火と鋼の道で   作:ナナヒカリ

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激動のシュトライッセン篇開幕。


第五話第一幕・1「街。そしてイヌどもの宴」

「おお」

 

「おお!」

 

「おおおおおお!」

 

「着いたぁーっ! シュトライッセンだーっ」

 ベルトルドが叫んだ。眼前には、石積みの城壁。巨大な都市が一行の目の前に(そび)え立っていた。

 

 確かに、数日前から同じくシュトライッセンを目指している商人、また都市に農作物を売りにきた農民と出会うようになり、シュトライッセンが近いのは知っていた。だが、聞くのといざ目の前にしてみるのとでは、その威容は段違いだ。ベルトルドにしてみれば、人生2度目の大都会。それも、ヴュッペルタルより数等上の、いわば初の"大都市"と言ってもいいほどの都市なのだ、シュトライッセンとは。

 ベルトルドはシュトライッセンのことをほとんど知らない。アヴァー河に面した大都市、そして過去になにか血なまぐさい事件があった都市としてしか、シュトライッセンを理解していなかった。

 興奮ぎみのベルトルドを冷やかに眺めていたアルブレヒトは一言、「なんにせよ、さっさと入ってしまおう」

「ええー。入ったら次のアヴァーヘイムまでは河を上ってくんだろ。じゃあ外からシュトライッセンを見るのはこれが最後になるじゃないか。もう少し感動に浸らせてくれよ」

 

 4人の計画では、シュトライッセンで手紙を渡した後、アヴァー河を往き来する交易船に乗せてもらい──場合によっては雇ってもらい──アヴァーヘイムまで河を遡る。そこからスターランドの首都ヴルトバートまでは旧ドワーフ街道で一直線だ。

 取り敢えず、アヴァーランドさえ越えてしまえば追っ手も来ないだろう。フェリックスがアヴァーヘイムに着いていることを知らない一行は無邪気にそう考えていた。

 

「なに言ってる。アヴァーヘイムの方がさらに大都市だ。そっちをゆっくり見ればいいだろう」

 アルブレヒトはそうベルトルドを急かすと、関所に向けて歩き始めた。イムラク、ルディガー、そしてベルトルドも急いで後に続いた。

 

 関所にいたのは40がらみの太ったあばた面の男だった。4人を一瞥すると、痰を吐き、「身分を証明するものか、手形の類いは?」

 アルブレヒトは憮然として、「そんなものあるわけないだろ」

「じゃあ、無駄だな。帰った、帰った」

「なんだと」

 いきり立つアルブレヒトを前にして、ベルトルドは考えた。変だな。ヴュッペルタルではそんなもの要求されなかったが。

 見れば、近くには困った表情の農民たちがたむろしていた。身分を示せるのは貴族や商人程度だ。それ以外の者は都市の中に入れないということか? 一体なぜ?

 押し問答を繰り広げるアルブレヒトを押しのけて、ルディガーが関所番の前に立った。

「ヘンリエッテ=フォン=バーレンホルツ伯爵夫人宛ての手紙があるんだけども、おらたちを入れなくていいだか?」

 関所番は鼻で笑った。

「おめえらが伯爵夫人だと? 嘘も大概に──」

 そして、ルディガーの差し出した封印付きの手紙を見て、口をポカンと開けた。

「本当に、いいだか?」

 ルディガーは笑って念を押した。

「糞。どこで手に入れたか知らねえが、得したな。てめえらみてえなならず者が入れるような時節じゃねえんだが。ケッ。関料は銀2枚だ」

 顎でしゃくると、一同に通れと合図をした。しかし、銀2枚とは。ボッタクリにも程がある。

 仕方なく、銀2枚を男の胸に提げた箱に入れた。箱の中の音からすると、この足留めにも関わらず、多くの人間が都市に入っているようだ。大儲けだなあ。そんなことをベルトルドは考えていた。関所番の言う「時節」の意味を考えてみもせずに。

 

 関所の門をくぐり、しばし歩けば、シュトライッセンの城壁、そこに開いた門に辿り着いた。デカい。高さ15ヤードはありそうだ。幅は30ヤードもあるだろうか。

 

 そしてなにより、人、人、人!

