二年の月日が流れた。
ナイトレイドにスカウトされてからと言うもの、情報収集や暗殺に精を出す毎日だ。
そして、暗殺者とは思えない賑わいのあるメンバーと共に生活をしているのだが・・・・。
「ラバ、頼むから俺を巻き込むな」
「なら、旦那は行けよ。ばれない様に」
現在、ナイトレイド・アジト大浴場を覗ける崖の上に防衛結界担当の緑髪の少年・ラバックと共に隠れている。
何でか?
この小高い崖の下はナイトレイドの浴場が存在し、現在女性陣の入浴時間。
バレたら唯じゃすまない。
「そもそも、お前除きなんてするなよ。」
「ハァ!?旦那、女子を見たいって気持ちは無いのかよ?」
「何してんだ?二人して・・・・」
死の宣告、そこには指を鳴らすレオーネが仁王立ちしていた。
「いや、コレには訳があってだな?ラバをとめろって平和かつ難しい指示が」
「カズマ~、言い訳は見苦しいから・・・・腕一本な?」
「ちょっ!腕はそっちに曲がらな・・・・・あああああ!!」
レオーネに理不尽な制裁を受けるカズマ。
「ラバ、逃げるなよ?」
「はっはい!!」
「タツミ、初仕事お疲れさん」
「あ、カズマさん・・・・って何があった!!?」
墓の前で手を合わせるタツミにカズマは声をかけた。
既に重症患者のような装いのカズマに驚くタツミ。
オーガとガマルの暗殺、この仕事にはナジェンダも同行した。
オフだったカズマがアジトで留守番し、暇つぶしに狩りもしていた。
任務に出ていたラバ、ブラート、シェーレ、マインも帰ってきて今日まで誰も欠けずにやって来ている。
「初仕事がオーガとは・・・・・大変だったろ?」
「あはは、一つ聞いて良いか?」
「ん?」
「どうしてこの稼業に?」
タツミの質問は最もだと思う。
ナジェンダとブラートは帝国に失望、アカメはナジェンダに説得され、マイン、シェーレ、カズマ、レオーネはスカウトされ、ラバックはナジェンダに付いてナイトレイド入りしている。
それぞれが事情を抱える中で、タツミはレオーネが拉致したような物だ。
いくら帝都の闇に幼馴染が犠牲になり、ソレを目の当たりにしたからと言って殺ぐには割り切れないだろう。
「・・・・・・・・俺は、“この世界”の人間じゃないって所からだな」
カズマの経緯はナイトレイドのメンバーは知っている。
別の世界から来て、直ぐに帝国の腐敗を目にした事。
地方都市とは言え、自身の村の子供が斬殺されたのにもみ消した事に絶望し、国が狂っていると行動を起して、それからは革命軍でゲリラ戦を繰り広げていた事。
「スゲェンだな!カズマさんって!!」
タツミがブラートに向けるような憧れの視線を向けている。
ブラートとは違う。ブラートは軍人としての過去がある、武勇伝を聞けば憧れるかもしれない。
「そんなこと無いさ、ブラートの方がよっぽど凄い。」
そう返事を返して、空を仰ぐ。
知っていたから、この世界での出来事を。
「俺も兄貴やカズマさんみたいになりたいぜ!」
グッと拳を握り、タツミはそう言った。
なれるさ、弱い者の為に命を投げ出せるくらいの大物に。
カズマが知っているのはそんなタツミの成長した姿、多くの悲しみを乗り越えて強くなる少年に笑いかけていた。
「今回の標的は、帝都で噂になっている通り魔だ。」
会議室に召集されたメンバーを前にナジェンダが口を開いた。
「夜な夜な現れて首を切り取っていく。もう何十人殺されたか分からん」
被害の大半は帝都警備隊員、訓練を積んだ警備隊員が殺されているとなると生半可な実力じゃない。
「間違いなく『首切りザンク』だろうね」
ラバが言う。
「何だソレ?」
「知らないの?アンタ、ほんとド田舎に住んでたのね」
タツミに呆れたような口調で言うピンクのツインテール少女・マインにカズマも口を開く。
「悪いが、俺も知らん」「あの、私も知りません」
「二人共忘れてるだけだと思うわ」
