穏やかな白海竜と変態ハンター   作:神無月亮

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いつもの如く、遅くなりました。今回は特に筆が乗らなかった…むしろ、災生種の設定を書き込む方に時間を費やしてしまった…何をやってるんでしょうかね、私。とにかく…皆様、近いうちに投稿できるとか言っておきながら、数日後に投稿して、すみませんでした。このペースでは不味いとは分かっているんですが、どうも話が長くなると、それに反比例する様に、筆が遅くなりまして…はい、自分のせいです。すみませんでした。
さて、こんなネガティブな前置きなんてだらだら書いてても、気分が悪いだけなので、さっさと本編に行きたいと思います。
では、皆さん。時間をかけた割には、全然満足できない出来にしあがっている、本編をお楽しみください。でk(ry


第6話 予兆

目を開けると、視界一杯に何かの肉が入った。それと同時に、口に血肉の臭いが充満した。どんな状況だ?

首を傾げようにも、なぜか身体は言うことを聞かない。ただ必至に目の前の血肉を貪り喰らっている。なぜ?

頭の中を疑問で埋め尽くしていると、自分は貪るのを止める。そして、ゆっくりと左に向き、その先に居たハンター達へ、全身に赤い棘を生やし、慟哭を上げながら襲いかかった。

腕を掴まれ、袋の中に放り込まれる瞬間、俺の意識は潰えた。

 

 

 

自宅

 

ぱちりと目を覚ます。懐かしい夢を見ていたようだ。そう、とても懐かしい夢を…

どうして、俺の存在がギルドにバレたのかは分からない。とあるハンターの報告が原因らしいが…そいつの名前を聞いても、ギルドは教えてくれなかった。

拳を強く握りしめる。あの頃の無力な自分を責める様に。湧き出てきたハンター達への憎しみを紛らわす様に。

あの頃の自分の無力が憎い。爺ちゃんを殺したハンター達が憎い。そして、大切な存在がいなくなって、悲しい。

涙が流れ、その度に憎しみの炎がより激しさを増す。炎は俺の心を、思い出を焼き焦がし、無差別にその怒りを振りまく様に誘惑してくる。

殺せ、人間を。殺せ、モンスター達を。奴らは俺の大切なものを破壊する存在だ。だから、壊される前に殺せ。そうすれば、そうすれば、誰も俺を傷つけることができなくなる。そうだ、殺せ。殺すんだ。

 

「黙れ!」

 

胸を支配していた憎悪と怨恨と憤怒と悲哀と殺意を吹き飛ばす様に、俺は勢いよく起き上がってそう叫ぶ。ふざけるなと。俺はそんな存在ではないと。

叫びを上げると、心が大分落ち着いてきた。どうやら、いつもの衝動が終わったらしい。深く溜め息を吐き、再びベッドに倒れる。そう言えば、今はどれくらいだろうか。

空が明るい。まだ朝か昼頃か。動くには丁度いい時間だな。

すぐにベッドから起き上がり、出る。今気づいたが、痛みは全くしない。今の俺に傷はないみたいだ。そう言えば、あいつを倒した後の激痛は何だったんだ?本当に原因が分からない。

うーん、何でだ?そう言えば、あの時はラージャンのの能力、電気によるリミッター解除を使っていたな。その反動と変異による肉体への損傷が重なったのか?あり得る話だな。

んじゃ、多分原因は分かったし、思考終了。さっさと家を出て、村の状況を確認するか。下着以外、何も着ずに、俺は家を出た。そう言えば、ローラとアイルーはどこへ行った?

 

 

 

モガの村

 

家から一歩踏み出すと、容赦のない日差しが俺に襲いかかる。眩しいなぁ…

手をかざし、日差しを遮断。……よし、これなら見える。目が慣れるまで、暫くこうしておこう。

さて、村の状況を確認っと。んー、ざっと見て、特に変化はないな。俺を見る目が『ありえないものを見ている目』だということ以外は。ついにここの人たちにも見られる様になったか…案外、早く訪れたな。

まあ、別に良いか。俺はいつも通りにモンスターを狩っていればいい。そして、その先にてあいつを殺せればいいんだ。だから、村人達の視線は無視だ無視。いつか出て行くしな。

