超兵器これくしょん   作:rahotu

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41話

41話

 

超兵器に対抗する為そしてそれを上回る為に開発されたレ級は、確かに並みの深海棲艦を超える力を持つに至った。

 

鬼、姫クラスでも中々ない強力な50㎝砲を備え、それに耐えられる堅固な装甲に無数の対空火器、先制雷撃を可能とした特殊魚雷に正規空母を上回る艦載機の能力。

 

それらどれ一つとっても、従来の艦や艦娘などを向こうにおく強力無比な艦として生まれた。

 

その性能は確かに超兵器に通用するものもあり、彼女達を追い詰めもしたがしかし…。

 

 

 

 

南方海域に轟く轟音とそして爆炎、照りつく太陽の光を反射し黒光りする艦載機が輪をなし、海中を魚雷が獲物を求めて走る。

 

艤装の主砲は絶えず火を噴き、大空に舞い上がった艦載機は獲物目掛けて爆撃や雷撃を仕掛ける。

 

そうしてトドメと言わんばかりに特殊潜行艇から雷撃が放たれ、爆炎に囚われ身動きできない獲物に食らいつく。

 

巨大な水柱と爆炎が立ち昇り、天高く舞い上がった水が海面に向かって雨のように降り注いだ。

 

確かな手応えはあった、よく見れば海に降る雨粒に紛れて幾つかの破片が有るのにも気づく。

 

しかしレ級の顔には敵を倒した喜びはない、寧ろその逆でいまだ爆炎の中にいるであろう“ソレ”を凝視していた。

 

「!?」

 

突如として爆炎と水柱を裂いて砲弾がレ級に向かって飛ぶ。

 

レ級は胴長の艤装で蜷局を巻く様にして、それを受け止める。

 

生物的滑らかな曲面と自身の主砲を弾き返す強固な装甲によって、砲弾は角度によっては表面を滑る様に弾かれた。

 

通常の艦船や艦娘の艤装の様な垂直防御では無く、傾斜装甲の概念を含んだそれは実際の装甲厚よりも遥かに高い防御力を有している。

 

例え海軍自慢の91式徹甲弾であっても、これを貫通する事は困難を極めるだろう。

 

砲弾を弾いたレ級、しかし彼女の顔に攻撃を防いだ事への安堵はない。

 

寧ろ次なる攻撃に備え、艤装を蠍の尻尾の様に振り上げいつでも対処できる様身構えた。

 

レ級の艤装には補助脳と言うべき物が備わって降り、これによりレ級は複雑極まりない兵装のコントロールを完璧に行えている。

 

考えて見ればわかる事だが、砲撃一つとっても砲術や火器管制など高い専門性がなくては出来ない。

 

雷撃や航空機運用など、どれ一つとってもそれ専門の艦が行なって始めて運用出来る代物で有る。

 

それを、単に一つにまとめただけで運用出来るほど現実は甘くはなく、お互いの長所を殺し合いなんの役にも立たない駄作が誕生しただろう。

 

しかしレ級は、これらの問題に対して其々機能を特化した独立した補助脳を搭載する事で解決した。

 

例えばレ級本体は航行や艦載機の運用に特化し、艤装は主に砲撃や雷撃など直接的な攻撃を担当する。

 

これにより先の運用上の複雑な問題をある程度解決すると共に、これらが有機的に結合した結果従来の艦では考えられなかった戦法が行える様になった。

 

いまレ級が警戒体制として取っているこな姿勢も、一見奇妙でありながら実は理にかなっている。

 

レ級本体が敵から目を離さない様にしながらも、それをカバーする様に艤装は高所から四方を監視するのだ。

 

特に発見が困難な雷撃に対していち早くその航跡を見つけるには、高所からの方が有利である。

 

レ級がそれに気づくよりも早く、彼女の艤装は反応していた。

 

胴体のカバーから飛び出した機銃が火を噴き、マズルフラッシュの光で黒光りする装甲が真っ赤な火花に染まる。

 

見える雷跡の遥かに前方を狙う様にして、レーダーと連動した自動照準の機銃から弾丸が発射された。

 

通常、魚雷はその特性上雷跡が出るのは魚雷の艦尾部分からであり、航跡を狙い撃ってもとうの魚雷は遥か前方にある。

 

