「もう日も暮れる。今夜はここに泊まるか」
アルブレヒトが言った。目の前の看板には「麦と羊亭」とある。下手な、麦の穂と太った羊の絵が描いてあった。二階建て、一階は酒場で二階が宿屋、極めて平凡な酒場兼宿屋と言えよう。日も落ちようとしていた。夜の街道は危ない。人のあずかり知らぬ存在が跋扈している。ここで休むのは当然の選択だろう。
勿論ルディガーは急いでいる。急いでヴルトバートまで手紙を届けようと思っている。しかし、一番気が急いているのは休もうと言っているアルブレヒトだろう。ルディガーはそう思った。自分の傷のために一行の進みをまた遅らせたのである。既に傷は治っていたが、アルブレヒトの後悔は止まないだろう。気にするなと言っても、それは逆にこちらが気を使っているようで、アルブレヒトにとっては嬉しくはないだろう。ルディガーはそう考え、黙っていることにしていた。
彼は、ある違和感を覚えたが、それを気にしている内に仲間が宿に入って行ったので、慌ててその後を追った。
宿屋の横には、一台の屋根付きの荷馬車が停まっていたのであった。
宿屋「麦と羊亭」の一階の酒場は極めてありふれたつくりだった。全部で2、30席というところか。必要ならば、この村の全員が入れるぐらいにしてあるのだろう。今はその半分、10数人の男衆が酒を飲み騒いでいた。奥のカウンターには男がブスッとした顔で座っていた。
「あの娘がよぉ~、俺によぉ~、色目使ったんだぜ。ヘッヘッヘ」
「手前ェなんざお呼びじゃねぇよ。あの娘は俺に惚れてんだからよ。俺の前で大きな尻振ってるの知ってんだろうが」
「お前ぇ、そりゃお前ぇんちの豚と見間違えてるよ」
「違ぇねえ」
「それだって、おめえのお袋よりゃましだぜ」
「違ぇねえ!」
下卑た笑い声と罵声、野卑な冗談に下品なまぜっ返しが飛び交う。こういう場所は苦手だ。故郷に住んでいた頃からずっとそうだった。性格の問題だろう。ルディガーは3人の後に続いて、酒場をキョロキョロと見回しながらそう思った。
アルブレヒトはカウンターの亭主らしき髭を生やした太った男に近づいて言った。
「飯だ、4人分」
「1ペニーの飯と3ペニーの飯がある」
亭主はジロジロと4人の風体を眺めながらそう返した。
「3だ」
アルブレヒトはそう言って全員の分の真鍮銭
「5払う。宿も追加で頼む」
その瞬間、酒場はしん、と静まりかえった。先ほどまで馬鹿笑いしていた男達も、額に汗を浮かべて旅人を注視している。亭主もまた、目を見開いて、客を見つめた。
「なんだ?」
アルブレヒトは不思議そうに見回した。イムラク、ベルトルドも同様だ。ルディガーはそういった出来事に覚えがあった。しかし、ここは
「なんでもねぇ。4でいい。宿込み、飯は上等だな。おいローザ! 上等の飯だ!」
亭主は大声で女中を呼んだ。周囲の客はまだ話を再開しない。じっ、と声を殺して、ルディガーら客の挙動を窺っていた。
「なんだ、不愉快だな」
「本当になんでもねぇ。村のやつらが悪いことをした。おい、お前ら。今日はもう店じまいだ。さっさと帰りやがれ」
亭主がはっぱをかけると、ブツクサ言う者はいるものの、表だって反対する者はおらず、全員がゾロゾロと連れ立って店を出ていった。そして、ガランとした酒場にアルブレヒト達だけが残った。
「俺たち以外の泊まりの客はいるか?」
「もう一組3人組の男の客がいる。珍しいことにな」
亭主はそう付け加えた。珍しいことに、と。なにが珍しいのだろう? 3人組の男がか? それとも2組の客が泊まることか? ──それとも、客が泊まることそのものか。
「おい、ローザ! 上等の飯だ! 早くしろ!」
