超兵器これくしょん   作:rahotu

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今回、後になって読み返して重大なミスを発見しました。

それにつきましては後日修正する予定です、それまではこのまま続けます。


49話

49話

 

要塞上空に侵入した反乱艦隊の航空機達は、眼下の高射砲塔から手厚い歓迎を受けた。

 

「3番機ガ食ワレタ!誰カ助ケテクレ」

 

「下ハ真ッ赤ダ、アンナ所ニ突ッ込メッテ言ウノカ⁉︎」

 

「火ガ火ガアアァァ!」

 

重たい爆弾を抱えたまま、碌な回避行動も出来ずに蚊トンボの様に次々と撃ち落とされていく航空機達。

 

不幸なことに腹に抱える爆弾のせいで簡単に火が付くどころか、爆散しその破片が周囲に撒き散らされる事で余計に被害が増すなど最早彼等に逃げ場は何処にも無かった。

 

膨大な数の対空砲火とレーダーによる連動によって、高密度かつ高精度な対空網を形成した要塞は空からの攻撃に対して正に鉄壁であったのだ。

 

「兎ニ角、アノ塔ヲ黙ラセナイ事ニハ始マラナイゾ⁉︎」

 

誰かがそう叫ぶも、周囲の味方は返事を返す余裕もなくまた一体誰があの濃密な対空砲火の中に突っ込んで爆撃出来ると言うのか?

 

深海棲艦お得意な急降下爆撃を仕掛けようにも、天高く砲身を掲げる高射砲に絶えず狙われ、逆に勇気ある何機かの航空機が地表ギリギリから接近し爆撃を試みようとするも、今度は塔の全周囲に張り巡らされた対空砲火にとらわれ撃退される。

 

兎に角機体を身軽にしようと碌な狙いも付けずに落とされた散発的な爆弾や、運良く偶々塔に命中した爆弾はあっても、頑丈な強化コンクリートと鉄骨で固められた塔にはヒビ一つさえ入らない。

 

正に堅牢鉄壁、硬い守りの要塞を前に航空機部隊はただイタズラに戦力を消耗させるのみであったのだ。

 

同じ頃、漸く戦力の再編を終えた反乱艦隊本隊であったが、空母機動艦隊の突出を知ると反乱艦隊幹部達は俄かに色めき立った。

 

「空母棲姫メ、早リオッテ!」

 

「今ハソンナ事ヲ言ッテモ仕方ナイワ。兎ニ角、我々モ出ルシカ無イノデハナクテ?」

 

駆逐棲姫は軽巡棲鬼を諌めつつも、内心では軽巡棲鬼に同意していた。

 

空母棲姫が早ってしまったがために、折角戦艦棲姫が考えた計画が台無しにされてしまったが為だ。

 

だがそんな事を今此処で言っても仕方がない事くらい、彼女達は分かっていた。

 

しかしこの戦いが終わった後、その責任はタップリと空母棲姫には負ってもらうつもりだ。

 

「姫サマ、イカガ致シマショウ?」

 

新たに戦艦棲姫の幕下に入った駆逐古鬼がそう尋ねる。

 

彼女は古めかしい格好に名前に“古”とついてこそすれ、単独の実力では古参の2人を凌駕していた。

 

しかし性能に奢れる所があり、戦艦棲姫の元で研鑽を積んだ2人に比べ指揮官としての素養は低いがためこの戦いでは部隊を率いさせて貰っていなかったのだ。

 

巨大な艤装に鎮座する戦艦棲姫は、既にこの時胸の内は決まっていた。

 

「中途半端ニ増援ヲ出シテモ解決スマイ。此処デ飛行場姫トハ決着ヲツケル」

 

それは遂に戦艦棲姫と飛行場姫、二大勢力の巨頭同士の決戦を意味していた。

 

この戦いの勝者が、今後の深海棲艦の運命を決めると言っても過言では無い。

 

「デシタラ先鋒ハオ任セヲ、姫サマノ敵ハ全テコノ古鬼ガ討チ滅ボシテクレマスワ」

 

