超兵器これくしょん   作:rahotu

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5話

深海棲艦の包囲網を突破し新たに超兵器アルウスを得た俺たちは、南下を続けるも長い航海で休息を取る必要があった。

 

その為、補給と整備を兼ねソロモン諸島に立ち寄ることにした。

 

「しかし穏やかな海だなぁ、戦争でなければ素晴らしいリゾート地になっただろうに」

 

浜辺を歩きながら眺める海に俺はそう感想を漏らす。

 

ソロモン諸島近海の天気は快晴、波も比較的穏やかでレーダーや哨戒機からも敵影発見の報告はなく、俺は久しぶりに平穏な時間を過ごしていた。

 

島の浜辺から沖合にみえる巨大ドック艦スキズブラズニルでは超兵器達が補給と整備を受け、戦いの傷を癒している。

 

俺は島に上陸し妖精さん協力のもとバラック小屋をジャングルの中に建て、久々の丘の上での生活を満喫していた。

 

妖精さん達も交代でビーチに出てはあちこちで水遊びや砂遊びに興じ、まるで平和なあの世界での何処にでもありふれた海での光景のようで俺は少しだけホッとした気分になったがそれもつかの間、携行していた通信機が鳴りこの平和な時間の終焉を知らせた。

 

 

 

 

 

オーストラリア、南極方面へ偵察に出していた機体が深海棲艦の泊地を発見したとの知らせを受けた俺は急ぎ島を離れスキズブラズニルに戻り今後の方策を建てる事にした。

 

「さて、現在ヴィルベルヴィントは補修を兼ね改装作業中、ヴィントシュトース、シュトゥルムヴィントは超兵器機関の点検でアルウスは付近の哨戒活動に出していて余り遠くには出られないか」

 

現状を確認し終えた俺は今後どうするかを考えた。深海棲艦の泊地を発見したとの報告を受けこの泊地とは深海棲艦側の鎮守府、つまりは敵の拠点である。

 

その質規模共に並みの鎮守府を遥かに上回り、特にこのソロモン諸島の海はアイアンボトムサウンドと呼ばれ、深海棲艦の大規模泊地を攻略する為南洋諸島の制海権を巡り大規模な海戦が繰り広げられ多くの艦娘、深海棲艦がこの海の底に沈んでいった。

 

俺は偵察機が命懸けで撮ってきた航空写真を手に取り、そこに映る白い影を見た。

 

ぼやけてはいるが明らかに人の形をした白い影は間違いなく“ 鬼”“ 姫”と呼称される深海棲艦の上位個体であり、写真の特徴から泊地棲姫と断定した。

 

並みの戦艦を上回る火力と装甲、耐久力は泊地の奥という狭い海では超兵器といえども脅威になる。

 

更にもう一枚の写真を手に取ると、そこにも同じような白い影、こちらは滑走路の様な物を備えていることから飛行場型の鬼、姫と判断できるが同じ泊地に二体の上位個体が存在する事で攻略は至難を極めるだろう。

 

アルウスの航空援護の元敵泊地にヴィルベルヴィントを突っ込ませるか?イヤ、高速戦艦の特性上動きを制限される泊地への突入は強力な沿岸砲台に狙われながらなどそもそもが無謀。ならアルウスの航空機攻撃だけでやるかといえどボーキサイトの補充ができない今戦力の消耗はなるべく避けたい。

 

 

次に敵を泊地からおびき出して叩くという手もあるが、その場合飛行場からの援護がネックになる、飛行場姫と名前が付いているように正規空母3隻合わせても制空権を取れるか怪しい航空戦力を持つ相手に制空権を争いながら海戦を行うと流石に超兵器でも厳しい。

 

最終的にこちらが勝つとしても被害は馬鹿にならないし、そもそも無理に攻略する必要がないことに気づく。

 

「あ、そうか」

 

様は敵にこちらの航路を邪魔させなければいいのだ、つまり一週間位敵を動けなくすればよいのだ。

 

俺はスキズブラズニルの空いている建造ドックに連絡を取り新たな超兵器艦娘建造の命令を出した。

 

建造終了時間は10時間。

 

「さて、こいつが完成する頃には日も暮れていい塩梅になっているだろう」

 

 

 

 

 

 

 

夜の海、その何者をも飲み込んだ先にある深海に一隻の巨大なクジラが静かに進んでいた。

 

鋼の身体と相手の腸を食い破る牙と海上の王者を圧倒する力を秘めたもの。

 

嘗て戦艦史上に革命を起こした船と同じ名前を抱くその腹の中で俺は作戦の指揮を取っていた。

 

「焙煎艦長、現在深度800メートルを40ノットで航行中。敵泊地迄大凡30分で到着予定」

 

