庭で怒りを発散したレイジは、眠っている桜の元へ戻ろうと身をひるがえそうとしたと同時に、ふと足を止める。
「‥‥」
足を止めたレイジは、静かに海の方面を見据えている。しばし、その場に立ち止まっていたレイジだが、一息ついた後
「参ったな。血気盛んな奴もいたもんだ」
―――まあ、嫌いじゃねえけど。と呟きながら空中に文字を描く。瞬間、屋敷は淡い緑の光に包まれる。
「よしっと。これで屋敷の防御は大丈夫かな」
緑の光が消えたのを確認したレイジは、桜が眠っている部屋を見て
「サクラ。行ってきます」
今までの疲れを癒すように静かに眠るマスターに一言告げて、レイジは先ほどから発せられている闘気の元へと駆ける。
その場所は人気もない、海に面した倉庫街だった。
「おっ!すでに先客がいるじゃん」
レイジの視線の先には、軽装な姿と二槍を構える騎士と銀髪の美女を背にして立つ、金髪の美しい女騎士の姿。
槍を持つ方が、闘気を発していた方だ。ならば、残りの二人は自分と同じく呼ばれた方と言う事だろう。
「あの二人とは、気が合いそうだ」
そう言いながら、レイジは静かに倉庫街に降り立つ。
「よくぞ来た。今日一日、この町に誘いをかけ続けたものの‥‥どいつもこいつも穴熊を決め込んで、俺の誘いに応じぬ。お前だけだぞ、俺の誘いに応じた猛者は」
そう言いながら長槍を肩に掛けるのは、泣き黒子が特徴的な美麗な男子。その視線は、姫を護る様に立つ青いドレスに騎士の鎧を纏った金髪碧眼の少女に向けられている。
程よく張り詰められた空気。そんな場所に
「いや、後一人。お前の誘いに応じた猛者がいるぜ」
レイジは降り立った。
第三者の登場に、その場にいた誰もがその場所に視線を向ける。
「ほう。それは失礼した」
槍を持つ男は、嬉しそうな笑みを浮かる。
「飛び入り参加だが、構わねえよな?」
「問題ない。もとより、全員倒すのだからな」
「おうおう。気の強いこったな、ランサー」
ランサーとレイジが互いに笑みを浮かべながら話す最中、騎士は自分の背に居る女性に向かって声を発する。
「アイリスフィール。もう少し、下がって下さい。二人を相手取るとなると、そこは危険だ」
「ええ、わかったわ。セイバー」
セイバーと呼ばれた少女の言葉を受け、アイリスフィールと呼ばれた女性はゆっくりと後退する。
「やっぱ、騎士って言う雰囲気だけあって、マスターには優しいんだなセイバー」
「サーヴァントとして、マスターの安全を護るのは当然の事だ」
「全くもっての正論だな。それで、お前は俺の参戦に不服かい?」
「それはない。先ほどランサーが言っていたように、元より全員を倒すつもりだ。それが早いか遅いかの違いだ」
そう言いながらセイバーは、
レイジは、その姿を見て静かに魔力を高める。
(今この場所には…此処にいる四人を除けば、もう四人いるのか。一人はランサーのマスターだろ。残りは二人は、たぶんセイバーの方だな。んでもって、明らかにサーヴァントが一人。こんだけ近くにいるのに、ランサーとセイバーが気がつかないって事はアサシンだな)
魂の感知しながら、今ある状況を整理するレイジ。そんな中、レイジが最も気になったのは
(それにしてもセイバーの後ろに居る女の人、本当に人間か?魂そのものが英霊とは違う形で、人から外れてる。むしろ、器って言った方がしっくりくる。どう言う事だ?)
