緋弾のアリア ~月を渡る前向きな武偵~   作:紫柳

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第43弾 過去調査

昨晩は見事アリアに海に沈められた。

けど特に酷かったのはユキだ。

ほんとあの時のユキの顔は怖かった。

いや怖かったというかうん、いつもはアホみたいな感じなのにあの時は言葉に表せないほど異形だった。

あの後ユキが満面笑顔で何かを呟いていたが俺は怖くて聞くことができなかった。

ともかく昨日のことは思い出したくないことなので記憶の奥底へと沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうぅぅ…」

 

ユキのとてつもないしごきを受けた後俺は雨降る外へと歩き出した。

傘に雨が当たりぽつぽつと音が聞こえる中外の廊下を歩く。

ユキに関しては何故か体に教え込むかのような教育をしているし。

確かにもう少しで本番の任務があるけどさ、肉体に教え込むのはいかんでしょ。

俺は嘆息する中何か別の音が聞こえる。

綺麗な音だな。

しかし、俺はこの音楽を聞いたことがある。

確か題名は

 

『火刑台のジャンヌダルク』

 

嫌な予感がした。

これは凍える冷気のような音と共に聞こえてくる。

俺は警戒するかのように音の出所である音楽室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「何だ。やっぱりジャンヌさんか」

 

「ほう、今度は岸波か。まあいい。お前にも説明する予定だったからな」

 

ジャンヌは見たことある西洋の鎧ではなくこの武偵校の制服を着ている。

まあ、似合っているけど。

 

「ん?お前は何故私がここにいるのか聞かないのか?」

 

「ああ、どうせ司法取引だろと思ってね」

 

「やっぱりお前はキンジよりも頭が回るみたいだな」

 

「あはは…まあ、キンジはヒステリアモードにならないとちょっと馬鹿だからね」

 

まあ、馬鹿だけであいつを決めることにはできないが。

ノーマルキンジはノーマルキンジでいいところはあるしな。

まあ、この際キンジのことは置いておいて聞きたいことを聞くか

 

「ジャンヌさんはブラドのこと知っているんでしょ。だったら教えてほしい」

 

「…結局はお前もそのことを聞くんだな」

 

別にいいでしょ

 

「まあ、私も結局はそのことを話そうとしていたから何とも言えないがな」

 

微笑を浮かべるジャンヌさん。

そこで音楽室に部活だろうか。部外者が入ってくる。

しかし、今の状況では俺たちが部外者だ。

俺とジャンヌさんはそろって音楽室を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが来たのはこの学園島で唯一のファミレスだ。

一応俺が話を聞く立場なのでおごることになっている。

俺はドリンクバーから二人分のジュースを持ち席に着き反対のテーブルに置く

 

「ああ、ありがとう」

 

ジャンヌさんが一口口に含むと息を軽く吐く。

しかし、こんなクールな人がセーラー服とかなにかギャップが良いな。

可愛らしくていいと思う

 

「その制服にあっていますね」

 

俺がそう一声かけるとジャンヌさんは少し顔を赤くして返す

 

「お前もか。まったくせっかく教えてやろうとしたのに何故そう心にもないことを」

 

「え?本心ですけど?」

 

俺の言葉にさらに顔を赤くさせたジャンヌさんだがそれを紛らわせようと一口ジュースを口に含むと話し始める。

 

「た、確かブラドの話だったな!いいだろう遠山にも聞かれたことだそのまま話そう。だが、岸波。お前も情報科だろう?お前も調べてはいないのか?」

 

「ええ、ですけど俺の情報網では限界があってまったく調べられてないんですよ」

 

「ほう、お前でもわからないことがあるのか。情報科の面子でも頭一つ跳びぬけていて限りなくSランクに近いAランクの岸波が?」

 

そう言うジャンヌさんも専門学科が情報科らしくそれも成績は良かったらしい。

というか年上だと思っていたが同い年だということがさらに驚いた。

 

「まあ、それはいいでしょ。速く情報を教えてください」

 

「わかったわかった。私の知っていることはすべて説明するとしよう」

 

やっとこさ話が始まるので俺は今一度佇まいを正す。

 

