咲-saki-episode タイガー&ドラゴン   作:武田兎

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第十三話 異質

(この歩いてる時間無駄に緊張してまうなあ…)

 

長い廊下に辰美の軽い足音だけが響き渡る。決勝戦からは対局室も予選とは異なり廊下の一番突き当りの部屋が対局室となっているのだがそこにたどり着くまでの無駄に長い廊下が余計に辰美を緊張させる。

 

(着いた…よし気合入れていくで!!)

 

対局室の扉の前まで到着しパンパン!!と軽く自分の頬を叩くと辰美はゆっくりと扉を開けた。そこには決勝まで上り詰めた各校の先鋒の選手が既に二人席に座っていた。

 

(この人たちが決勝戦の相手…やっぱり強そうやな…でもどんな相手やろうがウチは負けへん!!)

「よろしくお願いします」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「ちょ、ちょっと待ってなの!!」

 

3人が挨拶を終えると入口の扉が勢いよく開けられ入ってきたのは館山女子の先鋒である星奈朱夜であった。

 

「ふぅ…ギリギリセーフなのトマトジュースがなかなか売ってなくて」

「はぁそうなんですか…」

「あ、場決め?じゃあ私これ!!」

(なんやえらいマイペースな人やな…)

 

こうして場決めも終わりついに全国へ切符をかけた戦いが始まった。

 

作草部中学 秋山知由  (東)100000

百目木中学 十和辰美  (南)100000

木更津女学院 三島佳菜子(西)100000

館山女子   星奈朱夜 (北)100000

 

 

試合が始まったのに(ともな)い先鋒戦の様子をテレビで生中継しており大河達も控え室でテレビ越しに辰美の姿を見ていた。

 

「うぅ…まだ自分の出番じゃないのにもう緊張します…」

「そうね決勝戦は今までと比べても空気のピリピリ具合がやばいから見てるこっちも疲れてくるわ」

「そういえば大道寺先輩…十和先輩が試合に行く前になにか話してましたけど」

「ああちょっとしたアドバイスよ…」

「でも先鋒がタツミーでよかったよね?」

「なんで?」

「だって先鋒の人全員みんなおもちがでかいからさあ~もしユッキーが先鋒だったら麻雀どころじゃないもんねえ」

「……」

 

大河が発したその何気ない一言で控え室は対局室に勝るとも劣らない程に張り詰めた空気になった。そして数秒の沈黙の後雪奈が眉間をピクピクとさせながら笑顔で大河に詰め寄る。

 

「あら大河よくそんなこと言えるわね自分だって大したことないくせに」

「少なくてもユッキーよりはあるもん!!それに私は大器晩成(たいきばんせい)型なの!!これから一気に成長するんだから!!」

(でも淡姉を見る限りその見込みは薄そう…っとそろそろ止めないとな…)

 

晶が二人の会話を横で聞きながらやれやれと席を立ち二人の間に割って入った。

 

「もう二人共不毛な争いはそこまでに…」

「「一番小さいやつに言われたくないわ!!」」

「なっ!!」

「アッキ一そんなんじゃ愛しの大沼プロにあったとしてもそんな貧相なおもちじゃ相手にされないんじゃないの?」

 

まさか自分に矛先が向くとは思っていなかった晶は驚いて言葉が出なくなっている間に大河が晶の胸を指差し

小馬鹿にした口調でさらに追撃をしてくる。

 

「そんなことない!!きっと大沼プロは私みたいなまだ発展途上のおもちがきっと一番好きで」

「それもそれでどうなのよ…」

「みなさんちゃんと辰美先輩の応援しましょうよ!!今はそんな話をしている場合じゃないでしょう?」

 

痺れを切らしは白兎が三人を止めに入ると大河達は白兎の体の『ある部分』を凝視すると先程もまでの白熱具合が嘘のように静かになりソファーの上で仲良く体育座りの体制をとり始めた。

 