魚雷の回避や迎撃が難しいのは、実際に見える姿と本体の場所が異なる事に起因するのだ。

 

レ級の迎撃により、魚雷は全て到達前に破壊された。

 

しかしそれと同時に、爆炎の中から今度はヴィルベルヴィントが飛び出す。

 

ヴィルベルヴィントは高速で移動しながらレ級の足元に向け砲弾を放つ。

 

本体と違い足元という防ぎにくい部分を狙われたレ級は、被害を最小限に抑えようと防御の姿勢をとる。

 

狙いが甘いのか、それとも意図した物なのか?

 

ヴィルベルヴィントの砲弾は、レ級の足元に着弾するも本体は至って軽微な損傷で済んだ。

 

装甲の薄い下側を狙われ、一瞬ヒヤリとしたレ級であったが、お返しとばかりに砲弾をお見舞いする。

 

レ級の砲弾は、通常の砲弾と違い真っ直ぐ進むのではなく独特の音を立て縦回転しながら移動するヴィルベルヴィントの進路上に着弾した。

 

と同時に付近に猛烈な火焔を巻き上げ進路上に突如として炎の壁が現れ、ヴィルベルヴィントは咄嗟に舵を切る。

 

4基の可動式スラスターで無理矢理推進方向をかえ、殆どその場で90度ターンする形で超信地旋回を果たすヴィルベルヴィント。

 

しかしその時、外側スラスターの装甲表面を炎が舐める。

 

既に何度も炎で炙られているのか、ヴィルベルヴィントの可動式スラスターは表面が所々焦げているか一部では溶けかかっていた。

 

ヴィルベルヴィントは熱から逃げる様に進むが、今度はその針路上にロケット弾が降り注いだ。

 

狙いもバラバラなそれは、しかし一発一発の威力は低くとも先程よりも広範囲に炎を広げた。

 

またしても炎を避ける様に舵を切るヴィルベルヴィント。

 

既に彼女の周囲にはいくつもの炎が揺らめいており、段々と逃げ場をなくしていく。

 

(鬱陶しいことこの上ないな)

 

ヴィルベルヴィントは炎を避ける様に高速移動しつつ、牽制がてら砲撃を相手の足元に放ちながらそう思っていた。

 

既に視界の左右には炎の壁が迫り、その間に僅かに見える航路を縫う様に進んでいる有様。

 

このままではやがて逃げ場をなくして、焼き殺されるのは目に見えていた。

 

たかが炎と思うかもしれないが、元の世界でその炎を侮った挙句、火炎放射器を甲板一杯に並べた冗談の様な船に超兵器が丸焼きにされた事もある。

 

しかもこのその炎の厄介な所は、例え命中しなくとも熱で内部機構にダメージを与えてくる所だ。

 

兵器とは巨大で強力である程、その機構は複雑となり、繊細な運用を要求される。

 

これら複雑な装置と機械の集合体を守るため、戦艦は重装甲化の道を突き進んできた。

 

砲弾やミサイル、魚雷に対しては有効に機能する装甲も、しかし熱の伝播に対してはその効果を著しく減じる。

 

特にヴィルベルヴィントの露出した動力機関とも言うべき4基のスラスターは、度重なる熱の放射に晒され内部機構の異常を知らせるアラームが鳴り響いていた。

 

このまま放っておけば、いずれ使い物にならなくなるだろう。

 

だがヴィルベルヴィントの表情に焦りはなかった。

 

焦りがないどころか、彼女はいつもの務めて冷静な表情をして、しかも周囲を灼熱に覆われていても汗の一つもかいていない。

 

(もうそろそろなのだがな)

 

ヴィルベルヴィントは再び高速で移動しながら、レ級を中心に時計回りに回り始める。

 

レ級はその円の中心にいて、ヴィルベルヴィントの針路上を塞ぐ様に砲撃を繰り返す。

 

本来なら航空機も合わせて海と空から敵を追い詰めたいのだが、それはレ級自身が行なった戦法によって難しくなっていた。

 

周辺の海には火焔が揺らめき、炎によって温められた空気により急激な上昇気流が発生して航空機による爆撃や雷撃が困難になっている。

 

