火と鋼の道で   作:ナナヒカリ

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一応言っておくとこの話はリプレイじゃないです。でもリプレイっぽいリアルさは大事にしたいです。








第一話「たっぷりの修羅場に後悔と決意を振りかけて──悪意をほんのひとさじ──」
第一話第一幕・1「道化神の賽」


 

 人類最大の国家"帝国"(エンパイア)を上空から眺めたと仮定しよう。黒々とした森を縫うように道が走り、所々に人間が拓いた畑や人家、もっと少数の都市が見える。しかし人間の土地は全体としてみればはるかにちっぽけであり、人間は──ドワーフやエルフといった他種族に言わせれば──この世界にようやく根を下ろしはじめたところである。

 

 2500年前、1人の英雄が現れた。名をシグマーという。彼はまだ動物の毛皮をまとっていた人間たちを、その恐るべきカリスマでまとめあげた。ドワーフの王を助け、厚き友情を結んだ。何千というオークを屠り、土地を拓いた。他の諸部族を纏め上げ、人類初の国家を建設した。彼はまごうかたなき英雄だった。

 そして、"帝国"(エンパイア)は繁栄した。幾度も危機が訪れた。そして、その度に帝国(エンパイア)は首の皮一枚で生き延びた。余りに大きすぎる犠牲を払いながら。

 

 この国は人間の国家であるが、現在、国内が完全に人間の支配下にあるとはとても言いがたい。国土の大部分を占める森の中では野蛮かつ狡猾な獣が目を光らせ、東の最果て山脈からはオークやゴブリンといったグリーンスキンの部族が浸入し、西の鉤爪湾や混沌洋からはノーシャからの海賊やあるいはもっと残忍で形容しがたい襲撃者が夜の闇とともに訪れる。

 

 そして何より、北からはおぞましい"混沌"の軍勢が攻め寄せているのだ。

 "混沌"(ケイオス)

 それは、生きとし生けるものの最大の敵。それは、この世の始原より存在した破滅の源。それは、人類の首筋に突きつけられた致死の短剣。

 この国で人間は常に危機に晒されている。

 

 そこで帝国(エンパイア)南部の選帝候領の一つ、アヴァーランドに焦点を合わせよう。他の地域と違い森林が存在しないために、いくらか人間の領土が目立つようになる。アヴァーランドには豪壮かつ華麗な都市は少ない。帝都アルトドルフや、帝立砲術大学校を誇るナルンといった都市とは自ずから違うのだ。その主要産業は"農耕"と"牧畜"、そしてワインやビールといった"酒造"である。

 アヴァーランドだけでなく、南部諸州は肥沃な土地を先の"混沌の嵐"の戦火によって傷つけられもせず、この世界では珍しい、しかし長い目で見れば短い平和を享受していた。

 

 その帝国(エンパイア)の片田舎アヴァーランドのさらに片田舎、ムールフェルトという村の街道沿いにある一軒のあばら屋に目を留めよう。

ムールフェルトは他の凡百の村と何も変わるところのない。平凡な村である。農業と作物の取引でその日を暮らしている。ここ近年はわりかし豊作であり、村の人びとは食うには困らない程度の──この世界ではとても幸せな──暮らしを味わっている。

 

 

 

 その家の主、ベルトルドは庭に出したイスに座り、家の前の柵に足をかけ、顔に帽子を被せて暖かい春の日差しを目一杯浴びていた。

 

 今年で22歳になるベルトルドは、腕の確かな靴屋である。田舎の村では新しい靴にはあまり用がない。履き潰した靴を更に酷使し、どうしても使えなくなるとベルトルドのもとに持っていくのだ。村にある靴屋は先祖代々続く彼の一軒だけであり、仕事は他村からも舞い込んできた。若く、精力的に働き、陽気な彼の人柄は広く人々に受け入れられた。

 

 

 そして、この日の朝は異常であった。

 

 小川をさかのぼった隣村から、来るはずの革をのせた荷車が来ない。

 