勢い良く立ち上がった駆逐古鬼はそう進言し、戦艦棲姫もその言を入れて頷く。

 

「ワ、我等モ力ヲ尽クシテ戦イマスゾ⁉︎」

 

「身命ヲ賭シテ、必ズヤ勝利ヲ」

 

出遅れた2人も、負けじと威勢良く応え一致団結して反乱艦隊は士気を高め一路要塞を目指し全軍が突き進んでいった。

 

 

 

 

その一方焙煎達はと言うと…。

 

「いやダメだ、認められない」

 

焙煎は力強い口調でキッパリとそう言い、視線を真っ直ぐに焙煎の顔に注いでいる軽巡神通は険しい表情を浮かべ、その2人の間でスキズブラズニルはアタフタとしていた。

 

時は少し遡り、超兵器達の要請によって追加の補給物資を送り届けた直後の事である。

 

スキズブラズニルの艦橋で艦長席に座って事態の推移を見守っていた焙煎の背後で、突如として防水扉が勢い良く開く音が響いた。

 

「勝手ながら失礼させて頂きます」

 

そう言ってズカズカと艦橋に入り込んできたのは、焙煎達が南方海域脱出の折に救出した艦娘が一人、神通であった。

 

「あ、もう〜良く〜なったん〜ですね〜」

 

とスキズブラズニルが呑気にそんな事を言うが、神通はそれを無視して真っ直ぐに焙煎の前まで来るとこう言った。

 

「我々も出撃させて下さい」

 

その瞬間艦橋の中は一瞬シーンと静まりかえる。

 

スキズブラズニルの艦橋には本人と焙煎以外にも、スキズブラズニルの負担を減らす為妖精さん達が各種業務を行っており、各所との連絡や指示を伝えていた彼等は神通の一言で頭の中が真っ白になってしまったのだ。

 

「いやダメだ、認められない」

 

焙煎は目の前に立つ神通に向かって素気無く、しかしハッキリと力強い口調でそう言った。

 

途端目線が険しくなる神通に、空気が代わった事にアタフタするスキズブラズニル。

 

「何故ですか」

 

「傷は癒えたのか?完治したとの報告は受けてはいないが」

 

「体調は万全です。ですから出撃を、とお願いした次第です」

 

口調こそ丁寧だが、神通の態度には明らかに焙煎を軽視する態度が込められていた。

 

元来艦娘とは取り扱いが難しい存在であり、本人の気質にもよるが軍内部の階級や秩序よりも提督を重視する傾向にある。

 

つまり、士官学校で提督適正の最低値を叩き出した焙煎は明らかに、艦娘として経験豊富でかつごく限られた者にしか到達出来ない高みに達した神通改二に舐められているのだ。

 

「出撃してどうする」

 

「敵と戦います。それが私達の役目です」

 

言葉の節々には、「そんな事も言わなければ分からないのか」と言う侮蔑が込められており、特に提督適正の低い相手に対する艦娘の反応はこれが顕著である。

 

「何故私達の出撃を拒むのです?一体私達の何が不足していると言うのです」

 

今度は神通が焙煎に問いかけた。

 

「高速修復材のお陰で身体の傷は癒えました。艤装も直して頂きいつでも出撃出来る状態は整いました」

 

「ま、待って〜下さい〜⁉︎」

 

とそこでスキズブラズニルが神通の話に割って入る。

 

「幾ら〜高速〜修復材を〜使っても〜失った〜体力は〜直ぐには〜戻りません〜」

 

「そもそも〜艤装は〜修理〜出来ても〜肝心の〜装備に〜燃料は〜、全然〜補充〜出来て〜いないのです〜」

 

いつもの妙に間延びする声のせいで、普通に言うよりも時間がかかる話し方だが、しかしこの場ではそれは有り難かった。

 

「神通、だったか。スキズブラズニルの言う通りだと、コイツはドック艦でしかも横須賀で明石とも一緒に働いた事もある」

 

