今回は本当は一話でまとめようとしたのですが、思った以上に長くなったので分割しました
思ったより前半の話が多くなったので・・・・
楽しんでもらえたら嬉しいです
血霧が晴れる。レイジは一応に辺りを見渡すが、キャスターの姿はどこにもない。
「逃がしちまったな…」
悔しそうに呟かれたその言葉は、その場にいた者の想いでもあった。しかし発端足るキャスターは逃がしたが、子供たちは守れた。最低限の目的は達したと、レイジは意識を切り替える。
そんなレイジの耳に
「どうかしたのか、ランサー?」
凛としたセイバーの声が届く。視線を向ければ、セイバーが顔に影を宿すランサーに疑問を投げかけている。確かにキャスターを逃がす原因の一端ともいえるランサーの揺らぎ。彼の戦士が戦闘中に見せる揺らぎ。一体何が起きたのかとレイジも気になり、ランサーに視線を向ける。
二つの視線を向けられたランサーは…
「我が主が、危機に瀕している」
陰のある声ですまなさそうに告げる。それは自分が囮として使われたことを指す。それに対する複雑な想いがランサーには、あるのかもしれない。そう感じさせる声音だ。
そしてその言葉を聞き、セイバーの表情も曇る。幾部か間をあけ、セイバーは意を決するように言葉を紡ぐ。
「きっとそれは……きっと、私のマスターの仕業だ」
その言葉を告げる意味を知りながらもセイバーは、共に戦い抜いた同士に告げる。
「ランサー。今すぐ、己が主の救援に迎え」
「騎士王…すまない」
セイバーの言葉にランサーは頭を下げる。そしてその視線は、もう一人のレイジの方に向けられる。
「急いで行ってやれ」
レイジも気負うことなく告げる。その言葉に再び頭を下げ、ランサーは霊体化してその場を去る。その姿をセイバーは、どこか堪えるような表情で見つめる。
「さて、俺もそろそろ帰るか。それじゃあな、セイバー」
何処か気まずい空気を切るためにレイジは告げる。レイジの言葉を聞き、漸くセイバーは迷いを振り切る。
「今回の件……助かった、礼を言う」
頭を下げ、告げられる言葉にレイジはしばし唖然となる。
「やめろって…俺はただ、自分がしたいことをしただけだしよ」
照れくさそうに少し慌ててレイジがセイバーに頭を上げる様にと告げる。レイジにとっては何気なく当然の様に発せられた言葉。しかしそれは、今のセイバーには鋭く突き刺さる。そしてその変化は、レイジにも僅かに感じ取れた。
だからレイジは…
「今のお前の状況はどうであれ、お前は
己の想いを告げる。何と言っていいかわからないが、今告げないといけないと思ったからこそ告げる。その言葉を受け、セイバーの表情は僅かに安らぐ。その表情を見て、どうにか大丈夫だと判断し、レイジは今度こそその場を去る。
森を帰る中でレイジはふとある気配に気が付く。
「ユキヒメ」
《ああ、英霊の気配だ。気配が微睡んでいるから、恐らくアサシンだ》
「一緒にいるのは、マスターか?」
《ああ、そう考えるのが妥当だろう》
「狙いは、セイバーのマスターか?」
《だが、セイバーの帰還を感じ取り撤退しているのだろう》
ユキヒメの言葉にレイジは納得といった表情をする。
――――さて、どうするか?
