けど、今回ようやくあの赤の皇帝が…!
『―回路を確保しました』
『―魔力情報更新終了しました』
『―新術式インストール中…』
『―終了まで残り10分』
「キンちゃん!」
「グハァァ!」
は、腹に衝撃が…!
俺の腹に衝撃を与えた人物である白雪は
痛みと共に目を覚ますと俺の耳に轟音が響いてきた。
何の音かと見てみるとそこには炎の本流。
目の前でロケットが飛んで行こうとしている。
「ICBM…!」
大陸間弾道ミサイルだと…!
けど、あんな形だっけ?
なんかだいぶ軽量化されたような形だけど。
さらによく見てみるとICBMの側面には
「キンジ?!それにアリアまで!」
あいつら何やってんだ?!
あいつら側面に何かを突き立てて上って行っている。
上に何かあるのか?
「白雪どうしてキンジ達はあそこに?」
聞いた所によるとどうやらキンジは連れ去られたアリアを助け、そのあとシャーロックが出てきたかと思うとアリアの秘密を話したらしい。
それは先ほどパトラ戦の時にアリアが使ったあの光について。
詳しい話は省かれたが緋弾と言うものらしい。
シャーロックは特にキンジに詳しく話していたらしいから後から聞くとするか。
するとシャーロックがアリアを緋弾の所持者にした原因を受けたことによりキンジがきれて一騎打ちを仕掛けたとか。
押されていたかと思ったらキンジの機転により何と勝利を収めたらしいのだ。
しかし、シャーロックを捕らえるには至らずあのICBMに乗ってどこかへ行こうとした所アリアもそれについて行きあのような状態になったらしい。
…うん。超展開過ぎてよくわからんがキンジ達は多分大丈夫だろう。
「それでね!それでね!キンちゃんが…!キンちゃんが…!」
「はいはい、どうどう。抑えて白雪」
焦り暴れる白雪を抑え俺は上空を見る。
そうこうしている間にもICBMは空へと上って行く。
もう雲を突き抜けそうな距離だ。
が、俺はそう心配するような心情にはならなかった。
それはなんとなく勘であって決定的なことではないけど何となくあいつらなら大丈夫なような気がするんだよなぁ…
「大丈夫だって白雪。キンジ達なら絶対生きて帰ってくるさ」
「…本当?」
涙目+上目使いで俺を見上げてくる。
…うん、それ一男にはちょっと刺激が強いんでやめてほしいんすよ。
せめてキンジにしてくれと思いながら俺は返答をする。
「あのキンジが白雪を残して先に逝くと思うか?」
「…そうだよね!キンちゃんが私を置いてどこかに行くことなんてないもんね!」
…重いデス。
けど、白雪はそこで信じて待つよ!と言って落ち着いたからよしとしておこう。
また上を見てみるともう小さな光が見えるだけで細かなところは何も見えない。
というかもう大気圏くらいまで行ったと思うぞ。
…うん。さすがに少し心配になってきた。
「白雪、どこかに小型ボートみたいなものないか?」
もうあれくらいの高さになったら降りるなり落ちるなりしてくるだろう。
しかし、ここは海の真ん中だ。
必然的に海上に落ちることになるから救出に行かなければならない。
アリアは泳げないしキンジも戦いで疲弊しているだろうからせめて落ちてきたときに救出に向かおうと思い提案したのだが、答えたのは別の方向からだった。
「…イ・ウーに何隻か救助用のボートがあったはずだ。それで向かうといい」
そう答えたのは金一さんだった。
胸の撃たれた傷は出血が止まっている。
どうやらパトラの治療がうまくいったみたいだ。
しかし、その言葉からしてみるとどうも金一さんはキンジの救出に向かわないみたいだ。
どうやら金一さんも俺の疑問に勘づいたらしく返答をしてきた
「ああ、俺らは戻らない。やらなくてはならないことがあるからな」
「それって…」
「聞くな。それは無粋ってものだ」
だろうな。
金一さんの表情は完全に将来を見据えていた。
これから何か大切な事態が起こるような表情だ。
今そういうことになっているならそれを引き起こしたのはシャーロックが負けたという事態が関係しているだろう。
つまりシャーロックに勝ったキンジに何らかの事態が起こるということ。
金一さんは多分結構お兄ちゃん気質だからキンジのために走り回ることになるだろう。
まったく、キンジもいいお兄さん持ったな。
俺は金一さんに頭を下げる。
たとえお兄さんでも俺の親友を助けてくれる人だからな。
頭を下げるのも当たり前だろう。
金一さんはそんな俺を苦笑気味に見てからイ・ウーへと歩みを進める。
あ、そう言えば沈みかけているんだっけ?
アリンベール号はほとんど沈み足がつく足場ももうそろそろなくなるだろう。
「そろそろ行きますか」
そう言って俺が白雪に声をかけ駄出ボートへと向かおうとしたところ―
ズドォォォォオオオン!
