超兵器これくしょん   作:rahotu

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37話

37話

 

金属と金属とが激しくぶつかり合う音が洋上に響く。

 

衝突のたび大気が震え、鼓膜を揺らす甲高い金属音と共に水柱が立つ。

 

立ち昇る水飛沫の中で、シュトゥルムヴィントと小柄な深海棲艦は何度も正面からぶつかり合っていた。

 

各地で超兵器と対峙する深海棲艦の新種、まだこの時は名が無いが後にレ級と名付けられるそれは、超兵器に負けないくらいバケモノである。

 

駆逐艦と同じ体躯で戦艦と同じパワーを持ち、戦艦でありながら雷巡の様に雷撃し、しかも並みの正規空母を上回る質の艦載機を飛ばし、そうかと思えば航空戦艦の様な正確無比な着弾観測を行う。

 

後に多くの提督から『悪魔の子』『一人連合艦隊』『悪堕ち雷』『最凶最悪の深海棲艦』『レっちゃんのおヘソペロペロし隊』etc

 

様々な異名をつけられている。

 

ここにいるレ級は通常のそれに加え飛行場姫によって特別な改修が施されており、その性能は深海棲艦のそれを超えていた。

 

洋上で激しくぶつかり合うシュトゥルムヴィントとレ級。

 

時折2人の間で砲撃と雷撃が交わされるが、レ級からの攻撃はシュトゥルムヴィントの圧倒的な速度を前に躱され、逆にシュトゥルムヴィントの攻撃もレ級の艤装の装甲と迎撃装置の前に無力化されて互いに決定打がない。

 

その為、互いに回りくどい砲雷撃戦を嫌って単純な力比べで決着をつけようとしていたのだ。

 

水柱の中、シュトゥルムヴィントが艤装のロケットブースターで加速した右ストレートを放つ。

 

水上艦最速の異名を持つシュトゥルムヴィントのそれは、単純なパンチの威力を二乗三乗に引き上げていた。

 

単なる戦艦なら、一発でノックダウンどころか触れた所が消し飛んでいるだろう。

 

しかし、対峙するレ級もまたバケモノと呼ばれた存在。

 

シュトゥルムヴィントからの致命的な一撃を、小柄な体型を活かしてヒラリと躱す。

 

そしてカウンターがてら、自身の背中で繋がった艤装をシュトゥルムヴィントの頭上から叩きつける。

 

叩きつけられる瞬間、シュトゥルムヴィントは両腕を交差させ、圧倒的な質量を二本の腕で防ぐ。

 

相手の攻撃を防いだかと思ったのもつかの間、レ級本体はシュトゥルムヴィントのガードが上がった隙を逃さず無防備な腹部を切り裂こうとする。

 

「ふん!」

 

レ級が爪をなぎ払おうとするその腕を、シュトゥルムヴィントは片足のブースターを点火加速させ膝を割り込ませてガードした。

 

無論それだけでに済まずガードから一転、加速を更にかけ相手の攻撃ごと回し蹴りで粉砕しようとする。

 

シュトゥルムヴィントの最高速度は現在のところ約100ノット。

 

時速に換算して凡そ時速180㎞であり、鞭の様にしなるシュトゥルムヴィントの脚によりそれは先端に行く程加速度的に速度を増して行く。

 

さらにここに質量が加わり、単純な計算で言えば質量×速さの二乗のエネルギーがレ級に襲いかかろうとしているのだ。

 

その威力はシュトゥルムヴィントが先程牽制として放った突きの威力の比では無い。

 

爪先にソニックブームを発生させながら相手の頭部を刈り取ろうとするそれを、しかしその直前になってレ級の姿が消える。

 

空を切るシュトゥルムヴィントの蹴り、見上げればレ級は自らの艤装に支えられて逆立ち状態で此方を見下ろしているでは無いか。

 

先程の一瞬、レ級は艤装の力だけで自らの身体を持ち上げ、致命的な一撃を回避したのだ。

 

レ級は軽業師の様に逆立ち状態から飛び跳ね一回転してシュトゥルムヴィントの背後に着水する。

 