だからまあ、今はローラとアイルーを探すか。ローラは多分、狩りに行ってるんだろうが。うーん、ここら一帯にアイルーの臭いはしないなぁ…ローラの臭いは森方面からするから、多分狩りだろう。ということは、アイルーは別の場所か。モガの森は考えられないから、あっちにある農場にいるのか?行ってみるとしよう。

俺は遥か向こうに見える農場を見て、桟橋を歩き始めた。ちらりと見えた、何かを後悔するような村長の顔が、やけに視界に鮮明に映った。

 

 

 

農場

 

ここは、モガの村からかなり離れた農場。名前は確か…モガ…モガ……何だっけ?忘れた。まあ、いいか。忘れるってことは、どうでもいいってことだろ。

さて、アイルーを捜すか。ここの経営者である竜人は年老いていて、背がかなり低いから、視界が全く遮られず、誰かを探す時はかなり楽になる。

で、アイルーはどこにいるかなー…っと、アイルー発見。なんか真っ赤の布を必至に水で洗っている。何をやってるんだ?

気になるので、近づきながら話しかける。

 

「何をやってるんだ?」

 

俺が話しかけると、アイルーはこっちに気づいたのかぴたりと洗うのを止めて、俺の方を驚愕を込めた瞳で見る。お前もか。

とりあえず、相手が答えるのを待つ。

 

「…………」

 

待つ。

 

「……………」

 

待つ。

 

「…………………」

 

待つ。

 

「………………………」

 

待…てっられるかぁ!

幾ら待っても、応えが帰ってこないので、ブチ切れる俺。そして、それにびくついて、泣き出すアイルー。

 

「だ、旦那さん!落ち着いてニャ!殺気が出まくってるニャ!」

「だったら、質問に答えろゴルァァ!」

「ニャァァアアアアアアアア!」

 

泣いて逃げながら、俺に落ち着く様に言ってくるアイルー。なんか殺気が出ているらしいが、そんなのはどうでもいい。答えないお前が悪いんだ。

というわけで、アイルーの言葉に耳を貸さず、追い回す。竜人達は、そんな俺たちをどうしようか困って、おろおろしていた。

 

それから十数分後

 

「捕まえたぁ!」

 

ようやくアイルーを捕まえる。白い毛がモフモフで気持ちい…って今はそんなことはどうでもいい!

今度こそ、質問に答えてモら……あれ?何を聞こうとしてたんだっけ?ヒントを得る為に、周囲を見渡す…が、いつもの農場の風景が広がっていて、何も思い出せなかった。

 

「?何を聞こうとしてたんだっけ?」

 

本当に何を聞こうとしていたんだ、俺は?幾ら頭を捻っても、全く思い出せない。考えていると、なんかどうでも良くなってきたので、アイルーから手を放す。うーん、何で怒ったんだっけ?全然、思い出せない。

ちらりとアイルーを見ると、彼も首をひねっていた。時折、『何をやっていたっけニャ?』と呟いているから、彼もさっき何をやっていたのか全く思い出せないんだろう。ナカーマ。

にしても、全く思い出せない。とりあえず、怒ったのは覚えているんだが、なぜ怒ったのかが全く思い出せない。うーん、何で怒ったんだっけ?

 

「竜人たちに聞いt「そんなことより、村に戻ってもらえるかしら?」うおっ!?」

 

怒った理由を聞こうと思い、多分居たと思う竜人達に話を聞こうとするが、その前に既に後ろに立っていたローラに止められる。ていうか、後ろにいたのか…全然、気づかなかったぞ…

突然のローラの登場に呆然としている俺たちを他所に、ローラは農場の様子を見て『うわぁ』とでも言いたげな顔をする。そして、彼女がなぜそんな顔をしたのか疑問に思った俺は、農場の様子を見て…

 

その農場の惨状に固まった。

 

畑は荒らされ、キノコの苗床は真っ二つに圧し折られ、小屋は完全に崩壊。竜人達はそこらへんに目を回しながら転がっていた。これは酷い。

自分も思わず『うわぁ』という顔をする。そして、ローラに冷たい目で睨まれる。きっと『あなたがやったことでしょ』と言ってるんだろうなぁ…

あぁ…ローラの視線が痛い。俺の心に矢の様に突き刺さる。このまま睨まれたら、いつか泣くな。

あ、そう言えば、村に戻れと言われたな。何でだろうか?一応、聞いてみることにするか。

 