 退屈だが、堅実で、昨日と同じ今日、一週間前、一年前と同じ今日を過ごすことにかけては右に出るもののない、この地方の人間としてはこれは大事件であった。

 

 靴の材料である革がないため仕事もできず──といっても急ぎの仕事があるわけでもないが──来ない馬車を待ちながら、彼は庭でまどろんでいた。太陽はようやく天頂にたどり着いたところだ。

 

 

「おい」

 

 

 彼は初めそれが自分に向けた声だとは分からなかった。

 

「おい」

 

 もう一度言われてようやく気付き、帽子をとるが、突然増えた光量で声をかけたヤツの顔が真っ黒に潰れて判別できない。

 

 その男は柵の直ぐ前に立っており、実際は6フィートほどだが──それでもかなり高い──驚き目の眩んだ彼には7フィートもの巨体に見えた。

 

 男はベルトルドの状態には気も止めず尋ねた。

「アヴァーヘイムへ行く街道に出るにはこの道で合っているか?」

 

 アヴァーヘイムとはアヴァーランドの主都である。アヴァーランド随一の大都市であり原理的にはムールフェルトを突っ切る街道沿いにひたすら歩けば着く筈だが、ベルトルドはそんなところには行ったこともない。目の前の男は旅人なのであろう。

 

「ああ……」

 肺の中の空気をそのまま吐いた音だった。実際には男の発言を考慮できるほどまだ覚醒してはいなかった。

 

「そうか、ありがとう」

 男はおざなりに礼を言い、向きを変えて歩き出した。

 

 最初は男の陰に隠れて見えなかったが、男は3人づれだった。

 左の男は杖を持った黄色い髪の男で、右にいたのは赤毛の子供らしかったが、身長の割に背負っている荷物は多かった。

 そしてさっきベルトルドに道を尋ねた長身の男はフードを被っており、またマントの膨らみから男が剣をさげていることも分かった。

 3人とも泥だらけのマントを着て、擦りきれたブーツを履いていた。長い旅をしたきたことはすぐに分かった。

 

 その時ベルトルドの頭脳が急に覚醒し、脳裏に隣村から荷車が来ないという事実が浮かんだ。

 馬車は事故にあったのかもしれない。横転した馬車を起こすには人手がいる。他の村民には農作業という仕事がある。目の前の旅人に助けを求めて何が悪いだろう?

 

 一方でベルトルドの頭にはもうひとつの考えが浮かんだ。もしこいつらが筋金入りの悪党だったら? あのたちが悪い家畜泥棒かもしれない(もっとも見つかれば即縛り首の家畜泥棒がこんな日中に堂々と往来を歩いているとは思えないが)。馬車の中身を猫ババされたらどうする?

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 もし今、ベルトルドに運命を見る目、聞く耳があったとしたら、幸運と博打の神にしてトリックスターであるラナルドが、笑いながらサイコロを振る音が聞こえただろう。

 

 ラナルドは常に探している。退屈な日常を打ち破る新たな楽しみを、全てを賭けた一世一代の大勝負を、そして破滅と飛翔の瀬戸際に立ち勇気を振り絞る人間を。

 

 ラナルドは確かにその時、サイコロを振ったのだ。

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 しかしベルトルドにその音は聞こえず、かわりに彼は椅子から立ち上がって今にも立ち去ろうとする三人に呼びかけた。

 

「おーい、そこの旅の人!」

 

 三人はゆっくりと振り返り、ベルトルドはさっき子供だと思った男の長く縮れた髭を見て、彼がドワーフだと気付いた。

「少し話があるんだが聞いてくれないか?」

 

 中央の男が不審そうに口を開いた。

「なんだ?」

 

「なあに、簡単なことさ」

 ベルトルドはニヤリと笑った。

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 ラナルドの振ったサイコロはゆっくりと転がり、やがて止まった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「すると、こういうことか?」

 アルブレヒトは言った。

 

「隣村を抜ければ、アヴァーヘイムヘの街道の近道になる。隣村までの間に今日来るはずだった隣村からの馬車が故障していたら、直すのを手伝う」

 

