アイクの姉・漆黒の嫁   作:もそもそ23

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第一章、激闘 決勝戦

『うおおぉおおお!』

 

まず最初に聞こえたのは、はち切れそうな程の大歓声だ。

挑戦者の私の入場と同時に、デインの闘技場は一気に盛り上がった。

 

時刻は午前9時。

 

飛び交う喝采を浴びながら、愛用の『銀の槍』を片手に、私は入場口から闘技場の中心に向かって歩く。

回りをサッと見渡してみると、観客席は今や溢れんばかりの人々で埋め尽くされていた。

まあ、今から行われるのは、この大会を勝ち抜いたデイン代表の"挑戦者"と、現四駿、プラハとの一騎討ち。デイン国民にとっては注目の一戦だからそれも頷ける。といっても、実際のところ私はこの国の人間じゃないけど……

 

『うおおおおおお!』

 

ゼルギウスの姿を一応探してみるけど、やっぱりこれだけ人が居ちゃ分からない。というか、たぶんアイツがさっきみたいな格好でこの場所にいたら会場が大パニックだ。

彼の任務はスパイ。だから、こんな人の多い所にはたぶん来ない。決勝くらい見に来て欲しかったけど、まあアイツの立場を考えればしかたないか。

 

「………はぁ……」

 

今までは特に気にもならなかったけど、流石に此処まで来ると緊張して来たのか、さっきから心臓はバクバクしっぱなしだ。

ゼルギウス的に言わせれば、これが"実践経験がない"という事なのかもしれない。でも、

 

「……勝てる……心配しなくても……私は負けない……」

 

私が何年あの"人外"に叩きのめされながら鍛えられたか……

ただの訓練と言っても相手が相手だ。死にかけた経験なんてもう100を余裕で越えてる。

 

「……ふう……平常心……平常心……いつも通りにやればいいだけ……」

 

でもその成果はきちんと身に着いてて、私は此処まで特に苦労もせずに勝ち残ってこれた。

だってゼルギウスの剣撃に比べれば、それこそだいたいの敵の攻撃なんて止まって見えるんだから。

今回もきっとそう。

 

対戦の形式は至ってシンプルだ。

降参、戦闘不能のどちらかの条件を満たせば決着が付く。時間制限はない。私はやった事ないけど、もし相手を殺してしまった場合も殺した側の勝ち。

如何にも弱肉強食のデインらしいルールだ。

 

武器の持ち込みも自由。生憎私はこの『槍』しか使えないけど、中には三種も四種も武器を所持してる人だっていた。

 

「……力を貸してね……」

 

対戦相手のプラハ将軍の入場は間近。

 

 

私は念を込めながら、槍を握った右手を胸へと当てる。

基本的に訓練用の武器で"模擬戦"ばかりを繰り返してた私は、当たり前だけど自分の武器なんて持ってない。

この『銀の槍』は、私がデインに来る前にカドールの屋敷から勝手に拝借して来た物。いってしまえば"ゼルギウスの私物"だ。だから、さっきは少しケンカみたいになったけど、こうしていると、アイツが私に力を貸してくれるように思えた。

 

そして、

 

『ウオオオオオオオオ!!! 』

 

ガラガラという音を上げて、私の入場口とは反対側の扉が開かれる。

直後に響く怒濤の声援。

闘技場内がさっきよりも一段と盛り上がりに包まれる中、遂にそれは姿を表した。

 

デイン王国の紋章が入ったマントを纏う、赤い槍を持った黒の聖騎士。

黒馬に騎乗し、正面の私に向かってゆっくりと歩んでくるその女性こそ、この国最強の一角。プラハ将軍だ。

 

爆弾みたいな観客の声に一切動じる事なく、なんというか、その佇まいにはやっぱり貫禄がある。

そして、

コツ、コツと黒馬を歩かせて来た将軍が、私と少し距離を置いた所で立ち止まったかと思うと、突然、彼女はそこから観客席に向かって声を張り上げた。

 