「あれ?どうしたんですか?みなさん」

「はい…」

「ごめんなさい…」

「年下に年下に負けた…一年前は私のが大きかったのに…」

「ん~?あっ!!試合試合っと」

 

どうして三人が落ち込んでしまったか分からない白兎は今はそのことは忘れ辰美を応援するために再びテレビと向き合い試合を観戦し始めた。

 

 

「それでは本日一日よろしくお願いしますね井川プロ」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

時間は少し戻り先鋒戦が始まる直前解説室ではアナウンサーと今日解説役として呼ばれた井川ひろゆきが試合が始まる前の前口上を始めていた。

 

「さて先鋒戦がついに始まりますけど井川プロから見てこの先鋒戦注目の選手は誰ですか?」

「そうですね…安定した打牌の秋山選手やここまで高火力な和了(あがり)を見せてきている十和選手もいいですがやっぱり館山女子の星奈選手ですかね」

「星奈選手といえば去年からの牌譜を見る限りなんとも不思議な和了(あがり)をするというかしているというか…」

「はい今回も間違いなく『ソレ』が見られると思いますしなにより他の選手がどうやってソレを止めに来るか注目ですね」

 

 

一局目の知由の親を喰いタンで速攻で和了し自分の親番に回した辰美は再び予選で見せた連続和了を始めようとしていた。

 

「ロン、平和(ピンフ)1500」

辰美:{23456四四六七八③④⑤} ロン{1}

 

(きた!!)

(場に本場がついたってことは…)

(ふああ眠いの…)

 

場に本場がついた事で他の学校の選手(星奈を除く)は辰美が予選で見せた連続和了を警戒しどうにかして手を進めようとするがどこの学校も辰美の速さに追いつけずにいる中辰美はドンドンと和了を重ねていく。

 

「ロン平和ドラ1、3200」

辰美:{123678六六七八九[⑤]⑥} ロン{④}

「ツモドラ2、2200オール」

辰已:{7889四五六七七北北北} ツモ{8} ドラ{七}

(やばい早く止めないと…)

「リーチ」

 

知由が焦りから額に汗を滲ませているとついに辰美が決勝戦で初めてのリーチを宣言した。

 

「ツモ6300オール」

辰美:{567888四五六②③⑥⑥} ツモ{④} ドラ{8}

「四本場いくで…」

 

他の選手の選手の顔が青ざめていくなかまだ足りないと言わんばかりに辰美はさらに本場を一本場に追加した。

 

 

場が四本場になる時に館山女子も試合の様子をテレビで観戦していた。

 

「やはり強いなあの先鋒」

「はい、本場ごとにドラが増えて行くというシンプルな能力ですがかなり厄介ですね…」

「本場を重ねるごとに百目木の点数は高くなるのにこっちの打点はドンドン上がらなくなるわけですね」

「それだけじゃない…あの聴牌速度の速さは並みの選手なら流れで一気にやられてしまうだろうが…果たして星奈はどうかな?」

「って部長かっこつけるのも結構ですが伊鞠ちゃん見つかってないんですけど…」

「だ、大丈夫だだだきききっと命尾はヒーローは遅れてやって来るという粋は事をしようといているんだきっと…多分…」

「とか言ってる割には声と手震えてるじゃないですか!!」

 

命尾の行方未だ知れず---------------------

 

 

東2局 四本場 ドラ{中}

作草部中学 秋山知由  (北)89000

百目木中学 十和辰美  (東)131200

木更津女学院 三島佳菜子(南)88300

館山女子   星奈朱夜 (西)91500

 

(よしこの局面も…和了するで)

「リーチなの」

(はや!?館山の人リーチかここはまずは安牌やな…)

「……」

(ってなんで無筋の{6}!?もしかして作草部の人も張っとんのか?)