「岸波はブラドの情報はほとんど知らないと言ったな」

 

「ああ、ほとんど知らないが吸血鬼だということは知っているよ」

 

「まあ、大体は合ってはいるな。確かにあいつは吸血鬼だ。そして鬼でもある。」

 

「鬼?」

 

鬼…か。

確かにあの月にいた時のあいつは凶暴性などに置いてまるで鬼のような実力を持っていた。その点においては予備知識はあるがこの世界のブラドはあいつと一緒というわけではないだろう。もっと情報がほしい。

 

「他には情報は?」

 

「ない」

 

「は?」

 

「ない」

 

「いやわかってますって」

 

情報が無いってどういうことだ?

 

「直接的にブラドに関する情報が無いだけだ。何にせよブラドはイ・ウーでも謎多き存在だったのだ。情報が無いのも仕方のないことだ」

 

えー来た意味ないじゃないですか

 

「そ、そんな悲しそうな顔をするな…ブラドは120年ほど生存した吸血鬼で、先代のジャンヌダルクがある人物と共闘しても引き分けたほどの奴なんだ」

 

「へー、そーですかー」

 

「ぐっ!…す、済まなかった…」

 

俺は涙目になったジャンヌさんを慰める。

まあ、そうだよね!知らないことだってありますよね!

 

「そ、そうだ!ブラドには理子さんの大切なものを取られたって言っていましたよね!ブラドと理子さんに何か関係があるのですか!」

 

俺の言葉にいつもの調子を取り戻したジャンヌさんが俺の質問に真剣な表情で答える。涙目ながら。

 

「ぐすっ…ああ、理子は過去にブラドに監禁されていたのだ」

 

その言葉に俺は驚愕の表情を浮かべる。

いつもはアホのような調子の理子さんにそんな過去があったなんて…

…なるほど大体わかった。

何故理子さんがあのような表情をしたのか。

 

「ああ、このことは非常時以外アリアには伏せておいてくれ。あいつが嗅ぎつけると絶対に戦うとか言い出すからな。先日狼がそちらに送られてきただろう。あれはブラドの手下だと思ってくれていい」

 

「俺たちの意図に気付いているのか?」

 

「わからないが…それはないだろう。狼は射撃科の生徒に奪われたと聞く。奴の僕は世界中にいて直感的に生存しているからな。帰ってこないとしたら遊びに行っているとでも思われているかもしれない」

 

それでいいのかブラド達。

けど、もしばれた時には戦わないといけない状況へとなるのかも知れない

 

「ああ、戦おうとでも思うなよ。奴には絶対に勝てない」

 

またか。

最近この展開多いな。

 

「一体どうしてだ?」

 

一応聞いておく。

 

「それは奴が不死身だからだ」

 

…おうぅ、不死身ときたか。

確かに不死身なら勝つこともできない。

じゃんけんで言えばどんなカードを出しても絶対に負けないことと同義だ。

戦っても無駄だということ。

しかし、この事実には突破口がある。

まあ、このことは後で考えるとしよう。

それよりも聞きたいことがある

 

「それでそのブラドは現在イ・ウーのトップなのか?」

 

「いや、それは違う。ブラドはイ・ウーのナンバー2でトップは教授と呼ばれる別の人物だ」

 

その言葉に俺はその突破口がつけると思い口元を軽く釣り上げた

 

「なら、ブラドもその教授とやらには敵わないというわけだ」

 

「ま、まさか戦おうとしているのか」

 

「まあ、出会ったならな。負けたとならば不死身でもないということだろ?」

 

「はあ…確かに奴には昔バチカンから送られてきたパラディンの秘術により弱点に消えることのない印をつけられたのだ。教授もそこを突いたのだろう。」

 

「見てなかったのか?」

 

「いや、見ていたが見えなかったというのが正しいか」

 

そう言って一度咳払いをするとまたしゃべりだす。

 

「教授はものの数秒でブラドの弱点を見つけて目に見えぬ速さで倒したのだ。」

 

…その教授ってめちゃくちゃ強いやつなんだな。

まあ、確かに国家機密にされるほどの組織だ。

そのトップともなれば意表を突かれるような奴だろう。

たとえば、世界一有名な名探偵だとか。まあ、あるはずもないか。

 