「そう言えば、何で村に戻る様に言ったんだ?」

「来れば分かるわよ、来れば」

 

つまり、来なければ分からないと。ていうか、教える気はないんだな。教えようにも、教えられないのかも知れないが、なんかやけに不機嫌だから、多分前者だろう。

…………怒ってるんだから、不機嫌なのは当然か。でも、それにしては苛つき過ぎてるような気がする。何でだろうか。

少しローラの顔を見てみる。うん。聞いても、教えてくれなそうだな。素直に村に戻るとするか。

 

「んじゃ、村に何があるか気になるし、戻るか」

 

とりあえず、俺とローラとアイルーの二人と一匹は、農場の惨状を見て見ぬ振りをして村に戻った。結局、何で怒ってたんだ?俺は。

 

 

 

モガの村

 

何だこれ。自宅の前、村のちょっとした広場に転がっている何かの死骸に対して、俺の抱いた感想はこれだ。

理由?理由は…そうだなぁ…今までこんな症状は見たことがなかったからかな。ああ、全く見たことがない。

こんな『植物の花に口が、葉に爪が生え、根が歩行可能な域にまで太くなる症状』なんてな。

一部の特徴が俺の変異能力に近いが、植物を歩かせたことなんてないしなぁ…ていうか、こいつは一体何なんだよ。新種の小型モンスターか?

一応、聞いてみるか。

 

「なあ、皆。植物のモンスターなんて、聞いたことがあるか?」

 

俺の言葉を聞いた奴らは、全員同時に首を振る。やっぱり、聞いたことがないか。ということは、完全に新種だな。

しかし、なぜこのタイミングでこいつが発見されたんだ?もっと前に発見されても、おかしくなかった筈だが…今まで動いている姿が確認されていなかった?それともつい最近ここにやってきた?または一部の植物が俺みたいな変異を遂げた?…何となく三番目のような気がする。

でも、確証はないし、俺が倒れた後に狩りに出たであろうローラに聞いてみるか。

 

「ローラ、こいつはどこで見つけたんだ?」

 

俺が問うと、彼女は一瞬嫌な顔をした後、一度溜め息を吐いた。何だよその反応。ぶー。

 

「あなたが倒れていたエリア5よ。ジャギィが貪られた後があったから、周囲を探ってみたら、やけに血なまぐさい植物を見つけてね。近づいたら、それらが襲ってきたってわけよ」

「ジャギィを貪るって、結構強いな!?」

 

これの意外なまでの戦闘力に驚く俺。そこらの植物と同じ背丈をしているのに、素早いジャギィを貪るとはな…小型の中では結構、強いぞ。こりゃ油断できないな…

………何でそんなに強い種類が突然現れたんだ?突然変異にしても、いきなりジャギィを貪る程に強くなるとは考えにくい。誰かの策謀だろうか。

とりあえず、こいつの名前は何だろう。いつまでも、これとか、あれとか、言うわけにはいかないだろ。

 

「アイシャ、こいつの名前は何だ?」

「それが…決まってないんですよ。このモンスターの名前。ついさっき、発見されましたから」

 

まだ名前は決まってない…か…そういえば、このモンスターに対してギルドはどう動くんだろうか。

一応、聞いておこう。

 

「まだ来てないと思うが、こいつ関連の依頼は来ているか?」

「来てますよ、ギルドからのが。依頼内容は未知のモンスター1体の捕獲です。何体かいるとギルドは判断していますが、捕獲は一体だけで十分で、他は全部倒していいそうです」

 

捕獲依頼か…しかし、もう依頼が出てるとはな…ギルドもかなり対応が早い。それほど危険視しているのか…あるいは…

 

「ふーん。それで、その依頼は私たちは受けれるの?」

「ええ、ギルドはかなり難しいだろうと判断していますが。依頼はこれ、『高難度:死肉喰らうは悪鬼の花』です。早速、受注しますか?」

「お願い」

「わかりました!それで、レインさんは、どうしますか?」

 

いや、しかし…植物だぞ…?薬の材料となる可能性があると判断するかもしれないが…

 

「レインさん!」

「うおわ!?」

 

