超兵器これくしょん   作:rahotu

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55話

55話

 

「……っ、はぁ…。終わりましてよ」

 

揺れ動く心を置いて、生身の本体へと意識を戻したアルウスは、戻るなり勤めて普段通りの態度を装った。

 

無論見るものが見れば、その顔色や表情が優れない事はすぐ分かっただろうが、しかし敵地と言う事もあり、超兵器達の誰しもが彼女の変化には気付かなかった。

 

超兵器達の仲間意識の希薄さも関係していたが、それ以上にもう間も無く敵要塞を視界に捉えるとあって、いやが応にも周囲への警戒心が強まっていたのだ。

 

最もただ1人、海中で対潜対雷撃警戒をして耳をすませていたドレッドノートのみは、戻って来た時、偶然聞いた心音の変化や鼓動の様子から、アルウスの調子があまり良くない事は分かっていた。

 

それを態々直接言うほど彼女は親切では無かったし、そもそも伝えたところです変に噛み付かれるのがオチだと、彼女は分かっていたからだ。

 

(全くどうにも最近、この艦隊は妙に人間臭くなりましたね)

 

(あまり、兵器としては良い兆候とは思えませんね。任務遂行に支障が出ねば良いのですが…)

 

 

艦隊を組んで、航行する超兵器達が立てるノイズの影に隠れるドレッドノートは、そう誰にも聞かれぬようそう1人心の中で思いながら進んでいく。

 

 

 

 

 

 

虎の子の核兵器を装備した重爆撃機を失い、離島棲鬼は内心地団駄を踏んでいた。

 

成功していれば万が一の逆転の目もあったが、しかし持てる手札の中で最高の一手を切ったのにも関わらず、彼女は賭けに失敗したのだ。

 

残る現有戦力では…海上戦力もなく超兵器に決定打を与えられない以上最早彼女に手は残されてはいなかった。

 

(最早ココマデデスワ、ナラバセメテ姫サマダケデモ⁉︎)

 

離島棲鬼の目には最早要塞の陥落は明らかであった、ならば此処で自らが囮となって敵を引き付けている間に、飛行場姫に遠くへ落ち延びて貰おうと考えたのだ。

 

世界の海には、飛行場姫と同じく陸上型で鬼・姫の深海棲艦が大勢いる。

 

その彼女達と合流し、捲土重来を期待するしか最早道は無かった。

 

離島棲鬼はそうと心に決めると、早速地下司令部にいる飛行場姫に自らの考えを伝えるべく直接回線を繋げる。

 

普段であれば深海棲艦同士の通信は高度なネットワーク上で行われるのだが、今回の戦いでは同じ深海棲艦同士が相手であり、互いが容易に相手の通信を傍受出来てしまう。

 

それを防ぐためにも、飛行場姫などは政権を取る前からネットワークに頼らない通信手段を確立しており、戦艦棲姫もまた蜂起の際その間際まで直属の部下と手紙による綿密な連絡を行なっていた。

 

一見するとアナログに見えるこれらの行為も、軍事上意味のある有効な手段なのだ。

 

「申シ訳アリマセン姫サマ…私ノ不徳ニヨッテ折角与エラレタ核ヲ失ウバカリカコノ要塞マデ陥落ノ危機二瀕シテオリマスワ」

 

そう始まる離島棲鬼の言葉は、聞くものに彼女の悲壮感がヒシヒシと伝わってくる。

 

敗軍の将として、死してその責任を取りたいと、離島棲鬼はそう強く思っていたのだ。

 

この後幾ら罵声や怒号が来てもいいように身構える離島棲鬼、しかし彼女の予想したものは訪れなかった。

 

代わりに、これまでに無い優しい口調で飛行場姫は語りかけたのだ。

 

「…分カッタワ離島棲鬼、コレマデ良クヤッテクレタワネ」

 

そればかりか、飛行場姫は失敗の責任を追及するのではなく、逆に今までの労を労うでは無いか。

 

「本当にこれが自分の知る姫さまか⁉︎」とその豹変に失礼と思いつつ半信半疑になる離島棲鬼。

 

有能だが、傲慢でかつ冷酷であり人を決して心から信用するような方では無いと、離島棲鬼はつくづく思っていた。

 

この様に、敗北者にわざわざ優しい言葉をかける一面があったなど、この時始めて知ったのだ。

 

だがそれ以上に飛行場姫が次に発した言葉が更に彼女を驚かせた。

 

「私ハ決シテ退カナイワヨ」

 

退避を勧めようとする離島棲鬼に先んじて、飛行場姫からそんな事を言われたのだ。

 

「デ、デスガ姫サマ…⁉︎」

 

しかし離島棲鬼はそれ以上言葉を続ける事が出来なかった、例え電話越しで相手の顔が見えなくとも、その力強い口調からは自信がありありと読み取れたからだ。

 

飛行場姫は敗色濃厚だからと言って部下と共に潔く死を選ぶようなお方では無い!

