超兵器これくしょん   作:rahotu

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33話

33話

 

6隻の超兵器、いや最早彼女達はヒトの形を保った鎖の外れた獣と化していた。

 

「ク、クルナー!」

 

数十門以上の火砲が一斉に火を噴く。

 

並みの艦なら瞬く間に火線に絡め取られるその火力は、しかし今の彼女には全く無力であった。

 

視界全てを埋め尽くす砲弾も、頭上から降り注ぐ爆弾も、水中から虎視眈々と狙う高速の魚雷も、その全てが彼女の目にはスローモーションで写っていた。

 

その世界では、到底避ける事も出来ない弾幕もスローボールを避けるよりも簡単に潜り抜ける事が出来る。

 

やろうと思えば、今自分の顔の横を通り過ぎる16inch砲弾の先っぽを指先で摘めるだろう。

 

ヴィルベルヴィントには、この世全てのものが自身よりも遅く見えていたのだ。

 

無論これは実際に時間が遅くなっているのではなく、超兵器機関の解放により本来の力を取り戻した量子コンピュータを始めとした各種電子装備にのって、彼女の頭脳が猛烈な速度で情報を処理しているが為に起こっている現象だ。

 

脳に多大な負担をかけるこれは、しかしその威力は圧倒的であった。

 

「ナ、ナゼナンダ!?ナゼアタラナインダー」

 

深海棲艦から見れば、自分たちの攻撃が青白い光の帯を自ら避けているかの様に見えただろう。

 

そうして自分達の目の前を光の帯が通り過ぎたかと思うと、それが通り過ぎた後にはバラバラに引き裂かれた味方だった物の残骸が転がるのだ。

 

明らかに、この異常事態に深海棲艦は対応できてなかった。

 

今の彼女を止めるには、同じ超兵器かそれか彼女達と同じバケモノになるしかない。

 

別の戦場でもまた、異常事態が発生していた。

 

突如として十数隻もの艦隊を飲み込む巨大な渦が出現し、瞬く間に艦隊を飲み込んだのだ。

 

飲み込まれた彼女達が最期に目にしたのは、渦の中心にて佇む1人の女の姿であった。

 

ドレッドノートには、本来この様な自然現象に干渉する様な能力はない。

 

しかし今この戦場には自分と同等かそれ以上の超兵器がおり、しかもそれらが同時に超兵器機関を解放したのだ。

 

超兵器機関は互いに共鳴し合う性質を持ち、6隻もの超兵器の力の共鳴はこの瞬間だけとはいえ最上位の超兵器と同じ力を彼女達に与えていた。

 

今のドレッドノートは渦を自在に操り、水上水中関係なく凡ゆる物を引き込み圧壊させる海の魔物と化している。

 

そこには彼女が常日頃から大切にしている伝統や誇りは無く、果たして本人がそれを望んだかどうかはまた別の話であった…。

 

一方で自ら進んで力に飲まれる者もいる。

 

「アハハハハ!!この程度ですの」

 

「モットだ、モット寄越せ!」

 

アルウスとシュトゥルムヴィント、2人とも顔を合わせれば反目し合う仲だがそれはお互い似た者同士から生じる同族嫌悪の裏返しでもある。

 

アルウスは己が翼である艦載機を次々と発艦させ、今や彼女の周りはアルウスから発艦した無数の艦載機によって陽の光が遮られていた。

 

到底、これらの艦載機はアルウスの格納庫に収まるはずもなくまた艦内工場を幾らフル稼働させても、今度は製造用の資材の備蓄が足りなくなる。

 

しかし、今のアルウスはいつにも増して頭のネジが二、三本目吹き飛んでいた。

 

彼女は材料になるのならなんて話もいい、とばかりに自ら撃ち落とした敵機や敵艦の残骸を、あろう事か艦載機製造用の資材にしているのだ。

 

そして資材になれば何でもいいのであり、中にはまだ生きたま加工される深海棲艦もいた。

 