 立夏の祭りのヴュッペルタルも凄かったが、こちらはなんの祭りもない日でこれだ。近隣の村から収穫物を売ろうという農民や出稼ぎの労働者が山のように詰めかけている。関所で多少は減っているのだろうが、それでもこの量だ。祭りの時はどうなるのか見当もつかなかった。

 

 そこら中で、物売りの声、声、声!

 

「さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 帝都アルトドルフで大人気のラムスター印の熱々パイ、シュトライッセン支店だよ! 食べなきゃ損、損! さあ、買った買った!」

 

「怪我、病気、切り傷、やけど、ものもらい、歯痛、頭痛、じんましん、なんでも効く魔法の薬はいらんかねぇ。ママメルキン印の万能薬。ご家庭に1ダースは必要だよ! どんな病気も飲めばイチコロ! 今ならお得な1ダース11GC(ゴールドクラウン)の徳用パックも売ってるよ!」

 

「エール酒、エール酒はいらんかい!? 今年の造りたてだよ! ズァルフバル・エールにも劣らない逸品だ! さあ呑んで呑んで! 1パイントで真鍮2枚、1パイントで真鍮2枚!」

 

「ここはどこだい!? そう、アヴァーランドさ! アヴァーランドと言えば、ビール! エール酒なんかじゃない、アヴァーランド人ならビールを飲みな! 今年のアヴァーランドビールの黒は絶品だよ! 飲んだら喉が唸ること確実さ! 1パイントで真鍮1枚! 聞いたかい? 1パイントで真鍮1枚、1枚だよ!」

 

「マッチ~、マッチはいりませんか~。マッチ1本1P(ペニ~)。火打ち石より安くて確実、マッチはいりませんか~、今夜のス~プが買えないんです~、どうかわたしのためにマッチを買ってくだ──ケツ触ってんじゃねえよッ、ジジイッ! 燃やすぞ!──マッチ~、マッチはいかがですか~」

 

「茶碗、鍋、瓶、……陶器ならなんでも扱ってますよ。薬瓶から鍋まで、陶器なんでも商ってます。買い取りも致します。欠けた陶器、珍しい陶器、なんでも持っておいでください。欠けた茶碗は真鍮4枚、欠けてない茶碗は真鍮8枚、ヒビの入った鍋は銀貨()1枚、キレイな鍋は銀貨()2枚、さあどうですか」

 

「魚~、魚~、さぁーかなー、魚~、さあーかーなー、魚ぁー、さ~か~な~」

 

「ケープに腰布、ベストはいかがー、人間みすぼらしい格好じゃ女も口説けないよ! 今年流行りの青色、青い布を集めてみたよ! これさえ着れば、君も村の人気者さ!」

 

「オラの村でとれた野菜ですだ! どうですだ、旦那方、奥様方、野菜を買ってくだせえですだ。これが売れないと村は飢え死にですだ! どうか哀れなオラのために野菜を買ってくだせえだ!」

 

 人混みが凄い。半分以上はベルトルドと同じような村から出てきたおのぼりさんだが、中には華麗なドレスをまとった貴族の奥様や、本を抱えた学生らしき者もいる。ベルトルドは圧倒されて、立ち止まった。

「さて、どうするかな……」

 アルブレヒトも思案している。ルディガーに目を向け、「手紙の宛て先はなんだって?」

「ヘンリエッテ=フォン=バーレンホルツ伯爵夫人だよ」

「伯爵ってのは、この前の男爵より偉いのか?」

「……知らないだ」

「ベルトルド知ってるか?」

「いや、俺に聞かれても知らないよ。知ってるとしたらイムラクじゃないのか? 貴族の家で働いてたんだろ?」

 イムラクは豪快に笑った。

「ガッハッハ! そんなもの気にしても仕方ないわ! 全部似たようなものよ!」

 

「……まあいいか。取り敢えず人に聞こう」

 アルブレヒトはそばを通りかかった、本を小脇に抱えた賢そうな若者に声をかけた。

「おい、フォン=バーレンホルツっていう貴族の家はどこにある?」

 若者はジロッとアルブレヒトを見ると、無視して通り過ぎた。ボソッと一言呟いた。

 ──豚の手先が。

 