俺は突然名前を呼ばれて驚く。そして、すぐに声の方を見ると、顔を膨らませているアイシャと、あきれ顔の皆、訝しげな視線を向けてくるローラがいた。ローラ、お前は何がそんなに気になるんだ。

ローラが何を怪しんでいるのか全く分からないので、とりあえず話しかけてきたであろうアイシャに集中することにする。

 

「一体、何だよ?」

「むー、今度はちゃんと最後まで聞いてくださいよ?では、レインさん。この依頼、受けますか?」

 

あー、依頼か。俺としては新しい能力が手に入るかもしれないし、行くか。ローラはどうするんだろうか。

ちらりとローラを見る。すると、彼女は何が言いたいのか分かったのか、一度溜め息を吐いて

 

「行くわよ、当然」

 

と言った。ということは、これが彼女との初めての共同作業か。随分と血なまぐさいな。ハンターなら普通かもしれないが。

ま、それはいいか。今は、依頼を受けよう。

 

「俺も受けるぞ、その依頼。気になることが幾つかあるからな」

「はい、分かりました!お二人とも、頑張ってくださいね!」

 

心配を無理矢理隠した笑顔で、アイシャは俺たちを応援した。…………何だろう、この感覚……はっ、まさかこれが…噂のヒロイン力!?

…………って、ヒロイン力って何だ?わかんね。まあ、いいや。かなり気になることが目の前にあるしな。早速、それを聞くか。

 

「ところで、ローラ。ずっと気になってたんだが…」

「?何よ」

 

隣のローラに話を振り、少し溜める。そして、彼女は何で話しかけたのか理解できないのか、頭に疑問符を浮かべながらこっちを見てくる。

さあ、今こそ聞くとき。農場で彼女の姿を見たときから、俺がずっと気になっていたことを。

 

「何で装備を着てないんだ?」

「動きにくいのよ」

 

即答だった。しかも、当然の様に言ってくれた。それと、武器は弓なんだな。特に関係ないけど。

さて、今消せる疑問もなくなったし、クエストを受けに出発するか。

 

「待ちなさい、レイン。武器も何も持ってない状態で、どこに行こうというの?」

 

あ……

俺は急いで家に戻った。ヤバい、クソ恥ずかしい。

 

 

 

自宅

 

自宅に帰宅、と同時に装備箱を開け放つ。それによって飛び散るアイテム。

後ろで猫の叫び声が聞こえるが、気にしない。ていうか、気にすることもできない。なぜから、現在の俺は羞恥に染まっているからだ。あー!何で、何も着ずに出かけようとしてたんだ俺はー!?

ボロボロになっている楯と剣を取り出し、口に放り込む。そして、噛み砕いて胃袋の中へ。身体が変異するのを感じながら、防具も取り出し、口の中へ。ガキベキと音を鳴らしながら、次々と身体の材料へと変換して行く。

まだだ、まだ食い足りない。この程度では、まだ俺の感情は収まらない。他の武器も手当り次第に口へ放り込み、噛み砕き、飲み下す。腕や足に稼働部が現れ、皮膚に覆われていくが、むしろ起こらないと困るので、気にしないでいく。

次の武器に手をつけようとするが、そこで直感的に気づく。これはさっき食べたものだ。ならば、別の武器を食べようとしても、食べたものしか見当たらない。これ以上、武器を貪っても、身体の更新は期待できそうにないな。俺はそう判断すると、次は素材の方に目をつけた。ある一体のモンスターの素材に。

白と青、二つの鱗を手に取り、口に放り込み、噛み砕く。鱗はとても固く、味も海の塩の味がした。スパイスには丁度いいかもしれない。何よりも、食べてると落ち着く。あ、ローラの臭いがする。清涼感があって、仄かに潮の香りがする。いい臭いだなぁ…やはり

 

「ローラは天使!」

「そんなことを叫んでないで、アイテムを片付けるのを手伝って欲しいニャ!」

 

怒られた……って、落ち込んでる場合じゃねえや。依頼があるから、それを解決しなくちゃ行けないな。よし、急ごう。ボーチに必要だと思うアイテムを用意してっと。これで準備完了。さて、家を出るか。

床に転がっているアイテムや、それを拾い集めるアイルー(と下から聞こえる怒声や罵声)を避けながら、俺は家を出た。

 

 

 

