今日だけで、一応戦闘開始前まで行きたいので、あと一話は更新したいですね
薄暗い蟲蔵を出たセイヴァーは、蔵の近くに建っていた大きな屋敷に足を運んだ。
「…‥」
屋敷に入った瞬間から臭う。これは、先ほど蟲蔵と同じ香りが漂っていた。
つまりこの場所は
「あの胸糞わりぃ蟲の住処か」
自分の手の中で気を失っている少女に視線を落としたセイヴァーは、この場所は少女にとっては、良い場所ではないのだろうと考える。しかし現状では、この場所以外にはない。
セイヴァーは、静かに蟲の匂いの少ない場所を選んで部屋の中に入っていった。
「‥‥。此処はもしかして、この子の部屋か?」
辺りを見渡したセイヴァーは、部屋の中にある僅かな女の子らしいものを見て、この部屋の主がこの少女であると察した。
ベッドの上に少女を寝かしたセイヴァーは、改めて部屋の中を見渡す。
必要最低限の家具しかなく、少女の意思と言うモノを全く感じない。
唯一ある少女らしいものも、窓際に数個あるだけで、全く使われた様子が無い。
「‥‥」
再び眠っている少女に視線を戻したセイヴァーは、唇を噛み握り拳を握っていた。
本来ならば、部屋のなかに感じるははずの自我が全くない。
それは決してありえない事だ。しかし、この部屋からは少女らしさが全くない。
いや、無いと言うよりも失われたと言った方が正しいだろう。
その事実がセイヴァーを怒らせた。
怒りを押しとどめて、セイヴァーは部屋を後にする。
もしもこの屋敷に、あの蟲の仲間がいたら倒すために、そしてあの蟲の
「三つ・・・いや、四つか?あの蟲以外だと四人の残滓だ。一人は、あの子だとしても・・・少なすぎるだろ」
屋敷の大きさと人数が合わなすぎるなと場違いな感想を抱きながらセイヴァーは、更に集中する。
探すのは、あの蟲の残滓が最も残っている場所。
「見つけた」
目的の場所を見つけたセイヴァーは床を蹴って、目的の場所を目指して走る。その場所は、日の光が全く届かない場所だった。
大きな窓はあるが、遮光性の高いカーテンのせいで全くもって届かない。部屋の中心には、一つの椅子が置いてあるだけの質素な部屋。
「ここで間違いはねえな。始めるとするか」
その部屋唯一の家具である椅子に手をついたセイヴァーは、目を閉じ精神を集中し始める。セイヴァーが集中すると同時に部屋が煌めき始める。
「アインツベル‥‥
魂の残滓を読んでいたセイヴァーに戸惑いが生まれる。しかし疑問を抱きながらも静かに深く潜る。
「ゾォルケン‥‥■の撲滅‥‥聖杯の■■。‥‥‥ダメだ、これ以上は読めない」
セイヴァーが瞳を開けたと同時に部屋の煌めきも消える。セイヴァーの表情は、困惑に染まっていた。
「魂が摩擦しすぎてやがる。もうほとんど読めなかった。読めたのは、今回の戦争の参加者であろう人物と、あの蟲の僅かな記憶だが」
最後の最後の聖杯に関する記憶…狂気の似た歓喜の感情が邪魔をして、全く読めなかった。
何か大切なモノを読めなかった、そんな違和感。しかし、得れなかった事を今更悔いても意味がない。
今ある情報を整理しなければならない。
「えーっと、アインツベルンの陣営に衛宮切嗣って男だろ、言峰綺礼は遠坂時臣の元弟子で、時計塔って言う魔術師の総本山から一人。そして、間桐雁夜があの子を救う為に参戦か…」
ゆっくりと情報を口に出しながら状況を整理していく、その中で最も先に解決しなければならないのは
「やっぱり間桐雁夜だよな。あの子を
考えてもいい案が浮かばない。しかも、どうして自分が
改めて世界の現状を確認した理解した。この世界は、自分が知っている世界とは違う。
完全無欠に異世界だ。
「帰る方法も探さねえといけねえし…やる事が多いな」
いや、自分で口に出した言葉を否定する。自分がすべきとこは、大きく分けて二つ。
一つは、桜を間桐雁夜と再開させる事ともう一つは、自分が帰る方法を探す事。
しかも、帰る方法にはすでに宛がった。
「やっぱり聖杯だよな。俺を呼んだのも聖杯なら帰る方法もきっと聖杯が関係してると考えるのが妥当だよな」
そして、間桐雁夜の方も
「聖杯戦争に参戦してんだから、俺も介入すればいずれは出会うか。確かサーヴァントは、バーサーカーだっけ?」
結局は一つ、聖杯戦争に集結しているのだ。
「悩むまでも思考するまで無いって事か、どう転ぶかは戦争の流れ次第か‥‥やなもんだよな、戦争の流れが全てだなんてよ」
セイヴァーは頭を掻きながら部屋を後にする。部屋を出たセイヴァーにマスターである繋がりが反応する。
「おっ!目を覚ましたか」
少女が目を覚ました事を認識したセイヴァーは、即座に少女の元に向かった。
桜が目を覚ました時、目に付いたのは何時もの薄暗い天井ではなく木の天井だった。
「此処は‥?」
ぼんやりとした意識の中で必死に思考を巡らせるが、全く答えが出ない。しかし意識がハッキリとすると、恐怖の感情が桜を支配した。
―――どうして自分は此処にるの?