そうして生み出された艦載機達が敵を葬るたび、また艦載機が追加されるという悪夢のスパイラルが完成しているのだ。

 

更にシュトゥルムヴィントの方はもっと直接的で、暴力的であった。

 

姉と言う制御装置を外れた最速の超兵器は、それこそ縦横無尽に戦場をかけ巡りいく先々で破壊を振りまいていた。

 

「モット早く、モットモットだ」

 

今の彼女を突き動かすのは飽くなき速度への追求、己の限界を超え最速を超えた先の領域を目指す。

 

ここまでなら安全に見えるが、しかし彼女が通り過ぎた後の惨状は正に目を覆わんばかりである。

 

触れるだけで身体が消し飛ぶ今の彼女が、単に通り過ぎるだけで発生させる衝撃波は単なる深海棲艦が耐えらるもものではない。

 

しかもそれが、目にも留まらぬ速さで、しかも何処から来るか分からないのだ。

 

シュトゥルムヴィントが駆け抜けた後には、バラバラにされた何かだった破片しか残らない。

 

今の2人は当初の目的を忘れ、ただ単に己が欲望を果たす為だけに動いていた。

 

しかし、それらの気まぐれの様な行いが最も深海棲艦に被害を与えているのだ。

 

さて最後にもう一人、播磨だが彼女もまた変わっていた。

 

今いる超兵器の内、恐らく最も強力なのが播磨だがそれ故力を解放した時の変化もまた強烈であった。

 

「はあ、はあ、ウチを鎮めてくれるお方はおりませんのかえ」

 

そう着物を着崩して肩を露出させた播磨は、艶かしげに真っ赤な紅をさした唇に自らの髪の毛を咥える。

 

普段にも増して、花魁や遊女の様な彼女だがしかしその周りは地獄であった。

 

巨大な艤装に犇めく無数の巨砲は絶えず火を噴き、彼女の周囲は常に砲弾の雨が降り注いでいた。

 

砲身は当然のことながら艤装を操る本人と同様赤く蒸気し、灼熱の炎が脈打っている。

 

しかしそれで砲撃が止むことは決してない、いや寧ろ砲身が溶けて焼け付く程にその激しさを増すのだ。

 

嘗て東亜の魔神と呼ばれ恐れられてきた彼女は、天敵である航空機さえ物ともせず空の相手を悉く撃ち落としてきた実績がある。

 

しかし今の彼女の砲撃はそれ以上であり、常に彼女の周囲は頭上から51㎝砲弾が降り注いでいた。

 

この雨をくぐり抜けて彼女に近づくことは不可能であり、距離を取ろうとしても今度は横殴りの砲弾の嵐に襲われるのだ。

 

播磨を中心として砲弾と鉄で出来た竜巻、それが今の彼女を形容するに最も相応しい言葉である。

 

何者もつか付けない嵐の中で、それでも渦の中心で彼女は誰かに向け切なげに手を伸ばす。

 

それは恋い焦がれる誰かを待つ生娘の様であり、或いは断崖絶壁に咲く一輪の孤高の花である。

 

その余りの美しさに手に入れようとした瞬間、その相手は圧倒的と言う言葉が陳腐に思えるほどの鉄の暴虐の前に打ち砕かれる事となるのだが…。

 

鎖を解かれた超兵器達の、この何ら戦術性も戦略も見出せない、力の在りようを見せつける闘いは、しかして深海棲艦側の計算を大いに狂わせた。

 

超兵器の乱入により、飛行場姫側の深海棲艦は悉く海に沈み、戦艦棲姫でさえ、超兵器と正面から当たらぬ様大きく戦線を迂回したのだ。

 

そしてとうとう焙煎達の目の前には、飛行場姫の本拠地への道が開かれたのである。

 

 




補足説明

普段の超兵器=エヴァ

今回の超兵器=暴走エヴァ

つまり?

存在の次元が違う、半分ファンタジーに足を突っ込んでいる。

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