場所的にも自分が気配さえばらさなければ、ぶつかり合うだろう。このまま戦わずに帰るというのも手だが…
「なあ、ユキヒメ。アサシンの面だけでも拝みに行っていいよな」
《確かに敵の存在を知らないというのは、なかなかに危険だな。ただし隙が無ければ攻撃しない…》
「隙があるなら倒すだろ?」
これによって、レイジの次なる行動が決まった。
森から脱出している中で言峰綺礼の胸の内はある意味で荒れていた。彼は生まれつきナニカがない。ゆえに苦しんでそれでも真っ当に生きてきた。そんな中で彼はこの戦争に選ばれた。そして幸か不幸か彼は、自分と似た生き方をした男衛宮切嗣の存在を知った。ただ違いがあると思うなら、切嗣は何を想い何を得てこの戦争に参戦した。何もなくただ流されるままに参戦した自分とは大きく違う。だからこそその答えを問いたかった。
そして今日、その手足となる人物から攻撃を受けた。効率はなく、むしろ愚行としか言えない行動。なれば、その核には必ずあの男の存在がある筈だと考えた。しかし彼女らは口を割らず、時間切れとなった。
だからこそ、その事に意識を向けていたからこそ、その存在に気が付けなかった。
「アサシンのマスターだな」
「ッ!!?」
意識を向けたとき、敵は真正面に立っている。瞬間、アサシンが己のマスターを護らんと前に立つ。
「セイヴァーか…」
僅かに遅れ、綺礼もまた構えを取る。普通に考えれば自分に勝ち目などないが、それでも答えを得るまで死ぬわけにはいかない。その想いが瞳に宿っている。
――――こいつ…
そんな言峰の瞳を見たレイジは、ほんの一瞬、その姿を幻想する。僅かな幻想。しかし重なって見えた存在が、存在ゆえにレイジの思考が乱れる。
――――アルベリッヒ…
相棒たる少年の故郷で虐殺を犯し、その大切な幼馴染を殺した悪逆の妖魔将。なぜ、目の前の神父の姿と奴の姿が被ったのか、レイジ自身にもわからない。しかし、その乱れは明らかな隙。
その隙をアサシンは、逃さない。常人ではほぼ目視不可の速度で投擲されるナイフ。困惑しながらも迫るナイフを交わしてみせるレイジ。
「綺礼様…今のうちに!!」
躱したと同時に迫る無数のナイフがレイジの動きを押し止め、アサシンはその隙に言峰を逃がそうとする。そして言峰は、その言葉に従う形で森に駆け走る。
「待てッ!!」
なぜ、その姿を見たかをその正体を知らなければならい。そう思い、レイジはアサシンの攻撃をはじきながら言峰を追う。距離にすれば、レイジならば数秒とかからずに追いつけるだろう。邪魔をするアサシンも居場所が割れている以上避けれると踏んでいたが…
「ッ!!?」
《レイジ!!》
完全に死角な後方よりナイフが放たれ、ギリギリで察知したレイジは紙一重で躱す。
――――どういうことだ?
視線を向けた先には、アサシンの姿がある。ゆえにアサシンの攻撃とは思えない。しかし、先ほどの攻撃は紛れもなくアサシンの物。困惑がレイジの足を止める。
――――今度は三方向からだと…ッ!
一閃にて放たれるナイフをはじくが、完全に足止めさせられている。被害を考えなければアサシンを倒せる。しかし、そうなれば明らかにセイバー陣営に目を突けられることとなる。自分の目的を達するためにもそれは避けたい事態だ。
何より…
――――巻き添えで、アサシンのマスターが死んだら話になんねぇ
迫る凶刃をはじきながら、レイジは思考する。どうするべきか、悩む中視界のふちにいたアサシンの姿が霞んでゆく。
「しまっ…!!」
駆けだそうとするが、やはり死角から放たれるナイフが行動を阻害する。すべての攻撃をはじきった時にはアサシンの姿はない。感知して追うにも、結界とアサシンのスキルである気配遮断のせいで上手く感知できない。
「クソッ!!」
《何をしているか、全く!!決断が遅い。そのせいで逃がしてしまったではないか!!》
「わかってるよ…」
ユキヒメの言葉にレイジは深く頭を落とす。言い返そうにも事実なため、何も言えない。このままではまた小言が始まる予感に、レイジは不味いと思う。
「そ、そういえばさ…なんでアサシンのマスターは此処に来たんだろうな?」
《?。セイバーのマスターを狙ったからではないのか?》
「いや、それだったらアサシンだけでいいはずだろ?マスターまで来る必要ねえだろ」
《確かに……何か理由があるのか?》
「
《どうしたのだ?》
「マスター………ああッ!!キャスターのマスター!!やべ、急いで探さねぇと!!」
《キャスターのマスターがどうかしたのか?》
突如声を上げたレイジにユキヒメは、頭をかしげる。
「協会の神父が言ってただろう。キャスターとそのマスターは、子供たちをさらってるって…なら、キャスターのマスターも独自に動いてる可能性があるだろ」
《ッ!!》
レイジの言葉にユキヒメもまたその可能性に気が付く。そして二人の意思が一致すれば行動は早い。即座に魂を感知し、明らかに路地裏人通りの少ない場所に多くの子供の魂と大人の魂。
「見つけたッ!!」
《急ぐぞ、レイジ!!》
