超兵器これくしょん   作:rahotu

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南方海域・終章
47話


47話

 

南方海域奥地にてレ級との激闘を潜り抜けた超兵器達だが、播磨以外各々消耗が激しく一旦集結して後方のスキズブラズニルから補給物資を受け取っていた。

 

しかしその様子は普段とは違い、外にいる妖精さん全てが防護服を身に纏い非常に物々しい雰囲気の中行われていた。

 

「防護服を身に付けてない奴は外には決して出るな!2次被曝にはくれぐれも注意しろ」

 

「此処じゃ完璧な除染は出来ん!ホースで洗い流すしか無いぞ。それと濡れ透けは期待出来ん‼︎」

 

「作業時間には注意しろ!交代は速やかに行え、服ビリマニア共はサッサと中に戻れ!」

 

「兎に角補給の手順は通常通り行うしかない!何、換えの服と下着も持って来ただと⁉︎馬鹿野郎戦場でストリップさせる気か、それと後で部屋の鍵の開け方を教えろよな!」

 

と一部いつもの通りな妖精さんもいるが、皆真剣な表情で除染しながら補給するという困難な作業を並行しながら行っていた。

 

レ級との戦いは、それまでにない原子力艦との戦いであり未熟な原子炉技術は完全には放射能を遮断できず、しかも一部のレ級はその原子炉を暴走させ自爆するなどと言う暴挙を行う始末。

 

結果、戦った超兵器達はおろか南方海域そのものが汚染されてしまったのだ。

 

その為現在南方海域は防護服なしでは外に出歩けないほど、危険な海と化していた。

 

「バイタル正常、汚染状況チェック、フィルター機能正常、内部被曝は軽度、外傷も戦闘には影響はなし」

 

ヴィルベルヴィントは自己診断プログラムを走らせ、戦闘続行に問題ない事を確認していた。

 

「補給工程は現在30%が完了…やはり除染と並行してでは遅いな」

 

防護服をつけながらの作業は、さしものスキズブラズニルの妖精さんらとはいえ勝手が違い、その動きは明らかに精彩を欠いていた。

 

それでもなお懸命に作業をする姿に敬意を覚えど、しかし時間が残されていないのも確かである。

 

いつ敵の襲撃が来るか分からない中、しかも相手が核兵器を実用化したと分かった現在こうして一箇所に集まっているのは非常に危険な事だ。

 

ふとヴィルベルヴィントが顔を横に向けると、アルウスが錠剤を一掴み口に含みボリボリと砕きペットボトルの水で喉へと流し込んでいる。

 

飲み終わったペットボトルを放り捨てると、アルウスは弓矢と矢筒を背中に背負う。

 

先の戦いで艤装を失った代わりであるが、いまだにスカートの中に隠している物は使う気が無いようである。

 

「ん?何よ私の顔に何か付いていて」

 

「いや何、気にするな」

 

こちらの視線に気付いたのか、アルウスが不機嫌そうな顔を見せる。

 

確かにお世辞にも今の彼女は普段彼女が見せようとしているイメージからはかけ離れている、だからと言ってそれを正直に話すほどヴィルベルヴィントは馬鹿ではない。

 

「いやなに気にするな」

 

と適当にかわし、グルリと周囲を見渡せば超兵器達は各々補給もそこそこに既に再出撃の準備を始めていた。

 

ヴィルベルヴィントももうこれ以上は待つことは出来ないと悟り、アルウスや他の超兵器にも渡された放射線分解剤を口に含み奥歯で砕いて飲み込む。

 

(状態は決して万全とは言えない、補給もそこそここれで果たして戦えるのか?)

 

ふとそんな弱気な心が頭の中に擡げ、ヴィルベルヴィントは「ふっ」と自身を鼻で笑った。

 

この世界に来てから自分達に敵するものは殆どなく、スキズブラズニルのおかげで常に補給も整備も万全。

 

正に兵器にとってこれ以上ない環境が整えられ、それをまるで当然のものとして自分達はいままで享受してきた。

 

だがその結果どうなった?

 

自分達と戦える者が現れ、僅かでも負けるかも知れないと考え始め、疲れや疲労が抜けきらず、傷を負ったまま戦うことに不安を覚えている。

 

(巫山戯るな!私達は何だ、超兵器だ)

 

(例えどんな状況だろうと敵対するもの全てを破壊して叩きのめし捩伏せ征服し制圧してきたではないか‼︎)

 

元の世界、あの戦いではその日食べる物も不足するくらい困窮を極めそれでも全ての国家ぎ最終的な勝利を求め戦い続けた。

 

それはヴィルベルヴィントとて変わらず、例え超高速輸送艦と蔑まれようとどんなに傷付き換えの部品の精度が悪く未熟な搭乗員を乗せるしか無かったとしても、それでも戦場を単艦で駆け抜けて来たのだ。

 

皆飢えて乾いていたが、何よりも勝利を望んでいた心の奥底から欲していた。

 

そしてそれはヴィルベルヴィントの目前で打ち砕かれたのだ…。

 

ぬるま湯に浸かったいた心を、ヴィルベルヴィントの最初期の超兵器としてのプライドが喝を入れる。

 

無様な醜態を晒した心を吹き飛ばし、ヴィルベルヴィントは以前にあった研ぎ澄まされた兵器としての自分を取り戻しつつあった。

 

そしてそれは焙煎との交流によって人間に傾きつつあった彼女を、再び獣に揺り戻すという意味に他ならなかったのである。

 

 

 

 

 


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