
「なにぃ!!」
間違いなく日本の空母から放たれたその大編隊は、報告通りミッドウェー飛行場を狙っているはずだ。
飛行場には戦力を結集しているものの、恐らく守り切れるものではない。
今ミッドウェー島の飛行場に居るのは、寄せ集めの部隊でしかないのである。
「大編隊の移動ルートから、予測できる敵空母の位置を知らせろ!」
大きく叫んだハルゼーは、そのまま黙ってしまった。
自分たちが、大きく出遅れてしまったことを感じ取っていたのである。
しかし、本来ここで第十七機動部隊を率いていたはずなのはフェッチャーと言う人物であるはずだった。
航弐が介入する前から、史実は既に、少なからず変わり始めていたのである。
「三隈二号機より入電!『敵艦隊ヲ発見。空母二隻ヲ伴ウ』です!!」
「観測機より入電。『敵艦隊ヲ発見。空母一隻以上アリ』です」
「もしかすると、サラトガもこの海戦に参加していたのかもしれません」
「敵側は、持てる戦力を全て投入したということか」
夕方になってから、日本側の空母に次々と敵空母発見の方が寄せられてきた。
しかし、時刻があまりにも遅かったために攻撃隊の発艦を中止し、作戦のために動き出す……。
完全なる奇襲で敵空母一隻を沈めた南雲機動部隊!
しかし、アメリカ軍も体制を立て直し、夜戦に突入する!!
としていたのですが、今週の更新はテスト期間中なので無理そうです……。