「黙りなっ!!」

 

「!」

 

騒がしい中でもよく通る声。

プラハ将軍のその一言で、闘技場内の雰囲気は一辺する。

歓声は一瞬ザワザワとしたものに変わり、それから数秒と経たず、闘技場全体は静寂に包まれた。

一声で観客全員を黙らせたプラハ将軍だけど、今度は私へと声を掛けてくる。

 

「アンタがアタシの挑戦者かい?」

 

少し気だるそうな声。だけど、これは一応王国最強の騎士の座を掛けた戦いだ。そう聞かれたなら、こちらもちゃんと答えないといけない……と思ったけど……

 

「は、はい……挑戦者のカルナと申し……」

 

「 ハッ……なんだただの小娘じゃないか……ガッカリだよ」

 

「えっ!?」

 

此方の自己紹介なんて聞いてないと言わんばかりに、プラハ将軍は馬上から私を見下しながら盛大な溜め息を付いた。

そのあまりの"態度の悪さ"に、私は思わず言葉を失う。いくらなんでも失礼ではないか? これが王国最強の"騎士"の態度か?

少なくととも私の知ってる"騎士"は、初対面の相手にこれ程露骨な悪態はつかない。

 

「ハァ……アタシはねぇ……この戦いを楽しみにしてたんだ……『自分は強い』って思い上がった馬鹿共を……"徹底的に痛め付けれる"いい機会だからねぇ……」

 

目を細めてそう語るプラハ将軍に、私は確信する。

 

"コイツはきっと録なヤツじゃない"

私は軍人じゃないけど、それでも、"騎士"の在り方については幼い頃からずっと聞かされ続けてきた。

主君に使え、弱きを守るのが騎士の勤めだ。この将軍はそんな騎士の思想とは全然真逆を走っている。

好戦的な性格とは聞いていたが、馬上から私を思いきり見下すその視線は、むしろ、残虐性を多大に含んでいるようにさえ思えた。

 

「……でも、アンタみたいな"青臭いガキ"を倒してもこっちは面白くも何ともない……まあ一応、アンタもデイン国民だ……情けをかけてやる……ほら、"殺さないでやる"から……さっさと消えな……」

 

「…………」

 

カチン……もう頭に来た。コイツは騎士がどうこう以前に気が食わない。

何がガキだ小娘だ。私はもう18、婚礼も認められている立派な大人だ。

これだけ言われると私としても暴言の一つくらい吐いてやりたいが、今言った通り私は"大人"。冷静に行こう。こんなヤツに言い返す時こそ、普段からよく聞いているアイツの堅苦しい口調が役に立つ。

気付けば、もう緊張は綺麗さっぱり消えていた。

 

「……私が何者でも、貴殿には関係のない事だ……」

 

「はぁ? あんた……このアタシに向かって何様のつ……」

 

「加えて……貴殿も騎士の端くれならば、口ではなくその槍を持って語るがいい……それとも……」

 

さっきの仕返しに、今度は私が『プラハ』の言葉を遮り、誰かを真似た言葉を捩じ込む。

それから最後、口許を吊り上げながら、右手に持った『銀の槍』の切っ先を馬上の彼女へと向けて言ってやった。

 

 

「その"肩書き"は……只の飾りか?」

 

コイツは私を舐めた。

それは私とゼルギウスに対する侮辱そのもの。

四駿の座よりも、先にこの将軍の鼻っ柱を叩き折ってやる。

 

 

向けられた槍の先端を見つめて、プラハの表情が変わった。ようやく私を一人の敵と認識したのだろう。

すごい殺気が放たれてるけど、そのくらいじゃ私は動じない。

 

「……言ってくれる……"消し炭"にされる覚悟はあるんだろうねぇ!」

 

「貴殿こそ……落馬しないよう注意するんだな……」

 