「まあ、基本は戦う気はないよ。もしもの時の緊急用だと思ってくれていい」

 

「…その方がいいだろう。だが、一応私が見た分の弱点を描いておく。ブラドには弱点が4つあると聞いた。だが、私が知っているのは3つだけだ」

 

そう言ってジャンヌさんはナプキンを一枚手に取り眼鏡をかけペンを走らせる

 

「あれ?眼鏡かけていたっけ?」

 

「ああ、ちょっと乱視なだけだ」

 

すらすらとペンを走らせる。

…んん?

 

「完成だ」

 

「…落書き?」

 

「な、落書きとは失敬な!」

 

だ、だって何でそんなにギザギザしているの?

何か目?みたいな模様が3つほどあるがそれが弱点なのかな?

…まあ、一応もらっておくか。弱点が書かれてあるし役にも立つだろう。

 

「4つ目は私にもわからない。けど、一応これだけは覚えておいてほしい」

 

「…ああ、ありがとうな」

 

俺はポケットにそのブラドが書かれたナプキンを入れる。

けど、これ持ってたら何か不幸なことが起きそうな気がするんだよな。

 

「…ああ、ごめん話がずれたな理子さんのことをもう少し教えてくれませんか」

 

俺はまた話を続けさせる。

理子さんには悪いがあの感情を見せられたなら俺は知っておきたいし

 

「そう言えば理子の話の途中だったな。理子は小さい頃監禁されていた。よほどひどい目にあったのだろう。理子がいまだに小さいのは当時ろくに食べ物を与えられていなかったから。衣服に執着があるのはぼろ布しか纏うことができなかったからだと聞く」

 

「そう言えば何で理子さんは監禁されるような目にあったんだ?リュパン家と言えばかなりの名家なんでしょ?」

 

「リュパン家は没落したのだ。全盛期が切れたのは二代前のリュパンまでだった。当時ブラドとも戦えたほどのな」

 

なるほどな。先代ジャンヌダルクと共闘したってのは先代リュパンだということか。

 

…つながったな。

理子さんが何故そこまでアリアに付き纏い力を求めるのか。

 

ジャンヌさんは氷が解け温くなったジュースに超能力で氷を作り出し冷やしていた。

俺は頭の中にあったブラド攻略への突破口となる手助けを求めることにした。

 

「ジャンヌさんもこの作戦に参加してくれませんか」

 

俺は一声声をかける。

ジャンヌさんは驚いたような表情を浮かべる

 

「ジャンヌさんイ・ウーで理子さんと仲良かったんでしょ?それなら協力を要請してもいいかな?」

 

俺はなるべく下手に出るように提案するがジャンヌさんは消沈した顔をして頭を下げる

 

「私には無理だ。実は今私たち超能力者は力が安定していない。私は氷を操る能力を持っているが今ではこのように冷やすための氷くらいしか作りだせないのだ。今の私がお前たちについて行っても邪魔になるだけだ。だから、済まない」

 

それはそうとも限らないんじゃないか?俺はそう言葉をかけようとしたがジャンヌさんの表情を見た時俺は言葉を呑んだ。

彼女は苦しそうな表情をしている。

本当に自分が役に立てないのが悔しいと思っているのだろう。

もしここでそれは違うとか言っても逆に傷つけるだけだ。

俺は何の言葉を発するかを考え行動へと移した。

 

「わかった。ごめん変なこと言って」

 

そう言って俺は席を立ち伝票を手にする

 

「けど、僕はジャンヌさんはいい人だと思うよ。」

 

驚きの表情を浮かべる

 

「理子さんを本当に大切だと思っているから関わろうとしない。それはとても屈辱的で最も賢い行動。自分の意思を捨ててまで友達を守ろうとするその心はとても清らかで美しいと思う。だから自分を卑下しないでほしいな」

 

俺はそう声をかけてレジへと向かい清算するとファミレスを出る。

一言多かったかなと思ったが俺は気持ちを切り替え町へと繰り出すのだった。

 

 




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