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レウとの再開を果たし、能力を使った後──魁利《かいり》は、好き放題に能力を
そんな彼の様子を日々見ていた
「ちょっと~……また能力使ったのっ?」
「……見た目で解るものか?」
「明らかに疲弊してるからだよ!?」
「体育の後、じゃ誤魔化せないか」
どうやら数分単位ならバレないようだが、週単位や月単位にまでなってくると疲労が表に出るらしい。彼女の目は
「で、さ。大学で使ってバレないものなのっ?」
「その様子はない、と思うが。文学部にはキャラが濃くて変な奴が多いし、奇行に走る学生がいても不思議じゃないな」
「…………魁利くんみたいなのがわんさか……。考えただけで所属したくない、理学部で良かった」
「ブーメランだろそれ。寧ろ理学部こそ、根暗な機械オタクやら数学オタクで溢れてそうだ」
「何を! 星雫みたいに生真面目な学生さん、いっぱいいるんだからねっ」
はいはい生真面目なのはお前以外な……と魁利は内心突っ込みつつ、ここ数日展開していなかったパネルを二本指で展開させる。切り取る切り取らないは別にして、
ぐわん、と。
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能力行使のために態々人気のない場所を選んでいて良かった、と
(──しかして、
現在、彼の隣には星雫がいる。魁利が暗転する際に軽く指先が触れて、
「ったた……もう、何っ? これも魁利くんの能力の一部?」
「断じて違う。……多分バグか何かだろう」
彼がそう返したのには、一抹の希望が含まれていた。簡単なバグだ、すぐに直る。自分の抱える力で狭間に閉じ込められるだなんて御免だ──と。
「残念ながら、これはバグじゃない。バグなんて存在しないけど──あるにしても、そんなものは僕が把握している。──使いすぎたんだ、その力を。空間を何度も無理矢理に歪めることで、現在以降の時軸にも影響が及んでしまったんだ」
しかしながら、ごく自然な所作で──世界線と自分が一心同体で離れることが許されていないかの如く、
「ま……待てよレウ。それじゃ、俺達はここから抜け出せないってのか?」
「…………そうなるね。少なくとも今は、抜け出す
「この中途半端な空間で、どうやって……っ……?」
数回しか訪れたことのない、何があるかも分からない異空間に取り残されようものなら、普通は希望には
だがしかし──彼女は、レウは違った。それは両者よりこの狭間に住み着いていて、閉じ込められようが自分に変化は起きないからか──ある程度の目星がついているからか。答えは後者だ、と魁利は推測する。
と、その時。バタリ、と何かが崩れ去る。この空間に来てから、現時点では物体の存在を確認していない。となると、倒れたのは人間しか有り得なく──それは星雫だった。
「星雫!」
魁利が叫ぼうにも、星雫は
「レウ───何がどうなってる。
「……責めるつもりは無いけれど、多分、原因は君だよ魁利。さっきも言ったように、時空を改変しすぎたことで──星雫の体内に潜む
独り言のように吐き出された彼女の独白に、魁利はただただ唖然とする。
(───俺の、せい?)
確かに、時空改変は何度も
そう考えれば考えるほど、自責の念に駆られてしまう。今悔やんでも過去は改変できないのに、だ。
「解決策───無いわけではいんだ。こないだ
「鍵……? 錠……?」
「そう。ただの断片からの記憶だから、文字列でしかなくて僕も実物は見たことないんだけど……。ああ、鍵はそこに落ちているやつだよ。錠だけが、正体不明なんだ」
ほら見て魁利、とレウが指差す先にあるのは十枚の扉。どの扉にも着色がされており、
「因みに扉は既に解錠済みで、鍵と一致する鍵穴はそれじゃあない。さっき調べたんだ。───どうやら扉の先にあるようだね」
扉の先。何が待ち構えているのか、まったく想像ができない。一歩踏み出した瞬間に足場がなく落とし穴になっていたり、実は猛獣の入った檻で全身を食い千切られたりするかもしれない。
───けど、それでも。
「やってやるよ───レウ」
大人しく身を
その場で固く握り拳を作り、
「
男に二言は無い、と言わんばかりに
「───よく言った、魁利。ここで君が何もかもを見捨ててしまっていたら、僕はどうする
「待、てよ───戦闘になったりするのか? 俺は十分に戦えないぞ」
持っているものと言えば、執筆用に使う筆記用具くらいだった。中でもホチキス、カッターナイフ、鋏辺りは使えると思うが───
「どんな戦いになるかは解らないだろう? もしかしたら、口論だけかもしれないよ。ライトノベルになるような戦闘シーンが発生するかもしれないけれどね」
「何でお前がラノベとか知ってるんだよ……」
「まさか! 知らないはずがないよ。僕は君達と同じ、人間なんだから。唯一違うのは、ここへ迷い込んだ時期だけ。僕の方が早かったって話だ。因みに知っているラノベは──科学と魔術が交差する物語、池袋を中心に異形と人間が
「もういい解ったから! 色んな意味で分かったから、ヒートアップするのはここまでにしてくれ……キリがなくなりそうだ」
やたら現世に詳しい電脳少女だった(ここで電脳と表現したのは彼女の体の一部がブレている上触れられないため)。
「おや、堅い文献以外にも読むんだね」
「当然だ。俺はすべての書物を愛する文学少年だからな」
(今の作品、全部
そんな少女は、未来の救世主に決して触れられぬ手を差し伸べる。
「さぁ、行こうか。救うべきものを救うために」
一方の魁利も、掴めない