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レイジ・セイバー・ランサーの三人の矛が交わる少し前。倉庫街の一つのコンテナの上に、セイバーの
『どうしたしますか?』
インカムから聞こえる舞弥の声。突然、その存在を告げたエクストラサーヴァント セイヴァーに対する事で在るのは、切嗣自身が理解している。一度、息を吐いた切嗣は、暗視スコープを除ききながら、作戦を伝え始める。
「其方で、セイヴァーのマスターらしき人間はいるか」
『いえ、此方にそれらしい影はありません』
「そうか‥」
舞弥の報告に切嗣は、感情を感じさせない声で頷く。
「現状、ランサーのマスターを優先する。舞弥、北東側倉庫の上にいるランサーのマスターを視認できるか?」
『いえ、此方側は死角になっていて、視認できません』
「了解…」
『ただちに、移動を開始します』
『ああ、たの…いや待て!!舞弥、クレーンの上だ」
舞弥の提案に賛同しかけた切嗣の視界に、あるモノが映りこむ。
『了解…あなたの読み通りでしたね』
「ああ、そうだな」
三騎の戦場を一番見渡せるであろう、クレーンの上に黒いローブを纏い骸骨の覆面で素顔を隠したサーヴァント、アサシンがそこにいた。
その存在を認識した、切嗣の表情が歪む。唯の使い魔ならば、此処まで表情を歪めることはなかっただろう。情報を入手するために使い魔を寄越すのは、当然だ。
しかし、それが先日敗北し消えたアサシンなら話は別だ。
「チィ、やはり教会もグルか‥」
今この場でランサーのマスターを射殺するのは簡単だが、そうすればアサシンに自分の場所を教えるモノである。いくら白兵戦が弱いサーヴァントと言えど、生身の人間である切嗣には、十分に脅威だ。
「舞弥、引き続きアサシンの監視を頼む。僕は、ランサーとセイヴァーを見る」
『了解』
インカムからの連絡がなくなり、切嗣は戦場に意識を向ける。そこには、今まさにぶつかり合う三騎の姿。自分が呼び出したサーヴァントの姿…全くもって彼女の事を信頼していない切嗣だが、その実力だけは評価していた。故に、そう簡単に敗ける事はないだろうと。
「…‥お手並み拝見と行こうか、可愛い騎士王さん」
切嗣の呟きは闇に紛れ、誰にも聞こえる事はなかった。
ほぼ中央で交わった、大太刀に長槍そして不可視の剣。金属同士がぶつかり合い、その音が辺りに響く。互角…その光景を見ていた全ての人物がそう評す中、歴戦の猛者である彼らは、別だった。
せり合う己の武器と敵の顔を見据えながら、セイバーとランサーの意識はレイジの足元に向けられている。
―――本当に僅か、僅かだが、明らかにセイヴァーの方が速かった。
つま先だけの僅かな距離だが、確実な事実に二人は身構える。それと同時に、レイジのがランサーの槍に添わせるように刀を走らせる。
「ッ!!」
槍をレールの様にして狙うは、手首。それを察したランサーは、即座にその場から一歩下がる。標的を失くした一撃は、コンクリートの地面を容易く砕く。轟音と共に宙を舞う破片、その中でランサーが見たのは衝撃の光景。
―――バカな!!‥既に構えて
視界に映るのは、既に刃を己に向けるセイヴァーの姿。不味いと思うよりも早く、レイジの刃が迫ろうとした刹那、その身をコマの様に回転させる。そして鳴り響くのは、不可視の剣との激音。
―――速いッ!!
完全に意識外からの強襲にも拘らず、やすやすと間に合わせるその速度にセイバーが驚こうとするが、それよりも早く、二人を突きささんと赤い槍が穿たれる。
「くぅ‥」
追撃を諦め、即座にその場から大きく離れるセイバー。対するレイジは、槍の下に潜り込むように身体を屈め、そのままに長物使い独特の安全圏に身をすべり込ませ、そのままに、体を捻り一閃。
「オラァッ!!」
「グゥ‥」
しかし、ランサーも方片方に持つ短槍で受け止める。だが、その威力の高さにグラつく様に後方に大きく間合いを取る。
「これが、サーヴァントの戦い…」
時間にしてみれば三十秒程のやり取り、その次元の違いにアイリスフィールは、無意識に汗を流す。
―――強い
それが武器を合わせた三人の共通認識。その中でレイジは、冷静に二人の真名を暴こうとする。
―――二槍であそこまで戦える英雄はそう多くない筈だ…それにあの黒子
必死に聖杯から与えられた情報から正体を暴こうとするが、それはイコール意識を外すと言う事だ。そんな隙を逃すバカは、この場にいない。
「考えごととは余裕だな、セイヴァー!!」
サーヴァントの中で最速の者だけが与えられるクラス
「はッ!!」
気迫と共に放たれる突きをレイジは、冷静に刀で叩き落とす。赤い長槍が地面に叩き付けられるが、その時には既に槍を手放したランサーが短槍を構え更に地面を蹴る。
―――貰ったッ!!
