「いってきまーす!!」
「はーい…ってちょっと待ちなさいっ!!」
レナの制止の声を振り切って、リアンは今日も元気よく走っていく。
海鳴に来てからの毎日の光景だった。
「…しかたないね。それじゃあ、私も行ってくるわ」
「ええ…お願いね」
困ったような顔をするレナに、リーナは苦笑してからリアンの事を追いかけた。
妹の後姿を見送りながら、最近の我が子のことを考える。
フランスに居る時からリアンはこの旅行を嫌がっていた。
てっきり国を出るのが嫌なのだと思っていたけど、そのわりにはこの街を楽しんでいるようだ。
では無理やり連れて来た事に拗ねているのかといえば、リーナに対する態度といいそういうわけでは無さそうだ。
けれど月村の親子とは頑なに会いたがらない。
恥ずかしがっているのではなく、本当に怖がって会いたくないようだから、無理強いする気もなれない。
そのせいで海鳴着いてから一週間経つ今でもリアンを紹介できずにいた。
そのことに対してレナは申し訳なく思う。
「少し早めの反抗期かしら?」
月村夫妻はそう苦笑してくれたが、彼女の娘たちが落ち込んでいるらしい。
会えることを楽しみにしてたぶん、拒絶されたことがショックだった用だ。
(どうにかして、一度でも良いから会わせないとね)
心に決めるレナだったがふと頭に迷いが生まれた。
それはリアンの事をどう紹介するかだ。
男の子?女の子?
普通に男の子と紹介したい所だが、狼の耳がばれるとあまりよろしくない。
数少ない付き合いのある綺堂家や母が言うには、狼変化の因子を持つ男は少なく、下手をすると本家に目をつけられるかもしれないとの事。
昔なじみの月村夫妻はもちろん黙っててくれると約束してくれたが、その子供たちの口を塞ぐのは正直難しい気もする。
そんな会わせてからの難問と、会わせるまでの難問にレナは頭を抱えるのだった。
魔法少女リリカルなのは 罰則の偽り人 プロローグ3 出会い
「気持ちいい?」
リアンが訊ねると、答えるようにニャーと鳴いて頭を摺り寄せてきた。
それが嬉しくて猫の喉を再び撫で始める。
二匹居た同じ模様の猫だったが、二匹は同じじゃなかった。
一匹はとっても穏やかな子、今も撫でられて気持ち良さそうに寝転がっている。
もう一匹はとても賑やかな子で、今は尻尾にじゃれ付いて楽しそうに遊んでいる。
本当はもっと噛んだり舐めたり狼の姿でじゃれつきたかったが、リーナが見ているので出来なかった。
と言っても小一時間ほど遊んでいるので、そろそろ痺れを切らしそうだったけど。
だから撫でるのをやめて、尻尾を動かすのを止めると、二匹の猫は時間が来たのだと分かってくれた。
「頭のいい子だね」
二匹揃ってリアンの前に回った猫の頭を撫でると、穏やかな猫の方が地面に何かの石を置いた。
「くれるの?」
まるでプレゼントの様な置き方だったので訊ねると、先程と同じように答えるように鳴いた。
「ありがとう」
お礼を言って受け取ると、二匹の頭をもう一回撫でてやる。
そしてリアンが立ち上がると、猫たちも分かっている様に去っていった。
「リーねえ貰った!!」
「それは奪ったていう気がするんだけど?」
「貰ったの!!」
リアンが貰ったものを自慢しようとすると、リーナからはそんな反応が返ってきた。
それに腹が立って、リアンはリーナを置いて走り出す。
「やれやれ」
リーナの溜息なんて気にしない。
「あっ…」
走り出したリアンが足を止めたのは、街中にある公園だった。
多くの子供たちが賑やかに遊ぶ公園。
そんな子供たちではなく、ただ一人、一人ぼっちでブランコを乗っている栗色髪の少女。
彼女の何かが引っかかって足を止める。
何が気になったのか考えて、それが少女の眼だと気づいた時、リアンはもう駆け出していた。
「やあっ!!」
勢い良く突き飛ばすと、少女は後ろに転げ落ちた。
「あっ…」
転げ落ちた慣性で戻って来たブランコは慌てて止めたが、そんなのは後の祭りだ。
リアンが我に返ったときには、栗色髪の少女は大声で泣き出してしまった。
何かを言っているようだけど、その意味は理解できなかった。
リアンも慌てて謝ったけど、その言葉は少女には理解できなかった。
そんなこんなでリアンと少女は意思疎通が出来ないまま、彼女は泣きながら公園から帰ってしまった。
「なーに女の子泣かしてるのよ!!」
一部始終を見ていたのか、リーナに本気で怒られた。
帰りの間ずっと怒られて、それでも謝っていたことは認めてもらえて。
何で通じなかったんだろうと首を傾げていると、魔法の呪文を教えてもらった。
『ゴメンナサイ』と。
泣かしてしまったことと、絶望に染まっていく瞳が頭から離れなくって、栗色髪の少女のことがリアンは気になって仕方なかった。
母さんにその事を話すと、少し怒られた後に良い事を教えてもらった。
プレゼントと魔法の呪文できっと許してくれると。
リアンは早速次の日に試してみることにしたが、結果は散々だった。
地元の友達にはとっても喜ばれたプレゼントだったのに、見た瞬間に逃げ出されてしまったのだ。
少女が逃げ帰った後には一つ、彼女のツインテールを結んでいた片方のリボンが残されていた。
リアンがそれを拾い上げて、何がいけなかったのか首を傾げていると、やっぱり後ろからリーナがやってきて――
――――問答無用で叩かれた。
読んでくれてありがとうございました。そしてつたない文章ですみません。
というわけで幼少時に介入開始です。
あと夜の一族の設定はオリジナル。早々オリジナル色が出張ってきてすんません。