超兵器これくしょん   作:rahotu

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48話

48話

 

南方海域最深部を轟音と砲声が大気を揺るがし、魚雷の群れが海を掻き立てる。

 

落下する砲弾と爆弾が海面を泡立たせ、大空を飛び交う戦闘機の編隊が死のダンスを舞い上空からは残骸が降り注いだ。

 

海上に浮かぶ巨大な鉄の城たる戦艦は、今や傾き黒煙を立ち上げ炎に包まれている。

 

流れ出るとタールの様に黒くドロリとした血に汗やオイルによって、青い海の姿はどこかへ消え失せていた。

 

深海棲艦両軍相撃つ、昨日までの見方が友が戦友が互いに敵味方に別れ殺し合う様は正に無間地獄のよう。

 

この世の地獄と化した戦場は、いつ果てることなく殺戮が続いていくかに見えた。

 

 

 

 

飛行機姫の親衛艦隊たる部隊は、敵の攻撃が最も激しい場所で奮闘していた。

 

「一兵タリトモ此処ヲ通スナ!」

 

「奴等ノ血デ海ヲ染メ上ゲテヤレ‼︎」

 

そう叫んだリ級は不用意に近づいた反乱側のル級の頭を掴むと、ゼロ距離で主砲を発射し頭部を吹き飛ばした。

 

戦艦だったモノの肉片や残骸が彼女の仲間へと飛び散り、しかしそれに怯むことなく次々と新手が殺到する。

 

似たような光景はあちこちで繰り広げられており、ある者は相手の腕に噛み付きまたある者は弾が切れた為両の拳を血に染めて相手を殴り倒していく。

 

絶えずどこかで身体の一部が吹き飛び、中身が海にぶちまけられそれでもなお彼女らは戦う事を辞めない。

 

戦艦棲姫率いる反乱艦隊の圧倒的数の為、両軍入り乱れ殆どゼロ距離での乱戦は如何に親衛艦隊と言えども数の前に瞬く間にすり減らされていた。

 

それでもなお彼女等は戦うことを辞めない、その鬼気迫る姿に反乱艦隊側も流石にこう叫ばざるを得なかった。

 

「何故奴ラハコウマデ戦ウ、飛行場姫ニソレ程ノ価値ガアルト言ウノカ⁉︎」

 

「アンナ女ノドコニソンナ価値ガアル!」

 

しかし彼女達の悲痛の叫びに答えるわけも無く、親衛艦隊は尚も戦い続ける。

 

その鬼気迫る姿に感化されたのか、周りにいる者達も敵にその身を投げ出していく。

 

戦場に渦巻く恐怖と狂気は敵味方問わず伝染し、また一人また一人と深海棲艦は中身をぶちまけながら倒れていった。

 

だが彼女達のその必死の抵抗もそう長くは続かなかった、矢尽き刀折れ最期の一人になるまで抵抗を続けた親衛艦隊は遂に全滅したのだ。

 

しかし親衛艦隊の全滅と引き換えに、反乱艦隊は敵の倍以上の被害を被り一時再編の為その動きを鈍化させなければならなかった。

 

艦隊の動きこそ止まったものの、空では敵の艦隊が引いた事もあり制空権を掌握。

 

余勢をかっていち早く敵要塞を攻撃すべく、爆装した艦載機が空母ヲ級やヌ級から次々と発艦していっていた。

 

「行キナサイ、アノ阿婆擦レニ誰ガ空ノ王者ナノカ教エテアゲルノヨ!」

 

そう高らかに宣言するのは、空母機動艦隊を指揮する空母棲姫であった。

 

自身の飛行甲板からも続々と艦載機を発艦させ、今やその周囲には反乱艦隊側の航空戦力が一堂に会し輪を成していた。

 

今まで日和見を決め込んでいた彼女達空母閥だが、戦艦棲姫生存の報とその離反を知るや否や挙って彼女の軍門に降り戦力の中核となっていた。

 

何故なら他の雑多な離反集団と比べ力を温存していた空母閥には、他所には無い組織力がありその影響力は戦艦棲姫でも無視出来ないものであったのだ。

 

無論今の今まで日和見を決め込んでいた集団が突然自分達の中核に組み込まれた事を快く思わない者達も存在する。

 

「空母棲姫サマ、シカシ我々ダケデ本当ニ宜シイノデ?戦艦棲姫サマカラハ空海両方デ同時攻撃ヲスルトノゴ指示がありアリマシタガ」

 

空母棲姫の側近の一人、ヲ級改flagshipがそう疑念をもらした。

 

只でさえ日和見主義者と目を付けられているのだ、此処での勝手な行動が命令違反だと後で咎められないかと不安なのだ。

 

しかし空母棲姫は全く逆の考えであった。

 

「イイエ、寧ロ此処デ功績ヲ是ガ非デモ上ゲナケレバナラナイワ。他ノ者達ヲ黙ラセル為ニモ、私達ハ行動スル必要ガアルノヨ」

 

一派閥を率いる者の役目として、この戦いが終わった後の事も考えて行動する必要が彼女にはあった。

 

仮にヲ級改の言う通り戦艦棲姫の指示に従って行動しても、それは戦艦棲姫の功績であり決して空母派閥の功績では無い。

 

前線の惨状を知るからこそ、後方でただ支援をしていただけと見られないように、何等かの赫赫たる功績を挙げる必要があるのだ。

 

でなければ、今後自分達は戦艦棲姫が作る新体制の下で肩身を狭くさせねばなるまい。

 

そんな惨めな未来を作らない為にも、空母棲姫は多少強引でも行動する必要があったのだ。

 

 

 

 

 

 

空母棲姫達から発艦した艦載機の大編隊は、直ぐに要塞の防空レーダーに捉えられる事となる。

 

地表戦闘指揮所にて指揮を取っていた離島棲鬼は、敵が空中戦力だけで攻めてくると見てほくそ笑んだ。

 

「愚カナ連中、この要塞ヲ航空機ダケデ何トカ出来ルト思ッテイルノネ」

 

確かに航空機による攻撃で敵戦力を消耗させるのは基本的な手だが、しかしそれはこの要塞にとっては悪手であった。

 

「タワーヲ起動サセナサイ、コノ要塞ノ本当ノ姿ヲ見セ付ケテヤルノヨ!」

 

離島棲鬼の指示により、今までジャングルの下に隠されていた要塞の真の姿が現れる。

 

巧妙に隠蔽されていた巨大な地下へと続くハッチが開き、中から巨大な塔が垂直に現れた。

 

要塞の全周を囲うようにいくつも現れた塔は、至る所に対空砲がハリネズミの様に張り巡らされており、天辺には16inch連装砲が砲身を高く上げ空を睨んでいる。

 

そしてその全ての砲口が、これから来る敵の方向に向けられていたのだ。

 

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