IS ~ein schwarzer ritter~   作:瑠偉

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第一話 同僚は女だけ

「全員揃っているようですね。それでは定例職員会議をはじめます。えーそれでは本日の――――――――」

 

 前で話しているのは教頭先生だ。名前は知らんが。

 今日は俺がIS学園の教師になって一日目、つまり始業式の日だ。俺と一夏がISを使用することが出来る、というニュースが流れた後、それはもう大変だった。ありとあらゆ

 

る検査、検査、検査。もう血は採らないでください。

 しかも初の男性IS操縦者と言うだけあって貴重なサンプルだ!と言わんばかりにあらゆる研究所やら研究機関が群がってきたせいで、もう外出も出来ないほど家の周りにス

 

カウトらしき人物が目を光らせているし、もう大変だった。

 しばらくすると束が圧力を掛けたのであろう、政府からの勧告で蜘蛛の子を散らすように勧誘は収まった。

 そして、俺は十蔵のおっさんのコネによって希望通りIS学園で働くことになった。

 ……というか事態が落ち着くまで二人ともどこも手を出せないところに入れとけ!と言う臭い物には蓋的な考えもチラホラ見え隠れしていたが。

 

「……先生、東雲先生!」

「っ!は、はい」

 

 いかんいかん、考え事をしていると周りが見えなくなるのが俺の悪いクセだな。

 

「話はちゃんと聞くようにお願いします。それでは先ほど紹介した東雲先生です。…どうぞ」

「東雲 蓮浄です。ISの基本動作、座学を担当させて頂くことになりました」

 

 他の教師が「え?それだけ?」という目で見てくる。それ以外に何を言えば良いんだよ。あぁ、謎の沈黙で周りの視線が痛い。……何故かというとそれは他の教師が全員女

 

だからである。

 ……その中でも一人、特に苛烈な視線を、というか睨んでくるヤツが居る。その名も織斑 千冬(おりむら ちふゆ)、2年ぶりに再会したであろう、俺の幼馴染みである。

 

「え~っと…初めて教職に就いたので至らない点もあるでしょうが、よろしくお願いします」

 

 何とか言葉をひねり出してその場を逃れる、千冬の視線がさらに鋭くなった。だから俺にどうしろというのだ。

 

「それでは東雲先生は1年1組の副担任をやってもらうことになります。あの組には山田先生が副担任としていますが、まぁ特例と言うことで。織斑先生、副担任が二人と言

 

うことで大変かもしれませんがよろしくお願いします」

「わかりました」

 

 千冬が返事をしてどうにも居心地の悪い職員会議は終了となった。

 

 

 

 

「……よう、千冬。久しぶりだな」

「…………」

「えーと、千冬さん?」

「……まったく、一体何処をほっつき歩いていたんだお前は」

「えーと……、ちょっと世界中を転々としてた」

「……そうか」

「………」

「………」

 

 ……話が続かん!あの後予鈴がなって真耶がSHRをするために先に行ってからずっとこの調子だ。その沈黙を引きずったまま、1年1組の教室に着いた。

 

「東雲先生、しばらくしたら呼ぶのでここで待っていてくれるか」

「はい、わかりました」

 

 そう言って千冬は教室へと入って行った。

 しばらくするとパァン!と硬い物で何かを叩くような音とそれに続いて男の「げぇっ、関羽!?」という声が聞こえパァン!………また何かを叩くような音がした。……ま

 

ぁ何となく想像は付くが。

 しばらくすると教室から黄色い声援が飛び出した。その声援がしばらく続いたかと思うとまたパァン!と何かを叩く音が。………一夏の頭は大丈夫なんだろうか。教室に入

 

るといきなりスプラッタとか無いよな?

 ガラリ、と教室のドアを開けて千冬が少し疲れたような顔で俺を教室へと招き入れた。

 

「……ウチのクラスには山田先生ともう一人副担任が配属される事になった。東雲先生、自己紹介を」

「えーと、ニュース等を見て知ってる人もいるかもしれないが、東雲 蓮浄だ。これから一年間、皆にISの基本知識を教えたいと思う。よろしく」

 

 挨拶を終えると、一瞬の静寂の後、黄色い声援が俺の鼓膜を襲った。

 

「すごい、すごいよ!ウチのクラスにISを使える男が二人も!」

「結構かっこいいよ!」

「きゃー!結構タイプかも!」」

 

 この黄色い声を断ち切るかのように一夏が声を上げた。

 

 

「蓮兄!?」

 

ガタッ!(一夏がイスから立ち上がる音)

 

パァン!(千冬が一夏の頭を叩いた音)

 

ドサッ(一夏が頭を押さえて倒れた音)

 

「お前はSHRの時ぐらい静かに出来んのか。あと蓮兄ではなく東雲先生だ」

「いや、千冬姉!だって、」

パァン!

「私の事は織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

 

 

 おいおい、いいのか?そんなやりとりしてると姉弟だってバレるぞ?そんなことを思っていたが遅かったようだ。

 

「え……?織斑君って、あの千冬様の弟………?」

「それじゃあ、男なのにISが使えるっていうのも、それが関係して………」

「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」

 

 ………最後のは何だったんだろう。まったく、女というヤツは分からない。

 そういやこの教室、よく見ると箒も居るじゃないか。そうか、箒もIS学園に入ったのか。まぁ、ISを作った人物の妹を保護するにはうってつけの場所だからな。

 

「しつもーん!」

 

 考え事をしていると一人の女子が手を挙げていた。

 

「さっき織斑君が東雲せんせーのことを『蓮兄』って呼んでたけどどういう関係なんですかー!」

 

 どうやら質問らしい。

 千冬に「どうする?」とアイコンタクトを送ると何処か疲れた様子で「答えてやれ」と帰ってきた。

 

「えーとな。一夏とは家が近くて幼馴染みだったんだ」

 

 すると質問タイムになった、と勘違いしたらしい女子が質問攻めをしてきた。

 

「もしかして千冬様とも幼馴染みなんですか?」

「おう、小学校から高校まで一緒だったな」

「先生は何歳ですか?」

「24歳だ」

「彼女は居ますか?!」

「残念ながら居ないよ」

「好きなものは?」

「タバコと酒」

「誕生日は?」

「7月23日」

「納豆は好きですか?!」

「普通だ」

 

 めんどうだったので一気に答える。というか最後の質問何だ。

 質問に答えているとチャイムがなった。千冬がまだざわついている教室を手を叩いて鎮める。

 

「さぁ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で身体にしみこませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よ

 

くなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

 どこかの鬼教官のように千冬が締めくくってさわがしいSHRはおわった。

 

 

 

 職員室へ向かう廊下で千冬に話しかける。

 

「……全然変わってないなぁ、千冬は」

「そうか?自分ではずいぶん変わったつもりだが」

「いや、表は大人になってるけど性格とか根っこの部分は昔から変わってないと思うぞ、俺は。 ……あ」

 

 すると足を止めて「どうした?」と聞いてきた。

 

「いや、髪、伸ばしただろ?確か2年前はそんなに長くなかったからな」

「……ああ。そんな昔の事をよく覚えているな」

「幼馴染みなんだから覚えてるのは当たり前だろう? ……個人的な意見を言わせて貰うと髪を伸ばしてるほうが綺麗だな」

「っ!そ、そうか…。綺麗か……ふふっ」

 

 俺が褒めたのが嬉しかったのだろうか、顔をほころばせて歩き出した。

 

 

 




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