セイバーの後ろに立つ銀紙の女性。そう言った面に疎い自分でも美しいと感じられる美美貌だが、少々人から外れた気配を感じる。
「処で、貴様のクラスは一体なんだ、乱入者」
思考した居たレイジにランサーの問いが届く。
「確かに。理性があると言う事は、少なくともバーサーカーではない」
「それに対魔力を持つ我らの前に出てきたのだ、キャスターと言う事もあるまい」
「アーチャーは既に登場しているとすれば、残すクラスはライダーだけ。つまり、ライダーって事かしら」
アイリスフィールの言葉にセイバーとランサーも一時は同じ結果に至ったのだが、目の前に居る彼を見ていると、その考えが間違いだと思わざる得れない。
薄い赤髪に赤い目。黒いドレスのようにも見える奇妙な服を身に着けてながらも、全く違和感がない所を見るに、かなり着込んでいるのであろう。それに何よりも、纏う気が全くの異質だ。その雰囲気は、ライダーと言うよりも自分達三騎士に近い。
ランサー達からの問いにレイジは、先ほどとは別の意味で思考する。自分の利点の一つとも言えるクラス名。此処で嘘をつき、戦場を惑わせるのも一つの策であろう。
(いや、それはねえはな)
浮かび上がった考えを否定するレイジ。そんな戦い方は自分にも
故に、真実を話そう。
「俺のクラスは、救済者セイヴァー。俗に言う、エクストラサーヴァントだな」
「「「!!」」」
レイジの告白にその場にいた全員が驚愕する。
「そんな。エクストラサーヴァントだなんて」
そんな中、ひときは驚くアイリスフィール。その表情は驚きやある種の恐怖に染まっている。
そんなアイリスフィールの耳に
「大丈夫です、アイリスフィール。先ほど誓った、貴方は死なない。私がこの剣に掛けて護ると言ったのだから」
凛としたセイバーの言葉が届く。その言葉にアイリスフィールの動揺はなくなり。静かにセイバーを見据える。
「ええ、そうだったわよね。ごめんさい、セイバー。私‥あなたを」
「いえ、そんな事よりも命令をアイリスフィール」
「わかっているわ。セイバー!!私に勝利を!!」
「ええ、必ず」
瞬間、暴風とも取れる風がセイバーを中心に吹きすさぶ。
「そう言うとこだ。セイヴァーよ、貴殿が何者かは知らぬが、此処で消えて貰う」
そう宣言するセイバー。その手はには何も持っていない筈だが、確かに感じるのは魔力。つまり
(風を使って剣を隠してるのか)
その答えに辿り着いたレイジ。
「ふん。確かにセイバーの言う通りだな。どちらにせよ、貴様らを倒さねばならないのだからな」
ランサーもまた、静かに二つの槍を構える。その二人の姿を見たレイジは、静かに右手を前に出す。
誰もが、その行為に疑問を持つ中で、レイジは小さく呼ぶ。
「こい」
レイジの言葉と共に、白い光が手の中に集まり、一つの形を生み出す。レイジの手に現れたのは、一本の大太刀だった。雪の結晶の様な鍔とまるで濡れているかのような波紋が刃に奔っている。
「綺麗」
その刀を見たアイリスフィールは、無意識にそう言った。だが、その言葉の通り、レイジの持つ刀は、戦う為と言うよりも美術品としての価値の方が高そうだ。
「流石は、エクストラと言ったところか。まさか、そのような武器だとはな」
「ええ全くです」
レイジの刀を見たセイバーとランサーは、綺麗と思うと同時に刀の本質を感じ取る。その刀自体が宿す魔力と雰囲気は正に桁違い。
レイジは刀を肩に担ぎながら、敵である二人を見据える。
「まあ、この戦争に参加したんだ。互いに思うところあっての事だろう。俺を見て疑問やらなんやらがあると思うが」
レイジはそう言いながら刀を前に突き出す。
「こっから先は、
ある意味挑発とも取れる言葉。その言葉を聞いた二人は、静かに闘気を纏わせながら答える。
「「望むところ!!!」」
「そうこなくちゃなッ!!」
その場を沈黙が支配する。誰もがただ、目の前の敵たちを見据える中。アイリスフィールが、まるで祈る様に手をきつく握った。
それが合図となった。
「「「はあッ!!!」」」
倉庫街のほぼ中央で三人の刃が、今交わった。
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