「…?!何の音だ!」
その音は沈んでいるアリンベール号の下から響いてくる。
しかし、その音は魚雷のような爆発音ではなく、まるで叩きつけるような、殴りつけるような鈍い音だ。
またもや揺れる船上。
「白野君!早く離れないと!」
白雪から声がかかる。
確かに沈みかけの船に攻撃を仕掛けてくるからには速く離れたほうがいいかもしれない。
異常を察知したのは金一さんたちも同じだった。
未だ残っているイ・ウーへと向かおうとしてまたこちらに戻ってきた。
「これはどういうことなんだ?!」
金一さんたちでも不測の事態に動揺している。
俺は警戒しながら海面へと近づいていく。
足元はすでに水に濡れ、踝まで水が入ってくる。
海水面を覗き込むと、海中は崩壊しているアリンベール号の破片と数匹の魚しか見えない―!
何かいた。
それは大型魚のような形でもなかったしアリンベール号の破片のような無機物の動きではない。
これは…
…こっちに来る!
「皆離れて!」
俺は叫び急いで船上の中心側へと足を進める。
俺の焦りの声が伝わったのか皆俺に付いて船上の中心へと寄る。
数秒の沈黙
―!
それは爆発するようなものではなく、海水面から何かが出てくるような水の持ち上がりだった。
見えたのは筋肉質で防御が強そうな青の装甲。
その腕はどんな障壁でも破壊するかのような剛腕。
その顔はまるで悪魔のような全てに恐怖を与えるような凶顔。
「こ、こいつは!」
月の聖杯戦争の時あるキャスターのサーヴァントが俺たちの妨害をするかのように作り出したエネミーであった。
しかし、その体格は月の世界での2メートルほどの大きさには収まらない。
「こんなにでかかったか?!」
それはあの月の世界の大きさより一回り大きい体格をしていた。
出てきた疑問は数知れない。
何故、このタイミングで出てきたのか?
何故、俺たちの前に出てくるのか?
何故…勝てるわけがない相手がこの場に出てくるのか?
あの時倒したエネミーはサーヴァントの力を持ってしても苦戦を強いられ勝利した。
言うなれば英霊と大差ないのである。
ぶっちゃけ言えば勝てない。
勝てるわけがない。
ランドマークタワーの上で少しは経験値がもらえたがそれもあの時ほど力が戻ったわけでもない。
ダメージを与えることすらままならない状態なのだ。
だから諦めて逃げるか。
それは出来ない相談である。
あのエネミー、見た目に反して意外と動けるのである。
まあ、英霊と戦えるだけあってその敏捷性が高いのは当然なのだが。
つまり逃げようと思っても原潜のスピードでは撒けない。海上の孤島となっているのだ。
「あれは一体何なんだ?!」
金一さんが驚愕の声をあげる。
まずいな…
この前戦ってみてわかった通り月のエネミーにはこの世界の住人の攻撃は当たらない。
言っては悪いが攻撃が当たらないなら邪魔になる。
呼び込んだのは悪いがまた離れてもらおう。
「金一さん。今すぐ皆を連れてイ・ウーで離れてください。こいつは俺が足止めします。今すぐ離れて」
「馬鹿を言うな!あいつ…今までにない曰くさを感じる。俺も加勢するぞ」
「だからですよ。俺はあいつの正体は知っています。あいつには普通の攻撃は当たらないんですよ」
「それこそどういうことだ。…白野の言うからにはお前の攻撃しか当たらないみたいな言い方だな」
「ええ。詳しくは長くなるんで話せないんですけど…ここは俺に任せてくれませんか?」
金一さんは俺の目を見る。
多分俺の言ったことが本当かどうか俺の目を見て判断したのだろう。
一つ間を開けると金一さんが一歩後ろに下がった。
攻撃が当たらないなら邪魔になるだけ。それは金一さんも分かっているはずだ。
理解はしていないけど納得はしたようなものかな。
金一さんは振りかえりイ・ウーへと向かおうとする。
「…油断するなよ」
「…ええ」
俺は電子手帳から礼装である『錆びついた古刀』と『守りの護符』を取りだし『gain_str(16)』と『gain_con(16)』のコードキャストを実行する。
この二つ共に軽威力のコードキャストであるがこれには理由がある。
まず、俺自身の魔力量の問題だ。
先ほどのシャーロック戦の時高威力のコードキャストが予想以上に魔力を消費したのだ。
多分連戦の魔力使用により俺の予想より魔力が回復しなかったのだろう。
それともう一つ。
それは完全に意味がないからである。
たとえ高威力のコードキャストで身体能力を強化しても俺自身の元の力量の低さで上がったともいえない上昇量なのだ。
つまり勝つことができない戦いである。
俺はただ時間稼ぎをするだけだ。
イ・ウーが完全に離れたら俺も何とかして脱出をする。
方法は考えていない。戦いながら考えるだけだ。
拳を構える。
目の前のエネミーは荒い息を吐いている。
膠着状態の場で唯一する音は波風の音だけだ。
拳が震え額から汗が出てくる。
防御系のコードキャストを使ったとしてもそれはただの気休め。
一発食らっただけでもアウトだ。
―
――
―――!