海軍の制帽をを被りイギリス海軍の制服に身を包み、金色のお下げを首から下げた艦娘が俺にそう知らせてくれる。

 

超巨大潜水戦艦ドレッドノート

 

それがこの船の名前であり彼女の名でもある。

 

俺達は留守をヴィルベルヴィントに任せ、ドレッドノートに乗り込み作戦行動の指揮を取っていた。

 

今回の作戦は敵泊地に潜水艦による夜襲を仕掛け敵を暫く動けなくする事が目的であり何時ものように殲滅する必要はない為撤退の時期を判断する関係上俺が直接指揮を取ることにしたのだ。

 

俺自ら戦場に出るのは随分と久しぶりに思えたが、ヴィルベルヴィントと出会いまだ半年も経っていない事を思うと、随分と遠くに来てしまったと感慨深く思う。

 

「分かった、引き続き警戒しながら進んでくれ」

 

「了解した」

 

それっきり指揮所の中に沈黙がつづく。

 

別に沈黙を苦とする性格ではない為気にならないが、彼女達超兵器は艦娘の様に感情の起伏が乏しい傾向にあることはこれまでの様子から分かってきた。

 

例外はアルウスと風の三姉妹(ヴィルベルヴィント、ヴィントシュトース、シュトゥルムヴィントのことを指して妖精さん達が言う通称である)が揃った時くらいだ。

 

それ以外普段の様子は命令に忠実にして血の通わない機械の様な姿であり、人間らしさは微塵も感じない。

 

今はこうして彼女達の指揮官と仰がれてはいるが、実際の所はどう思っているのか分からないが、兎に角元の世界に帰還する為には彼女達の力が必要であり、従い続けてくれる限り俺は彼女達の艦長だと言うことだ。

 

暫く海の中を進み、進路を確認する為潜望鏡深度まで浮上し覗き込んだ先には夜間泊地で無防備に停泊する深海棲艦の姿が見えた。

 

駆逐艦に軽巡、重巡、戦艦に空母の中に紛れ最深部に目標を見つけた。

 

「あれだな」

 

巨大な主砲と二本の黒い角に白く長い髪が特徴の泊地棲姫と、奥地に見える陸地に立つ飛行場姫を見つけ俺はドレッドノートに攻撃の指示を出す。

 

「ドレッドノート、攻撃深度まで浮上後魚雷全門注水、目標泊地と周囲の護衛艦群」

 

「了解、タンクブロー魚雷発射管全門注水、諸元入力…完了、攻深度今」

 

ドレッドノートの巨体が浮上し今だに此方に気付かない間抜けな敵を前に俺は攻撃命令を下す。

 

「魚雷全門発射!」

 

「魚雷発射します」

 

ドレッドノートの片舷8基両舷合わせて16基の発射管から誘導魚雷が発射され、獲物を求めて海中を進む群狼は全弾見事に命中し巨大な水柱が噴水の様に立ち昇る。

 

「全弾命中とは流石だな。次対艦ミサイル目標敵戦艦群」

 

突然海中から魚雷攻撃を受け混乱する深海棲姫に向け海中から今度はミサイルが発射され、海面から飛び出し上空に一旦上がって高度を取ると、予め示された目標に向かった自動で追尾し、深海棲艦に突き刺さる。

 

夜の暗闇で周囲が殆ど見えない中突然上空からミサイル攻撃を受けた敵戦艦群は、碌な抵抗をする間も無く強力な対艦ミサイルを受け魚雷を受けた仲間達の後を追う。

 

海面一面は火の海となり昼間の様に明るくなった海の様子を潜望鏡から覗いた俺は海上の脅威は排除されたとみて浮上を命じる。

 

「ドレッドノート浮上、その後敵飛行場姫に対し艦砲射撃を行う」

 

「了解です。これより緊急浮上後38.1㎝砲を展開します」

 

「砲弾は三式弾…はないな。対空散弾を使用する」

 

「対空散弾ですか?了解、砲弾変更、対空散弾に切り替えます」

 

俺の指示に少し訝しんだ様子のドレッドノートだが素直に従ってくれた。

 

何故俺が砲弾の変更を命じたかと言うと、士官学校時代様々な深海棲姫の特徴を学んだ際、飛行場姫など陸上型の深海棲姫には本来対空用の散弾である三式弾が効果的であると教わりその理由として、陸上型は人間部分よりも周囲の飛行場その物が本体といえ、通常の榴弾や徹甲弾では効果が薄く、逆に広い面を制圧出来る三式弾は人間部分と飛行場を同時に攻撃でき、実際大きな戦果を出していた。

 

ドレッドノートは潜水艦であると同時に、浮上して38.1㎝4連装砲二基八門を装備する潜水戦艦でもある。

 