モガの村

 

「レイン…防具はまだいいとして、武器は?」

「武器も防具も、俺の腹の中だ!」

「……………」

 

家を出て早々に、ローラに化け物を見る目で見られた。なぜだ。あと、その視線は、結構来るものがある。辛い。

 

「…………はぁ…まあ、いいわ。戦えるのなら、問題ないもの。それじゃあ、行くわよ」

 

俺が涙を流しかけていたところで、ローラは一度溜め息する。そして、俺をいつものジト目で見てくると、半ば呆れながらも、依頼に行くことを許可してくれた!これが初の共同クエストか!わくわくするな!多分、俺に尻尾があったら、勢いよく振ってるんじゃないか!

って、手放しに喜べればいいんだが……今回は全く未知のモンスターが相手だ。何が起きても不思議ではない。ローラはこいつらを倒せたみたいだが、まだ全てのことが明らかになったわけではない。もしかしたら、未だに発見されていない生態があるのかもしれない。要注意しなければな。

とりあえず、捕獲に必要な罠二種類と捕獲用麻酔玉を持ってきたが…そもそも、こいつらが罠にかからない可能性があるからなぁ。

もしも、そうだったのなら、リタイアしてその情報を報告しなくちゃな。新発見のモンスターの情報は、またそいつらが現れた時の為にギルドに記録させておかないといけない。でないと、また情報が不足なまま、戦うことになるし。

ま、今回は今日発見されたんで、情報不足なまま、戦うことになるんだがな。森につく前に、ローラから情報を引き出しておくか。

 

「二人ともー、待ってよー!僕もそれ受けるからー!」

 

今回のターゲットのことを考えながら歩いていると、右方面から聞き覚えのある声が聞こえてきた。あと、なんか尻がひりひりしてきた。何でだ?

何となく無視した方がいい気がするものの、失礼だろうから、嫌々ながら右を見る。瞬間、目を逸らした。何で、あいつがここにいるんだ。

ローラに視線で助けを求める。が、ローラは俺の視線を完全に無視。俺の向こう側にいる、ガチホモ系女装男の娘の方を見ている。俺なんて、視界にも入れてないってことか。泣きたい。

 

「あら、ユーリ。あなたも受けるの?」

「うん、面白そうだからね!」

「そう」

 

俺が軽く泣きかけているのに、ローラはユーリと話し始める。ていうか、知り合いだったのかよ…いつ知り合ったんだよ…タンジアか?タンジアで知り合ったのか?

なんか寂しいので、ユーリに妬みの視線を、ローラに悲しみの視線を向けてみる。

 

「それで、あいつらはまだいた?」

「うん、まだいたよ。わんさかとね。これなら獲物には困らないかな。でも、急いだ方がいいよ。あいつらの習性に共食いがあるみたいでね、どんどん一つの個体に吸収されて行ってる。今僕たちが考えていることが当たっていれば、いつかは手がつけられなくなるよ。そうなれば、この村を捨てて別のところに行くか、奴らが絶滅するのを待つしかないね」

「やっぱり大量にいたのね……道理で、エリア内に鼻が曲がりそうな程に強烈な臭いが充満していると思ったわ。しかし、共食い……大量の同種の中から選りすぐりの一体に力を集約させて、そいつに種をばらまかせながら歩き回らせることで、種を繁栄させているのかしら…」

「そうなのかな?あれ、ただ無差別に襲いかかっているだけだと思うけど。近くにいる奴から襲うし」

「?あいつら、アプトノスを捕食した後、積極的に私に襲いかかってきたわよ?」

「え?ということは、あいつらって新しい獲物を優先的に狙うのかな。それがいなくなったら、共食いを開始するのかな」

「そう考えた方がよさそうね。まあ、あいつらに肉の一片でも食わせる気はないんだけど」

「僕もね。食べさせるのなら、彼に食べさせるよ」

「その彼って誰よ」

「それは教えなーい」

「何でよ」

 

二人とも、ガン無視である。泣きてえ。あ、涙出てきた。

 

「何でってねぇ…まあ、あれだよ。大人の事情。k…人間には不都合なことがいっぱいあるんだよ。さて、ローラちゃん、そろそろレインに構ってあげたら?一応、あいつらのことを話したいし」