「……ハッ、上等だ……構えなっ!」

魅せるように赤い槍を頭の上で一回転させ、プラハは片手で手綱を引く。同時に、馬が嘶きその前足を大きく上げた。

 

来る……

 

私と彼女の距離は大体10メートル程。

馬の足なら既に射程範囲内だ。

だけど、馬上で槍を構えるプラハとは違って、私は逆に今まで彼女に突きつけていた槍を下ろした。

要は"構えを解いた"のだ。

 

「チッ! 小娘が調子に乗るなっ!」

 

当然、そんな私の行動は相手からすれば舐められているようにしか映らない。

彼女は大きな舌打ちと共に一気に黒馬を跳躍させた。

 

それが戦闘開始の合図。

 

黒の聖騎士が宙を舞う。

 

「一撃で終わりにしてやる! 覚悟しなっ!」

 

僅かな距離を一瞬で詰め、落下しながら"無防備"な私へとその紅い槍を穿つ。

流石"四駿"、行動に一切無駄も迷いもない。速い上に力も十分だ。でも、

 

「………甘い!」

 

この『何も構えてない状態』こそ、私が10年かけて編み出した立派な構え。

上から襲い掛かる槍の柄を狙って、私は最小限の動きで下から『銀の槍』をすくい上げるように振るう。

カンっという甲高い音を上げて軌道をずらされた相手の槍は、馬の着地と同時に私の直ぐ隣の空をブオンと切った。

 

「なっ!」

 

必殺のつもりで撃った一撃をいなされたプラハが目を見開くのが、私の位置からよく見える。

"一度突き出した槍は引かなければ二発目を撃てない"。つまり、今私は完全にコイツの懐に入った。

次はこっちの番だ。

 

「覚悟するのは貴殿の方だ!」

 

私は今振るった槍を、今度は馬上の彼女目掛けて横一文字に薙ぎ払う。

流石にこの至近距離では切っ先には当たらないが、柄の部分でも頭に当てれば相手を確実に落馬させる事は出来る。

そうなればもう、ほぼ確実に私の勝ち。

 

でも、

 

「くっ! 舐めんじゃないよ!」

 

相手はやはり国最強。そうやすやすとは勝たせてくれない。私の攻撃を、プラハは愛馬を後ろに跳躍させる事で間一髪でこれをかわした。

 

攻撃は空振り。

私達の間に最初と同じ距離が空く。

出来れば今ので仕留めたかったけど、まあ、かわされたんなら仕方ない。おとなしく次の機会を待とう。

 

「……ふう……」

 

『銀の槍』を下ろして一呼吸、私はもう一度自然体に戻る。

 

「……へぇ……思いの他やるじゃないか……"その体勢"から迷わず槍を出せるなんてね……油断したよ」

 

「……生憎、私はこの戦い方しか出来ない」

 

私に特定の構えはない。

でも仕方ないでしょ? だって、ゼルギウスとの訓練で"構え"なんか何の役にも立たなかったんだから。

何時何処から来るか分からない高速の剣撃に対応するのに構えなんかに拘ってたらそれこそタコ殴りだ。練習用の剣だって痛い事に変わりはない。だから、

 

『何時でも何処でもどんな体勢からでも即座に槍を出す』

 

これが私の辿り着いた答え。だから構えなんていらない。視界に敵を入れておくだけで十分。

さっきみたいな直線的な攻撃なんて、いくら速かろうが見えてれば体が勝手に反応する。

というか、非力な私じゃそれくらい出来ないとゼルギウス相手に3分と持たない。

 

「ククッ……成る程……ただのガキじゃないって事……ハッ、いいよ! それなら楽しめそうだ!」

 

ぞっとするような笑みを浮かべてプラハが言う。

もう一回来るか?