 

離島棲鬼が知る飛行場姫とは正にその様な人物であったし、また彼女が根拠のない自信を他者にひけらかす様な人物でない事も良く知っていた。

 

つまり、飛行場姫には離島棲鬼さえ知らない奥の手が残っていると言う事だ。

 

「離島棲鬼、貴女ハソノ時ガ来ルマデ戦イナサイ。ソシテ最後マデ私ト共二戦イ続ケルノヨ」

 

そう言われてしまっては、離島棲鬼からはもう何も言う事は出来なくなっていた。

 

しかし負け戦に一筋の光明が見えた事は確かであり、それが一体何なのかは分からないが、しかし彼女に戦意を取り戻すには十分な理由であったのだ。

 

飛行場姫との通信を終え戻って来た時の離島棲鬼の顔には、普段通りのいや普段にも増した不敵な笑みをたたえ全身に気力が漲っていた。

 

彼女は戻るなり早速仕事を再開し、残る全部隊に檄を飛ばし防衛線を再構築し始める。

 

そして全軍に「一歩も退くな」との厳命を下した。

 

勝手に持ち場を離れる者、逃げ出す者は容赦なく現実の対象となったが、そのお陰で超兵器と言う未曾有の脅威を前に怖気付いていた深海棲艦側の士気を回復して、秩序を取り戻す事に成功したのだ。

 

彼女もまた危機を前に大きくその能力を発揮する類の人物であった。

 

一方離島棲鬼との通信を終えた飛行場姫は、自らの艤装を置いて一人地下司令部を後にする。

 

そして要塞を建設した離島棲鬼さえ知らない秘密の通路を通り、彼女は要塞の最深部に足を踏み入れた。

 

奥に向かって歩くにつれ、気温はドンドンと下がり、吐く息は白く染まっていく。

 

凍った水分が霜や氷となって壁や通路に張り付き、恰も巨大な冷蔵庫の中にいるかの様な場所で、行き止まりに着いた時彼女の目の前に巨大な分厚い壁が現れる。

 

いやより正確に言えば、それは中のものと外界とを隔てる巨大な球体状の容器の一部であった。

 

特殊鋼で作られた厚さ1mはあろう隔壁に手を触れた飛行場姫は、触れた箇所から登録された生体情報を読み取った機械が認証を終え、厳重に封印された隔壁の一部が開き中へと続く通路が現れる。

 

現れた通路の奥からは、青白い光が漏れ容器の周囲を監視していたカメラや危機が異常なノイズを検知した。

 

寒さとはまた別の、肌に突き刺さる様な電磁波を浴びて、しかし飛行場姫は不敵に笑う。

 

まだ此処は入り口に過ぎない、そして彼女の求めるものとは、正にこの先にあるのだから。

 

飛行場姫が足を一歩通路へと踏み出そうとした時、振動と共に天井から埃が落ちる。

 

「…始マッタワネ」

 

それは離島棲鬼と超兵器達との開戦の合図を知らせる号砲であった。

 

 

 

 

 

 

開戦と同時に離島棲鬼と超兵器達は、互いに激しく砲火の応酬を続けているが、明らかに超兵器側が優勢であった。

 

その理由はいくつもあるが、例えば深海棲艦側は反乱の発生により戦力が半減している事、また反乱艦隊により海上戦力がそうしてしまっている事、航空戦力を空母棲姫やアルウスとの戦いで全て喪失している事などなど…。

 

上げればキリはないが、ただ一つ決定的なのはある存在が影響していた。

 

「さあ、ウチの晴れ舞台や。その目に確りと焼き付けておくんなまし」

 

そう言って播磨は巨大な艤装を展開し、主砲、副砲合わせて50門以上もの砲門を要塞島に向ける。

 