今日は一日中蟲の中にいるはずなのにどうして?もしかして、お爺様が此処に?いや、そんな事は絶対に在りえない。
あの化け物は、自分が苦しむ姿を見て歓喜するような存在だ。
ならばなぜ?
終わらない思考の渦。
そんな桜の耳に
「起きたみたいだな」
聞き覚えの無い声が届いた。瞬間、桜を恐怖で身体をこわばらせる。
知らない誰か…自分をいじめる為に呼ばれた存在。
しかし、桜の考えはいい意味で裏切られた。
「初めまして。俺はサーヴァント セイヴァーだ。君の名前は?」
「え?」
ポンと優しく頭に置かれた手から伝わる暖かさと自分の目線に合わせるようにしゃがんで見せてる笑顔。この屋敷ではもう味わえないと思ったモノが桜の目の前にあった。
「サクラ‥‥間桐桜」
「間桐桜か…おしっ!じゃあサクラって呼んでいいか?俺的には、その方が君に合ってると思うんだよな」
「はい。別に構いません。
戸惑いながらも桜はセイヴァーの言葉に答えていった。
「あ、セイバーじゃなくてセイヴァーな」
「
「う~ん、まだ発音しにくいか」
どうにも上手く名を呼べない桜を見たセイヴァーは
「じゃあ、
己の
「レイジさん」
「まあ、さんはいらないんだけど、今はそれでいいか」
まだ腑に落ちない点はあれど、納得したレイジは視線を桜の右手の甲に落しす。
そこには、二つの天使の羽の間に刀剣が描かれた己のマスターとしての証
「あの…お爺様は何処にいるんですか?」
視線を落としていたレイジに桜が震えながら問う。その声音を聞いたレイジは、笑みを浮かべながら
「あ!あの蟲ならたぶん死んだぜ」
「え?」
桜にとって信じられない事実を口にした。
「うそですよね。そんな事って‥」
「信じられないってか…まあそうだよな。でも事実だぜ。現に、桜の前に現れないのはおかしいだろ?」
レイジの言う通りだった。訓練をさぼっている筈なのに…何時もなら不気味な声で現れるはずなのに…つまりレイジが言っている事が真実だと言う事だ。
「どうして…助けてくれたんですか?」
桜の問いにレイジは笑みを浮かべて
「俺がそうしたいと思ったからだ」
理由を口にする。
「じゃあ、もう痛い目を見なくていいんですか?ムシの場所にいなくていいんですか?」
もう無理だと思っていた。もう自分は決して幸せになれないと…もう望めないと思っていた。
突然それが叶ったのだ。戸惑うのも無理はない。
レイジは、桜を優しく抱きしめて
「ああ、もう大丈夫だから。今は、泣いていいんだ」
「ぅぅ」
桜の悲しみを受け止める。
しばらくの間、桜は声を押し殺しながら泣き続けた。
「寝たか」
泣き終えた桜をベットに寝かしつけたレイジは桜の頭を撫でながらそう呟いた。
部屋の電気を消して部屋を後にする。
レイジが向かったのは、屋敷と蟲蔵の間にある庭だった。
そこでレイジは、一度息を吐いたのち
―――ドォッゴン!
持てる力の限りの拳で地面を殴りつける「。
「ざけんなっ!」
荒い息を吐きながらレイジが思い越すは、先ほどの桜との会話。
「あれが女の子のする目かよッ!!」
桜の瞳はまるで人形のように 何も写してはいなかった。
本来ならば、希望や楽しさに染まってもおかしくない筈の瞳には、何もなかったのだ。
しかも、桜はまだ自分を信頼していない。
自分の言葉に素直に従った桜。しかしそれは、ある種の拒絶だ。自分は貴方の言葉に従います、だからこれ以上私の中に入って来ないでください。徹底した線引き…それは桜があの地獄で生きる為に編み出した無意識な方法。真実を希望を知っても尚、桜のそれが失われることないだろう。レイジは、桜の言葉から感じた。
「腹が立つッ!!」
幼い少女を救えない自分の無力さに…幼い少女にそんな運命を与えた世界に…幼い少女の声を聞こうとしなかった大人たちに、全てに腹が立つッ!!
「サクヤさんがいてくれたらな」
思い越すは、自分の剣の師であり、自分の上司の姿。何者にも染まり、誰からも信頼された美しく優しい女性。
「いや、俺がやらねえとな。これでも
それは決意の言葉。
レイジは、一人の少女を救う為に聖杯戦争に参加する決意。
運命の初戦まであと 数時間