無論本物の戦艦には火力と装甲で少し劣る(元の世界基準では、この世界では並の戦艦では太刀打ちできない火力と装甲をもつ)が、海中から浮上し砲撃を仕掛け又潜行して雷撃を行えるトリッキーな運用が可能なのだ。

 

鋼鉄の巨体が海上に浮上しその余りの巨大さに、呆気に取られた深海棲姫を尻目に主砲を展開したドレッドノートは飛行場姫に向け照準を合わせる。

 

レーダーと連動した正確且つ強力な火力が飛行場姫に降り注ぎ、頭上で炸裂した対空散弾は火の雨となって降り注ぐ。

 

夜間でその圧倒的航空戦力を使えず、反撃の主砲も相手が水中では手も足も出ず目の前で味方がヤられるのを地団駄を踏みながら、黙って見ているしかなかった矢先、敵が行成浮上してきて在ろう事か戦艦顔負けの火力で砲撃を加え、滑走路共々ボロボロにされた飛行場姫は一切の抵抗もできず炎の中に消えた。

 

攻撃に成功した俺はすぐ様潜行を命じ戦場からの離脱を命じ燃える海を後にする。

 

今回の作戦、夜間泊地襲撃からの堂々の浮上後砲撃を加えその後敵の追跡を逃げ切り帰りは浮上航行する余裕さえあった。

 

まんまと無傷でソロモン諸島に凱旋を果たした俺たちを、ドック艦で修理を終えたヴィルベルヴィント達と妖精さんが迎えてくれた。

 

こうして無事南極までの航路を開き、目指す道のりもあと少しと言うと所で俺たちは思わぬ事態と遭遇する。

 

 

 

 

 

「焙煎艦長、対空レーダーに機影を察知。かなりの高速の機影だ」

 

戻ってきて早々ヴィルベルヴィントの報告に、すぐ様俺はスキズブラズニルの艦橋に上がる頃にはアルウスから出ていた哨戒機も相手を確認したとの報告が上がった。

 

「艦長、不明機は接触した機体から飛行艇だと連絡が来ましたわ。確か、二式大艇と言うのかしらね」

 

二式大艇、鎮守府が主に海域の索敵や輸送機に使う大型の飛行艇の通称だ。

 

その機体が何故こんな所に?

 

俺の疑問をよそに二式大艇から発光信号で此方に向かう旨が伝えられ、俺は仕方なくこの招かざる客人を迎える用意をした。

 

二式大艇がスキズブラズニルの側に着水し、そこからボートで此方に向かうのをスキズブラズニルのタラップを降ろすよう指示を出し、甲板でヴィルベルヴィントとともに出迎えたが、タラップを上がり護衛の兵を連れた中佐階級の軍人が前に進み出て一枚の紙を突き出す。

 

「焙煎武衛流我 (ヴァイセン・ヴェルガー)少佐だな、海軍元帥より出頭命令が来ている。尚抵抗は無駄だ、既に艦隊が此方に向かっている。我々としても騒ぎを起こすのは本意では無い、大人しく我々と来てもらおう」

 

そう言うや護衛の兵達が此方に銃を向け、さっと俺を庇うように立ち塞がったヴィルベルヴィントが艤装を展開し、甲板は一触即発の状態になった。

 

さてどうするかと俺は考えた、どうやら俺が考えている以上に鎮守府は此方に気づいていたらしい。

 

この場でこいつ等を殺し、此方に来る艦隊も返り討ちに出来るがそうなると俺は海軍の裏切り者として追われることになる。

 

この場を切り抜けたとして、深海棲艦に続いて海軍も敵に回すとなると厄介だ。

 

それに彼等は俺の敵という訳では無い、あくまでも俺の目的は元の世界への帰還、なら味方は多い方がいいし無闇に敵を増やすべきではない。

 

それに人殺しは何だかんだ言って忌避感が拭えない。

 

「ヴィルベルヴィント、大丈夫だ」

 

俺はヴィルベルヴィントの肩に手を置き、彼女は俺と相手を交互に見てから渋々ながら艤装を降ろした。

 

俺は彼等の前に一歩踏み出た。

 

すると相手に緊張が走るのが見えた。

 

まあ、人間が艦娘相手に銃口を突きつけ合うなど生身で戦艦と対峙するのに等しいからな、そりゃビビるか。

 

俺は手を上げ被っていた帽子のツバに指先を付ける。

 

「了解しました。謹んでその命令を受領します」

 

相手に敬礼し、俺が素直に従ってくれることにホッとしたのか相手の緊張感が緩んだ。

 

「貴官の英断に感謝する」

 

中佐も此方に答礼し本心からの言葉を告げる。

 

俺達はこうしてもと来た道を戻る事になったが、その先で何が待ち受けているのか、この時の俺はまだ分からなかった。

 

 

 

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