亭主は再び奥に向かって怒鳴った。アルブレヒトに向き直った。
「あんたら旅人か?」
「そうだ」
「どこに向かってる?」
「シュトライッセンだ」
「泊まるのは一晩だけか?」
「そうだ」
「……そうか」
亭主はホウと息を吐いた。まるで安堵したかのように。
「さっきからなんなんだ、ここは。なにかあるのか?この宿屋に」
「……なにもねぇ。おい、ローザ! いい加減にしやがれ! 早く飯を出せ!」
亭主は奥に向かって三度怒鳴った。しかし、返答はない。食事を作っているであろう音も。なにも音はしない。
「……おい」
アルブレヒトは亭主の注意を引いた。
「奥に行って、その女を急かした方がいいんじゃないのか」
「……ああ。そうだな」
亭主はゆっくりそう言うと、カウンターの奥の扉を開け、覗き込んだ。しばらくそのまま立ちすくむも、やがてゆっくり振り向くと、再びアルブレヒトに向き直った。
「料理……1ペニーの方でいいか? それなら直ぐにできる」
「どうした? 女はいたのか?」
「宿代もいらん。1ペニーでいい。上の客からは3ペニー貰ったが、あんたらからはいらん。迷惑かけたな」
「……そうか。それならそれでいい」
アルブレヒトの質問に答えない亭主に、アルブレヒトも問い詰めづらくなったのだろう。頷き、了解の意を示した。卓上の真鍮銭や銅貨──扱いは同じ1ペニーだ──を掻き集めると、必要な4ペニーだけ置いた。部屋に上げるというのに、宿代はいらず食事代の1ペニーだけというのは破格にもほどがある。よほどなにかがあるのだろう。ルディガーは思った。そして、それはきっと良いものじゃない。
亭主は自分で奥の部屋に入ると、ガチャガチャと音をたてて料理を作り出した。
「なんだか妙な案配だな」
ベルトルドが囁いた。
「うむ。油断は禁物じゃぞ」
イムラクが答えた。
アルブレヒトは振り返って、「どう思う? ルディガー」
ルディガーは考え込んだ。自分が今思っていることを言うべきか、どうか。確証はない。幾つかの事例は、その仮定に反している。それでも言う価値はあるかもしれない。
ルディガーは口を開いた。
「……分からないだ」
「そうか」
アルブレヒトも深くは問い詰めなかった。
4人は、がらんとしたテーブルに席を占めると料理を待った。冷え冷えとした食堂がやたらと広く感じられた。不意に、ルディガーは視線を感じた。
「!」
振り向けば、そこにはなにもない。食堂の隅には、黒々とした影が潜んでいるのみだった。
「どうした?」
「……なんでもないだ」
ベルトルドが、上着の前を掻き寄せながら、「なあ、ここ、なんだか寒くないか」
「暖炉の火が小さすぎるんじゃろう」
イムラクがそう言うと、赤い火がチロチロと燃える暖炉に近寄り、そばの火掻き棒をとった。ガシガシと暖炉を掻き混ぜ、そばに積んであった薪を勝手にバカバカ投入した。
「うむ。これでよし、と」
暖炉の炎は赤々と燃え、火の舌を4人に向けてチロチロと伸ばした。
「……やっぱり寒いな」
ベルトルドが呟いた。
「お待ち」
亭主が、皿を乗せた盆を持ってやって来た。皿には焼いたソーセージと焼かれてなんだか分からなくなった野菜。お世辞にも充分とは言えない。
1日中歩いた4人はガツガツと皿の料理を貪った。あっという間に皿は空になった。誰ともなく、顔を見合せると、酒場の隅の2階へと続く階段に目をやった。その隅には黒々と影が澱み、強くなった暖炉の火のせいで対照的にいっそう暗さが強調されている。
亭主は既に酒場の奥に引っ込んでいる。その前に言い残して、「あんたらの部屋は階段の手前から二番目だ。疲れてるだろう。食ったら皿はそのままでいいから、すぐに部屋に入って休むといい」