飛び出す。
エネミーは待ちかまえ突進してくる俺に拳を出してくる。
しかし予想通りだ。
聞こえるのは風を凪ぐ音。
その音の先にあるのは俺の頭だ。
それをしゃがむことで避け…足でけり上げる!
俺の蹴りはエネミーの腹に当たり一歩後ろに歩かせた。
しかしダメージが入った感覚はない。
エネミーも俺のひ弱な打撃を受け笑っているように見える。
むかつくが…今は、時間稼ぎの時だ。
俺はまた打撃を与えるために拳を突き出した。
どれだけ時間が過ぎたかわからない。
俺の感覚では膠着状態で数時間時間が経った感覚だがさっきちらっとイ・ウーが見えた時ここからぎりぎり見えるくらいだった。
もうそろそろいいだろう。
実はついさっきこの場から退避するための方法を思いついたのだ。
これもさっき見えたのだが海上に俺たちが乗ってきたオルクスが見えたのだ。
すでに燃料切れなのだが実は緊急事態用に俺の電子手帳に一リットルほどガソリンを入れているのだ。
それだけでは日本に帰るとまではいかないがこの場を離れることくらいはできる。
そのあとは救助を待っていればなんとかなるだろう。
後はこいつをどうにかして隙を作るだけだ。
この広い海の真ん中だ。
地上で悪さをするどころか地上まで行くこともないだろう。
俺は電子手帳から『古びた神刀』を取り出し『gain_str(32)』のコードキャストを使う。
それにより筋力が大幅に上がるがもうすでに魔力は空っぽだ。
ここで決める!
エネミーが拳を突き出してくる。
目で追えないほど速いその拳圧はほとんど勘で避ける。
「はぁああ!」
箭疾歩を放つ。
エネミーは数歩下がる。
追いうちをかけるように鉄山靠を放つ。
またエネミーは数歩下がる。
エネミーはカウンターで裏拳を放つがそれをジャンプすることでかわし斧刃脚を放つ。
またまたエネミーは数歩下がる。
打つ打つ打つ。
下がる下がる下がる。
なんとか連撃を仕掛けエネミーを後退させる。
後数メートルで海面に出る。
こいつを何とか落とすのだ。
それなら少しは時間もできオルクスの燃料補給もできる。
オルクスのスピードならなんとか逃げ切れるかも知れない。
もう何度打撃を与えただろう。
だが海水面はもう目の前だ。
これで、決める!
―!
声は出なかった。
ただ感じるのは無力感と激痛。
俺が大きく突き出した絶招歩法は敵エネミーが完全に掴んで止めていた。
俺はなんてミスを犯してしまったんだ…。
敵を押し出さなければならないと焦り攻撃が単調になってしまったのだ。
エネミーも強敵になると頭が回る。
完全に読まれてしまった。
腕を掴まれたことで右腕はもう感覚は無かった。
そのあと感じる腹部の衝撃。
ただ殴られたのだ。
それだけで腹部は穴が開く。
衝撃と共に吹き飛ばされ俺は反対側の海に落ちて行った。
光が遠ざかって行く。
体がうまく動かない。
どんどん沈んで行っているようだ。
俺は…このまま死ぬのか。
『――――――!』
考えてみればこれが当たり前のことだ。
勝てるはずもない相手に時間稼ぎをし、仲間を助けたのだ。
それで俺の命一つで救えたのならそれも幸運だ。
『―――奏――!』
だからもう眠ってもいいよな。
頑張ったのだ。
このまま眠って…全てを…
『目を覚ますのだ!奏者よ!』
声が聞こえた。
何もないこの海の底で声が聞こえるわけがない。
きっと幻覚、幻聴だ。
ただ、目を閉じて終わりを待つだけ。
待つだけ。
なのに、どうして俺は手を伸ばす?
鈍い思考で考える。
…俺はまだ生きようとしているのか?
勝てるわけがない/それは当り前だ俺は弱いから
もう役目は終わった/何を勝手に終わらせている
もう何も考えられない/考えるくらいなら行動を起こせ
それは一体誰に教わった?
死にかけだ。
それなのに笑いが出る。
少し前の俺はバカだった。
勝手に達成感を作り出し役目を終えただと抜かしてしまった。
それは違う!
この世界にはまだまだやるべきことがいっぱいある!
仲間ともっと生きたい!
まだ諦めるわけにはいかない!
俺は手を伸ばす。
一人でできるなんて思っていない。
助けてくれるのはあの日の仲間。
―ありがとう。
手を伸ばし―――叫ぶ!
「来い!セイバーーー!!!」
『うむ!そなたの思い、しかと受け取ったぞ!』
感じるのは暖かな温もり。
俺はその温もりに身を任せるのだった。
64弾終わりました。
確かシャーロックが逃げ出すまでが宣戦会議に出る人たちは見ていたと思うのでこのタイミングで白野君覚醒としました。
どうしても白野君の重要性を宣戦会議まで出したくなかったのでこの処置になりました。
次は説明回になりそう。
ローレライの歌声さん、阿刀さん、シオウさん、パラノイヤ(偽)さん、三の丸さん、ベクセルmk.5さん感想ありがとうございます。
意見・感想お待ちしています。