「……なんだあれは?」

 アルブレヒトは呆気にとられて、ベルトルドに尋ねた。

「さあ?」

 気を取り直して、今度はベルトルドが近くを歩いていた、供を連れた気品のあるデップリ太った中年女性に話しかけた。

「お訊きするんですけれども、フォン=バーレンホルツ伯爵家のお屋敷ってのはどこにあるんでしょうか、奥様」

 中年女性はオホホと笑って、手に持った扇をはためかせた。

「成り上がりのライトドルフ伯の腰巾着になんの用ですの? この街は昔からフォン=アウプトラム家の──」

「奥様いけませんッッ!!」

 執事らしき男が凄い見幕で制した。

 周囲が静まり返った。

 ベルトルドは辺りを見回した。

 周囲の行商人は大声で宣伝するのを止めて、ジイッと中年女性を睨んでいる。ベルトルドはあることに気がついた。睨んでいるのは、よその村から農作物を売りにきた農民ではなく、元からシュトライッセンに住んでいるだろう売り子たちだ。道を歩く市民も足を止めて、婦人を無言で取り囲んでいる。

 中年夫人は扇をパタパタと無駄にはためかせながら、物凄い速さで執事を連れて立ち去った。

「フォン=バーレンホルツ家でしたら、"シャリア通り"の市の中心部にありますわよ!」と、言い残して。

 

「一体なんなんだ?」

「さてな」

 一行は立ち止まって話し合った。取り敢えず目的の場所はなんとなく分かった。だが、余りにも気になることがありすぎる。

「まあ、"シャリア通り"、市の中心部ということは分かったな」

「で、ここは何通りなんじゃ?」

 イムラクの疑問には誰も答えない。仕方ないので、ベルトルドがまた道行く人に尋ねた。

「ねえ、ここって何通り?」

 訊いた相手は二人組の職人らしき男たち。相手によって話し方を変えるのは、最低限の処世術であり、生き残る術だ。アルブレヒトやイムラクの礼儀知らずが異常なのだ。

「"シグマー通り"さ、()()()

「おい、やめろよ」

 片方が答えると、もう片方が答えた男のわき腹を小突いた。

「ここは大門だぞ! 警備兵がそこら中にいるんだ、口を滑らせるなよ!」

「おい、聞かれてるぞ」

「よそ者だ。なんのことか分かりゃしないさ」

 男ら二人はベルトルドに向き直って、「"シグマー通り"だぜ」

 ベルトルドは続けて、「じゃあ"シャリア通り"っていうのは?」

「ああ。市の中心から西の大門に向けて走ってる大通りだ。ここを北に上っていって、どこの通りでも左に曲がれば出られるぜ」

「ありがとう、シグマーの幸あらんことを」

「おうよ。あんたにも幸あれ」

 ベルトルドは待つ一行のもとに戻って、結果を報告した。既に周囲はまた喧騒を取り戻している。アルブレヒトはなにやら苦い顔だ。

「そうか。場所が分かったのはいいが、なにやらキナ臭いところだな。さっさと手紙を渡して引き上げよう」

 ──うーん。今までの経験上、そううまく厄介ごとから逃げられる気がしないんだが……。

 ベルトルドは思ったことを賢明にも口には出さなかった。言ったところでどうにもならないのだから。たとえ、本当にその通りだったとしても。

 

 彼らがシュトライッセンに入った南の大門からの大通り──今仕入れた情報によれば"シグマー通り"──を上がっていくと、左右に槌を携えた銅像が出現した。大都市には必ずあるシグマーの神殿とシグマーの神像だ。巨大な門の中に参拝者が吸い込まれていく。この神殿が通りの名前の由来なのだろう。しかし、それにしては……。

「単純すぎるよなあ」

 ベルトルドは呟いた。

 通りには様々な名前がつけられる。著名な人物や皇帝の名、街の名士の名、特徴的な建造物の名、特に理由のない名……。シグマーの神殿があるから"シグマー通り"、結構なことだが、捻りはない。"シャリア通り"というのもそうだ。まさかシャリアの修道院があるから"シャリア通り"なのだとしたら、これほど詰まらないこともないだろう。

