咲-saki-episode タイガー&ドラゴン   作:武田兎

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今回少しばかり対局シーンがあるので表記は以下の通りです。
萬子 一~九
筒子 ①~⑨
索子 1~9
赤牌 [五][⑤][5]
字牌 東南西北白発中 



第七話 設立

朝のホームルームが終了し白兎は晶が今朝持ってきていたおおきな手提げ袋(てさげぶくろ)について尋ねる。

 

「晶ちゃんそれ何?」

「これは白兎に麻雀教えるために家から古い麻雀牌持ってきたんだ…」

「わあ、ありがとう私本物の牌触るの初めてだよ」

「牌の感覚に早く慣れておかないとね…あと役と点数計算も」

「うぅ善処します…」

 

そんなたわいない話をしていると大河が教室に入ってきた。

 

「アッキ一いるー?」

「あ、先輩見てくださいよ晶ちゃんが麻雀牌持って来てくれたんですよ」

「…アッキーもしかしてエスパー?」

「「?」」

「まあいいやじゃあその牌持って放課後私の教室に来てね」

「なんだったんだろ…?」

「さあ…」

 

用が済みさっさと立ち去る大河の背中を二人はただ眺めていた。

 

 

放課後の2年2組の教室には麻雀部員である大河、辰美、白兎、晶の四人の他になんと雪奈の姿があった。

 

「じゃあもう一回話を整理するで」

「うん!!」

「大道寺さんを説得して入部させようとしたら麻雀で勝負して勝ったら入部してくれることになったと…」

「うん!!」

「いやそんな元気よく頷かれても…」

「大丈夫だよほら麻雀牌だってアッキーがこんなこともあろうかと持ってきてたおかげで家に取りに行く手間が省けたし~いやーありがとうあきえもん!!」

「いや、私未来からきた猫型ロボットじゃないから…」

「大丈夫なんか?大道寺さん昔全国ベスト8まで行った人やで?私たちじゃとても…」

「問題ない!!全国っていっても2年も前の話だしそれに麻雀は運の要素が強いからプロでもトップ率は三割くらいだし私たちは三人で向こうは一人だよ何とでもなるって」

「ねえそろそろ始めましょうか?」

 

隅でこそこそと話していた大河達に雪奈が話しかける。

 

「そ、そうやな、はよやろやろ」

「白兎、私の隣でよく見てて…」

「ガッテン承知しました!!」

 

先ほど図書室で借りてきた『サルでもわかる麻雀のルール』という本を手に白兎は晶の隣に座る。

 

「じゃあ最後に確認ね、勝負は半荘一回勝負、私がトップになったら金輪際私に関わらないこと」

「もし私たちの誰かがトップになったら部員になってくれるんだよね?いいの?こっちのが圧倒的に有利だけど?」

「ふふっ、その言葉いつまで言っていられるかしら?」

 

 

東一局 ドラ{発}

辰美(起家)25000

雪奈(南)25000

大河(西)25000

晶(北)25000

 

(大道寺さんもそうやけど大河ちゃんや晶ちゃんも一体どんな麻雀打つんやろう…)

辰美:{二三四[五]⑦⑦⑨5578北西} ツモ{②} 打{⑨}

 

(……)

雪奈:{一四六七七②②③⑧⑧⑨6発} ツモ{南} 打{一}

 

(やったーしょっぱなからいい感じ~)

大河:{九九九⑤⑥⑧123発発中白} ツモ{白} 打{⑧}

 

(さて…元全国経験者の実力いかほどなものか…) 

晶:{七八①①③⑤1499北北西} ツモ{2} 打{1}

 

二巡目に雪奈はドラである{発}を捨て、早速大河が仕掛ける。

 

「ポ、ポン!!」(こんなに早く出るなんてラッキー…二巡目だしまだ二つ持ってないと思ったのかな?)