そして伸ばした手を振りかざし、一斉に発射され炎をあげる砲口、全弾発射の爆風により波は沸き立ち、大気は振動してその衝撃は超巨大双胴戦艦播磨国巨大をも揺るがした。

 

大気を切り裂き、ソニックブームを発生させながら大質量弾が人工の大地に命中すると、その瞬間内部に蓄えられていた破滅的なエネルギーが解放される。

 

鼓膜いや大気や海さえも震わせる大音量の爆音が鳴り響き、着弾の衝撃で要塞島そのものさえ傾く。

 

もうもうと立ち込める黒煙は天を焦がし、根元から折れ粉砕された高射砲砲塔の残骸が降り注ぎ、その破壊力の凄まじさを想像させた。

 

だがそれさえもこれから行われる破壊の序章にしか過ぎない。

 

水際で防衛しようと、自ら座礁し固定砲台となった深海棲艦や、掩体や隠蔽された塹壕の中から砲台小鬼の群れが海上の超兵器に向けて5inch砲を撃ちまくる。

 

しかし洋上を70ノット以上の速度で航行するヴィルベルヴィント達にはまるで当らず、逆に塹壕の何処に自分達が居るのかを敵に晒してしまう形となってしまった。

 

「こちらヴィルベルヴィント、トーチカの位置を特定した。座標データを送る」

 

ヴィルベルヴィントから送られたデータを受信したシュトゥルムヴィント、ヴィントシュトースの両名はそのデータに従い高速移動しながら砲の照準を合わせる。

 

41㎝長砲身砲12門、25㎝長砲身砲6門の砲塔が旋回し、合計18発もの砲弾をトーチカ陣地に叩き込んだ。

 

それは大艦巨砲主義の鏡である播磨砲撃と比べてインパクトに劣るが、しかしそれでも長門以上の火力と高度なレーダー照準による性格な砲撃と合わさり、全ての砲弾は目標である全てに命中した。

 

掩体や塹壕に隠れしかも鉄筋コンクリートで強固な守りを築いていた筈の砲台小鬼達も、純粋な火力の差を前にトーチカ毎叩き潰されていく。

 

通常、洋上の戦艦と沿岸砲台とではその命中に差が出る。

 

陸地にあって固定化されている沿岸砲に比べ、常に波に揺られ移動し続けねばならない戦艦とでは命中率に大きく影響した。

 

それは高度なレーダーとミサイルの登場によって変化を迎えるが、それ以前の歴史において強固な沿岸砲に守られた港を戦艦だけで攻略するのは不可能とされたのだ。

 

だがしかし、超兵器の前にはそれらの常識は全て膝を屈する。

 

初期の超兵器とはいえ、その韋駄天が如き速さに砲台小鬼の照準は追いつかず、そもそも艦娘の身となった事で以前よりも遥かに小回りが効き、回避能力では他の追従を許さない。

 

最も命中したとしても、強固な装甲の前には例え5inch砲でも無力と言うもの。

 

超高速巡洋戦艦という名がついて誤解されがちだが、ヴィルベルヴィント達は並みの戦艦よりも遥かにタフなのだ。

 

砲台小鬼達は自分達が敵に対して全く無力であると言う絶望感をひしひしと感じていた。

 

相手の心が折れても、しかし超兵器達は全く手を抜かない。

 

「姉よ、チマチマ潰すのは面倒だ。一気に叩き潰すぞ」

 

敵の攻撃を誘い、カウンターで相手の陣地を潰すというヴィルベルヴィントらしい正統派かつ間怠っこしいやり方に焦れたシュトゥルムヴィントが、そう言って艤装からロケット弾を展開する。

 

放たれた大小様々なロケット弾は、先ほどの精密な砲撃と違い広範囲に着弾し爆煙をばら撒く。

 

隠れている相手を、圧倒的火力で燻り出そうと言うのだ。

 

「相変わらずお前は力任せだな」

 

「すまないな姉よ、だが私は堪え症がないのだ」

 

とヴィルベルヴィントに窘められてもそう嘯くシュトゥルムヴィント。

 

ヴィルベルヴィントの方も敵の反撃が散発的になってきた事を鑑み、妹の言もある程度正しいとは思っているが、目の前の敵を倒すことが本当の目的では無かった。

 

最もそれを直接言って言う事を聞くほど、こよ妹は素直でも殊勝でもない。

 

「沿岸部の敵を排除するだけでいい、余り無駄玉を打つなよ」

 

