咲-saki-episode タイガー&ドラゴン   作:武田兎

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今回少しばかり対局シーンがあるので表記は以下の通りです。
萬子 一~九
筒子 ①~⑨
索子 1~9
赤牌 [五][⑤][5]
字牌 東南西北白発中 



第二話 悪待ち

「ツモ、2000オール」

「ロン、5800」

 

雀荘内に大河の和了を宣言する声が木霊する。

 

「くそ、親流されちゃったよ」

「やっぱり大河ちゃんは強いね~」

「えへへ毎度~」

「……」

 

大河は自分の箱の中にある点棒の多さににやけながら対局前に天斗が言い出したことを思い出していた。

半荘は長くてめんどくさいから東風戦でいいーーーーーーーーーーーーーーそう天斗に言われたとき大河は内心、心の中でほくそ笑んでいた。

 

(私の能力も知らずに東風なんて~♪よーしこのままトップ独走だよ)

 

そして対局は東3局まで終了し勝負はオーラスを残すのみとなった。

 

東4局 オーラス ドラ{2}

(北)大河 31800

(西)おじさんA 26000

(南)おじさんB 12200

(東)天斗(親)10000

 

対局前の大河へ言い放った自信満々セリフとは裏腹に天斗はこのオーラスまでに一度も和了っておらず先ほどの局も対面のおじさんに満貫を振り込んでここまでの順位は最下位である。

 

(よし配牌も絶好調!!)

 

{発発発白白中89④[⑤]⑥東北} ツモ{7} 打{北}

 

大河はこの対局中、{白、発、中}の三元牌がよく配牌に来ている。しかしソレは偶然ではなくらばソレこそが大星大河の能力であり最大の武器である。

三元牌である白、発、中が集まってくる能力ーーーーーーー役牌のみの安手から大三元の役満まで幅広く使えるこの能力は我ながらありがたい力だとつくづく思う。

 

{発発発白白中一789④[⑤]⑥} ツモ{白} 打{一}

 

(よし張った!!これで私の勝ち確だね!!)

 

8順目にして大河は小三元、{中}待ちの聴牌。しかし河には既に一枚中が切られており加えて今までの和了にすべて三元牌が絡んでいる所から天斗も私の能力に気づいてきているだろう。しかし今の私は流れの乗っている、この流れならツモれる自信が大河にはあった。

 

「リーチ!!」

 

場に千点棒が投げられ堂々とリーチ宣言をする。

ツモ和了すれば跳満の手、大河はこのオーラスまでいまだ計り知れない天斗を警戒しここまで一度もリーチをせずに若干観ることに周っていたがもうその必要もない。対局前に感じた威圧感もどこえやら、今まで警戒してきたのがバカらしくなってきた。それどころかこの男は本当に日本のアマのトップクラスの打ち手なのかと疑問に思いはじめるほどだ。

場にリーチ棒が出てそのリーチ棒を眺めてポツリと天斗が呟く。

 

「ここが勝負どころか…」

「もしかして私に追っかけしようとしての?やめた方がいいと思うけどな~もし振り込んだら飛んじゃうかもよ~」

「ふ、飛んじゃうか…関係ないねッ!!リーチだ!!」

(え?この人なんで…)

 

大河の勝利を確信し余裕をみせた大河をよそに天斗も負けじとリーチ棒を場に出し高々と宣言する。この時の天斗の表情を大河はみた。それは追い詰められている人間の表情には決してできることのない表情

 

(なんで笑ってるの…?)

 

点数は圧倒的に私のほうが多いのにどうしてこの男は笑っていられるのだろうか…?

リーチを先にかけ点数でも勝っている大河の方が追い詰められた表情になり先程までの余裕のある顔は消え自分のツモ順となり牌をツモっても自分が和了することより天斗のリーチに当たらないことを考え始めてしまった。

 

「うっ…」(大丈夫だよね?…うん、次で、次で中を引ければ…そうすれば私の勝ちだ!!)