でも何にせよ、さっきの攻防で分かった。

コイツの攻撃ならまだまだ見切れる。私とこの将軍に実力の違いはない。

 

と、思ってたけど……ちょっと甘かった。

 

「"丸焼け"になる準備はいいかい? さあ! 行くよ『フレイムランス』!」

 

「えっ!?」

 

今度は私が目を丸くする。

だって、アイツのそんな言葉と同時に、あの紅い槍が急に炎を上げて"燃え始めた"んだから。

 

「な、何なの!? その……槍!?」

 

カッコつけてたのに思わず素の自分が出てしまった。

あんな槍見たことない。

熱くないのか? そんな疑問を感じるけど、どうやらプラハは自身は全然平気な様子。これは"魔法"の一種だろうか。

 

「驚いたかい? これが私の本当の槍だ……でも、ただ燃えてるだけじゃないよ……ホラッ!」

 

見せつけるように、彼女は燃える槍の先端で地面をガリガリと削りながら、それを勢い良く振り抜いた。すると、

 

「なっ! そ、そんなのアリ!?」

 

なんと、あの槍の先端から《火の衝撃波》が私へと突き進んできたのだ。

冗談じゃない。あんなのまともに受けたら火だるま確定だ。

 

「うっ!」

 

迫る炎を横っ飛びになりながら回避したけど、むこうの追撃はまだ続く。

 

「ホラ! ホラ! さっきの威勢はどうした?」

 

「うわっ! ちょっ! 待って!」

 

避けた先に第二、第三の火炎が飛ばされる。

というか、遠距離攻撃は完全に想定外だ。弓とかならまだしも、相手が《火》じゃ槍での防御も出来ない。

見切るのは難しくないけど、このままじゃジリ貧。向こうは槍を振り抜くだけでいいのに、こっちは全身を使ってかわさなきゃ行けない。

とにかく今は、早くこの状況から抜け出す手を考えないと。

 

「ホラ! これは避けれるかい!」

 

「!」

 

そんな事を考えてると、今度は今までよりもう一回り大きい炎が翔んでくる。私の体よりもまだ大きい火の衝撃波。

ただ、一瞬ビックリしたけど、まあ根本はさっきのと同じ。大きく飛べば避けること事態は簡単だ。

少し体勢は崩れるけど、次弾までには十分持ち直せる。

 

 

ただ、

 

私がその火炎を回避して、僅かに姿勢を崩したその一瞬の間に……

 

「余所見してんじゃないよ!」

 

アイツは一気に突っ込んできた!

 

騎兵にとって、たかたがか10メートル程の距離はないのと同じ。私が気付いた時にはもう、手綱から手を離したプラハが、目の前で『フレイムランス』を両手で振り上げてた。

 

「そらっ!」

 

完全な不意打ち、でも、

 

「くっ!」

 

上から真っ直ぐ叩き下ろされる『炎の槍』に対して、私は直ぐに『銀の槍』を両手で持ってそれを盾にする。

直後、ガチャンという音が上がって私達の槍がぶつかり合った。

危なすぎる。今のは完全に隙をつかれた。まさか絶対的に有利な状況を捨てて近接戦に持ち込んでくるなんて思いもしなかった。

 

「へえ……あの体勢からよく間に合ったじゃないか……いい反応だよ」

 

「先も言ったが……それが私の全てだ……」

 

何とか攻撃を防いでそう言ったけど、考えてみればこの体勢は実際かなりマズイ。だって、

 

「ハハッ! その『なまくら』が何時まで持つか楽しみだよ!」

 

プラハの槍の炎が『銀の槍』の柄を赤く熱していく。

"銀"は熱にそれほど強くない。このままいけば、数分と持たずにポキッと真ん中で両断されてしまうだろう。

今槍を握ってる私の手も火傷寸前だけど、もしこの槍がへし折られたら火傷なんかじゃすまない。

 

「……つっ!」

 

「ホラ! 反撃して見せな! もっとアタシを楽しませろ!」

 