このため、レ級の艦載機は戦場の遥か上空で輪をなして待機していた。

 

最も航空機の援護がなくとも時おき、ヴィルベルヴィントから散発的な砲撃が飛ぶだけで、戦局はレ級優位に進んでいる。

 

そうして然程時間をかけずレ級の猛烈な砲撃によって、既に見える範囲の海は全て炎で包まれていた。

 

360度視界をどう見渡しても、炎の揺らめきがない所など何処にもないと言う状況である。

 

さしものヴィルベルヴィントも周囲を二重三重の炎の壁に囲まれては逃げようもなく、このままレ級に狩られてしまうかに見えた。

 

レ級は逃げ場をなくした獲物にゆっくりと主砲の照準を合わせる。

 

ここまで散々手こずらせてきた獲物に、その最期の瞬間にむけて死への恐怖を味あわせ様という魂胆だ。

 

レ級の50㎝砲の照準が合わさり、次の瞬間には獲物を撃ち砕く巨砲が発射されようとしたその時…!?

 

「っ?????」

 

何故か砲弾は発射されず、しかもレ級はその場から身動き一つ取れなかった。

 

混乱するレ級は、ここで漸く「しまった!」とある事に気がつく。

 

「漸く気がついたか、まぁ貴様が景気良く撃ちまくってくれたお陰で此方も手間が省けた」

 

ヴィルベルヴィントは、砲撃の姿勢をとったまま動けないレ級に向かってそう言った。

 

「戦場でいま自分がどんな場所にいるか把握できていなければ、そうなるのも当然だな」

 

レ級は悔しそうにヴィルベルヴィントを睨みながら、しかし身体は依然として言うことをきかない。

 

一体レ級の身に何が起きたのか?

 

タネを明かせば簡単なのだが、つまるところレ級は自身の強大な力によって自らを滅ぼしたのだ。

 

原子力動力で動くレ級は確かに他を圧倒する性能を発揮するが、しかしそのため常にいかにして原子力機関を冷却しまた溜まった熱を放熱するかの問題を抱えていた。

 

艤装と本体の体に常に冷却水を循環させねば、レ級は原子力が発する膨大な熱に体が耐えられず常に崩壊する危険性を抱えている。

 

そんなレ級が戦艦の装甲を溶かすほどの炎を背にしたらどうなるか?

 

答えは火を見るよりも明らか明らかだ。

 

レ級の黒いフードとコートは放熱板としての役割もあり、それが熱に晒された結果排熱が上手くいかず、レ級の身体に熱が溜まり熱による自壊を防ぐ為原子力機関が緊急停止したのだ。

 

レ級は何とか体を動かそうとするも、動力を失った今の彼女には眉毛一つ持ち上げることさえ叶わない。

 

最期の手段としての自爆も、肝心の原子力が緊急停止してはどうしようも出来なかった。

 

「お前を沈める方法は幾つかあったが、私はは他の超兵器と違い“貧弱”だからな。どうやってお前の原子力を無力化するかと考えあぐねていたのだ」

 

そして核の自爆と言う手段を失ったレ級に対し、ヴィルベルヴィントは相手と違って素早く3連装4基12門もの主砲を合わせる。

 

間をおかず、ヴィルベルヴィントは砲弾を放ち41㎝もの砲弾は一つとして過たずレ級の艤装と身体を撃ち砕く。

 

艤装の口の中に入った砲弾は内部機構をメチャクチャにしながら貫通し、残りの砲弾はレ級本体の小さな手足を吹き飛ばす。

 

動力がある胴体部は言うに及ばず、内部にめり込んだ砲弾の信管が破裂し、その暴力的なまでの破壊のエネルギーが内部で解き放たれる。

 

レ級は、文字通り五体と艤装を吹き飛ばされ僅かな猶予もなく海へと沈んでいった。

 

執拗な破壊により原子力機関は完全に破壊され、他の艤装も含め万が一回収されても修復は困難である。

 

時として死体は生者よりも雄弁に語る、海軍と袂を分かった以上いつどんな勢力に対しても備えておかなければならない。

 

焙煎が自覚しているかどうか分からないが、最早敵は深海棲艦だけではないのだ。

 

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