-艦これ- 超々々々弩級戦艦白石です! All the world's a stage 作:うかた
六月七日、夜、イースタン島
イースタン島守備隊の基地は、随分と騒がしかった。
本来は、敵空母からの空襲に気を付けて灯光統制が敷かれているはずだが、煌々と炎が燃え盛っている。
夜間での強行偵察で、敵空母と戦艦と思わしき艦影が合流しているところを運よく発見したのが五時間前、それから事態は一気に動いた。
すぐに島の対艦砲の準備が進められ、上陸してくるであろう敵の揚陸艇に対して有利な射撃が行えるように布陣した。
待ち構えていた部隊の兵士たちの視界に巨大な艦影が目に入った次の瞬間、強烈な光が発せられた。
それが砲撃、それも世界最大の巨砲を持つ『ヤマト』からの攻撃だと知ることが出来たのは、司令部の人間だけだった。
それから始まった二時間にわたる砲撃で、守備隊と、滑走路数本が治っていた飛行場に大きなダメージを受けた。
そのあと強襲してきた揚陸艇には、ほとんど被害を与えることが出来なかったため、今回の攻撃で強襲した日本兵(イースタン島のみで)は二万を上回った。
指揮所にも大きなダメージを受けていたアメリカ軍は反撃もままならず、島の大部分を明け渡すことになってしまった。
隣のサンド島でも、似たような状況になっていた。
しかし、滑走路がもう一度破壊される直前、四機の機影が離陸に成功していくのに気づいた日本兵は、全くいなかった。
空母『エンタープライス』艦橋
「こちらの戦艦は、まだ着かんのか!?」
ハルゼーは、歯ぎしりしていた。
数時間前に日本側の戦艦によりサンド島、イースタン島の両方に日本軍が上陸したことを知ってから、ずっとこの状態である。
敵の空母機動部隊の発見はでき、そのうちの二隻が戦艦と共に居ることは分かったが、残りの正規空母一隻ないし二隻の動向が、全くつかめていないのである。
ただしこの時点で、ハルゼーは来襲した敵の艦載機の数で、日本側の正規空母の数を把握していたのである。
すなわち、日本は先日の珊瑚諸島沖海戦でアメリカ海軍の空母二隻を沈めた『ショウカク・タイプ』の航空母艦は投入していないのだと判断したのである。
空母についている敵の戦艦の数は、偵察により『ヤマト・タイプ』を含む四隻であると判明している。
一隻程度の差では、重巡洋艦の差は埋められない。
とはいえ、夜戦ならば攻撃を行うことはできるだろうと、第十六機動部隊に所属している重巡洋艦『ニューオルリンズ』『ミネアポリス』『ノーザンプトン』『ペンサコーラ』、軽巡洋艦『アトランタ』他駆逐艦六隻による攻撃隊で、敵空母群に対して攻撃を仕掛ける準備をしていたのである。
そこに潜水艦からの連絡が入ったのは、ハルゼーにとって見れば奇跡に近かった。
「潜水艦から入電!『我航空母艦二隻ヲ伴ウ敵艦隊ヲ発見セリ。コレヨリソノ動向ヲ伺ウ』!!」
「それだ!!その艦隊を、夜明けまでに撃滅しろ!!」
ここから、ミッドウェー島沖海戦はその激しさを増していくのである。
空母 飛行甲板
夜栗少佐はその頃、空母の艦橋を歩いていた。
周りでは海が渦を巻き、ゆっくりとミッドウェー島の北に向かって移動している。
夜栗は、航空母艦の扱いを中心に学んだ士官学校の次席だった。
天才と呼ばれた彼は、卒業前に、偶然知り合った井上少将と空母の扱いについて話したり、艦載機の開発を行う中島研究所へ足を運んだりしていた。
海軍中枢部にも大艦巨砲主義がはびこっている中で、これからは航空母艦の時代であると、彼は悟っていたのである。
その敏感さゆえに、偶然手元に転がり込んできた偶然を、彼はほとんど全てものにしてきた。
おかげで入隊前に本来知り合うはずもない井上少将と出逢い、さらには彼のつてで、卒業して間もないころに角田少将の艦隊に入れてもらうことが出来た。
ハンモック式(士官学校を卒業したときの成績で今後が決まる)である大日本帝国海軍において、彼は少しずつその頭角を現し始めていたのである。
ゆっくりと海を見渡す夜栗の視界に、何かが光を反射した。
灯火管制が敷かれたこの艦隊から発せられた光ではないはずだ。
では、一体なんなのか。
「……まさか、潜水艦の潜遠鏡!?」
直ちに駆け出した彼は、駆逐艦に敵潜水艦の確認をするように命じた。
既に警戒運動を行っている艦隊の隙をついているということは、相当な猛者であると考えたからである。
夜栗が潜望鏡を見た辺りの最も近くにいた駆逐艦『嵐』は、直ちに攻撃を開始した。
潜水艦は急速潜航で逃れようとしているのか潜望鏡は既にひっこめているが、既にソーナーでその姿をとらえることに成功している。
「雷跡確認!!」
真っ黒な針のようなものが、かなりの速さで『嵐』に近づく。
魚雷の存在を確認した『嵐』の艦長は、その間を突っ切って潜水艦に攻撃を仕掛ける。
無傷で突破した『嵐』は、潜水艦がいたところの真上まで移動し、あちこちに爆雷を投射し始めた。
そのころには既に、他の駆逐艦も駆けつけてあちらこちらで爆雷を行い、数分後、周りに重油と鉄の塊らしきものが見えた。
夜栗少佐の功績に、この日、潜水艦一隻の発見が増えた。
ちなみに、夜栗少佐は実在しませんのであしからず……。
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