「………そうね、一時的とはいえ、仲間とは情報を共有しておいた方がいいもの」

 

二人は話を終えたらしく、俺の方を向く。一体、何の用なんだろうか。あれだろうか、絶交宣言だろうか。もしそうだったら、どうしようか。もう一人で誰ともつるまずにモンスターを狩り続けようか。最後に一人寂しくあいつを殺して、その後に死のうか。あーうん、それがいいな。それで行こう。よし

 

「二人で頑張れよ…」

「あー、遅かったかー。レインってさ、精神が脆いんだよね。例えるなら錆びた刃?少しでも衝撃を受けたら、ぼろぼろと崩れていって、少しでも触られると欠片が肌を切り裂いて、自分も壊れるという」

「何でそんなに彼のことに詳しいのかは置いておくとして…今は彼を止めないとね。待ちなさい、レイン。まだ何も言ってないわ。せめてこれから話すことを聞いてから、判断しなさい」

 

アイシャにクエスト受注を取り消してもらおうと歩いていると、ローラが引き止めてきた。一体、なんだろうか。

 

「今、あなたにいなくなられると困るのよ。狩り的にも、私たちラギアクルスの暮らし的にも」

「?狩りは分かるけど、何で暮らしが入るの?」

 

どうやら俺が抜けると、困るらしい。まだ必要とされているのは嬉しいんだが、暮らしとはどういうことなんだろうか。少し気になるので、聞いてみようと思ったら、ユーリが質問した。またお前か。でも、今回は俺も気になるので、黙っておく。

あ、口を開いた。

 

「両親から聞いた話だけど、広い海の中でね、異性を見つけるのは結構大変らしいわ。それも、優秀な個体は。見つけたとしても、繁殖期を既に通り過ぎているかもしれないし、また見失うかもしれない。だから、ラギアクルスは優秀な異性がいれば、暫くそいつの傍で暮らして、実力を見定めることにするの。で、繁殖期にまでに気に入れば、そいつを番にして、気に入らなければ、また異性探し。私もまた、生き物だもの。未来の相手になりそうな個体は、逃がさないに越したことはないわ」

 

…………………………うん、なんだろう。こう…リアクションに困る。嬉しいんだけどよ…もっと、もっと…あるだろ?シチュエーションとかさぁ…いや、モンスターにそれを求めるのは酷か…

しかし、未来の相手として視野に入れられているのは嬉しいな。まあ、実力を見せないといけないんだが。そこはごり押しで何とかなるだろう。

さて、これで不甲斐ない一面を見せなければ、捨てられる可能性はなくなったな。後は、これからの生活で俺のカッコいいところを見せつけるだけだ。

いやー、そう考えると、安心するな。これほど安心したのは、樹海ではぐれた時に、爺ちゃんを見つけたときくらいか。あの頃は、爺ちゃんがいないだけで、生存率が段違いだったからなぁ…

って、ちょっと待て。さっきまで、興奮で気づかなかったが、何でローラは俺を番の候補として選んだんだ?俺はモンスターの特徴を持っているとはいえ、人間だ。ラギアクルスであるローラとは、種族的に違う。なのに、なぜ?

気になるな。聞いてみるか。

 

「n「ところで、レイン。あなたから、同種の臭いがするんだけど…気のせいかしら?」

 

聞こうとした瞬間に、ローラに被せられた。しかも、なんか怖い目で睨まれた。何?何だ?一体。俺が何をしたんだ?いつもの様に、食べていないものを食べただけだぞ?

ていうか、臭いって……どういうことだよ…うーん、もしかすると、能力とかと一緒に、そいつらの臭いまで受け継ぐのか?…………あり得そうだな。

あ、返答を忘れてた。でも、ここで俺の体質のことをばらしていいのか?まだギルドにも話していない、俺の体質を…

よし、決めたぞ。

 

「狩り場に着いたら、答える。それまで待ってくれ」

「………………分かったわ」

 

俺の返答に、ローラは不服そうに頬を膨らませながらも、了承した。そんな姿も可愛い。が、今はそんな空気じゃない。今はあいつら、謎の植物を捕獲することに集中しなければ。相手は未知の存在。何をしてくるか、全く分からないんだ。気をつけるに越したことはない。いや、気をつけなければならないんだ。でないと、死ぬ。自然界は弱い奴を生かす程、生温い世界じゃないんだ。今一度、それを思い出さなければならない。