 ──今はな。

 あの男はそう言った。昔は別の名だった? それが変わった? なぜ? 街の雰囲気と関係あるのだろうか。

 

 ちょうどシグマー神殿を過ぎると、右手に太い通りが開けた。先ほどの物売りたちとは違って、れっきとした商人たちの出店や屋台が立ち並んでいる。道は広いのにも関わらず、人でごったがえして通るのにも一苦労しそうだ。

「ひょえーっ、やっぱ大都市は違うなあ」

 ベルトルドは誰ともなしに言った。見るもの見るもの全てが目新しい。白く塗られた石造りの建物、道に突き出す看板の群れ、紐で縛った山積みの本を背中に担いで歩く学者、大勢の召使いを引き連れた太鼓腹の商人、etc.etc.

 先ほどの男の言葉通り、太い市場の通りの反対側、比較的狭い大通りに入っていく。

 多くの都市と同じように、シュトライッセンもまた、中心部から外周へと延びる大通りと、等距離ごとにある環状線が主要な街路を構成している。違うのは、シュトライッセンは北でアヴァー河と接しているため、全体が半円形をしているということだ。

 

 そちらの道は、反対側の商店の多い通りと違い、職人の多い地区のようだ。幾つものギルドが看板を掲げている。その中でも、ベルトルドの目についたのは、青と白色に縁取られた棒に赤い旗と薬壺をつけたもの。「外科医」の印だ。青と白の棒しか許されない半分理髪師の「理容外科医」とは違う、正規の教育を受けたものの印。もちろん、高級な「外科医」といえど、金さえ払えばパトロンの髭も剃るだろうが。

 普通、1つの都市にそれほど多くいるわけではない医者が軒を連ねている。そのことが指す事実は1つだ。

 

 もっとも、ベルトルドはそんなこと気にせずにさっそく見つけた靴屋のギルドに夢中になっていたのだが。

 ──おおー。さすが大都市だぜ。「靴屋」のギルドか!

 

 彼の村は小さかったために、彼は「靴屋」でもあり「靴修理屋」でもあった。しかし本来、この2つの職業は別のものである。ある程度大きな町であれば、それぞれのギルドが存在し、例えば「靴屋」は履き潰した靴を直してはいけないし、「靴修理屋」が新品の靴を商えば罰せられるのだ。ベルトルドはどちらかと言えば「靴修理屋」であり、これは靴が高級品のために、めったに新品の靴を買う──もしくは買える──客がいなかったからである。実際、「靴修理屋」であるベルトルドは「靴屋」に尊敬と憧れの念を抱いているのだ。

 

 そうこうしている内に職人街は終わりを告げ、ゆるく右にカーブしていた通りは、別の大通りと垂直にぶつかった。

 "シャリア通り"である。

 通りに出た途端、目の前を馬車が走り抜けた。

「おおっと」

 忙しく立ち働く、職人、その徒弟である青年、また少年たち。学生の集団、買いつけに訪れた商人、食料品を両手に抱えた召使い、汚臭を発する糞尿採集人、行商、大道芸人、酔っ払い、貴族、もの乞い、見回りの警備隊員、ありとあらゆる社会階層の人々が入れ替わり立ち替わり、目まぐるしく往き来している。

 ──これが大都市か。

 途切れることのない人通り、石畳の街路、しっくいの壁、その他もろもろの文明の香りにベルトルドはくらくらとしためまいを感じた。

 

 右手、通りの反対側に人々が集まっている。見ると、シャリア神の修道院だ。ちょうど昼の食事の配給が始まったところのようで、ボロを着た人々が、薄い──しかし暖かい──スープを求めて群がっている。

 

 ──やっぱり、"シャリア通り"ってのはそういう意味だったのかぁ。ちょっとつまらないなあ。

 ウィットを愛するベルトルドにとっては、あまり評価の高くない名前だ。

 シャリアの修道院を横目に、通りを中心部へと向けて進む。すると、また人だかりのできている建物に当たった。

 