とそう言って諌めるに留めるヴィルベルヴィント、三姉妹の長女であってま妹達の手綱を握るのは相当苦労しているのだ。

 

播磨、ヴィルベルヴィント達によって要塞島そのものの戦闘力と地形が削られ、空の守りの要でもある高射砲塔も既に半分以上を破壊されていた。

 

無論離島棲鬼も唯手をこまねいていた訳ではなく、噂の揚陸艦超兵器の攻撃に備え、沿岸部のトーチカ陣地に籠る深海棲艦を島の奥へと撤退させている。

 

水際での防御を諦め、内部でのゲリラ戦に移行しようとしていたのだ。

 

だが全ての深海棲艦が無事に内陸部に逃げられたわけではない、砂浜に座礁した深海棲艦達は身動きが取れず味方から置いてけぼりにされてしまっていた。

 

「ワ、私達ヲ置イテカナイデクレー⁉︎」

 

「コンナ所ニ置キ去リナンテ嫌ダァ‼︎」

 

そうした悲痛な叫びが、砂浜のあちこちから上がる。

 

トーチカと防空砲台の援護がなくなった彼女たちは、遮蔽物が一つもない砂浜で敵に無防備な姿を晒しているのだ。

 

そして身動きが取れない無防備な獲物程、彼女の好物は無い。

 

「全く、無様な泣き声なんて上げてしまって、優雅ではありませんです事よ?」

 

そう言ってアルウスは弓矢を引き絞り、放たれた矢はB-17、B-25の爆撃機編隊へと姿を変える。

 

総勢100機にも及ぶ爆撃機編隊、半数は内陸部に逃れた敵の追撃と飛行場の爆撃に回し、もう半分は沿岸部へと向かう。

 

接近してくる爆撃機の影に気付いた深海棲艦が、敵を近寄らせまいと対空砲火を上げ必死の抵抗をする。

 

恥も外聞も無く、唯迫り来る破滅から逃れたいが為に、涙や鼻水さえ垂らしながら抵抗するものもいた。

 

しかし、それらを見てアルウスは頬を釣り上げ、こう笑った。

 

「あらぁ、泣いてる子がいるじゃ無い、全く躾がなっていないわね?」

 

「泣いてる子には、怖〜い、怖〜い蜂がやってくるって知らないのかしら」

 

色々と鬱憤やら何やらが溜まっていたアルウスは、そらを目の前の“標的”で解消しようとしていた。

 

恐怖に飲まれた相手の抵抗など、アルウスにとってまるで脅威では無かったのだ。

 

アルウスは深海棲艦が座礁した砂浜に対して、その頭上を爆撃機部隊が丁度通るような進路を取らせる。

 

脇を内陸部にいる深海棲艦に晒す格好となるが、その相手に対しては別働隊が相手をしているので問題はない。

 

そして、何ら組織だった対空砲火を上げる事が出来ない相手に対して、悠々とその頭上に侵入した爆撃機部隊は爆弾倉を開き次々とドラム缶の様なものを投下する。

 

燃料を空から周囲に撒き散らしながら落下するそれは、地面に着弾するやいなや周囲をあっと言う間に炎に包む。

 

一瞬のうちに砂浜は炎で埋め尽くされ、火の檻に閉じ込められた深海棲艦達が体に着いた火を消そうとのたうち回る。

 

今回アルウスが使用したのはナパーム弾と呼ばれる爆弾であり、広範囲を焼き払うと言う意味では焼夷弾と似た性質を持っていた。

 

無数の子機をクラスター爆弾の様にばら撒く焼夷弾と違い、ナパーム弾はその威力範囲共により強力なものとなっている。

 

主に隠蔽された陣地やジャングルなどの障害を敵諸共焼き払う兵器だが、今回の場合深海棲艦に対しても大きな効果を上げた。

 

深海棲艦は強力な砲や魚雷などを装備する人型の艦船だが、完全な艦と言う訳ではない。

 

戦闘艦ならば、分厚い装甲と何重もの隔壁を封鎖すれば外からの火災から内部の重要機関を守れる。

 

しかしなまじ人型の部分を残している深海棲艦ではそれが出来ないのだ。

 

装甲や皮膚の部分に燃料ごとついた火は払っても消えず、一瞬で1000℃以上にもなる高温により周囲の酸素は消費尽くされてしまう。

 