 

知由のことも警戒しながら辰美は二人にとっての共通安牌を切りその場を凌いだが次の佳菜子が切った捨て牌に辰美は目を疑った。なんと佳菜子が切った牌は二人にとって無筋の{[5]}であったのだ。

 

「え?なんでリーチの一発目に無筋のしかも{[5]}!?」

「ロン8000の四本付なの」

朱夜:{12346789③④⑤西西} ロン{[5]}

「はい…」

(これでよかったんですよね剣崎部長…)

 

佳菜子は先鋒戦の前、部長である剣崎にいくつか作戦を命じられていた。その中の一つが館山女子の星奈に何が何でも最初に振り込め-------------------その時は佳菜子自身意味が分からなかったが作草部の秋山知由が自分が振り込んでいなのにも関わらずとても悔しそうな顔をしているということはきっとこの振込には意味があるものなのだと佳菜子は感じ取った。

 

(くそ先に振り込ませてしまった…マズイな…)

「ふふ…ここからなの!!」

「なんや…一体…」

 

東3局 ドラ{白}

作草部中学 秋山知由  (西)89000

百目木中学 十和辰美  (北)131200

木更津女学院 三島佳菜子(東)79100

館山女子   星奈朱夜 (南)100700

 

(親流れてもうたけどせやかてまだ稼がなあかん…)

「リーチなの!!」

(またリーチかいな!?)

「リーチ…」

(追っかけ!?しかも親リー!!)

 

星奈がさっきので勢いに乗ったのかまたしてもリーチ宣言をかける。ソレを追うように親である佳菜子も追っかけリーチをかける。

 

(きつい状況…普通なら降りるところやけどウチがごっつう稼いでみんなに繋げなああかんのや!!ここはおもいっきて…)

「リーチや!!」

辰美:{567五六七②②④⑤⑤⑥⑥} 打{③}

 

絶好の聴牌(てんぱい)がはいった辰美は二人もリーチしているなどお構いなしにリーチをする。

 

「それ通らないの!!ロン5200!!」

朱夜:{666七八九①①④⑤東東東} ロン{③} 裏ドラ{一}

(くっ!!通らんかったか…)

 

辰美にはこの時振り込んでも仕方ないという気持ちが少なからずあった--------現在2位との点数が3万点以上離れていたため多少の放銃でも大丈夫という甘い気持ちがあったが次の瞬間佳菜子の一言でその気持ち一気に吹き飛んで行った。

 

「それ私もロンです裏ドラ乗って12000」

佳菜子:{一二三三四五七八九④⑤白白} ロン{③} 裏ドラ{一}

「え…?」

 

 

実況室でもこの様子を熱く解説していた。

 

「なんとダブロンを喰らってしまった!!百目木の十和選手これは痛い!!」

「点数的にはまだ序盤なのでなんとかなると思いますがそれよりも…」

「星奈選手のダブロンですね。星奈選手は去年の千葉県予選やインターミドルでもダブロンになる確率が他者と比べて圧倒的に多いですね」

「そうですね。しかもダブロンをする相方は絶対に星奈選手に最初に振り込んだ人となんですよ。そのことから彼女は全国で『吸血姫』の異名を持っているそうです」

「なるほど吸血鬼も血を吸った相手を同じ吸血鬼にするって言いますからね…でもそれって二人の当たり牌が一緒ってことは河を見てば結構待ってる牌が何かわかるんじゃないですか?」

「普通はそうです。捨て牌の情報が二倍あるのでより予想しやすくなるでしょう…けど彼女は違うんです」

「どういうことですか?」

「まあそれは見てればわかりますよ館山女子の全国レベルは命尾選手だけではないということを」

 

さあ上埜くんの教え子はこの状況どう対処する?もし吸血姫に対する打開策がないとすれば優勝は厳しいかもしれないよ?-------------

 

 

 

 




本当はアナウンサーをこーこちゃんでやりたかった…でも書いてるうちに「あれ?こーこちゃんって局アナじゃね?」と思い出したので大幅に変更。こーこちゃんとすこやんコンビ、いつかは絶対に出したいです。
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