 その建物は大きかった。石造りで、四階建て、間口は4、50ヤードほどもあるだろうか。本を小脇に抱えた者が、次々に入っていく。大きな鉄の門の上には銅板でその建物の名称が打ち付けられていた。

「ええと……シュ、シュトラ……」

「シュトライッセン市立医学大学校、だよ」

 ベルトルドがたどたどしく読んでいると、ルディガーが背後から補足した。興味津々なのだろう、目が輝いている。ベルトルドにも、ようやく最近、ルディガーの感情の起伏が分かるようになってきた。彼は不感症なのではない、ただ著しくその感情を表に表さないだけだ。その瞳を覗き込めば、そこに感動は表れている。

 もっともベルトルドが、しょっちゅうルディガーの目を覗き込んでいるというわけではない。

「へえーっ、医学学校かあ。どうりで医者が多いわけだ。いいなあ」

 ベルトルドは感心した声をあげた。医学の恩恵を受けられるのは、限られた幸運な者だけだ。最大の制約は地理的な側面である。医者が多い土地なら、病気や怪我も診てもらえる。田舎の人間はそうではない。あまりに単純だが、真実の一端である。

 もっとも金額的な側面は別に存在する。そして、貧乏人にはシャリアがいるのだ。彼らは医者に診てもらえない代わりに神に祈る。それで治るわけではない。幸福なまま死ねるだけ、幸せというものだ。神の寵愛しだいでは、治る者もいるのだが。そこはまさしく"神のみぞ知る"というところだ。

 

 シュトライッセン市立医学大学校を背後にした辺りから、街の様子が少しずつ変わってきた。小さな建物が密集していたのが、少しずつ大きな邸宅が増えていく。中庭や厩舎を備えた家もでてきた。人々の装いも華美だったり優雅であるものが多くなる。おそらく目指す市の中心部が近づいたのだろう。

 この辺でもう一回人に訊いてみよう、ということになり、ベルトルドは道を歩く、肩や太ももの膨らんだ服を着ている紳士に話しかけた。

「あの、ヘンリエッタ=フォン=バーレンホルツ伯爵夫人のお宅はどちらにございますでしょうか?」

 紳士は薄汚れた旅人を見て、ふんと鼻を鳴らすと、肩ごしに、持っていたステッキで一軒の邸宅を指した。

 

 それは、近隣の邸の内、もっとも大きな大邸宅だった。

「マジか……」

 ベルトルドの口から吐息が漏れた。

 

 

 

 

 

「ふぅぅ」

 ベルトルドは何度目か分からないため息をついた。

 フォン=バーレンホルツ家のお屋敷の応接間である。壁に飾ってあるのは髭を生やした堂々たる偉丈夫の貴族の肖像画。これは誰かと聞いたら、執事らしき片眼鏡をつけた若く美しい女性が、「現当主のフェルディナント=フォン=バーレンホルツ伯爵様で御座います」

「ははぁ……」

 既に手紙は取り次ぎの執事に渡してしまったので、4人は応接間で召使いの出してくれたワインの杯を傾けている。汚れたズボンで、綿の入った椅子に座るわけにもいかず、厚い絨毯の上で立ちすくみキョロキョロとしていた。壁にかかる武器、美術品、なにからなにまで知らない世界の存在だ。ベルトルドは畏縮して、いつものお喋りも鳴りをひそめていた。

 

 しばらくして、扉が勢いよく開いた。

「おお、よくおいでくださいました!」

 現れたのは、1人の婦人。きらびやかな装飾品を身につけ、手には溢れんばかりの指輪。まだ30代というところか。気品漂う容貌に、機知に富んだ眼差し、上流階級の雰囲気を全身に纏っている。

「ヴュッペルタルのグレートヒェン嬢からの手紙でしたわね! とってもお懐かしくて、わたくし涙が出てしまいましたわ! このところ、ちっとも御便りを下さらないんですもの」

 一方的に喋りたてると、婦人は、黒光りするテーブルを前に座った。

 

「おお、感動して申し遅れました。わたくしが、ヘンリエッタ=フォン=バーレンホルツです。早速ですが、あなた方にお願いする仕事があります」

 