酸素がなくなった深海棲艦は口をパクパクとさせ空気を求めるが、急激な酸欠により意識を失い炎に包まれる。

 

これが海の上ならば避けるなり最悪海の中に潜ることも出来たのだが、自ら船である事をやめてしまった彼女達に最早逃げ場など何処にもない。

 

この世界でもその残酷性から非人道的兵器とされ、使用が禁止あるいは制限される程の兵器だが、深海棲艦相手には使ってもまるで問題はないのだ。

 

内陸部に対しても同じようにナパーム弾による攻撃が行われ、要塞島の至る所で発生した火災は最早誰の手にも止める事など出来ない。

 

鉄と肉とが焼ける嫌な臭いが戦場を包む中、延々と燃え盛る炎に照らし出された爆撃機部隊の影は、まるで死神の翼の様に見えた。

 

鬱屈した心を、敵を残虐なしかも効率的な方法で殺戮する事で晴らしたアルウス。

 

最も敵とはいえ、その惨状に流石に他の超兵器達も鼻白んだが。

 

特に地獄の業火の様に燃え盛る島を見て、播磨は露骨に顔をしかめた。

 

元の世界、彼女の遠い記憶で似た様な景色を彼女は何度も見てきたのだ。

 

大戦末期、三つ巴の世界大戦はその戦火を後方の民間人にさえ拡大させ、国民そのものを標的とした都市間爆撃の応酬が行われた。

 

特に播磨が属して大日本帝国は、その住居や都市の多くが木造であったことが災いし、連合国による大規模焼夷弾攻撃で文字通り多くの都市が灰燼に帰している。

 

多くの無辜の市民、陛下の赤子が焼き殺された恨みを、彼女はいまだに抱いていた。

 

最もその報復とした富嶽やドイツから提供された弾道ミサイルで西海岸の都市を5つ程吹き飛ばしてもいたりする。

 

超兵器はこの世界に来て、かつての陣営や国家という枠組みから解放されたとはいえ、その記憶と胸の内に抱いた思いは中々消せるものでは無いのだ。

 

播磨とアルウス、その両者の間にある問題や確執の根本は、かなり根深い。

 

さて海の上で地獄が作り出されている中、ここ数話あまり出番がなく影が薄かったドレッドノートはと言うと、海中深く進み要塞島の海底を調べていた。

 

(成る程、これは中々に厄介そうですね)

 

ドレッドノートが手を触れるそれは、巨大な円筒状の柱であった。

 

そしてそれが何本も要塞島と海底を繋ぐように立っていたのだ。

 

要塞島はそもそも天然の島ではなく、海上に建設され人工物である。

 

その規模は当然ながら史上類を見ないが、海底と接続された支柱の数と太さはドレッドノートも見た事さえ無かった。

 

今回超兵器達が下された任務は、敵要塞島の攻略と核兵器施設の完全な破壊である。

 

特に核施設に対しては、必ず破壊しなければならなかった。

 

その為、深海棲艦の核兵器製造施設と思わしき要塞島をいかに攻略するか?それが任務遂行上のネックとなっているのだ。

 

島一つ破壊することなど超兵器にとってたわいも無い事だが、しかし今回は自分達が南極に去った後でも誰にも核施設を再利用されぬよう徹底する必要があった。

 

核施設はその重要度から、最も強固な守りを施されていると考えられており、単に島の表面構造物を薙ぎ払った程度でどうにかなるものでもない。

 

デュアルクレイターやアルティメイトストームが別任務でいない以上、乗り込んでの制圧は現状難しく、しかも彼女達の到着を待って手をこまねいていれば、現在自分達と要塞島を包囲している戦艦棲姫率いる反乱艦隊がどう出るか分からないのだ。

 

今は偶然敵が一致しているからと言う理由で、互いに敵対していないに過ぎず、そもそも互いに何らかの取り決めや協定を結んでいる訳ではない。

 

超兵器達は、背後からの一刺さにも、警戒せねばならなかった。

 

故に彼女達が取れる手段は比較的限られる、つまり持てる火力の全てを費やして要塞島を完全破壊するか、それともデュアルクレイターの到着を待つか…。

 

或いは要塞島そのものを海に沈めてしまうか。

 

ドレッドノートはその為一人戦闘には参加せず、こうして海中から島を沈める事が出来るかどうかの可能性を探っているのだ。

 


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