 

そして大河は早くも{発}ドラ3の{④⑦}待ち聴牌(テンパイ)

 

(大河の能力…相変わらずだけどすごい厄介だな…直撃だけは止めてほしい)

 

しかしそんな晶の願いも虚しく6巡目に{⑦}を切ってしまい満貫の放銃を許してしまう。

 

「ロン!!8000」大河:{九九九⑤⑥⑦123白白} {発発発} 

「大河ー仲間の私が一番点数減ってるんだけど…?」

「ごめんごめん、でも私が和了し続ければ問題なしでしょ?今日はなんだか調子いいみたいだし」

 

そしてそれからも大河は言葉通り和了(あが)り続けた。親での跳満ツモや満貫を晶から和了し東場ではトップ独走状態となっていた。

一方の雪奈といえば直撃はされないが和了れもしない典型的な流れが来ない状態のまま東場は終了してしまい、ここにいる誰もが雪奈の力が二年のブランクにより堕ちてしまったと感じていた。だがしかし南場にて彼女たちは全国経験者の本当の実力を知ることとなる。

 

 

南一局 ドラ {⑨}

辰美(起家)26200 

雪奈(南) 19000

大河(西) 50400

晶 (北) 4400

 

この局は誰もリーチをかけずに場は既に10巡目となり辰美がここで雪奈の自風である{南}を切る。

 

(……)

雪奈:{一一一六八④⑤⑤889南南} ツモ{西}

 

しかしラストのダブ南をスルーしツモってきた牌は{西}、普通ならツモ切りするところだが雪奈はなんとここで{六}を切った。

 

「ツモ七対子(チートイツ)800.1600」晶:{二二七七九九③③⑥⑥99西西}

「えー晶ちゃんこれでも和了なの?」

「これは七対子っていって同じ牌のペアを7つ作ればいいの…」

「へーなんかみんな仲良しさんでいい役だね。」

「うん私も七対子が麻雀の役のなかで一番好き…」

(それにしても今の和了、本当は大道寺先輩に直擊狙いだったのに…西持ってなかったのかな…?)

 

否、雪奈は西を持っていた。

しかし今の局、雪奈は既に勝負を降りていたため自風のダブ南を見送りそして対面の七対子が見えていたため{西}を捨てなかった。言葉にしてしまえば簡単だがテンパイの誘惑を断ち切り卓上をここまで見ることは並大抵な観察眼や実力ではできない。かつて全国を経験した実力は未だ錆び付いていないのだ。

 

「さて私の親ね。あ、その前に大星さんあなたに一ついいこと教えてあげる。」

「いいこと?」

「昔の人の言葉よ。ひとつさらせば自分をさらすふたつさらせば全てが見えるみっつさらせば地獄が見えるってね…」

「なにそれ?」

「麻雀は鳴かないで和了ることが得策ってことよ。もっと伸びそうな手を自分から見限っちゃうなんてもったいないわ。っと私の親番だったわね」

 

南二局 ドラ {北}

 

雪奈:{二三四六七八68⑦⑧②②北} ツモ{7}

雪奈、四巡目にキー牌である{7}を引き入れドラである{北}を切ればタンピン3色の聴牌だがなんと雪奈の捨てた牌はまさかの{②}で雀頭(じゃんとう)を崩し聴牌すら取らず。

 

(私の麻雀は最良を目指す麻雀、配牌から絶対に最高形まで作り上げる絶対に途中で見捨てたり見限ったりしない!!)

 

その思いが通じたのかはたまた雪奈の実力か次巡、雪奈のツモ牌はドラの{北}

 

「リーチ」雪奈:{二三四六七八678⑦⑧北北} 打{②}

(大道寺さんの初めてのリーチ)

(ここは怖いからとりあえずベタオリやな…)

(一発は避けとこ…)

「一発ツモで8000オール、これで私の逆転トップでおしまいね」雪奈:{二三四六七八678⑥⑦⑧北北}

 

みな振り込まんとするが雪奈は考えるだけで最高の形を華麗に和了(ホーラ)する。この和了で晶の持ち点は0となってしまい見事雪奈が逆転トップになり終了した。

 

「なんて麻雀…」

「こりゃあすごいわ」

「さあどうするの?対面の人が箱になっちゃったからこの勝負は」

「すごいすごいすごいすこごおおおおおおおおおい!!!!!」

 

対局が終了し帰ろうとする雪奈に大河は目を輝かせて押し迫る。

 