 正直言って、気乗りがしない。それでも道を聞いた手前もあり、あまり男の頼みを無下に切り捨てることが出来なかった。取り敢えず話を聞いておいて、断るしかあるまい。

 

 目の前の(正確にはアルブレヒトは男を見下ろしているので「目の下の」)男はしきりに頷いている。

「もし何もなければ俺たちはそのまま村を通り抜ける、そういうことだな?」

「その通りだ、友人よ!」

 名も知らない男はなれなれしくアルブレヒトの背中を叩いた。

 

 アルブレヒトは男の馴れ馴れしい態度にいらつき、脇のドワーフに目をやった。

 ドワーフは目を合わせ、首を横に振る。

「アルブレヒト、分かっていると思うがわしらは急いどるんじゃ、他人事に首を突っ込む暇はありゃせん」

 勿論、アルブレヒトが予想していた、そして望んでいた答えだ。ドワーフに頷くと、男に目を向ける。

「悪いがそういうことだ、力にはなれない」

 

 男は往生際が悪くドワーフに声をかけた。

「あんた、ドワーフだろう? 久しぶりに見るなあ。どうだい? うちに上等のビールがあるんだが仕事を手伝ってくれたら一杯おごってやるよ」

 ドワーフの目が光ったのを見逃さず、男はアルブレヒトとルディガー(いままでの会話中彼はずっと黙っていた。どうせなにか考え事をしているのだろう)に対して言った。

「あんたらもだぜ!」

 

「ほほう、お主らアヴァーランド人は人間にしては旨いビールをつくるからな!」

 ドワーフが感心して言った。こいつらドワーフという種族はビールに目がない。四六時中頭はビールで一杯だ。もっともドワーフに対しビールと同じくらい魅惑的に映る、鉱石と鍛冶仕事のことを考えていない時は、だが。

 

「おいおい、それじゃあまるでアヴァーランドのビールがドワーフのビールよりまずいみたいじゃないか」

 男がわざとらしく驚いた顔をして言う。計算ずくだ。アルブレヒトは気づいた。こいつは、ドワーフの欠点(というか弱点)を知っていやがる。

 

「なんじゃと?!」

 案の上ドワーフは顔を真っ赤にして叫んだ。こいつらはビールに目がないのと同様、馬鹿馬鹿しいほどに誇り高い。身内が貶されただの、自分が恥をかいただのそういうことにやたらと拘る。

 

「確かにお主らのアヴァーランドのビールは旨い、旨いのは事実じゃ。しかしドワーフはお主ら人間よりも遥か太古の昔から、この世界でビールを嗜んできた。その歴史の重みがお主ら人間のビールとドワーフのビールの違いじゃ!」

 勢い込んで話すドワーフをアルブレヒトは忌々しく見ていた。

 こいつの頭の中にはビールのことしかないのか!

 

 男は嬉しそうに言う。

「じゃあ飲み比べて決めようや」

 ドワーフはのぞむところだとばかりに男の家に向かって一歩を踏み出した。

 

「おおっと」

 男は行く手を遮って言う。

「ビールは仕事の後。そうだろう?」

 

 ドワーフは両の目を内側に寄せた後、困ったようにアルブレヒトの方を向いた。アルブレヒトは苦々しく思う。悔しいが目の前の若造の方がこの年を食ったドワーフ(といってもドワーフの中ではこいつは若造らしい)より上手だったということだ。

 

 アルブレヒトは舌打ちして、振り返り叫んだ。

「ルディガー!」

 

 背後でいつも通りボーっとしていた黄色髪の男──ルディガーは、はっと顔を上げた。アルブレヒトは重ねて尋ねる。

「どう思う?」

 

 ルディガーはぼそっと呟いた。

「馬……」

 

 アルブレヒトには理解できない。もっともこいつの言うことを理解できないのはしょっちゅうだが。

「馬がなんだって?」

 

「昨日の雨でぬかるみができて、馬がそこに足がはまって動けなかったらどうしよう、ってオラ、ずっと考えてただ」

 ルディガーはぼそぼそと話した。

 

 アルブレヒトは我慢の限界だった。

 これだからスターランド人は!馬か!