マインが呆れる、と言うか名前なら聞いたことあるな。
何処だっけ?ああ、宮殿に潜入した時に見たビンゴブックのオッサンか。
「カズマも思い出したようだな?」
ナジェンダが確認するような口調になった。なので、「名だけなら」とだけ答える。
「首切りザンク、元は帝国最大の監獄で働く首切り役人だったんだって。大臣のせいで
処刑する人が多くて毎日毎日、首を斬っていたそうよ。」
マインの語りにカズマは思わず想像してしまった。
なんて職場だ、精神的に可笑しくなるぞ。
「命乞いをする罪人の首を毎日斬っていたら、監獄だけじゃ満足できなくなって辻斬りに」
マインの語りを引き継ぐようにブラートが口を開く。
「討伐隊が組織されたんだが、その直後に行方をくらませてな・・・まさか帝都に出てくるとは」
「危険な奴だな!探し出して倒そうぜ!!」
グッと拳を握るタツミ。
「まぁ待て、タツミ。」
「兄貴?」
「ザンクはゴクチョウの帝具を奪って姿を消したんだ・・・」
「だから、今回のターゲットは帝具使い。危険度で言えばオーガなんて比じゃないのさ。後ブラート、ホモ発言&行為はやめい」
ブラートの言葉を遮ってカズマが説明、釘を刺した。
ナイトレイド最強の男、ブラート。
その言動は重大なホモ疑惑を引きこしていると本人は気がついているのだろうか?
二人一組で帝都に侵入、首切りザンクを消す。
暗黒が支配する帝都に、ナイトレイドは総出でザンクの捜索に当たっていた。
振り分けはシェーレとマイン、ブラートとレオーネ、アカメとタツミ・・・・そして、
「皆、上手くもぐりこんだな。さて俺も行きますか」
カズマは一人裏路地で壁に背を預けた。
既に数十分、ジッとしている。
帝具も無く、一人人気の無い路地で立っているんだ。
これ以上の鴨は居ないだろうに!
「ん~、来るのかねぇ・・・・てかどんな帝具?情報少なすぎでしょ」
『ぼやくな』
共にぼやく、兎に角ぼやきたかった。
少数精鋭にとって情報は武器になりえる。
ザンクの適合帝具が何か分かれば、対策も立てようがあるのだが・・・・・。
「タツミの奴、大丈夫かな?」
顔バレしていないので表通りを堂々と歩くカズマはふっと後輩の事が気になった。
タツミはアカメとコンビである。
なので離れなければ生存率は高いと言っても過言ではない。が、今タツミは一人の少女
を追ってアカメと分かれていた。
開けた広場まで来ると少女は足を止める。
「サヨッ!サヨじゃないか!!」
サヨ、タツミの目の前にいるのは死んだはずの幼馴染。
タツミが帝都の闇を目にした際、被害者の中にいて、息絶えていた少女。
生きていてくれた、タツミはただそれだけで嬉しかった。
「何だ、生きてんじゃん・・・・良かった!」
ぎゅっと抱き締めるタツミ、サヨは一言も声を発することは無い。
そう、サヨと言う少女は。
「熱烈だなぁ。我ながら言い物を見せてやったらしい」
タツミは視線を上げる。
聞き覚えの無い声は自分の頭の上から聞こえた。
奇妙な装飾を額につけた大男に自分が抱きついていると気がつくのに時間は掛らない。
「うわっ!サヨが変なオッサンに!!?」
ばっと離れるタツミ、大男は不敵な笑みを浮かべながら、両手の仕込み剣をジャッ!とスライドさせながら言う。
「変なオッサンじゃなくて、こう呼んでくれ。親しみを込めテェ・・・・・首切りザンクと」
「首切りザンク・・・お前が!」
タツミも剣を抜いて構えを取る。
「今『分断された仲間を待てば。しかし、そんな猶予があるか?』と考えたろう?」
ザンクはさらに笑みを深くして、タツミは思考を呼んだトリックを考える。
「その額の目、帝具か!?」
「ピンポーン!帝具・スペクテッド。五視が一つ“動視”、相手の表情で考えていること
が分かっちまう。観察力が鋭いの究極系だな・・・・正解の褒美に干し首やろうか?」
「いるか!!」
同時にタツミは地面を蹴った。