作戦が決行時刻、カズマはポケットから相棒を取り出して歩を進める。
帝都近郊・スキウレ村、比較的帝都から近いこともあってかここで荒事が起こると帝都から援軍が来る事は珍しくない。
さらに言えば、革命軍に繋がっている事が大臣にバレて村人を惨たらしく皆殺しにされた。
「申し訳ない、今一度・・・・戦場にする」
カズマは静まり返った廃村の中央で、独り誰にでもなく詫びた。
『・・・・。』
そしてモデルZも何も言わない。
自分達の行いはどんなお題目を並べようと正当化できないと理解しているし、この村の大半の人は撒き沿いなのだ。
カズマはそんなことを考えながら詫びていると付き合いの長くなったモデルZは分かってしまう。
モデルZは思う。
タツミもカズマも殺し屋など向かないと。
「タツミ、設定を忘れてないだろうな?」
運河を航行する竜船の甲板で淵に背を預けるタツミにブラートが尋ねる。
「おう、勿論だぜ。兄貴・・・・にしても護衛対象は肉のカーテンの中か。暴れるって言ってたけどカズマは大丈夫かな?」
ふっとタツミはカズマが気になった。
こちらと違い、帝国軍と正面から単独でぶつかる仲間をタツミは心配していた。
「はははっ!あいつにはモデルZが付いている。それに“革命軍のゼロ”は伊達じゃないさ!」
表情を曇らせるタツミにブラートが言った。
「兄貴、そのゼロって何だ?」
タツミが聞き返す。
「数年前、帝国軍に対し反旗を翻した小さな勢力があった。反乱軍ともいえないほど小
さなモンだ。」
ブラートは語りだす。
「その反乱軍には満足な装備も無かった。傍から見ても直ぐに鎮圧されちまうだろうと
思われていた。が、帝国軍は全滅して反乱軍は、革命軍本隊に合流した時、殆どが非戦闘員だったにも関わらず死者は出てなかった。」
「それって・・・」
「カズマだよ。小さな農村が反旗を翻したところに流れ着いたアイツが、たった一人で守り抜きながら逃がしたのさ。そして、カズマは追撃隊千に対して、たった一人殿で残って生き残ってる」
「ハァ!?」
タツミが驚くのも無理は無い。
ブラートですら、聞いた時は嘘だと思ったほどだが革命軍の本隊にはその反乱軍を率いていた女性が居て、本当だと証言した。
「ゼロってのは帝都でのカズマの事だ。革命軍でそう呼ばれるようになったのさ・・・」
「居たぞ!油断するなっ」
帝都警備隊の部隊長が部下を叱咤する。
顔面上部を覆うバイザー、伸びる流麗な金髪に紅いベストのような装甲服は、帝都に伝えられているゼロの特徴と一致する。
帝都の入り口、正面までゼロは徒歩で現れた。
一列に並ぶ警備隊、その手にはブラスターライフルが握られていた。
「部隊長、悪は私が裁きます!!」
そう言って飛び出していったのはセリュー・ユビキタス。
先日、ナイトレイドの一人を仕留めたヒラの帝具持ちの警備隊員だ。
部隊長は唇を噛む。
現状で、ゼロに対抗できるかも知れないのはセリューだけだ。
度重なる戦いでゼロに対して自分達に支給されている武装が役に立たないのは証明されている。
「セリューに任せて防衛線をはれ!!エスデス将軍は未だか!?」
部隊長は、帰還したばかりの帝都最強に縋るような思いで部下に確認を取った。
「・・・・・ヘカトンケイル使いか。」
犬のような、形容しがたい生物がセリューの足元を追随している。
カズマは目にした瞬間からバスターショットのチャージを開始。既に完了して何時でも放てる状態を維持、足を止めた。
「ゼロっ!お前は私が処刑する!!コロ!5番!!」
セリューの義手にヘカトンケイル、コロが喰らい付く。
カズマはその光景に一瞬目を疑った。が、直ぐに生物型は武器庫もかねていると知ることになった。