私の目と鼻の先で『フレイムランス』の纏う炎が一層強くなった。チリチリした熱気が私の顔を熱くする。

今更だけど、たぶんこの槍は持ち主の意思に反応して火力が上がっていく魔槍。だから、プラハの感情が燃え上がる程にその火力も上がっていくのかもしれない。

例えるなら『意識の具現化』

だから、いくら激しく燃えてもその"本人"は火傷しない。

 

「ホラ! ホラ! ホラァ!」

 

炎の勢いがまた更に一段階上がった。

両手は勿論、私の肌さえも焼けてしまいそうな灼熱。

"これが四駿の本当の実力"か。

 

「くっ……あっ……」

 

完全に見誤った。

プラハの力に押されて私の膝が地に付く。

槍を持ってる手もジリジリと焼けてきて、痛みと熱さで押し返すことも出来ない。槍の耐久力ももうすぐ限界だ。

対して、相手の槍は私が苦悶の声を上げる度に激しく燃えていく。

 

絶体絶命。

 

「ハハッ! 諦めたのかい! ならさっさと燃えちまいな!」

 

「…………」

 

そんな声が聞こえるけど、私にはもう言い返す気力もない。チリチリと焦げていく体。急激に減っていく体力。

これは完全に詰んでる。

ゼルギウスの言った通りだ。実践も積んでない人間が、いきなり将軍と『殺し合い』をしたって勝てる筈がない。

現に、私は今後一歩で殺されようとしてる。

なら、いっそ降参してしまおうか。もしかしたら助かるかもしれない。ゼルギウスも言ってたんだ。『死ぬな』って。

 

でも……そんな時、

 

『……君は……結局その程度なのか?』

 

不意に『銀の槍』からアイツのそんな声が聞こえた気がした……

 

 

 

 

 

「…………違う……」

 

……そうだ。降参なんてしたくない。

思い出せ私。何のために"槍"を取った? 何のために戦い方を覚えた?

 

そんなの言うまでもない。あの男に勝つためだ。

 

私の野望はゼルギウスの妻になる事。

そのためには、何がなんでもアイツに勝って、アイツの興味を私に向せなきゃならない。

なのに、こんな所で降参なんかしたら……この女一人にさえ勝てなかったら……

 

私は一生……アイツに追い付けない!

 

足に力を込めろ! 私はまだ負けてない!

 

「……はぁ……はぁ……」

 

プラハの灼熱の槍を防いだまま、一度付いた膝を上げる。

 

「なっ、アンタ……どこにそんな力が!?」

 

向こうの声なんかもう聞こえない。

両手が燃えようが構わない。そんなもの後で"ライブ"でもかけて貰えばどうせ治る。

今はただコイツを倒す事だけを考えろ。

熱で真っ赤に染まった『銀の槍』。 その下から、私は蒸気をあげながらも、真っ直ぐに馬上のプラハを睨み付けた。すると

 

「なっ……なんだい……その目は……!?」

 

『フレイムランス』の熱気が少し落ちる。

それで分かった。今、あの将軍は私に"恐怖"を感じてる。

 

「……私は……こんな程度じゃ……死なない……」

 

こんなパッと出た炎なんか熱くない!この程度で弱る『炎』なんて偽物だ。 言ってやる。そんなものより、10年間想い続けた私の"恋心"の方が……

 

 

何倍も熱い!

 

「うあああああ!!」

 

「……な、に!? 」

 

火事場の馬鹿力とは正にこの事か。

プラハの槍を強引に弾いて、私は真っ赤に熱された銀の槍を思いきり真横に振るった。

ただまあ、流石に相手もそんながむしゃらに振るった槍が当たる様なヤツじゃない。

 

「っ! ふざけるな小娘がっ!」

 

さっきと同じように直ぐに馬を真後ろに跳ねさせて私の攻撃をかわす。

でも、追い詰めた相手に反撃された事が余程気に入らなかったのか、着地を決めた後、向こうはそんな事をいいながら『フレイムランス』をビュンビュンと振り回した。

 

さっきと同じ遠距離攻撃。

今度は単発じゃなくて。翔んでくるのはさっきよりも小さい無数の火炎弾。

 

でも、私はもうコイツの炎に『恐怖』なんか感じない。

 

「っ!」

 

襲いかかる炎に向かって一気に突撃する。

何発受けようが私の足は止まらない。スカートが燃えても、肌が焦げても構わずに突き進む。

そうだ。槍一辺倒な私には接近しかない。だから、もう逃げない。熱くなんて……ない!