 

そして天斗のツモ順、天斗は牌を引き大河は心の中で早く捨てろ!!ツモ切りしろ!!と心の声が他の人にも聞こえるんじゃないかと思うほど強く念じていたが天斗は大河の願い通りに牌を河に捨ててくれない。まさか…と最悪の事態を予期した大河の額からやな汗が滴り落ちる。

 

「それはこっちのセリフだぜそのリーチはかけるべきじゃなかったな!?なぜなら」

「俺はこういう燃える展開でツモリ負けたことがねえんだよ!」

 

天斗がにやりと笑うとツモった牌を親指で牌を上空に弾き飛ばし、そして卓に懇親の力込め叩きつけた。その勢いでバラバラと天斗の手牌を倒れる。

 

「立直、一発、ツモ、七対子、断公九、裏ドラ2つ乗って8000オールだだ!!」

 

{二二五五七七6633③③⑧⑧}  ツモ{③} 裏ドラ{⑧}

(負けた…くそっ…七対子かやられちゃったなぁ…ん?これって?)

 

天斗のあまりのマナー違反の行為に今まで静かに新聞を読んでいた穏やかな雀荘の店長も流石に天斗を注意するなか、大河は今目の前で起きたあまりにマナーの悪い和了宣言に呆気にとられてしまったが段々と自分の敗北したことに実感を持ち始めると改めて天斗の和了を見るとある違和感がでてくる

 

(負けた…くそっ…七対子かやられちゃったなぁ…ん?これって?)

「フリテン!?なんでこんな待ち!?意味わかんない!!」

 

そう天斗は既に{③}を河に捨てているフリテンの状態でリーチをかけたのだ。七対子は待ちがどうしても単騎待ちになってしまうのでその対局の状況を見て出やすそうな牌を待ちにするのが定石だが、目の前の男はわざわざ自らのツモでしか上がれないフリテンにし、手変わりできないリーチをかけ、単騎待ちという悪待ちの極みをやってのけたのだ。

中学生の自分ですらしないような悪手にやられてしまい憤りを抑えられない大河に店長からのお説教から解放され帰り支度を始めている天斗が諭すように話しかける。

 

「お前と一緒だよ」

「え?」

「お前が三元牌が集まりやすいように俺は待ちが悪ければ悪いほど和了率が上がるってわけだ」

「ならもう一回、もう一回私と打ってよ!!」

「ダメだ今のままじゃ何回やっても同じだよ。」

「じゃあどうすれば打ってくれるの!?」

 

憤りながら懇願する大河に天斗は少し考えてある提案をする。

 

「そうだな…全国大会、もしお前が全国大会に出場できたらまた相手してやる。」

「全国大会…」

「私だって行けるなら行きたいよ…」

「ん?なんだって?っておい!!」

 

小さくポツリとつぶやくと大河は天斗の間からするりと抜けてドアを勢い良く開けて外に走り去って行ってしまった。

 

「行っちまった…」

 

呆気にとられている天斗の背中をトントンと店長が叩く。

 

「天斗君大河ちゃんの場代お支払いね」

「はあ?なんで俺が!?」

「さっき牌を叩きつけた罰だよ、他の雀荘であんなことやったら出入り禁止になるからね」

「くっそ今月ピンチなのにー!!」

もうあの和了方はやめようと心に誓う天斗であったが数日後、再びあのマナーもへったくれもない和了方をして牌を割ってしまい店長に土下座するのはまた別のお話…

 

 

 

 

「あぁもう腹立つ!!なによあいつ偉そうに!!」

 

大河は登校して早々机の上にカバンを置くというよりも叩きつけ、2-2組の教室に大ボリュームの怒声を響き渡らせる。

学校に登校する途中、昨日の対局が頭から離れず何度も電柱にぶつかり腫れたオデコを手で抑えながら乱暴に椅子に座る。その姿はとても花の女子中学生とは思えない。

 

「どうしたの大河そんなに荒れて?」

 

自分の机の前から聞こえる声の主は上原美香。幼馴染で大河のよき理解者でもある彼女しかこのクラスで誰が見ても機嫌が悪そうな大河に平然と話しかけられるのはきっとこのクラスで彼女だけだろう。

 

「別に…なんでもない‥」

 

大河は机の上に頬杖をついて風船のように頬を膨らまし不機嫌そうな顔で外の景色を眺める。

これは何かあったかなと美香は察したがこうなった大河は昔から何を聞いても曖昧な返事しか返してくれないことを知っているので、この重い空気を変えるべく美香は今日の朝に仕入れたとっておきのネタを大河に話すことにした。

