46話
超兵器達がレ級と戦っていた頃、戦艦棲姫率いる反乱艦隊は飛行場姫が篭る要塞の目前にまで迫っていた。
士気、数共に勝る反乱艦隊に対し飛行場姫の恐怖によって無理やり戦わされている者達とではその戦意に大きな差があり、制空権さえ奪われ彼女らは成すすべなく押し込まれる。
何とか戦線を持ち直そうと親衛艦隊を派遣するも、時既に遅く逃げる味方と追う敵とで混戦状態に陥り、数の暴力の前に瞬く間にすり減らされていった。
事ここに至っては劣勢は挽回し得ないと考えた離島棲鬼は、何とか残存戦力まとめて要塞に集結させそこで決戦を挑もうとしていた…。
南方海域最深部、離島棲鬼が飛行場姫の為に作り上げた要塞人工島には飛行場姫側の最後の艦隊戦力が結集していた。
いや、結集していたと言うよりも単に追い詰められたと言った方が正しいのか。
集まった深海棲艦達は皆顔をうつむかせて生気が無く、傷の回復もままならないのか身体の彼方此方に黒ずみの汚れをつけていたり或いは何処か欠けたままの状態の者もいる。
その中で唯一士気旺盛と言えるのは、最期まで飛行場姫に付き合う覚悟を決めた親衛艦隊の生き残りのみであり、他の者たちはいつ敵が攻めてくるのかと戦々恐々としていた。
「姫サマ、残存艦隊全テ配置二付キマシタ」
「ゴ苦労ダッタワネ、離島棲鬼」
要塞地下司令部にて、飛行場姫は彼女には珍しく離島棲鬼を労った。
「勿体無キオ言葉、サレドマダマダ此処カラデスワ姫サマ」
当初の優勢を覆され、今や自分たちの方が圧倒的な劣勢に置かれる中それでも離島棲鬼は不敵に笑う。
「コノ要塞ノ数々ノ仕掛ケノ前デハ、彼奴等ハ姫サマ二辿リツク事ナク果テルデショウ」
それこそ離島棲鬼が心血を注いで作り上げたこの要塞である、例え相手が3倍以上の兵力でもって攻めたとてしても小ゆるぎもしない自信があった。
そして離島棲鬼の能力と忠誠心を買っている飛行場姫も、その自信に嘘偽りの無い事も知っている。
正にこの要塞は金城鉄壁、難攻不落のその名に相応しいものであった。
だからこそ、この2人には分かっていた。
「ソレデハ姫サマ、私ハ上二参リマス」
「エエ、貴女ノ武運ヲ祈ッテイルワヨ」
離島棲鬼は最後に恭しく飛行場姫にこうべを垂れ、その心の内で別れの言葉を告げる。
(サヨウナラ、姫サマ。最早二度トオ目ニカカレナイデショウ)
地表の指揮所へと向かうエレベーターの中で、離島棲鬼は今の情勢を思い浮かべた。
兵力にして実に6倍差、しかも要塞を包囲されつつありしかも相手は凡百な指揮官などでは無くあの戦艦棲姫である。
本当なら自分程度とうに尻尾を巻いて逃げ出したとしても不思議ではない相手に、しかし離島棲鬼は一歩たりともこの要塞を離れる気持ちは浮かばなかった。
元々離島棲鬼は長らく不遇をかこっており、海を渡れぬ陸上深海棲艦はそれだけで様々な苦労をすると言うのに彼女はその容姿の幼さも相まって軽んじられてきたのだ。
いかに陸戦築城能力に秀でようとも、相手がそれを理解できなければ単なる宝の持ち腐れであり彼女の適性を理解しない無知と蒙昧など者達の嘲笑は彼女のプライドを傷つけた。
しかし、そのどん底から彼女を拾い上げたのが飛行場姫であり彼女は離島棲鬼の才能を見抜くと彼女の望む物を惜しげも無く何でも与えた。
その甲斐あってか、離島棲鬼の恩に報いようという懸命に働きそれも相まってか彼女は瞬く間に頭角を現し、遂には飛行場姫の右腕と呼ばれるまでのしあがったのだ。
絶望からの逆転劇、一から建設したこの要塞は彼女なりの恩返しの形でありそして自身の成功の証でもある。
だからこそ、それを土足で踏み躙り破壊しようとする者は決して許すわけにはいかない。
決して敵に後ろを見せない、その覚悟をもって彼女は最期の戦いに向かおうとしていた。