誰が最初に階段を上るか、しばし牽制しあい、最終的にイムラクが名乗りをあげた。
「む?」
段に足を掛けると唸った。
「この階段、埃が積もっとる。余程長いこと上っとらんのじゃな」
言われてみれば、階段にはうっすらと埃の膜ができており、そこに──おそらく先に来た客の──足跡が幾つか残っていた。
「だが、こんな辺鄙な村の宿屋だし、仕方ないんじゃないのか?」
ベルトルドが尋ねた。
「だが、宿屋なのに部屋の掃除もしないのか?」
アルブレヒトが疑問を挟んだ。ルディガーもその点は同感だ。あの亭主にしろ、姿の見えない女中にしろ、二階の掃除にすら上がらないということがあるだろうか? ないわけではないかもしれない。ただの無精ということもある。だが、なにか引っ掛かるものをルディガーは感じた。
階段は踏むとギシギシと鳴り、軋んだ。身体の中からザワザワとなにかがざわめく感じがする。不快ななにかが、肌をチクチクと刺すようだ。不意に耳鳴りがした。キーンという音はしばし立ち止まると消えた。目を上げると、他の3人がこっちを見ている。
「大丈夫か、ルディガー?」
「な、なにか『視えた』のか?」
心配そうなアルブレヒトに、怯えたベルトルド。考えてみれば、この仲間たちの中で魔術の素養があるのは自分だけだ。自分がしっかりして、皆に危険を知らせねばならないのに。
ルディガーは首を振った。
「なんでもないだよ」
「そうか」
階段を上がると、ムッとカビ臭い湿気が4人を包んだ。長らく掃除をしていないという推測は間違ってはいないらしい。左手に廊下が延びていた。廊下を進むと、左手にドア。先客の部屋だろう、中からボソボソと話し声がした。右手は板壁。建物の大きさから考えて壁の向こうには部屋があるのだろう。
2つ目のドアが左手にきた。ドアは汚れてくすんだ色合いをしている。アルブレヒトが錆びたドアノブを握った。
「!」
不意にベルトルドが右を向いた。廊下の奥の暗闇を凝視する。
「どうしたんじゃ?」
「いやあ、人の気配を感じたんだが……」
ボリボリと頭を掻いて向き直った。
「勘違いだったみたいだ」
「開けるぞ」
アルブレヒトがドアを押し開くと、蝶番が軋み、キキーッと甲高い音をたてた。開いた先には、暗闇。
イムラクが灯を灯したランタンをかざす。闇が追い払われ、数歩先までは見えるようになった。
板敷きの床は厚い埃で覆われ、空気はジメジメと湿気てカビ臭い。正直あまり良い状態ではなかった。とは言え4人とも似たような状態の寝床にも泊まったことがある。雨風を凌げるだけ充分と言えなくもなかった。
「窓を開けよう」
アルブレヒトが言い、イムラクがランタンを持って先頭に立った。部屋は大体L字型になっており、奥に行くと右手の壁がガクンと曲がり、狭くなっていた。ベッドは1つが入って右手に、3つが左手の壁に縦に連なっていた。奥に、ベッドと壁に挟まれたこじんまりとした窓があった。
イムラクはガタガタとしばし窓と格闘すると、振り返って言った。
「開かん。窓枠が釘づけされとる」
「なんだと?」
近づいて見れば、確かに窓の木枠に太い釘が何本も刺さっていた。これでは空気を入れ換えることもできまい。
「仕方ないな。我慢するか」
そうは言ったものの、湿気た空気以上に、カビ臭い毛布が耐えられなかった。各々荷物から自分の毛布を取り出し、元々かかっていた毛布はどけてひとまとめにしておく。
「しっかし、変だよなぁ」
ベルトルドが呟いた。
「丸っきり手入れしてないかと思えば、毛布が置いてあったり、窓が釘で止められてたりさ」