 自分たちの立場が分かっているのか。

 急いでいるというのにビールの上に馬か!

 

 スターランドはアヴァーランドの北にある選帝侯領だ。東の果てにかの呪われた土地ズィルバニアを抱えているが、それ以外の地域は豊かな穀倉地帯といえる。

 そして、そこの住人は帝国(エンパイア)きっての田舎者として名高い。

 

 まったくビールに馬とは……。

 

「おいおい、こりゃあいかんな」

 男がアルブレヒトの足下を見て言う。

「こんなサンダルみたいな靴じゃあ長旅はできんよ、それにボロボロじゃないか」

 男は続けて言う。

「うちは靴屋だ! 革が手に入ったら直ぐにあんたらに新品の靴を作ってやるよ」

 

 言われてみると、アルブレヒトは自分の泥だらけで踵もすり減った靴が急にみすぼらしく思えてきた。思い返せばウィッセンランドの故郷からずっとここまで、ライク川をもこえて歩いてきたのだ。その間靴に気を止める暇は全く無かった。もうそろそろ買い換え時かもしれない。

 だいたい新品の靴なんて、アルブレヒトは生まれてこの方履いたこともなかった。このブーツだって家族のお下がりを後生大事に使ってきたものだ。きっと素晴らしいのだろう。ツヤツヤとした革でできた新品の靴に足を入れる気分とは。

 

 男はアルブレヒトの表情を見て手を打った。

「これで決まりだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 既に隣村までの路程の3分の1ほどまで来た。

 4人は小川に沿った道を歩いている。

 太陽はゆっくりと傾いていた。地平線に、不吉な月モールスリーブが満月からほんの少し欠けた姿でぼんやりと浮かんでいる。

 

「そういやあ、俺の名前言ってなかったなあ」

 鞄を持った男は誰ともなしに言って、振り返る。

「ベルトルドだ。よろしく、皆の衆」

 右手を差し出す。

 

 答えたのは残る3人のうち最も背の高い男だった。

「アルブレヒトだ」

 おざなりにベルトルドの差し出した手を握る。

「こっちがルディガーで」

 もう片方の黄色髪の男にあごをしゃくる。

 

「わしはイムラクじゃ」

 赤毛のドワーフががなった。

 さっきからずっとビールで釣られ、前言を翻した己の不甲斐なさを悔いていたのだ。

 

「そうかあ、ところで」

 とベルトルドはアルブレヒトの腰の剣に目を止めて、「あんた剣士かなにかかい?兵隊かな?」と尋ねた。

 

 アルブレヒトは表情を変えずに答える。

「いや、ただの農民だ」

 ベルトルドは目を丸くして、「それがどうした訳で旅なんか?」と続けざまに訊いた。

 

 アルブレヒトは黙りこみ、イムラクが替わりに答える。

「こいつとは、ウィッセンランドの農場で一緒だったんじゃ。こいつが小作人でわしが館の料理人だったんじゃが、その領主というのが……」

「イムラク、黙ってろ!」

 アルブレヒトが鋭く言った。

 

 イムラクは口をつぐみ、アルブレヒトはベルトルドに指を突きつけて言う。

「いいか、俺たちはお前の仕事を手伝ってやるが、お前の親戚になったわけじゃない。俺たちの事情に首を突っ込まんでもらいたいな」

 ベルトルドは両手を挙げて、同意を示す。

 

 イムラクはそれを見て苦々しく思う。

 何故こいつら人間は同じ種族で隠し事をするのか。己のしたことに恥じるところが無いのならば、堂々としていればいいではないか。

 イムラクは己が喋り過ぎたのを、アルブレヒトに咎められたのが気にくわない。いつも、そうなのだ。イムラクは充分に気を付け、文字通り、人一倍自分を戒めているのに、他人にのせられてしまい、そしてノッポの相棒はいつも「イムラク、黙ってろ!」というわけだ。