「正義!閻魔槍!!!」
一切の迷い無く、高速回転するドリルを突き出しながらセリューはカズマを貫かんと突進してきたのだ。
「其処まで歪んだ表情は、早々出来たモンじゃないな・・・」
対するカズマは冷静に地面へリコリルロッドを打ち込んだ。
その反動で宙に逃げ、セリューを飛び越えると防衛線を張る警備隊を一瞥する。
(エスデスがどうとか聞こえた。となるとあまり時間をかけるのは得策じゃないな・・・・)
次の一手を考え、短期決戦に持ち込むかと考えるが、思考を直ぐに中断させられる。
ドリルが、“飛んで”来た。
「くっ!」
苛立ち、舌打ちしてチャージショットの反動を利用して避けると今度は歪かつ筋肉質な腕を生やしたコロが待ち構えていた。
「コロ、粉砕!!!」
セリューの一声でコロはパンチのラッシュを開始する。
ソレをカズマはシールドブーメランで防ぐ、異世界の武装は帝具の攻撃に良く耐えるが、
「何て威力だ、腕痺れた!」
カズマの肉体はそうも行かない。アレを一発でも直撃を受ければ無事ではすまないだろう。
「しぶとい悪め!!これで・・・・」
「だけど、お前も外道と大差ない顔をしているぞ」
着地を狙ってセリューが今度は剣を振るう。
ソレをZセイバーで防ぎ、僅かに後退しながらバスターショットを放つ。
溜めていない牽制程度、それでもエスデスに合流されてはこちらの命も危ない。
「減らず口を!!」
セリューはこちらを殺すことに躍起になっている。
そりゃそうだ、ついさっきまでセリューの攻撃は確かにカズマを捉えていた。が、コロの粉砕ラッシュから一転してこちらの攻撃は全て流されている。
カズマの余裕が、セリューに拍車をかける。
「キュゥゥゥ!!!」
「遅い」
コロが再びラッシュを仕掛けると数秒の間を置いてコロの腕が宙を舞った。
「帝具なら死なんだろ?」
一閃。
コロの左腕が宙を舞う。耳を貫くような悲鳴があたりに響く。
帝具であるヘカトンケイルの両手がたった一人の男に切断された。
その光景に部隊長は冷や汗を流し、セリュー以外の部下と共に僅かに後ずさる。
セリューとゼロは少しずつ帝都から離れていた。
カズマの狙い通り、セリューは廃村まで誘導されてしまい静まり返った廃村の入り口付近でにらみ合っていた。
(このまま去るのか!?)
そう思った時だった。
「ぎゃっ!!」
巨体ごと吹っ飛ばされたコロに巻き込まれる形となったセリュー、身を起すとそこにゼロの姿は無かった。
『これ以上、時間を掛ける意味はないだろう。十分だ』
モデルZがそう呟き、ポケットから僅かに顔を覗かせた。
道から外れ、茂みからカズマはとはゆっくりとアジトへ歩を進める。
ロックマンとしての能力を使っていったほうが断然早いのだが、エスデスの存在が気がかりだ。
レオーネが探っているとは言え、騒ぎを起したとなればあの戦闘凶ドSのことだ。すっとんで来るに決まっている。
「これで、竜船組みからは注意が逸れたろ・・・・・あの犬と義手の女は・・・・・」
シェーレの仇、マインからの報告にあったとおりだ。
両手は既に無く、とんでもない装備を固めてきた。それでも敵じゃない。
直線的過ぎる、殺気も剥き出しなら幾ら不意打ちされようと対処は出来るし、何より“軌道がはっきり”視える。
『・・・・・無事だと良いな。』
モデルZはそう言うと沈黙した。
アカメとラバは前後がはっきりと分担されている。
タツミも日々ブラートやアカメに鍛えられてメキメキ実力をつけている。
「・・・・・・大丈夫」
言い聞かせるように呟く。
皆、これ以上殉職者が出ることは無い筈だと思い込みたくて。
自分に言い聞かせるカズマだった。
カズマの本格的なミッション参加はもう少し先