Fate/Zero~絶望を切り裂く閃光~   作:スペル

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バトル、バトルな第四話です
楽しんでくれたら嬉しいです!!


第四話 三つ巴

レイジ・セイバー・ランサーの三人の矛が交わる少し前。倉庫街の一つのコンテナの上に、セイバーの本物(・・)のマスターである衛宮切嗣が戦況を見渡している。

 

『どうしたしますか?』

 

インカムから聞こえる舞弥の声。突然、その存在を告げたエクストラサーヴァント セイヴァーに対する事で在るのは、切嗣自身が理解している。一度、息を吐いた切嗣は、暗視スコープを除ききながら、作戦を伝え始める。

 

「其方で、セイヴァーのマスターらしき人間はいるか」

 

『いえ、此方にそれらしい影はありません』

 

「そうか‥」

 

舞弥の報告に切嗣は、感情を感じさせない声で頷く。

 

「現状、ランサーのマスターを優先する。舞弥、北東側倉庫の上にいるランサーのマスターを視認できるか?」

 

『いえ、此方側は死角になっていて、視認できません』

 

「了解…」

 

『ただちに、移動を開始します』

 

『ああ、たの…いや待て!!舞弥、クレーンの上だ」

 

舞弥の提案に賛同しかけた切嗣の視界に、あるモノが映りこむ。

 

『了解…あなたの読み通りでしたね』

 

「ああ、そうだな」

 

三騎の戦場を一番見渡せるであろう、クレーンの上に黒いローブを纏い骸骨の覆面で素顔を隠したサーヴァント、アサシンがそこにいた。

その存在を認識した、切嗣の表情が歪む。唯の使い魔ならば、此処まで表情を歪めることはなかっただろう。情報を入手するために使い魔を寄越すのは、当然だ。

しかし、それが先日敗北し消えたアサシンなら話は別だ。

 

「チィ、やはり教会もグルか‥」

 

今この場でランサーのマスターを射殺するのは簡単だが、そうすればアサシンに自分の場所を教えるモノである。いくら白兵戦が弱いサーヴァントと言えど、生身の人間である切嗣には、十分に脅威だ。

 

「舞弥、引き続きアサシンの監視を頼む。僕は、ランサーとセイヴァーを見る」

 

『了解』

 

インカムからの連絡がなくなり、切嗣は戦場に意識を向ける。そこには、今まさにぶつかり合う三騎の姿。自分が呼び出したサーヴァントの姿…全くもって彼女の事を信頼していない切嗣だが、その実力だけは評価していた。故に、そう簡単に敗ける事はないだろうと。

 

「…‥お手並み拝見と行こうか、可愛い騎士王さん」

 

切嗣の呟きは闇に紛れ、誰にも聞こえる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ中央で交わった、大太刀に長槍そして不可視の剣。金属同士がぶつかり合い、その音が辺りに響く。互角…その光景を見ていた全ての人物がそう評す中、歴戦の猛者である彼らは、別だった。

せり合う己の武器と敵の顔を見据えながら、セイバーとランサーの意識はレイジの足元に向けられている。

 

―――本当に僅か、僅かだが、明らかにセイヴァーの方が速かった。

 

つま先だけの僅かな距離だが、確実な事実に二人は身構える。それと同時に、レイジのがランサーの槍に添わせるように刀を走らせる。

 

「ッ!!」

 

槍をレールの様にして狙うは、手首。それを察したランサーは、即座にその場から一歩下がる。標的を失くした一撃は、コンクリートの地面を容易く砕く。轟音と共に宙を舞う破片、その中でランサーが見たのは衝撃の光景。

 

―――バカな!!‥既に構えて

 

視界に映るのは、既に刃を己に向けるセイヴァーの姿。不味いと思うよりも早く、レイジの刃が迫ろうとした刹那、その身をコマの様に回転させる。そして鳴り響くのは、不可視の剣との激音。

 

―――速いッ!!