 

 さらにイムラクの思考はベルトルドの歩き方にまで難癖をつけ始めた。

 

 何故こいつはこんなステップを踏んで歩くのだ。地面を踏みしめてどっしりと歩くことはできんのか。我らドワーフは地に足をつけた堅実な生き方で、山を掘り、岩を砕き、大地を切り開いてきたというのに、後から来た人間はこの男のように、あっちへふらふら、こっちへふらふらと、さ迷い歩いて、これだから人間は身内で殺しあい、勝手に滅びの道を進むのだ。

 

 イムラクの考えはともかく、ベルトルドの歩き方は確かに特徴的だった。踊るように軽快なステップを踏んで、それはまるでこの先に愉快なことでも待っているかのような歩き方だった。

 

 道の左手に一軒の家屋が見えてきた。

「ここはマイヤー爺さんの家なんだが、爺さんは今の時間だと畑かなあ?」

 そう言いながらベルトルドはその家の角で左に曲がった。

「この道が隣村までの近道だ」

 見ると人一人分の横幅しかない畦道がまっすぐ続いている。同時に今まで道と並行して流れていた小川が直角に曲がり、その畦道のすぐ脇を続いていく。

 

 ベルトルドは自信たっぷりに畑と畑の間の細い道を進み、残る3人も1人ずつそれに続く。

 

 イムラクが尋ねる。

「おい、お主が大事そうに抱えとる鞄には何が入っとるんじゃ?」

 ベルトルドは褐色の髪を振って笑いながら、「大したもんじゃあないさ。ただ俺はあんまり他人ってやつを信用してなくてさ、真鍮銭(ガチャガチャ)が入った財布なんかは家に残しとけないんだよなあ」

 

 まったくこれだから人間は!

 疑心暗鬼に駆られ、隣人をも盗人と疑う。なんと愚かしい種族なのだ!

 

 ベルトルドは続ける。

「もちろん山形パンもあるぜ。一仕事終わったらあんたらにも分けてのんびり休憩としゃれこもうや」

 残念なことに、イムラクは既に聞いてはいなかったが。

 

 今度はアルブレヒトが質問した。

「本当にこの道で合っているのか? なにも見えてこないぞ」

「大丈夫さ。信じてくれ」

 しかし疑い深いアルブレヒトは重ねて訊く。

「今俺たちが歩いている道は馬車には細すぎるだろう。いつもはどうしているんだ?」

「先刻のマイヤー爺さんの家を過ぎてもっと行くと隣村とつながるもっと太い道があるんだ。馬車はそっちから来るんだけど、その道で行くとずうっと遠回りになっちゃうからなあ」

「分かった。最後に一つ聞いていいか? 今から行く村はなんて名前なんだ?」

 

 この質問で初めてベルトルドは言い淀んだ。暫くの沈黙の後、今までの快活さとはうって変わった声で答える。

「……名前はないんだ。地図とか、役人の書類とかならムールフェルトの一部分ってことになってると思う」

 

「なぜ同じ村の家を隣村と呼ぶんだ?」

 

 またしばしの沈黙。

 

「なあ」

 とりあえず声を出してみたという風に言った。

「なあ、あんたらが黙ってたいことがあるんなら、俺にもそういうことがあっていいよな?」

「勿論だ」と、アルブレヒトは頷いた。

 

 話を聞いていたイムラクは怒鳴りだしそうだった。

 沈黙の上に沈黙とは!

 

 しかしこの時のイムラクの脳裏からは、既にビールやウィッセンランドの領主の件は綺麗さっぱり消えていた。

 結局この赤毛のドワーフは見たまま、激しやすいが、同時に非常に忘れっぽくもあるのである。

 

「おい、見えてきたぜ」

 再び快活さを取り戻したベルトルドが言う。

 

 確かに遠くに家が何軒か連なって、こじんまりとした集落をつくっているのが分かる。

 長距離を歩いてきた一行だったが、ここで目的地が見えたこともあり安堵の雰囲気が広がった。

 

 

 その時ルディガーの様子がおかしくなった。

 