確かに、嵐の前に窓が外れないように釘で止めたりすることはある。しかしそういったものと、この部屋はなにかが違うような気が、ルディガーはした。なにがとは言えない。ただ、なんらかの邪悪な意図を感じた。それが、先ほどの亭主のものかは分からないが。
一行は、なんとか空気を多少なりとも吸いやすくするために、ドアを開けてまとめた毛布で止めておいた。どうせ鍵が掛からないのだ。閉めても泥棒よけにはなるまい。一応、隣の部屋の物音を気にしてみたが、まるでいないかのように静まり返っていた。
「おい」
不意に声がした。ドアの右手のベッドに寝ていたルディガーはしばらく考えて答えた。
「どうしただ、アルブレヒト」
アルブレヒトがこっちを見た。すでにベッドの1つに寝転がっている。
「なんだ、ルディガー」
「? 今、おらがアルブレヒトに呼ばれたと思っただよ」
「いや、呼んでないが……」
「じゃあ、ベルトルドだか?」
「俺え? 違うよ。イムラクか?」
「なんじゃ、なんの話じゃ」
ルディガーの向かいに空間を挟んで寝ている3人は縦に話し合うが、誰も呼んだという者はいない。
「聞き違いだろう。今日も大分歩いたからな」
アルブレヒトがそう結論づければ、ルディガーとて異論を唱えるわけにもいかなかった。
確かに声がしたと思ったのだが。低い男の声が。思えば、アルブレヒトの声とも少し違ったような気もする。なにかの音と聞き違えた? なにと?
コト。
今度は確かに聞こえた。物音。なにかが動いた音だ。
「……今の音聞こえただか?」
「ん。今度はなんだ」
「音、音だよ。コト、って」
「ふぁ~っ。どうせ鼠かなにかだろ。気にしすぎだよ。眠いから寝させてくれよ」
「ZZZ……」
そうか?確かにそうかもしれない。気にしすぎなのかも。ルディガーは無理に自分に言い聞かせた。おそらく疲れて敏感になっているだけなのだろう。無理もない。このところ、遅れを取り戻そうと急いでばかりなのだから。よし。寝よう。休めば治るだろう。
フッ……。
ランプの明かりが消えた。風もないのに。そもそもイムラクのランタンは覆い付きだ。弱い風では消えない。
「おい、イムラク。油が残っていればつけておいた方がいいんじゃないか。手元が見えないとなにかあったときに困る。泥棒よけにもなる」
「ZZZ……」
「イムラク、寝てるのか……?」
アルブレヒトが困惑した声で言った。
「おい。誰が、ランタンを消した?」
頭をドア側に向けて、ドアに一番近いベッドで寝ているアルブレヒトには足元は見えないのだ。
「おらでも、ベルトルドでもないだよ」
「チッ。じゃあ油が切れたのか。おっちょこちょいな奴だな、まったく」
物音。アルブレヒトがベッドから起き上がったらしい。足音。一歩、二歩、三歩、四歩……。
「ん? おい、なんだ。油が残ってるぞ。なんで、火が消えた?」
「え? でも、風もなかったぜ」
「やっぱりなにか変だよ」
ベルトルドとルディガーもベッドから起き上がった。その時──
ヒュオオオオオオ。
不意にドアから風が吹き込んできた。妙にぬるい風。首元を触って通りすぎていく。同時にドアがギシギシと鳴った。
「なんだ?」戸惑ったアルブレヒトの声。
ギシ。
床が鳴った。暗闇の中、まるで人が歩いているかのような音。
ギシ。
ベルトルドが息を飲む気配がした。
ギシ。
「……誰かいるのか!?」
アルブレヒトが強い声音で問う。
答えは無かった。その代わり。
ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。ギシ。