レイジとユキヒメの二人は、即座にその場所へと向かう。キャスターが去った今、マスターと合流する可能性が高い。そうなれば、さらわれた子供たちに何が起きるか、想像は難しくない。
急がないと、そう逸る二人の胸の内には、既に先ほどの疑惑が彼方へと消えていた。
少女、遠坂凛は危機に瀕していた。聖杯戦争が始まるため、少し離れた街に母親と共に避難していたが、そこでの学校生活の中で仲良くなった友人が冬木で行方不明となっていることを知った。そしてその誘拐事件に魔術が絡んでいる事を、優秀すぎるがゆえに気がはやった凛は、友を救うため戦場たる冬木へ向かう決心をする。
初めて目にする魔術師としての冬木の地の夜は、未だに未熟な少女には冷たい言いようのない恐怖を与える。それでも勇気を出し、父からもらった魔力針を頼りに魔力の残滓を探した。
そして針が指し示す方に向かい、遂に路地裏の廃棄された店のロビーで友人を見つけた。しかし呼びかけても何の反応もない。どうするべきかと、判断に困っているところに、友人をさらったであろう張本人が戻ってきた。新たな生贄をその手に引いて…
「あれ~?どうしたの、迷子かな」
何処か嬉しそうに、それでいてどこにでもいる好青年のような声音。それが逆に凛の恐怖心を高める。
「ちょうどよかった。今から俺らパーティをやるんだけど、まだ全然人が足んなくてさ。手伝ってよ」
そう言って青年が指さした先には、多くの子供たちの姿。零れる悲鳴はその異様さゆえにこぼれてしまう。青年が差し出す手を払いのけ、その手から逃れどうにか助けようと考える。そうやって冷静に青年を見ると、明らかにその服装に合わず魔術的要素を含んだブレスレット。
原因がわかれば、あとは壊すだけの筈だった…
「なんだ、やっぱ手伝ってくれるんじゃん!!」
凛に間違いがあったとするならば、そのブレスレットの製作者が目の前の青年だと思った事。外道に落ちようが、魔術師の器にて召喚されたキャスターの作った物の前では、凛は余りにも未熟すぎた。
意識が困惑し遠くなっていく。
――――ダ、ダメ…
抗う事の出来ない圧倒的な力の前に意識が完全に沈めかける直前、自身の腕に力強くどこか優しい感覚が伝わる。
――――え?
「あれ…?あんたって、確か…」
不意に二人の視線が、ちょうど真ん中に現れた存在に向けられる。凛は、突然意識がハッキリした事よりも目の前に現れた存在にただ驚き。青年は、現れた存在の正体に気が付き、少し顔を引きつらせる。
そして二人の動きが止まっている間に、乱入者たるレイジは行動を開始する。
「壊れろ!!」
一瞬のまばゆい純白の光が、容易にブレスレットを破壊する。
そして…
「え?」
凛が気が付いた瞬間、自分は先ほどの場所から離れた場所にいた。周りを見渡せば、店にいた子供たちが一か所に集まっている。
「よく頑張った。あとは任せろ」
戸惑う凛の頭に優しく乗せられる手。視線を向ければ、赤い髪の青年がいる。青年は優しくポンポンと軽く自分の頭を撫でると、自分たちを護るように目の前の青年の前に立つ。
「さて、ここでテメェの悪逆も終わりだ」
レイジは冷静にユキヒメの切っ先をキャスターのマスターに向ける。それだけで、何が自分に起きるか察した青年は、神に頼むように告げる。
「旦那…
「ッ!!」
《レイジ!!》
瞬間、青年の手の甲に刻まれた令呪の一つが消えると同時、泥の様に濁った黒い光と共にキャスターが降臨する。
「チィ」
その存在を視認すると同時にレイジが地面を蹴るが、それよりも早くキャスターの生み出した海魔が上よりレイジを踏みつぶす。
「流石、旦那ッ!!」
「いえ、まだです。リュウノスケ、今のうちに引きますよ。此度は運が悪かったと、あきらめましょう」
キャスターの言葉に不満を感じるが、次の瞬間眩い純白の光が海魔たちの山を吹き飛ばす。
「逃がすか、キャスターッ!!」
閃光のごとく迫らんとするレイジの姿に、しぶしぶと納得する。その返答に満足したキャスターは、海魔を放つ。狙いは、レイジではなく…
「ひっ!」
その背にいる子供たち。
「クソッ!!」
狙いを察したレイジは足を止め、後方に迫らんとする海魔を切り伏せる。
「聖処女を偽る
そう告げながらキャスターは多くの海魔を壁として召喚する。
――――建物が壊れるから、さっきみたいな一撃が撃てないことに気づいやがる
閉ざされた空間で、背に護ることの難しさを痛感しながら、レイジはどうするか考える。しかしレイジが答えを出すよりも早く、キャスターは楽しそうに告げる。
「最も、この場を生きて出てこれたらの話ですがね」
「ッ!!テメェ!!」
瞬間的にその意味を察したレイジは、即座に子供たちのいる方向に走る。それと同時にキャスターの姿が店の中から消える。そして轟音とと共に天井が崩れ、大量の海魔たちが落ちていった。
如何でしたでしょうか?
縁が生んだ出会い
果たして、レイジと凛はどうなるのか?
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