そして一回転する間に、コートの中から艦載機を放ち、それらの銃撃でシュトゥルムヴィントの追撃を牽制した。

 

艦載機からの攻撃を叩き落としながら、単なる戦艦や艦娘では到底真似できないその身のこなしに、シュトゥルムヴィントは思わず感嘆の声を漏らした。

 

これまで戦ってきた相手とは全くタイプの異なる敵を相手に、しかしシュトゥルムヴィントは漸く真に己に敵すべき存在が現れたかと喜びを胸の内に露わにする。

 

(これこそだ、下らない数を頼みにするような連中ではなく、こう言う風に食らいついに来るヤツが欲しかった!)

 

姉のヴィルベルヴィントと違い、軍人よりも戦士としての側面が強いシュトゥルムヴィントは、この時本来の役目を忘れ戦いにのめり込もうとしていた。

 

 

 

 

大海原に巨大な水柱が幾つも立ち昇り、その間をヴィントシュトースが駆け抜けて行く。

 

巻き上がった水飛沫で全身を濡らしながら、ヴィントシュトースは自分の身長の倍以上ある巨大な水柱と水柱との間から砲撃を放つ。

 

海面を水切りの様に鋭く跳ねる砲弾は、正確な照準もあって敵に吸い込まれて行くかの様に命中する。

 

しかしその瞬間起きたのは、硬い装甲に弾かれる乾いた金属音であった。

 

「ちっ、無駄に硬いですね」

 

ヴィントシュトースは普段の彼女からして低速の、40ノットで素早くその場を移動しながら毒づく。

 

本来超高速艦である彼女はこの倍の速度を出せるが、現在はとある事情によってそれを封じられていた。

 

「また!しつこいですね」

 

水柱の影から出たヴィントシュトースを、今度は頭上から深海棲艦の艦載機が急降下爆撃を仕掛けてきた。

 

十数機のそれらは、敢えて広い感覚を取り腹に抱える爆弾を正確に命中させるのではなく、クラスター爆弾の様に広範囲にばら撒く様に投下する。

 

深海棲艦はこれまでの対超兵器との戦闘経験から、特に対高速艦用の対策と戦術を編み出していたのだ。

 

ヴィントシュトースは頭上から雨霰の如く降り注ぐ爆弾を、艤装のブースターを併用して複雑に舵を切って避けようとし、避けられぬ時は対空砲で迎撃したりするなどしてこの攻撃を切り抜けようとする。

 

当然この様な複雑な機動を行う上で余りに速力があっては舵がきき辛く、その機動は当然直線的なものとなってしまう。

 

そして、ヴィントシュトースの機動が単純になった時を見計らい、今度は主砲の装填を終えたレ級本体から強烈な砲撃が加えられた。

 

「っっっっっ!」

 

真横からの砲撃に、何とか反応したヴィントシュトースは無理やり艤装の片方のブースターを点火させ、無理な体勢から回避を試みる。

 

レ級から放たれた砲弾はギリギリ彼女の身体と艤装を掠めつつ、しかし避けきる事に成功した。

 

遠くに着水した砲弾は幾つもの巨大な水柱を立ち昇らせ、如何にレ級の主砲が強力かをまざまざと見せつける。

 

口径に換算すればその威力は恐らく46㎝以上、或いは50㎝かもしれない。

 

当たれば超兵器と言えどもダメージを避けられないだろう、ましてヴィントシュトースは巡洋艦型。

 

基本的に彼女の相手は自身より格下であり、戦艦や空母など格上相手には部が悪い。

 

特に戦艦レ級は戦艦でありながら空母の能力を持ち、オマケに雷巡並みの雷撃能力を兼ね備えている。

 

しかもそれらを飛行場姫の手によって強化されており、はっきり言ってヴィントシュトースと言えども荷が重い相手であった。

 

空と海両方からの立体的な攻撃を何とか綱渡りで凌ぎ続けるヴィントシュトースだが、刻一刻時間と共に彼女の気力、体力、弾薬を奪っていく。

 

絶対無敵と思われた超兵器だが、しかしレ級の出現によりその優勢は崩れようとしていた。

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