不意に床が猛烈な勢いで軋み始めた。まるで早足で誰かが部屋を歩いているように。しかし、気配はしない。音のみである。
「誰だッ」
アルブレヒトが叫んだ。
足音は次第に間隔が狭くなっていく。
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ。
ギシッ。
音はピタッと止んだ。
「……なんだ」
「分からん」
暗闇の中でも、ベルトルドとアルブレヒトが邪眼避けの身ぶりをするのが分かった。世間一般の人間は自分の理解を越える現象が起こったとき、神に祈るしかない。神が聞き入れてくれるとも限らないが。
「なにが起きたんだ……?」
アルブレヒトは声を発しながら、ガサゴソと音をたてていた。
ポッ。
ランタンに火が灯った。アルブレヒトはイムラクの荷物から火口箱を探していたのだ。
「ZZZ……」
「ったく。こいつは一人で寝てるし」
アルブレヒトは愚痴を呟くと、部屋を隅から隅まで照らした。特に以上はない。
「大丈夫か。盗られたものはないか」
ベルトルドもルディガーも確認して、「大丈夫みたいだ。全部手付かずだよ」
「そうか。外にも賊はいないか?」
ベルトルドが、おずおずとためらった。やがて意を決してドアから顔を覗かせた。左右をキョロキョロと何度も見直した。
「うーん。いないように見えるけどなあ……」
「そうか。ならよかった」
「でも、暗くてよく分かんないな。灯りがあればいいんだが……」
「ん、そうか」
床に異状がないか確かめていたアルブレヒトがランタンを持って立ち上がった。そのまま、ランプを持ってベルトルドのところへ行こうとした。すると、ベルトルドが急に振り返った。始めは何の気なしに、すぐに驚きの表情に変わり目を見開いた。ルディガーとアルブレヒトをまじまじと見つめている。
「な、なんだ」
アルブレヒトがどぎまぎして尋ねた。
「いや、今、誰かに肩を叩かれたような……お前らじゃないよな?」
「いや、俺たちじゃないが……」
「じゃあ、誰が……?」
ルディガーは背筋が冷えるのを感じた。アルブレヒトがそそくさとベルトルドにランタンを手渡す。ベルトルドはそれで、廊下を照らした。
「……」
ベルトルドは黙っている。
「どうした? なにか見えたか?」
「……」
「おい、どうしたんだ?」
ベルトルドはおずおずと口を開いた。
「お前ら、俺がなに言っても信じるよな?」
アルブレヒトは少し驚いて答えた。
「あ、ああ。当たり前だ」
「本当か?」
「ああ。本当だ」
ベルトルドは少し迷うと、話し始めた。
「……いや、一瞬……ほんの一瞬なんだ、俺がランタンで照らした一瞬だけなんだが……廊下の隅に男が立ってたように見えて……」
「で、どうした?」
「顔は見えなかったんだ。……後ろ姿だけ。でも、壁に吸い込まれて、消えちまった」
ベルトルドはそれだけ言って、振り向いた。
「なあ、信じてくれるよ──」
「どうした?」
「今、お前らの後ろに──」
ベルトルドの顔は恐怖で歪んだ。ルディガーは、脚が震えるのを感じた。前のアルブレヒトも肩を揺らしている。息を吸って、一息に振り向いた。
……背後には、誰もいなかった。
「今、お前らの後ろに一瞬、男が壁に顔を向けて立ってた……本当だって、顔は暗くて見えなかったし……すぐに消えちまったけど……」
ベルトルドはランタンを床に置き、フラフラとベッドに歩いていくと、倒れ込んで毛布を抱えた。
「俺もう無理だ。寝るわ」
アルブレヒトは剣を傍らに置き、立って周囲を見回した。
「異状はないか? ルディガー」
「ん。取り敢えずはなにもないだよ」
うまくエーテルの流れが追えない。なぜだろう。なにかの存在がいるのか?
