終焉のクラーウィス   作:涼ノ宮 透夏

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粗筋通り、非現実的な空間で、現実的な戦いを繰り広げるお話。
日常に魔術を取り入れる話はよく見かけますよね。
だがしかし、逆はどうでしょう。
普段生活していて、魔法なんか無いけど戦いたい!と思った経験。
一度や二度ではないはず。
……え?ない?
いやいや、私はそうなのですよ。
体験を材料にするのも一つの手です。
今までにない考えと思いまして、筆を執らせていただきました。
少しでも楽しんでくだされば幸いです。


序空 ~邂逅×交差~

*

あれは一体、何の夢だったのだろう。

現実的でもあり、非現実的でもあり――まるでその世界に引き()り込まれ、もう一度同じものを見たら戻ってこられない気さえした。

記憶にあるようで無い――いや、実際にはあるのだ。

ただその夢を見た事実が、上手く飲み込めないでいるだけのことなのである。

噛んでも一向に無くならないガムのような感覚。

味は確かに分かるのだが、直感的に咀嚼してはいけないような――。

 

 

しかし後日、俺はそれを飲み込むことになる。

 

 

自分でも理解不能だった。

起床した後、言い知れぬ気持ち悪さが全身を襲ったにもかかわらず、夢で見た内容の『思い出してはいけない部分』だけを明確に記憶している。

全体像を思い出せないのは、本当に覚えていないだけなのか、それとも夢に出てきた『少女』が俺に思い出させまいとしているのか。

 

 

そのとき、一閃の声が脳内に響いた。

 

 

(──空歩者(ラウムソウォーサー)。忘れないで……僕の言葉(ことだま)を)

 

 

「ッ!?」

 

 

忘れもしない。か弱そうな見た目からは到底想像もつかない、(したた)かで凛々しい声色。曖昧でこそあるものの、声の感じくらいは覚えている。

姿は覚えていないが。

しかして、その声は俺の記憶を呼び覚ます起爆剤となり──結果、俺は前夜の記憶すべてを強制的にアウトプットさせられた。

 

 

 

 

これは昨日の夢。

これから起こることを当てるなんてエスパーみたいな芸当、俺にはできないけれど……もし予言できたとしたなら、これは悪夢と言っても差支えないだろう。

巻き込まれた俺が、どういった感想を抱くのかにもよるけど。

 

 

意識が落ちたなら当然あるはずの暗闇が、そこには無くて。

あるのは虚無的な広がりだけだった。

だがしかし、一面真っ白な白銀の世界──というわけでもなかった。

表現するにはボキャブラリーが不足しそうな光景で。

()いて表現するのだとしたら、(おの)己が体は都会の上空に位置し、世界は白い(もや)のような霧のような──そんな薄い膜に包まれていて、足場が不安定に感じる。

高所恐怖症の人だったら、震え上がって絶句してしまうと思う。

俺は高いところが好き(決して馬鹿ではないと思いたい)だから、何の問題もない。

 

 

目が覚めて真っ先に視界に映り込んだのは、明らかに自分より年下だと見受けられる一人の少女。

年齢を知っているわけでもないから、少女と表していいのかどうか未明であったが──とりあえず、俺が感じたままの見た目は完全に『少女』だった。

神秘的なまでに美しい、腰まで伸びた()()ぐな白髪。

どこかの澄んだ海の色のような、微弱につり上がった蒼玉(エジプシャンブルー)双眸(そうぼう)

折れてしまうのではないかと危惧したくなるほど細身で華奢(きゃしゃ)な体。

汚れの一つもない水兵セーラーを(まと)った彼女の姿はまさに淑やかで──ちょっとした神様なのでは? と言ってしまいたくなる。

神と称するなら、海神(わたつみ)のような類だろうか。

水兵セーラーを着ているのはかなり謎。

 

 

──見つめ合うこと十数秒。

交差する視線を先に断ち切ったのは、俺の言葉で。

 

 

「聞きたいことは山ほどあるんだが……一気に聞かれても困惑するだけだろ。一つずつ聞いていく。……あんた、誰だよ」

「僕? まあ……二人しか居ないわけだし、そうなんだろうね。案内人(ナビゲーター)とでも呼んで欲しいな。ここに来てから、名前がないんだ」

「……名前が、ねぇ?」

 

 

この空間が何なのかを先に聞くのを忘れたため、ここに来てからと言われても今一ピンとこない。

不思議なことに、彼女へ贈る名前はすぐに思い浮かんだ。

気に入ってくれるかどうかなんて知るか。完全に俺の趣味だ。センスは保証しない。

 

 

「だったら──名前、付けてやるよ。今からお前は『ヴァイス・レウコン』。拒否権は行使してくれて構わない。言い出しといてなんだが、ネーミングセンスに自信はないからな……。で、どうする。これを名乗ってくれるか?」

「名前なくしては、これから不便だし──名乗ることは別に構わないよ。だけど、由来を教えてくれないかな? 意味も知らないまま使うのも、何かと落ち着かないもので……」

 

 

意外とあっさり受け入れてくれた。

ていうか俺も、世界事情を知らない状態で、何をじゃれ合っているんだろうか?