「仕事!?」

 驚いて、ベルトルドは声をあげた。アルブレヒトも同時に言った。

「なんだと?」

 

 目の前の貴婦人は、当然でしょう? という顔をしている。

「あの子──グレートヒェン嬢のことです──からの手紙にありましたわ。『彼らへの便宜をお願い致したく候。彼らは知略、武勇ともに優れており、どんな依頼をも為し遂げること必定なり』とね」

「はあ」

 ベルトルドには相づちを打つことしかできない。

 

「そこで、早速仕事を頼みましょう。昨今、この街に跋扈(ばっこ)する殺人鬼"鉄仮面"を、捕まえて、いえ、この街から排除して頂きたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






>パーティ能力値

アルブレヒト
(人間の【無法者】、元【小作農】)10回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃30┃37┃35┃46┃37┃33┃41┃35┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃2┃13┃3┃4┃4┃0┃2┃2┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能:〈言語:ライクシュピール〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉〈忍び歩き〉〈野外生存術〉〈職能:弓職〉〈てなずけ〉〈水泳〉〈姿隠し〉〈賭博〉〈魅惑〉〈罠設置〉
異能:《強靭》《冷静沈着》《野育ち》《特殊武器:スリング類》
鎧:軽装鎧(レザー・ジャーキン)
A・P:頭部0、両腕0、胴体1、両脚0
武器:ソード、ボウ、盾、スリング

イムラク(ドワーフの【召使い】)10回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃53┃33┃36┃46┃38┃36┃45┃38┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃16┃3┃4┃3┃0┃0┃1┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能:〈言語:カザリッド語、ライクシュピール〉〈常識:ドワーフ〉〈職能:鍛冶屋、料理人〉〈察知〉〈世間話〉〈捜索〉〈打撃回避〉〈手先の早業〉〈値踏み〉〈無駄話〉
異能:《怨恨》《肝っ玉》《頑健》《ドワーフの技》《魔法耐性》《夜目》《逃走!》《強靭》《スタミナ》《反射神経》
鎧:なし
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:肉切り包丁(片手用武器)

ルディガー(人間の【見習い魔術師】)10回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃26┃28┃27┃34┃31┃41┃46┃37┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃13┃2┃3┃4┃1┃0┃2┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能: 〈言語:ライクシュピール、古語〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉〈学術知識:魔術〉 〈察知〉〈捜索〉〈秘術言語:魔法語〉〈魔風交信〉〈魔力感知〉〈読み書き〉
異能:《強靭》《精神安定》《エーテル順応》《分別》《初歩魔術:秘術》《呪文動作迅速》
鎧:なし
A ・ P:頭部0、両腕0、胴体0、両脚0
武器:クォーター・スタッフ

ベルトルド(人間の【家内工業人】)5回成長
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃武┃射┃筋┃頑┃敏┃知┃志┃協┃
┃37┃36┃32┃41┃41┃31┃37┃37┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫
┃攻┃耐┃+┃+┃移┃魔┃狂┃運┃
┃1┃13┃3┃4┃4┃0┃1┃1┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
技能: 〈言語:ライクシュピール〉〈常識:エンパイア〉〈世間話〉+10% 〈察知〉〈職能:靴屋、仕立て屋〉〈操縦〉〈値切り〉〈値踏み〉〈秘密言語:ギルド語〉〈読み書き〉
異能:《魔法耐性》《精神安定》《交渉力》
鎧:軽装鎧(レザー・ジャック)
A ・ P:頭部0、両腕1、胴体1、両脚0
武器:革裁ち刀(片手用武器)




>理容外科医
外科医のマークは史実。床屋の赤、白、青は赤が血、青、白が包帯を指しており、外科医を兼ねていた頃の時代の名残。らしいよ。

>靴屋と靴修理屋
これも中世ヨーロッパの史実。中世は実際、異様なほどに職業が細かくギルドに別れていた。らしいよ。
ウォーハンマーの面白さは、中世の設定の海にどっぷり浸かることにもあると思ったので…史実も適度におりまぜた方が面白く…なるのか?

>歴史成分
服とメシを書くのに割と困る。だれか中世ドイツの風俗に詳しい本とか知ってたら、教えてください。



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