咲-saki-episode タイガー&ドラゴン   作:武田兎

13 / 30
第十二話 集結

「おーい命尾、命尾はいるかーってやっぱりいないか…」

「ふああ…眠いの…」

「ほら、星奈シャキッとしろ!!」

「トマトジュースくれたらシャッキっとできるかもしれないの…」

「お前部長である私に(たか)ろうというのか!?まったくとりあえず控え室に戻るぞ」

「ええ~トマトジュースは?」

「あとだあと!!」

 

地区予選の会場に少し低めの女の子の声が木霊する。その声の主は千葉県ナンバー1の強豪校である館山女子キャプテンの水谷響(みずたにひびき)、その後ろで大きな欠伸(あくび)をしながらフラフラといかにも眠そうな足取りでついてくるのは響と同じく館山女子のレギュラーで先鋒を任されている星奈朱夜(ほしなあけよ)であり二人は一緒にある人物を探し回っていた。その人物とは館山女子が全国にその名を(とどろ)かせるきっかけとなった人物、命尾伊鞠(めいおいまり)であった。

 

「全く星奈だけでも手がかかるのに命尾はどこに行ったんだ?」

「え~私伊鞠ほど我儘(わがまま)じゃないの~」

「どの口が言うんだ!!ど、の、く、ち、が!!」

「ふぇぇ~ほっぺ引っ張らないで欲しいの~」

 

二人で探してても(らち)があかないのでとりあえず二人は予選ではシード校しか与えられていない個別の控え室に戻ると2年で副将の藤林芽衣子(ふじばやしめいこ)が一人落ち着かない様子で自分のメガネを何度も拭いたり部屋の隅から隅を行ったり来たりしていた。

 

「だだいま」

「ふぇ…響ひどい」

「あ、先輩たちおかえりなさい、伊鞠見つかりました?って聞くまでもないですね…」

 

響と朱夜が伊鞠を連れてきていないことを一目見て理解した芽衣子は落ち込む様子を見せながらもさらに焦ってきているようだった。

 

「まったく今朝は珍しくはしゃいでると思ったら急に姿を消してどこかに行ってしまった…」

「はい、私たちがシードでよかったとつくづく実感しました…」

「ああその分アイツ捜索に時間を使えるからな」

「ねえずっと気になってたんだけどなんで芽衣子は伊鞠がいないだけでそんなに焦ってるの?伊鞠がいなくなるなんてよくあることだし、いなくなった今朝もそんなに焦ってなかったの~」

「そ、そうだ!!私も急に命尾を探してこいと藤林に言われて探していたがなんでそこまで真剣に探しているのか聞かされてないぞ!!」

(響…いつもちゃんとしているようにみえるけどやっぱりどこか抜けてるの…)

「それは今回のこの大会が私の予想外のことが起きまくっているからです」

「予想外のこと?」

「それは…」

 

芽衣子がメガネを光らせながら神妙な顔つきで口を開こうとすると控え室の扉が勢いよく開けられた。

 

「せ、先輩大変です!!」

「わあ!?びっくりしたの~」

「お、(おど)かすんじゃない弓塚!!」

「へ?あ、あのーすいません」

「それでどうしたのそんなにあわてて?」

「あ、それが大変なことになってるんです!!はい」

 

控え室に飛び込んできた少女は館山女子唯一の1年生レギュラーである弓塚茜(ゆみつかあかね)が状況がまだ掴めていなく先輩たちの驚きようにキョトンとしていると芽衣子の言葉で我に返り興奮気味に話しだした。

 

「ど、どういうことだ?藤林」

「ああ私が頼んどいたんですよ茜にDブロックの様子を偵察してこいって」

「そうなんですよ藤林先輩ったらひどいんですよ~最初はDブロックの様子を見に行かせて次はCブロックまで…おかげでお昼ご飯食べ損ねちゃいましたよ」

「まったくなの茜!!ここの人達みんな人使い荒いよね~」

「まったくです!!はい」

((こ、こいつら…))

 

響と芽衣子は湧き出る怒りの感情を抑えて再び話を元に戻す。

 

「こほん、それで茜、私は携帯で途中まで聞いたけど先輩たちにもわかるように最初から話してあげて」

「わかりました!!なんと…第三シードの千葉女子大附属が負けたんです!!はい、しかも初出場校に副将で飛ばされて…」

「なんだと!?」

 

今まで命尾を探し回っていて知らなかった響が驚愕(きょうがく)する。

 