アルブレヒトはなおも警戒を続けるが、しばらくしてなにも起こらないと分かると、「仕方ないな。俺たちも寝るとするか」
そう言ってベッドに横になり、毛布をひっかぶってしまった。横に剣と弓を置いて。彼も多少は怯えているようだ。武器で立ち向かえる相手かは分からないが。
ルディガーも、まだ気になることはあったが、これ以上なにも起こらないのであれば、とベッドに横になった。いざというときのために、杖をベッドのそばに立て掛けておく。
ふと、寝返りをうった。
男が天井から見下ろしていた。
ルディガーは声を出せなかった。息をすることも、身体を動かすことも。
恐怖で身体が固まっていた。
男は天井に足と手をつき、こちらを睨みつけていた。憎しみ、深い敵意だけがあらわになった視線で。ただ、睨みつけていた。
まだ、若い男だろうか。しかし、顔は紫色に変色し、目が飛び出している。
男はゆっくりとルディガーに迫ってきた。目をそらしたい、逃げたいと思ってもルディガーにはどうしようもない。男の顔が次第に大きくなっていった。
アルブレヒト! そう叫びたいのに口が開かない。声が出ない。彼はもう寝てしまったのか? 助けてはくれないのか?
男が口を開いた。
真っ赤な口、それが血の色であることが分かったのは数瞬後だった。黄ばんだ歯がガチガチと噛み合わされた。
──誰に断って入ってきた!
苦しげな呻き、叫びはルディガーにだけ聞こえた。頭に直接響くような甲高く、また地の底のように重苦しい声。この世の者の声ではない。
──今すぐ出ていけ!
男の顔はなおも迫ってくる。
──ここは俺のものだ!
──出ていけ!!
男の顔がルディガーの眼前いっぱいに広がった。男の口の中がまざまざと見える。その喉の奥、赤黒く広がった地獄の門まで。
男がルディガーに触れる瞬間、ルディガーは気を失った。
>ホラー
人生で初めて書いたホラーです。
あまり恐くないかもしれません。
>パーティ能力値
アルブレヒト
(人間の【無法者】、元【小作農】)9回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃30┃37┃35┃46┃37┃33┃41┃35┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃13┃3┃4┃4┃0┃2┃2┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能:〈言語:ライクシュピール〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉〈忍び歩き〉〈野外生存術〉〈職能:弓職〉〈てなずけ〉〈水泳〉〈姿隠し〉〈賭博〉〈魅惑〉〈罠設置〉
異能:《強靭》《冷静沈着》《野育ち》《特殊武器:スリング類》
鎧:軽装鎧(レザー・ジャーキン)
A・P:頭部0、両腕0、胴体1、両脚0
武器:ソード、ボウ、盾、スリング
イムラク(ドワーフの【召使い】)9回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃53┃33┃36┃46┃33┃36┃45┃38┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃16┃3┃4┃3┃0┃0┃1┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能:〈言語:カザリッド語、ライクシュピール〉〈常識:ドワーフ〉〈職能:鍛冶屋、料理人〉〈察知〉〈世間話〉〈捜索〉〈打撃回避〉〈手先の早業〉〈値踏み〉〈無駄話〉
異能:《怨恨》《肝っ玉》《頑健》《ドワーフの技》《魔法耐性》《夜目》《逃走!》《強靭》《スタミナ》
鎧:なし
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:肉斬り包丁(片手用武器)
ルディガー(人間の【見習い魔術師】)9回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃26┃28┃27┃34┃31┃41┃46┃37┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃13┃2┃3┃4┃1┃0┃2┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能: 〈言語:ライクシュピール、古語〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉〈学術知識:魔術〉 〈察知〉〈捜索〉〈秘術言語:魔法語〉〈魔風交信〉〈魔力感知〉〈読み書き〉
異能:《強靭》《精神安定》《エーテル順応》《分別》《初歩魔術:秘術》
鎧:なし
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:クォーター・スタッフ
ベルトルド(人間の【家内工業人】)4回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃37┃36┃32┃41┃41┃31┃32┃37┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃13┃3┃4┃4┃0┃1┃1┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能: 〈言語:ライクシュピール〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉+10% 〈察知〉〈職能:靴屋、仕立て屋〉〈操縦〉〈値切り〉〈値踏み〉〈秘密言語:ギルド語〉〈読み書き〉
異能:《魔法耐性》《精神安定》《交渉力》
鎧:軽装鎧(レザー・ジャック)
A ・ P:頭部0、両腕1、胴体1、両脚0
武器:革裁ち刀(片手用武器)