 

 

 

 

 

 




>登場人物
とりあえず人間とドワーフです。

>帝国(エンパイア)
一応、人類最強の国家。中世ドイツがモデル。皇帝が一人いるが、地方は選帝侯によって治められているので中央集権とは言いがたい。現在の皇帝はカール=フランツ。帝都はアルトドルフ。

>シグマー
帝国の初代皇帝にして守護神にして軍神。象徴は双尾の彗星。ドワーフの王から戦槌ガールマラッツを賜ったことに倣い、信者は戦槌(ウォーハンマー)を武器とする。

>選帝候
皇帝選挙で投票権を持つ世俗の君主。各々が領地を持ち、登場した選帝侯領は南から順にウィッセンランド、アヴァーランド、スターランド。

>ウィッセンランド
帝国の南東部に位置する選帝侯領。住人は気難しいことで知られている。アルブレヒトの出身地。

>アヴァーランド
本作の舞台。肥沃な大地を有し、ワイン、農作物を主要生産物とする選帝侯領。住人は陽気で突拍子のない性格で知られている。首都はアヴァーヘイム。ベルトルドの出身地。

>スターランド
肥沃な農作地であるが、貧農も多い。住人は陰気で迷信ぶかい、田舎者の代名詞として有名。首都はヴルトバート。ルディガーの出身地。

>ズィルバニア
旧ズィルバニア選帝侯領。現東部スターランド。蠢く死体(アンデッド)の跋扈する、帝国最大の治外法権地帯。

>PCの能力値
ベルトルド以外のPCには5回分ゲタはかせて、色々買い物させたり、まあいろいろです。

アルブレヒト(人間の【小作農】)5回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃30┃37┃30┃41┃37┃33┃41┃35┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃12┃3┃4┃4┃0┃0┃3┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能:〈言語:ライクシュピール〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉〈忍び歩き〉〈野外生存術〉〈職能:弓職〉〈てなずけ〉〈水泳〉〈姿隠し〉〈賭博〉〈魅惑〉〈罠設置〉
異能:《強靭》《冷静沈着》《野育ち》《特殊武器:スリング類》
鎧:なし
A・P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:ソード(片手用武器)、スリング

イムラク(ドワーフの【召使い】)5回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃48┃33┃36┃46┃33┃31┃45┃33┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃15┃3┃4┃3┃0┃0┃1┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能:〈言語:カザリッド語、ライクシュピール〉〈常識:ドワーフ〉〈職能:鍛冶屋、料理人〉〈察知〉〈世間話〉〈捜索〉〈打撃回避〉〈手先の早業〉〈値踏み〉〈無駄話〉
異能:《怨恨》《肝っ玉》《頑健》《ドワーフの技》《魔法耐性》《夜目》《逃走!》《強靭》《スタミナ》
鎧:なし
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:肉切り包丁(片手用武器)、縁のない盾

ルディガー(人間の【見習い魔術師】)5回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃26┃28┃27┃34┃31┃36┃41┃32┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃12┃2┃3┃4┃1┃0┃3┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能: 〈言語:ライクシュピール、古語〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉〈学術知識:魔術〉 〈察知〉〈捜索〉〈秘術言語:魔法語〉〈魔風交信〉〈魔力感知〉〈読み書き〉
異能:《強靭》《精神安定》《エーテル順応》《分別》《初歩魔術:秘術》
鎧:なし
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:クォーター・スタッフ

ベルトルド(人間の【家内工業人】)初期
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃37┃36┃32┃36┃36┃26┃32┃37┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃12┃3┃3┃4┃0┃0┃2┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能: 〈言語:ライクシュピール〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉+10% 〈察知〉〈職能:靴屋、仕立て屋〉〈操縦〉〈値切り〉〈値踏み〉〈秘密言語:ギルド語〉〈読み書き〉
異能:《魔法耐性》《精神安定》《交渉力》
鎧:軽装鎧(レザー・ジャーキン)
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体1、両脚0
武器:革裁ち刀(片手用武器)

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