 

「チッ……アンタ……何なんだよ……」

 

攻めてるのは間違いなくプラハ。でも、追い詰めていってるのは確実に私だ。

大量の火球を抜けて、私はもう一回コイツを自分の射程圏内に捉えた。

すかさずに右手の槍を引く。でも分かってる。

どうせ此処で槍を振るっても、またアイツは後ろに跳んでそれを避けるって事くらい。

だから、次がイチかバチかの賭け。

 

「クソッ! しぶといね!」

 

予想通り、アイツは真後ろへと跳躍する。

でも、プラハの馬が宙へと飛び上がると同時に私は、

 

「行けっ!」

 

「……なっ!」

 

それに向かって、真っ赤に熱された『銀の槍』を"投擲"した。

"貫通"なんてしなくていい。どうせそんな力も技術も私にはない。"訓練用"の槍ばかりを使ってた私にとっては武器の投擲自体初めて。だって当然でしょ。そんな安全な武器を投げたからって、一体誰を倒せるっていうのか。

初めからこれであの将軍を直接倒せるなんて思ってない。

目的はただ一つ。

 

投げられた槍が、飛び上がる"黒馬"の足を僅かに"かする"。

これだけでも十分。

 

「おっ! おいっ!」

 

その瞬間、プラハの愛馬は悲鳴を上げて宙で大きく前足をバタバタと動かした。

あたりまえだ。あんな真っ赤になった金属が突然身体に当たれば、動物なら誰だってびっくりする。

騎兵は自分の足を愛馬に委ねてる。なら、もしその馬が着地に失敗したら……待っている結末は一つだ。

 

「ぐっ! あぁ!」

 

体勢を崩した馬がドスンという音を上げて転倒し、それに伴って、プラハも馬上から地面へと盛大に背中から落下した。

そう、これが私の狙い。

それからもう一つ、ここで嬉しい誤算が起きた。

 

「かはっ!」

 

落馬した衝撃からか、プラハが自分の槍を落としたのだ。

カラン、カランと地べたに転がる『フレイムランス』

彼女の手から離れた途端、それは普通の紅い槍へと戻る。

投げた私の武器はもうボロボロ。これを使わない手はない。

 

「はぁ……貰った!」

 

走る。

チャンスはもうこれっきり。

ここで決めなきゃ体力的に私が負ける。

 

転がる紅い槍を、同じく私も転がりながら相手が起きるよりも早く握りしめる。

そしてそのまま、頭を押さえながら立ち上がろうとするプラハの喉元へピタリと、その切っ先を突きつけて…

 

「くっ! アンタ……」

 

「……はぁ……はぁ……私の……勝ちだ……プラハ将軍……」

 

満身創痍の中、この黒い聖騎士へと、そう宣言した。




初戦闘、いかがだったでしょうか。
こんな感じでこれからも戦闘シーンを書いていこうと思います。
フレイムランスは接近では原作とあまり変わりませんが、間接攻撃はラグネルのように"衝撃波を飛ばす"といった描写に変えています。
いや、投げると武器がなくなってしまうので……

以下、四駿ブラハの暁風ステータスです。

プラハ

槍騎将(グローリーナイト)

Lv15 ……火

Hp 43
力 20 …… 幸運 12
魔力 18 …… 防御 20
技 23 …… 魔防18
速さ 22

槍S

スキル 恐怖

フレイムランス

原作開始前ですので、蒼炎時よりレベルは低い感じですね。ステータスはほぼ一緒ですが……

ご意見、ご感想があれば是非是非です。

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