 

完全に意識外からの強襲にも拘らず、やすやすと間に合わせるその速度にセイバーが驚こうとするが、それよりも早く、二人を突きささんと赤い槍が穿たれる。

 

「くぅ‥」

 

追撃を諦め、即座にその場から大きく離れるセイバー。対するレイジは、槍の下に潜り込むように身体を屈め、そのままに長物使い独特の安全圏に身をすべり込ませ、そのままに、体を捻り一閃。

 

「オラァッ!!」

 

「グゥ‥」

 

しかし、ランサーも方片方に持つ短槍で受け止める。だが、その威力の高さにグラつく様に後方に大きく間合いを取る。

 

「これが、サーヴァントの戦い…」

 

時間にしてみれば三十秒程のやり取り、その次元の違いにアイリスフィールは、無意識に汗を流す。

 

―――強い

 

それが武器を合わせた三人の共通認識。その中でレイジは、冷静に二人の真名を暴こうとする。

 

―――二槍であそこまで戦える英雄はそう多くない筈だ…それにあの黒子

 

必死に聖杯から与えられた情報から正体を暴こうとするが、それはイコール意識を外すと言う事だ。そんな隙を逃すバカは、この場にいない。

 

「考えごととは余裕だな、セイヴァー!!」

 

サーヴァントの中で最速の者だけが与えられるクラス 槍兵(ランサー)。その速度を持って一気に間合いを詰める。

 

「はッ!!」

 

気迫と共に放たれる突きをレイジは、冷静に刀で叩き落とす。赤い長槍が地面に叩き付けられるが、その時には既に槍を手放したランサーが短槍を構え更に地面を蹴る。

 

―――貰ったッ!!

 

体勢が大きく崩れた今、防御の時間はない。そう確信するが、レイジは驚きの行動に出る。

 

「ふぅ」

 

零れる息と共に、大きく広げた足をランサーの方に大きく動かす。そしてそれに連動して、レイジの体勢が崩れたものから、下段から振り上げるのもに変わる。

その動作にランサーが驚きを露わにする。間合いは、完全にレイジのもの

 

――やられる。そう思ったランサーの耳に凛とした声が届く

 

「私を忘れて貰っては困る」

 

その言葉と共に二人が感じたには、風。レイジは、即座にその場をから退避、そしてランサーも大きく足に力を籠め、後方にバックステップ。

瞬間、上より不可視の斬撃が二人の合間に放たれる。轟音と土煙がその場を包み、三人の視界が奪われる。

誰もが、先に見つけた方が勝つと認識。そしてそれを成したのは

 

「貰ったッ!!」

 

セイバーだった。土煙の中、己のスキル直感が、敵の姿を認識する。振り下ろされる一撃に、影は振り向きざまに答える。

 

「それは俺のセリフだ」

 

―――しまっ

 

レイジより発せられた一言。と同時に、一閃が放たれる。しかし鳴り響いたのは、人を斬った音ではなく、金属同士がぶり借り合う音。

 

―――鎧に当てさせたのか

 

完全に狙いを外されたレイジは、追撃を仕掛ける為に踏み込もうとするが、視界の端に不規則な動きを見せる煙を見つける。

 

「やっべ」

 

視界に納めると同時に、即座に土煙の外に移動するレイジ。そして先ほどレイジの心臓があった部分を赤い槍が貫く。

ランサーの攻撃を躱したレイジに、追撃を仕掛ける様に右側からセイバーの斬撃が襲いくる。

 

「はっ」

 

迫る不可視の剣に己の刃をぶつけて受け止めるレイジ。甲高い音が鳴り響く。

 

「ッ!!」

 

拮抗し合う中で、レイジの刃を受けたセイバーが何かに気がついた表情を見せる。同時、レイジが己の刀を縦に構える事で、セイバーの剣を下に反らせ、そのままにセイバーの首元目掛けて一閃。だが、片腕を剣から外し、鎧籠手でその一閃を受け止める。

 

―――やはりこの男、キレや剣速はかなりの腕だが…威力はさほどない

 

―――これは、完全に見切られてんな

 

互いに思考するその中で、低空で何かが空を裂くを音が二人の耳に届くと同時に、二人はその場で跳ぶ。通り過ぎたのは、下段狙いで放たれたランサーの一撃。土埃から、姿を見せたランサーは、宙に浮く二人目掛け黄色い短槍を放つ。