 

「あ!!そういえば今日うちのクラスに転校生が来るらしいよ。こんな時期に珍しいよね?大河は男子と女子どっちだと思う?」

「…どっちでもいい‥」

 

こりゃあ相当重症だな。と感じた美香はそれ以上大河に関わろうとせず前を向き読書を始めてしまった。

机に突っ伏し昨日のことを登校中と同じく思い出しているとクラスには段々と登校して来た生徒たちで教室は賑やかになり、あちらこちらからたわいのない会話が聞こえてくる。

その中でクラスのお調子者の男子たちの声が大きく嫌でも大河の耳に入ってくる。

 

「昨日の麻雀プロ決定戦見たか?あの井川プロの国士殺しまじヤバかったよな!?最後はラスからトップになったし」

「まじ痺れたよな!!」

「……」

「ん?どしたの大河?」

 

その言葉を聞こえたのが合図とばかりに大河は無言でスッと立ち上がり不思議そうな顔をする美香を尻目に男子たちの目の前まで近づいていく。

 

「ん?大星もさては昨日の番組見たな!?よしなら俺の神眼で今日のお前の下着の色を」

「ふうん!!」

「小林ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

大河は男子生徒の鳩尾に見事な正拳突きをおみまいした。

 

 

 

 

 

 

職員室からでて目的の教室を目指してこれから担任になる先生の後について廊下を歩いていると、職員室にいた時の静けさはもうなく登校してきた生徒たちの賑やかな声があちらこちらから聞こえてくる。やはり朝の30分という時間で学校の雰囲気が一変してしまうのはどうやらどこの学校でも変わらないようだ。

 

「うちのクラスはまぁうるさいのが多いけど…基本いい子だから、すぐに仲良くなれるよ。」

「はぁそうですか…」

 

私の担任になる先生が歩きながら気さくに話しかけてくれて今のクラスの状況などを話してくれるが、緊張しすぎて全く話が頭に入ってこないまま顔を上げると2-2組とこれから私が1年間生活することになる教室がみえてきた。扉は閉まっていても中からガヤガヤと話し声が聞こえてくる。

先生の言ったとおり賑やかなクラスのようだ。

 

「じゃあ教室に入ろうか?自己紹介をしてもらうから大きな声でね」

「は、はい!!」

 

ガラッと先生が扉を開き教室の教卓へ移動し、私もその後ろをトコトコとついて行く。おそらく私は今何十人もの注目を今浴びているのだろう。おそらくというのは緊張して顔を上げられないので実際のところは分からないからである。まったく本当に自分の引っ込みの思案な性格にうんざりする。

 

「はいはい席についてーほら、大星何やってんの!?早く着席する!!」

「えーでもこいつがーセクハラしてきてー」

「ぐぅ…なんてジョークの通じない女なんだ…だが知ってるぜお前が今だにクマがプリントされたお子ちゃまパンツを愛用していることを、」

「はーい、もう一発ー!!」

「うぐぅ!!」

「小林いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」。

「ほらみんな前に注目!!今日からこのクラスの一員になった十和辰美(そわたつみ)さんです!!」

 

クラス内からいくつも声が聞こえるがこの時私の緊張はピークに達しており、心臓の鼓動を落ち着かせるための深呼吸をするのに忙しく外の声はシャットアウトされていたが先生の自分の名前を呼ぶ声に我に返り決意を固め一歩前に出て勇気を振り絞り震えながら声を出す。

 

「お、大阪から来ました。十和辰美(そわたつみ)っていいます。ど、どどうかよろしゅうおねg」

 

声は裏返ってないだろうか?服装は大丈夫だろうか?という不安は教室の真ん中で男子の胸ぐらを掴んでいる女子の姿を見て、昨晩寝ずに考えていた自己紹介のセリフとともに吹っ飛んでしまった。

 

「ん?なに?どったの?」

 

 

これが後にインターミドルを騒がせる龍と虎の初めての出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が遅れて申し訳ありませんでした。
来年はもっと早く投稿できるように頑張ります。ではみなさんに良いお年を
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