「それと第四シードの匝瑳(そうさ)中学も『あの剣崎(けんざき)』がいる木更津女学院に大将戦で飛ばされて負けてしまいました」

「木更津女子学院の剣崎といえば個人戦では常にベスト3に入る強敵だが他の奴らは大したことのない剣崎だけのワンマンチームだったはず…どうなってるんだ今年の大会は!?それで初出場校の名前は?」

「その学校は…」

 

 

「ふあああつまんないなー」

「どうした?やはりあれくらいの相手では物足りなかったか?」

 

もうひとつのシード校である作草部中学は準決勝の副将戦で相手校を飛ばし、いち早く決勝進出を決めその試合を終わらせた大道寺雪乃は控え室で退屈そうに机に突っ伏していて今の率直な感想が口から出ていた。

その言葉を聞いて部長の溝口楓が一年生のルーキーを(いた)わるように話しかける。

 

「それどころじゃないですよ溝口部長、私呆れちゃいました。千葉の麻雀のレベルがこんなに低いなんて…あれじゃあ下手すれば低学年のジュニアの子のほうがいい打ち方するんじゃないですか?」

「…余裕なのは結構だが次の決勝は館山女子が出てくる。今までのようには、」

「わかってますよそれくらい、むしろソレを望んでるくらいですからそれよりいいんですか?」

「なにがだ?」

「決勝戦に勝ち上がって来るのはウチと館山女子と木更津(きさらづ)女学院それと…このままいけば…」

「構わん、むしろ麻雀から逃げてまたのこのこ戻ってきたアイツに遊びと本気の違いを見せつけやれ」

「了解です溝口部長…」

 

待っててねお姉…決勝の舞台でアンタと今のチームメイトの人を本気で潰してあげるから!!

 

 

 

 

『準決勝終了!!Dブロックから決勝に駒を進めたのはなんと初出場の百目木中学が決勝進出決定!!』

 

ひろゆきと天斗は応援席で大河達が決勝進出を決めた場面を見ていた。

 

「はーなんとか勝った~」

「さすが上埜君が教えてるだけあってみんな個性的な打ち方をするね」

「それって…褒めてるんですか?」

「もちろん、これなら解説の仕事も楽しそうだ。じゃあ僕はそろそろ解説の準備をしなくちゃいけないから」

「あ、がんばってくださーい」

 

そういうとひろゆきは天斗のもとを後にし解説室へと移動した。その移動中、先ほどの大河達の事を思い出しながら資料で読んだ館山女子の大将である『あの少女』のことを思い出していた。

 

(上埜君が指導しただけあって初出場と聞いていたがみんな落ち着いてのびのびと打っている。そしてなにより麻雀を楽しんでいる…)

 

だとしたら…いや、だからこそあの子は…命尾伊鞠は危険すぎる…なぜなら彼女はあの赤木さんや天さんと同じ…

 

 

------------------人知の枠を超えた怪物なのだから

 

 

ついに大河達も決勝に進み個別の控室が与えられそこで最後のミーティングを行っていた。

 

「ついにここまで来たね」

「あと一回勝てば全国大会…」

「ここまできたら後は全力を出してやりきるだけです!!」

「よしじゃあ円陣でも組もうか?」

 

辰美の一言でみんながそれぞれの肩を掴み円陣を作る。

 

「いいねやろやろ!!よーしそれじゃあ百目木中麻雀部絶対勝つぞー!!」

「「おー!!!」」

 

大河たちが円陣を作っていたころ後、各ブロックを勝ち上がり決勝へ駒を進めた学校が続々と出揃いソレを伝えるアナウンスが会場全体に響き渡る。

 

-------------------Aブロック

 

『Aブロックからは千葉県最強の名門館山女子!!ここまで一度も大将の命尾選手に回すことなく他校を飛ばし決勝進出!!全国クラスの実力を決勝でも見せつけるのか!?』

 

-------------------Bブロック

 

『決勝戦に一番最初の駒を進めた千葉県第二シード作草部中学!!今年は王者の牙城(がじょう)を崩せるのか!?』

 

-------------------Cブロック

 

『そしてCブロックからはまさかまさかの大逆転勝利!!シード校の匝瑳中学相手に驚異的な追い上げをみせ見事に決勝進出を果たした個人戦インターミドル出場者剣崎選手率いる木更津女学院!!』

 

-------------------Dブロック

 

『そしてDブロックからは千葉女子大付属を飛ばし現れた超新星のダークホース百目木中学が決勝に進出!!この四校で千葉県代表になるのは果たしてどのチームか!?まもなく千葉県インターミドル予選決勝戦の開幕です!!』

 




次からついに県予選編スタートです!!
ご感想、能力の提供ありがとうございます。それが作者の励みやこの能力をいつ使おうかとも妄想力を高めてくれます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。