「コイツの話を聞く限り、君が言うように出撃出来る状態とは思えんが」

 

そう焙煎に指摘されて、神通は普段の彼女ならば決して見せない舌打ちをした。

 

「ご迷惑はおかけしません。そもそもこうして参ったのは助けて頂いた恩義があるからで、貴方には私達への指揮権はない筈では?」

 

等々取り繕う余裕も無くしたのか、神通の無礼な物言いに対ししかし焙煎は平然とこう答えた。

 

「ああ、確かに。提督のいる艦娘に対しては例え軍令部であっても命令を強制する事は出来んな」

 

「ば、焙煎さん〜⁉︎」

 

焙煎があっさりと認めてしまった事に、スキズブラズニルは落胆と共に驚く。

 

(やっぱり〜このハゲ〜!に期待したのは〜無駄でした〜)

 

他所の艦娘どころか自分の艦娘にさえ侮られる焙煎だが、しかし彼は続けてこう言う。

 

「では聞こう、君達の出撃を命じたのはその提督かな?」

 

その瞬間神通の表情は益々険しくなる、まるで触れて欲しくない場所に無造作に触れられたように怒りの感情さえ見える。

 

「艦娘に命令出来るのは提督のみ、また艦娘が独自で動く事は軍規により硬く禁止されている。と、言う事はだ」

 

焙煎は艦長席から降り、180㎝を超えるウドの大木は神通を見下ろしながらこう続けた。

 

「君達に出撃を命じた提督がいる筈だが、その提督は一体何処にいるのかな?」

 

その瞬間神通の中で今まで張っていた何かの糸が切れた、そして感情の赴くままに焙煎に掴みかかろうとして…。

 

「もうやめなよ、神通」

 

聞き覚えのあるその声に神通は「はっ」と我に帰り、その声の主を見た。

 

焙煎も振り返ると、そこには防水扉に寄りかかるように身体を預けている川内がいた。

 

まだ身体の傷が癒えていないのか、所々包帯が巻かれ血が滲んでいる。

 

如何に高速修復材と言えども、半日もたっていなければ全ての傷を塞ぐ事は出来ないのだ。

 

「姉さん⁉︎」

 

「神通、私が言うのも何だけど…提督はきっとこんな事を望んじゃいないよ」

 

「でも…!」

 

神通は自分の感情が整理出来なくなり、両の目に涙が浮かぶ。

 

「でも提督は…あの時…」

 

等々その場に崩れ落ちる神通、その様子を焙煎は唯黙った見ておりスキズブラズニルもどうしていいか分からない様子で会った。

 

「川内、だったか。話してくれるか?」

 

「ええ、焙煎中佐。この私程度の話で良ければ」

 

そうして川内は語り始める、あの時あの夜に一体何が会ったかを。

 

深海棲艦の奇襲を受け、敵の侵入を防ぐべく川内達は提督の指揮で戦い続けていた。

 

しかし多勢に無勢、味方の損害ばかりが積み重なり遂に全軍撤退の命令が下り、あの時提督は負傷者を先に船に乗せ、自身は殿部隊の指揮を取るべく指揮船に残ったのだ。

 

川内達は負傷者を非難船に乗せ、後送する為護衛任務に就いた。

 

そしてそれが、提督の姿を見た最後の瞬間であった…。

 

「後はご存知の通り、敵の追撃に捕まり中佐達に救助してもらった次第です」

 

川内が語り終え、いつしか艦橋にいた妖精さん達は業務を忘れこの話がどんな結末を迎えるのかと見守っていた。

 

「成る程、で提督とは…」

 

「それは…」

 

と川内が答えようとして、床に項垂れていた神通が顔をバッと上げてこう叫んだ。

 

「あのヒトは死んでなんかいません!提督はちゃんと約束してくれたんです」

 

「後で会おうって、そしてこの戦いが終わったら横須賀で…皆んなの前で…」

 

最後は蚊の消え入りそうな声になり、嗚咽を漏らす神通。

 