そうだ、思い出すんだ。俺が今やっているハンター業は自然界に最も近い職業だということを。ハンターが事故や、モンスターの攻撃で死ぬことなんてよくあることだということを。未知のモンスターを相手にすることなんてよくあることだということを。そして、何よりも油断した奴や、弱い奴から死ぬということを。それをなぜ忘れていた。ドンドルマに居た頃に牙を抜かれたか?それとも、単純に人間の中に囲まれて、昔の様に腑抜けちまったか?ありそうだな。となれば、少し気を引き締めて行かないと。俺はまだ死ぬわけにはいかない。死んででも生き残らなければならないんだ。例えそれが自己満足のためでも。故郷を、家族を、友を、全てを焼き払った、あの憎い黒龍を殺すまで。絶対に死ぬわけにはいかないんだ。そのためならば、俺は

 

「レイン、そろそろ行くよー?」

 

ユーリの透き通るような声が、俺の意識を思考の沼から引き上げる。俺は何を考えていたんだ?なんか決意的なものを考えていたような気がするんだが…うーん、思い出せない。

幾ら頭の中を探っても、思い出せないので、諦めて、狩りに集中することにする。

さて、相手は全く未知のモンスター。一体、どんな攻撃を仕掛けてくるんだろうか。ヒプノックみたいのだったら、嫌だなぁ…彼奴の怒濤の催眠ガス攻撃は、本当に勘弁して欲しかった。捕まれば、ほぼ確実に蹴りやくちばしを叩き込まれるからな…うっ、もうないはずの傷が…

痛む頭頂部を押さえながら、俺は船着き場へと向かう。ローラやユーリは既に船に乗っており、後は俺が乗ればいい。なんか窮屈そうだが、まあ、大丈夫だろう。

俺はこれから戦う、正体不明のモンスターに思いを馳せながら、船に乗った。

 

「やっぱり、狭いわね」

「え?」

 

と同時に、ローラに海に突き落とされた。ひでぇ。でも、船が狭いのは同感だ。今度、大きい船を手配してもらうか…

この後、別の船に乗って狩り場に向かった。そして、パーティのはずなのに、一人寂しく狩り場に向かうという、不思議な体験をした俺であった。あ、そう言えば、俺が倒れる前に戦ったあいつの名前を聞いてねえ。それに、ローラに色々聞けてねえ。………まあ、いいか。帰ってから聞こう。今は依頼を完遂することだけを考えよう。うん。




後書きという名の補足
・これはレイン視点です。そして、レインは暫く大自然の中で暮らしているので、人間としての感性を殆ど失っています。ですので、彼のことは野蛮人か何かだと思っておいてください。じゃないと、多分彼の行動について行けません。
・レインは病的なまでに復讐に執着しています。その執着ぶりは、全てを投げ捨てても、これだけは捨てない程です。描写がしつこいですが、これは彼が復讐に執着しているという描写ですので、ご容赦ください。
・レインの年齢は数百歳を超えています。少なくとも、東シュレイド王国などよりは長生きです。東西シュレイドはシュレイド王国が滅びた後に出来た国ですし。なお、彼の人生の大部分は樹海で暮らしています。そのため、樹海に現れるモンスターや、かつてエスピナスと争った古龍達とは何回か遭遇しています。そのため、樹海に現れるモンスターの能力を、彼は扱えると考えておいてください。
・ユーリがいつの間にかモガの村にいますが、これはレインが倒れて、村に運ばれた後、それを知ったユーリが、様子を見に村に訪れたからです。そして、マンアルドのことを知っているのは、レインが目を覚ますまでの暇つぶしに、森の様子を見に行ったからです。ついでに、彼は森と村を何回か往復しています。だから、ローラとあんな会話が成立するわけですね。

まだ穴が開いてそうな気がしますが、これにて補足は終わりです。
それと、ローラ視点の話は本編に組み込むことにしました。え?それはなぜか?章管理が面倒くs…ゲフンゲフン。これ以上、執筆が遅れると不味いと考えたからです。視点がコロコロと変わらない様に気をつけますので、そこのところをご理解ください。
それでは、こんな駄文を読んでいただき、ありがとうございました。
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