その先をも知るため、まずは問われたことに答えていく。

機嫌を損ねて得はしない。

 

 

「由来は単純に、あんたのイメージカラーが白だから──白を様々な言語で表しただけの話だ。爽やかなものが好きな俺からすれば、あんたの姿はまさに理想。それ程までに綺麗な白を纏った人間、俺は今までに見たことがない。……って、そもそも人間でもないのか」

「やだなぁ、僕は人間だよ? ただ──いつしか迷い込んでしまって。戻る(すべ)を知らないんだから、困っちゃうよ。この空間の神にでもなった気分だ」

 

 

恥らいながら言葉を述べていく彼女の頬に、人間らしい朱色が宿る。

削りたてのかき氷に、真っ赤な(いちご)シロップを掛けたとでも(たと)えようか。

()(かく)そんな反応を見せるレウコン。

褒めすぎたという自覚はあった。

だが後悔はしていない──事実だからな。

 

 

「そんなに照れなくてもいいだろ……? というかそろそろ、ここの世界のことを聞きたいんだが」

 

 

俺がそう切り出すと、レウコン──ああ面倒臭い、略していいか。

レウは『そ、そうだね!』と言ってから、これがフォーマルな対談の形だとでも思っているのだろうか、正座をして、語るその口をゆっくりと開いた。

 

 

 

 

**

「──なる、ほど」

 

 

本当にこれは夢なのか──そう錯覚してしまう程に、(なが)(なが)い説明だった。

概要はこうだ。

 

 

この空間はあらゆる世界、言わば並行世界の狭間であり、入り口も無ければ出口も無いといった閉鎖的な空間。

彼女は物心ついたときからここに居て、迷い込んだ人間は俺が初めてだという。

俺が辿り着いてしまったのは偶然ではないらしく、時空を操作する能力があるからで──言われたこちらからすれば、『特殊能力・超能力』と告白されたところで中二病だった頃の記憶が蘇るだけだ。

俺のコードネームは『空歩者(ラウムソウォーサー)』。

空間を操作──すなわち自由に切り貼りできるこの力は、使うたびに体力が摩耗する。

 

 

現状で分かるのはここまでのようで、これ以上はレウも知らないらしい。

 

 

「僕にそんな能力はないんだ。だから、ただ日々を淡々と過ごすだけ。……あ、いや、どうなのかな。『日々』って言葉を使うには、少し不適切な場所かもしれない。ここには『時間』という概念すら存在しない。本当にただの狭間。のんびりするのはいいけれど──能力持ちじゃない僕は、並行世界への干渉を許されない。暇すぎるんだ」

 

 

吐き出された彼女の言葉に籠る退屈はどうやら本物のようで、自由すぎる以上に孤独だと訴えられている気分さえした。

──そりゃ寂しいだろう。こんな虚無の世界で、誰と会話するでもなく一人で。

 

 

「災難だったな……それなら俺が来て正解だったと言っても過言じゃな、──」

「……魁利?」

 

 

突如訪れる急激な眠気。

──ん? 夢の中なのに、眠い……?

 

 

「何かは知らないが……眠くて仕方がない、どうなってるんだ」

「! きっと──時間なんだろう。眠りに落ちたら、また(しばら)くは──というか、同じ『夢』を見れるときまでここへは戻って来られないだろうね。名残惜しいけど仕方ない。……また近いうちに会えるんじゃないかな。そんな気がする。──勘だけどね? それじゃあ、また」

「……ぁ、待っ…………」

 

 

手放したくない意識は意思に反して勝手に離れていき、間もなく俺の思惑はブラックアウトした。




レウの口調、悩みに悩みまして。
うーん…自分の好きな口調を当て嵌めたら、既存のキャラっぽいですねえ。
ま、これから登場するキャラの口調は頑張って特徴的にします。
口調で差異化するのもいいですが、性格で区別してもいいですね。


それと。
イラストがあれば、自分も想像しながら書けるのですが…
如何せん画力が皆無でして。
皆私の脳内だけで動いています。
視覚化すればいいのに←


2015/5/7 現在、空歩者の読みをラウムソウォーサーに変更。
ストローラーという単語が既存だという事を忘れていました……
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