Fate/Zero~絶望を切り裂く閃光~   作:スペル

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なかなか話が進みませんが、とりあえず楽しんでくれたら嬉しいです


第五話 乱入者は高らかに

時間は少し遡り、遠坂邸。その地下に、第四次聖杯戦争のマスターの一人遠坂時臣(とおさかときよみ)が優雅に椅子に座っている。

 

「綺礼…それで、セイヴァーのサーヴァントと言うのは事実かね」

 

誰もない筈の場所で問いかける時臣。本来ならば答えが帰って来る筈が何のだが‥

 

『はい、師よ。アサシンからの映像によりますと、セイバー、ランサーとも打ち合う所からかなりの高位の英霊かと』

 

時臣の近くに置かれているそれから、声が発せられる。本来はレコードを聞くためのそれが通信機として機能している。声の主の名は、言峰綺礼(ことみねきれい)

アサシンのマスターで、公式では既に敗退しているが、裏で時臣をサポートしている。

 

「まさかエクストラとは‥‥」

 

言峰の言葉を受け、僅かに汗を流す。しかし、それも僅かな時間の事。『常に余裕を持って優雅たれ』と言う家訓に従い、自分の心を持ちなおした時臣は告げる。

 

「綺礼…セイヴァーの情報を集めてくれ。いかにイレギュラーな存在とは言え、我らが王に勝てる訳がない」

 

『…承知しました、師よ』

 

その言葉を最後に通信が途切れる。沈黙が支配する中、己が右手に宿る令呪を撫でる。

 

「必ず根源に至って見せる」

 

それは魔術師としては、鏡の様な存在であろう。だからこそ、彼には人として大切なモノが欠落してしまったのかもしれない。

 

魔術師と人が、全く違う生き物である。その最たる例として…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランサーの宝具の解放。先ほど以上に張り詰めた緊張感が場を支配する。不敵に笑うランサー、血気盛んに笑みを返すレイジ、凛と場を見渡すセイバー。三者三様の反応の中で、まるで買い物に出かける様な気軽さでランサーが地面を蹴った。

 

「ッ!!」

 

狙いはセイバー。迫る赤き長槍に対して不可視の剣をぶつける。高く鳴り響く金属音そして…

 

「なっ!!」

 

「フッ」

 

まるで縛りを解かれた様に荒れ狂う風。先ほどまでセイバーの剣を隠していた風が解かれ、黄金の輝きが夜の倉庫街を照らす。

 

―――風王結界(インビジブル・エア)が解れた

 

驚愕するセイバーとしてやったりのランサー。さまざまの考えを二人は思考するが、即座にその場から離れる。理由は簡単、これは三つ巴の決闘なのだから。二人がその場から離れた直後、空間そのモノを切り裂かんとする斬撃が、場を斬る。

 

「チィ」

 

攻撃を躱されたレイジは、己の右後方に刃を奔らせる。ぶつかり合うのは、レイジの刃とランサーの槍。

 

―――やばっ、体勢が不利だ

 

即座に自身の不利を察したレイジは、ランサーの槍を往なし回避する。だが、ランサーの横側を抜ける様な構図。交差する中で、レイジは確かに見た。流麗な顔からは想像出来い程の獰猛なランサーの笑みを。

 

―――罠ッ!!

 

笑みの意味を察したレイジの俄然には、何時の間にか封の解かれた黄色の短槍。距離にしてみれば、躱せるかギリギリ。()った、ヤバイ。互いに対極の感情をこぼす最中にも、二人の身体は動く。勝つために生き残るために。レイジは、ギリギリまで身体を逸らし、槍の軌道上から回避する。対するランサーは、より早く槍を突き刺す。

 

「なにッ!!」

 

「あぶ‥」

 

ほぼ地面に転がる形でレイジが、ランサーの槍を回避した。その事実にランサーが驚き、第三者として見ていたセイバーもランサーと同じ反応を見せる。

 

―――迅い事は解っていた…だが、今のは…

 

僅かな硬直の間に、レイジは間合いを取る。そして今る情報を整理しだす。

 

―――セイバーの剣…たぶん当たりだ。そんでもってランサーの赤い槍の方は、魔力を絶ったのか?‥‥二槍を使い、魔力を絶つ赤槍(せきそう)。だとしたら、あっちの黄槍(おうそう)はヤバイ

 

ゆっくりと答えに近づくレイジ。過程であるが、二人の真命は大方目星がついた。ならば、そうか仮定して動くのみ。

地面を蹴り駆ける。ぶつかり合うのは、セイバー。鳴り響く中での数手のやり取り…そしてその隙を狙わんとするランサー。

レイジは、その槍を避けるが、セイバーは受け止める。受け止めた刹那、再び剣を纏う風が、支配を逃れた様に荒れ狂う。

 

「ッ!!」

 

即座にランサーの槍を逸らすセイバー。するとランサーは、もう片方の槍を穿つ。レイジと同じくギリギリで躱す、セイバーが間合いを取る。瞬間、ランサーにレイジの一閃が迫る。

ランサーは、長槍を使いその一閃を受け止め、そのままに短槍を放つ。対するレイジは、その場から跳びランサーの間合いを越える。そのままに一閃。ランサーは、躱しきれず僅かに傷を負う。

 

追撃を仕掛けようとしたレイジだが、即座に感じた殺気。急いでその場から離れるが、僅かに遅かった。

 

「はあッ!!」

 

「いっ‥」

 