神通の頬を垂れた涙は、彼女の左手の薬指に落ちる。

 

そしてそこで漸く周囲の者達は気が付いた、神通の薬指には真新しいリングが嵌められているのを。

 

「成る程、状況は理解した。しかしハッキリと理由を聞いてしまったからには私もこう答えるしかあるまい」

 

「君達の出撃は許可出来ない」

 

焙煎の余りに無情な一言に、スキズブラズニルは「信じられない」といった表情を浮かべる。

 

あんな話を聞いた後、慰めるでもなく励ますでもなく、あくまでも無情な事を言う焙煎の精神を疑ったのだ。

 

しかし焙煎とて冷血漢ではない、寧ろ彼は他人の意見に左右されやすい凡人である。

 

しかし、彼の知る常識や感性はこの世界のそれと=では無く、あくまでも彼がいた元の世界。

 

そうつまり超兵器によって荒廃し尽くした世界の常識なのだ。

 

深海棲艦と長らく戦争が続くも、完全には平穏を奪われていないこの世界の住人とでは、その精神性に大きな隔たりがあった。

 

「川内、神通以外にもなる出撃を望む者はいるのか?」

 

「と、言うよりも私以外皆仲間の仇を取るんだと聞かなくて…それでここまで参った次第です」

 

つまりあの時助けた艦娘がそっくりそのまま出撃を声高に叫んでいるのだ、焙煎は苦虫を噛み潰したかのような渋面を浮かべる。

 

(スキズブラズニルには悪いが、矢張りあの時助けるべきじゃ無かったんだ。)

 

(超兵器が出払っている今、暴れられたら止める手段なんかコッチには無いんだぞ!)

 

焙煎は川内達の目がなければ、此処で頭を抱えて丸くなりたい気分だったが、しかし今此処で他人に弱気を見せる訳にはいかなかった。

 

そもそも川内の話を聞く限り、下で騒いでいる連中が今すぐにでも此処に突っ込んで来るかもしれない。

 

そう考えると、焙煎は此処で断固たる態度を見せる必要があったのだ。

 

(と言うか、軍規はどうした軍規は〜⁉︎これ完全に艦娘側が暴走してるよ〜)

 

(これだから指輪持ちは厄介なのに。)

 

因みに指輪持ちとはその名の通り結婚カッコカリをした提督と艦娘の事であり、トンデモナイ力を発揮する代わりに益々提督にゾッコンになり他を軽視する傾向が強まるのだ。

 

その為カッコカリ持ちの提督との関係は、本来上位者である筈の軍令部と言えども慎重に当たらねばならなかった。

 

まだ後方勤務だった時代、カッコカリが存在する鎮守府の補給物資は態々軍令部からの指示でイロがつけられていたほどだ。

 

そしてその内容品はカッコカリ艦娘の個人的な趣味や趣向品の類であったりなど、ブランド物のバックだったりと軍需物資とは到底呼べないものが多数であった。

 

(最も超兵器に好き勝手に足湯や養蜂場や酒造所に果てはゴルフ場まで作られている焙煎も人の事は言えないが)

 

焙煎はこの厄介なカッコカリ持ちを収めるべく、遂に高野元帥から託された殿下の宝刀を使う事にした。

 

さしもの艦娘達も、軍令部と高野元帥直々の委任状を見ればその権威に平伏すだろうとこの時は考えていたのだ。

 

「成る程、君達があくまでも私の命令に従えないとあらば此方にも考えがある。スキズブラズニル、アレを出してくれ」

 

と焙煎はカッコよくスキズブラズニルに手を出すが、当のスキズブラズニルは困惑し小首を傾げる。

 

「焙煎さ〜ん、アレって〜何ですか〜?」

 

「おまバカ、アレってのはなこの前渡した書類のことだよ⁉︎」

 

と思わず素が出てしまう焙煎、所詮凡人がカッコつけた所でハゲの人がカツラを被るくらい無意味な事なのだ。

 

兎に角、焙煎達もまた別な意味で困難な状況に陥っていた。

 

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