 

「借りるぜ」

 

「な…」

 

迫るランサーの一撃を前に、レイジがそんな言葉を呟く。何を?とセイバーが問う前に剣を持つ方の手を掴みとり、後ろの短槍にぶつける。攻撃を弾いたレイジは、そのままランサーの方を正面にする様に身体を回転させる。連動し、前かがみになっていたセイバーをランサーの方に投げ飛ばす。

 

「「ぐぅ!!」」

 

ぶつかり合った両者が声を漏らす。そして二人の視界に映りこみのは、大きく上段の構えを構え終えたレイジの姿。

 

―――勝った

 

そうレイジが判断した刹那、大量の石つぶてと土煙そして暴風が襲いくる。

 

「うおッ!!」

 

空中で踏ん張りがきかなかったレイジは、風の勢いに逆らえずに数メートル後退する。

視界が晴れた先には、同じ様に飛ばされたのかランサーが、セイバーから数メートル離れた場所に居る。つまり、先ほどの風を起こしたのはセイバー。

だが、そんな事よりもレイジの意識を占めていたのは、舞う暴風と土煙の中で視界が奪われる刹那に見た輝き。

 

―――黄金の光‥‥もしも、セイバーの奴が戦術的(・・・)に剣を隠したんじゃなくて、真名がばれる事を恐れて隠したんだとしたら‥‥剣を見ただけで正体(しんめい)が分かるほどのビックネームで、黄金の光を携える(つるぎ)

 

知っている。聖杯から受け取った知識の中で、該当する英雄が一人いる。

だが、彼は男性だったはず。その思い込みが己の判断を否定しようとしたが

 

『いい?一番怖いのは、先入観で物事を決めつける事よ。決めつけるからこそ、答えへの選択肢が減る。でも逆に、決めつけなければ無限に近く選択肢の輪が広がるのだから』

 

ふと過る師匠の言葉が、それを阻止する。

そうだ先入観で考えるな、逆転的な発想でもいいから考えろ。

 

―――あの王(・・・)がいた時代に、女性の地位は低かったはず…なら、性別を偽って王を名乗ってもおかしくはない

 

確信を得るには、もう一度見るのが得策。そうレイジが判断すると同時にランサーの声が届く。

 

「見事だ。よもや、名もかたれぬ戦いに誇りも何もないと思っていたが、此処まで熱くなれるとは…ともかく賞賛を受け取れ、セイバーにセイヴァーよ」

 

賞賛。正にそれ以外の何物でないモノが発せられる。

 

「それはこちらのセリフだぞ、ランサー。貴殿の名を知らぬとは言え、その槍捌きを持っての賛辞…私にとっては誉れだ。ありがたく頂戴しよう。そして‥」

 

「ああ…」

 

セイバーとランサーの視線がレイジに向けられる。視線を向けられたレイジは、不敵に笑って見せる。

 

『じゃれ合いはそこまでだ、ランサー』

 

「ランサーの‥マスタ―!!」

 

突如、戦場に響く男の声にアイリスフィールが反応する。

 

『戦いを無闇に長引かせるな。そこにいる、セイバーとセイヴァーなるサーヴァントは難敵だ…速やかに排除せよ。宝具の開帳を許可する』

 

ランサーのマスターの言葉に、セイバーとレイジの表情がこわばる。そう、如何に先ほどの戦いがいかに高次元であろうと、宝具を使わなければ、全力とは言い難い。それほどまでに強力なのだ。神話の時代を生き、その英雄の伝説が形となった奇跡と言われる宝具は。

 

マスターの命令を受け、ランサーが不敵に笑う。

 

「了解した。我が主よ」

 

その言葉と同時に、ランサーの持つ赤い長槍を覆っていた布が消える。

 

「そう言う訳だ。此処から先は、()らせてもらうぞ、セイバーとセイヴァーよ」

 

不敵な自信を見せるランサーに

 

「上等ッ!!」

 

レイジも笑みを持って返す。そして、レイジの言葉に呼応するように彼が持つ刀が、一瞬純白に光り輝いた。

 

戦況が、第二幕にもつれ込む。




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