「な、なによいきなり」

「リーチの前に{②}を二枚切ったって事はわざわざ聴牌崩したの?なんであそこまでじっくり待てるの?どうやったらそんな綺麗な麻雀できるの?ああもうとりあえず凄すぎる!!」

「え?えっとそのわ、私これで帰るから」

「ねえ先輩…対局中の自分が顔どんな顔してたか知ってます?」

「え?」

 

大河の質問攻めを押切り帰ろうとする雪奈に晶が問いかける。

 

「私対面だからよく見えたんですけどすっごい楽しそうでしたよ」

「な、なにをっ!?」

「大道寺さんもうええんちゃうか?素直になっても」

「え?」

「だって麻雀してる時の大道寺さんの顔今まで見た中で一番イキイキしてたで」

「そうですよ麻雀の方は何がすごいかてんでわかりませんでしたが先輩がすごく楽しそうなのはよくわかりましたよ」

「‥…」

 

『あの日』を堺に私は麻雀を人とは打たなくなった。べつに麻雀が嫌いになったワケじゃない。『あの日』と同じようにまたみんなの期待を裏切るのが怖かったのだ。

それからは一人でツモ切りの練習やネット麻雀をしてたけど…今日久しぶりに打ってわかった。やっぱり楽しい、人と打つのってすごい楽しいって…でも私にそんな資格なるのかな…?また麻雀をする資格が…

 

「また…麻雀してもいいのかな…」

 

そう思っていると大河たちに問いかける形で口に出していた。それに対して大河が屈託のない笑顔で返答する。

 

「それを決めるのは誰でもない大道寺さん自身でしょう?他人なんて関係ないよ!!大道寺さんが麻雀をまた打ちたいなら打てばいいんだよ」

 

雪奈はその言葉にハッとした。

そうだ、誰でもない私が決めるんだ。誰かの期待に応える為じゃなくて、私がリベンジしたいんだ!!もう一度全国の舞台に!!

そう心に決めると胸がスーッとしてしてくるのが分かる程爽快な気分となった。

 

「私が…私が入るからには絶対に全国大会出場するわよ!!」

「もちろん最初からそのつもりだもん!!よろしくねユッキー」

「これから仲ようしような雪奈ちゃん」

「ユ、ユッキー!?雪奈ちゃん!?な、なんか照れくさいわね」

「全国…初耳なんだけど?」

「じゃあ私も宮永さんみたいに大活躍できるんだね」

「はいはい、それを言うのはルールを全部覚えてからにしようね…」

 

恥ずかしがりながらも顔を赤らめまんざらでもない顔をする雪奈と全国という言葉に夢膨らませる白兎であった。

 

「まあなんにしても」

「これで麻雀部」

「五人揃ったあああああああ!!」

「よーしじゃあ顧問の先生に挨拶しなくちゃ、顧問の先生は誰かしら?」

「え?」

「え?、ってまさか顧問決まってないの!?」

「や、山口先生ならテニス部と掛け持ちだけどやってくれそうかな~」

「せ、せやな」

「ま、待って!!優秀な指導者がいなくちゃ多分、いや確実にインターミドルなんて無理よ!?」

 

中学生のようにまだ実力的に成熟してない時期はまさに指導者でその人の持ち味を活かすも殺すこともできるといってもいい。ただでさえ強豪(ひし)めくこの千葉県からは1校しかインターミドルに行くことができないのだ。そんな中で2年間のブランク持ちと麻雀全くの素人がいるチームがインターミドルに行くことなど正直論外だ。

 

「そんなこと言ったって…ここら辺で私たちより強い大人て…あ、いた」

 

 

 

 

 

 

「ぶへっくしょん!!なんか悪寒が…風邪でも引いたのかな?」

 

大河が思い当たるその人物とはあの日、大河を雀荘で負かしリベンジを決意させた日本のアマチュアではトップクラスの打ち手、上埜天斗であった。

 

 

 

 

 




作中で雪奈が言っていたセリフは『哭きの竜』で登場したあの人のセリフです。
他の麻雀漫画のキャラクターもこれから出していきたいと思いますのでご感想お待ちしてます。
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