不可視の剣が、レイジを傷を負わせる。

 

―――ちょっと深い

 

確かな手ごたえが、僅かにセイバーの気を緩めさせた。直後、傷を受けた筈のレイジの一太刀がセイバーに襲いくる。緩めていたが故に、躱せないと察したセイバーが己が剣で受け止める。

しかし、受け止めきれずに数メートル後退する。

 

―――どう言う事だ。威力が上がっている

 

疑問のその後ろで、傷を負った手とは逆の手に構えた短槍がセイバーに迫る。直感で奇襲に気がついたセイバーが、身体を逸らし躱そうとするが、間合いを詰められており、完全には躱しきれずに、左腕に傷を負う。

 

全員が傷を負い、その具合を計る様に、三人は間合いを取る。

 

『全く何をやっている!宝具を解放しても勝てぬはおろか、傷を負うなど』

 

沈黙を破ったのは、苛立ったようなランサーのマスターの声。それに呼応してレイジからつけられた傷が治癒する。

 

「感謝する。我が主」

 

僅かに手を開け閉めしながらランサーが礼を述べる。そしてその隙にレイジもまた、セイバーから受けた傷を治癒し始める。

 

―――ヒール

 

その呪文と共にレイジの傷が、優しい緑の光と共に癒される。その二人の光景を見て、セイバーがアイリスフィール告げる。

 

「アイリスフィール…私にも治癒を」

 

振れない事もないが、僅かな痛みが剣筋を鈍らせる。目の前の相手には、それでは不利と悟ったが故。しかし、アイリスフィールから告げられたのは、衝撃の事実。

 

「使ったわ。でも…信じられない事だけど、セイバー。貴方の傷はもう癒えてるわ!!」

 

「!!」

 

アイリスフィールの言葉を受け、セイバーがランサーに視線を向ける。セイバーの視線を受けたランサーは言葉を発しようとした刹那

 

「流石は、決して癒えぬ傷を負わせる、呪いの黄槍(おうそう)必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)って所か…なあ、ディルムッド(・・・・・・)

 

レイジの言葉にセイバーも納得が云ったとばかりに言葉を紡ぐ。

 

「なるほど。乙女を惑わす右目の泣き黒子。そして魔を絶つ赤槍(せきそう)と呪いの黄槍…まさかフィオナ騎士団随一の使い手と手合せの例に預かれるとは、光栄だ」

 

(かがや)(かお)のディルムッド』それがランサーの真名。そして正体を暴かれたランサーもまた、告げる。

 

「それはこちらのセリフだぞ、セイバー。よもや、英霊の座に導かれし者達が、その輝きを見間違う訳もない。彼の騎士王と打ち合い傷を負わせれるとは、我が槍もまだまだ捨てたものではないと言う事か。我が破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)も悦びであふれるぞ」

 

騎士王(きしおう) アルトリア・ペンドラゴン』恐らく何よりも有名な名こそ、セイバーの真名。

 

「そしてセイヴァーよ。我が真名を暴いて尚、己が正体を悟らせぬとはな」

 

「ありがとな。あんたらクラスからの賞賛は、マジで嬉しいぜ」

 

僅かな安息も、即座に終わりを告げ。三度緊迫が現れる。

 

「んじゃまあ、そろそろ再開するか」

 

「ああ、そうだな」

 

「ええ、いいでしょう」

 

セイバーの言葉にレイジは冠した表情を見せる。現状において決して癒えることない傷を負わされたセイバーが圧倒的に不利な状況。それでも彼女は、凛と誇り高く自分達を見据えているのだ。

笑みがこぼれる。その真っ直ぐと退く事を知らない姿勢にただ脱帽だ。

 

―――悪くねえし、技を使うか

 

その笑みと共にレイジの纏う空気が変わる。レイジの変化を感じ取る。時間にして三秒の沈黙。そして三人の騎士が地面を蹴ったと同時に、倉庫街に雷光が迸り、雷鳴が鳴り響く。

三人は即座にそれが新たな敵の乱入を示すと悟る。

そんな中アイリスフィールは、ふと空を見上げる。

 

「…‥戦車(チャリオット)…?」

 

そう。視界に映りこんだのは、古代の時代戦場を駆けた戦車。戦場を駆ける戦車を引くは、美しくも荒々しい二頭の神牛。

そして明らかに神性を帯びし宝具の戦車(チャリオット)に騎乗する、野心の炎を体現した様な赤い髪と髭を蓄えた筋骨隆々とした大男。

 

AAA(アアア)LaLaLa(ラララ)LaLaie(ラライッ)!」

 

「いや~~ッ!」

 

雷と共に虚空を蹴る戦車の騎手は、雄叫びと共に三人の中央に降り立つ。突如の来訪者に三人の時間が止まり、その場に居合わせた全ての意識が騎手に向けられる。

意識を向けられた男は降り立つと同時に、その両腕を広げ高らかに告げる。

 

「三人とも、武器を納めよ。王の前である!!」

 

美しさなど欠片も感じさせない荒らしく野太い声が辺りに響く。余りにも突然の物言いに固まる三人を視界に納め、騎手はさらに告げる。

 

「我が名は征服王(・・・)イスカンダル(・・・・・・)。此度の聖杯戦争において、ライダーのクラスにて現界した」

 

全く躊躇う事無く息をする様に高らかに告げられた言葉。

 

それは、此処から更なる物語の加速の合図を告げる宣言。




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