体勢が大きく崩れた今、防御の時間はない。そう確信するが、レイジは驚きの行動に出る。
「ふぅ」
零れる息と共に、大きく広げた足をランサーの方に大きく動かす。そしてそれに連動して、レイジの体勢が崩れたものから、下段から振り上げるのもに変わる。
その動作にランサーが驚きを露わにする。間合いは、完全にレイジのもの
――やられる。そう思ったランサーの耳に凛とした声が届く
「私を忘れて貰っては困る」
その言葉と共に二人が感じたには、風。レイジは、即座にその場をから退避、そしてランサーも大きく足に力を籠め、後方にバックステップ。
瞬間、上より不可視の斬撃が二人の合間に放たれる。轟音と土煙がその場を包み、三人の視界が奪われる。
誰もが、先に見つけた方が勝つと認識。そしてそれを成したのは
「貰ったッ!!」
セイバーだった。土煙の中、己のスキル直感が、敵の姿を認識する。振り下ろされる一撃に、影は振り向きざまに答える。
「それは俺のセリフだ」
―――しまっ
レイジより発せられた一言。と同時に、一閃が放たれる。しかし鳴り響いたのは、人を斬った音ではなく、金属同士がぶり借り合う音。
―――鎧に当てさせたのか
完全に狙いを外されたレイジは、追撃を仕掛ける為に踏み込もうとするが、視界の端に不規則な動きを見せる煙を見つける。
「やっべ」
視界に納めると同時に、即座に土煙の外に移動するレイジ。そして先ほどレイジの心臓があった部分を赤い槍が貫く。
ランサーの攻撃を躱したレイジに、追撃を仕掛ける様に右側からセイバーの斬撃が襲いくる。
「はっ」
迫る不可視の剣に己の刃をぶつけて受け止めるレイジ。甲高い音が鳴り響く。
「ッ!!」
拮抗し合う中で、レイジの刃を受けたセイバーが何かに気がついた表情を見せる。同時、レイジが己の刀を縦に構える事で、セイバーの剣を下に反らせ、そのままにセイバーの首元目掛けて一閃。だが、片腕を剣から外し、鎧籠手でその一閃を受け止める。
―――やはりこの男、キレや剣速はかなりの腕だが…威力はさほどない
―――これは、完全に見切られてんな
互いに思考するその中で、低空で何かが空を裂くを音が二人の耳に届くと同時に、二人はその場で跳ぶ。通り過ぎたのは、下段狙いで放たれたランサーの一撃。土埃から、姿を見せたランサーは、宙に浮く二人目掛け黄色い短槍を放つ。
「借りるぜ」
「な…」
迫るランサーの一撃を前に、レイジがそんな言葉を呟く。何を?とセイバーが問う前に剣を持つ方の手を掴みとり、後ろの短槍にぶつける。攻撃を弾いたレイジは、そのままランサーの方を正面にする様に身体を回転させる。連動し、前かがみになっていたセイバーをランサーの方に投げ飛ばす。
「「ぐぅ!!」」
ぶつかり合った両者が声を漏らす。そして二人の視界に映りこみのは、大きく上段の構えを構え終えたレイジの姿。
―――勝った
そうレイジが判断した刹那、大量の石つぶてと土煙そして暴風が襲いくる。
「うおッ!!」
空中で踏ん張りがきかなかったレイジは、風の勢いに逆らえずに数メートル後退する。
視界が晴れた先には、同じ様に飛ばされたのかランサーが、セイバーから数メートル離れた場所に居る。つまり、先ほどの風を起こしたのはセイバー。
だが、そんな事よりもレイジの意識を占めていたのは、舞う暴風と土煙の中で視界が奪われる刹那に見た輝き。
―――黄金の光‥‥もしも、セイバーの奴が
知っている。聖杯から受け取った知識の中で、該当する英雄が一人いる。
だが、彼は男性だったはず。その思い込みが己の判断を否定しようとしたが
『いい?一番怖いのは、先入観で物事を決めつける事よ。決めつけるからこそ、答えへの選択肢が減る。でも逆に、決めつけなければ無限に近く選択肢の輪が広がるのだから』
ふと過る師匠の言葉が、それを阻止する。
そうだ先入観で考えるな、逆転的な発想でもいいから考えろ。
―――
確信を得るには、もう一度見るのが得策。そうレイジが判断すると同時にランサーの声が届く。
「見事だ。よもや、名もかたれぬ戦いに誇りも何もないと思っていたが、此処まで熱くなれるとは…ともかく賞賛を受け取れ、セイバーにセイヴァーよ」
賞賛。正にそれ以外の何物でないモノが発せられる。
「それはこちらのセリフだぞ、ランサー。貴殿の名を知らぬとは言え、その槍捌きを持っての賛辞…私にとっては誉れだ。ありがたく頂戴しよう。そして‥」
「ああ…」
セイバーとランサーの視線がレイジに向けられる。視線を向けられたレイジは、不敵に笑って見せる。
『じゃれ合いはそこまでだ、ランサー』
「ランサーの‥マスタ―!!」
突如、戦場に響く男の声にアイリスフィールが反応する。
『戦いを無闇に長引かせるな。そこにいる、セイバーとセイヴァーなるサーヴァントは難敵だ…速やかに排除せよ。宝具の開帳を許可する』
ランサーのマスターの言葉に、セイバーとレイジの表情がこわばる。そう、如何に先ほどの戦いがいかに高次元であろうと、宝具を使わなければ、全力とは言い難い。それほどまでに強力なのだ。神話の時代を生き、その英雄の伝説が形となった奇跡と言われる宝具は。
マスターの命令を受け、ランサーが不敵に笑う。
「了解した。我が主よ」
その言葉と同時に、ランサーの持つ赤い長槍を覆っていた布が消える。
「そう言う訳だ。此処から先は、
不敵な自信を見せるランサーに
「上等ッ!!」
レイジも笑みを持って返す。そして、レイジの言葉に呼応するように彼が持つ刀が、一瞬純白に光り輝いた。
戦況が、第二幕にもつれ込む。
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