なんで私に構うんだろう?
公園の端の芝生の上で、セカセカと何かを準備する桜色の少女を見て彼女は思う。
また嫌な事されるんだろうかと怖くはあったが、アイロンの掛かった昨日落としてしまったリボンと、片言の『ゴメンナサイ』で何となくついてきてしまった。
「!!」
何か声をあげて少女がばっと振り向く。その瞳には期待の色。
そしてその色は、昨日鼠を渡された時のと一緒で、栗色髪の少女はきつく目をつぶった。
「……ん?」
差し出していた手にはいつまで経っても何の変化もなく、違和感を感じたのは頭の上。
輪のようなものが乗っているのはもしかして蛇だろうか……不安に思いながらも取り外して目の前に持ってくる。
カサカサとした感触に恐々と眼を開ければ、そこにあったのはシロツメクサで出来た花の冠だった。
「これって…私に?」
言葉が――いや、身振りが伝わったのか笑顔で頷かれる。
予想外の嬉しい出来事と、
『――――』
続けて聞こえた、生まれて初めて貰ったその言葉に、栗色髪の少女――高町なのはは涙が止まらなかった。
魔法少女リリカルなのは 罰則の偽り人 プロローグ4 妹
「行って…きます」
何処か沈んだ声で家を出てく妹を見送ると、高町家の長男高町恭也は慌てて後を追った。
家族が忙しい中、何でこんな事をしているかというと、妹のなのはが苛められているかもしれないからだ。
病院に居る父にも、仕事で忙しい母にも、一緒に手伝いをしてくれている美由希にも許可は取ってある。
むしろ今まで相手に出来なかった分、しっかりと頼むと頼まれてしまった。
「恭也――頼む」
とわざわざ人工呼吸器のマスクを外してまで頼むほど。
父も母も美由希も俺も迂闊だった。
あんなに幼いなのはを放置して、何が大丈夫だというのだろう。
幼い妹の笑顔をいつから見てないんだろう。
それに気づいた時家族みんなが愕然となり、そして今回の事態に早めに気付けたことに安堵した。
なのはの違和感に恭也が気付いたのは二日前だ。
いつものように父の着替えを準備して、簡単な昼ごはんを準備してるとなのはが帰ってきたのだ。
その格好はどこか砂まみれで、妹の瞳は赤く充血していた。
「なのは!?どうしたんだそれ、怪我はないのか!?」
「うん大丈夫――ちょっと……転んじゃっただけなの」
恭也が訊ねるとなのははそれだけ答えて、それ以上訊かれたくないかのように洗面所へと向かう。
一体どんな転び方をすればそんなに汚れるのか。明らかな嘘だと分かったが、中学生の恭也はどうしようもなかった。
「父さんと母さんに相談してみるか」
とりあえず戻って来たなのはの手当てだけを行うことにして、両親に相談してみることにした。
なのはの事を家族に話すと皆不安がった。
「今日はどうだった?」
夕飯時に美由希がそれとなく、なのはに訊ねたがいつもと一緒と作り笑顔で誤魔化された。
なのはが眠った後に母と美由希と家族会議を行うと、なのはを良く見といてくれと恭也は頼まれた。
次の日も、朝早くから出かけたなのはは昼頃に帰ってきた。
自主休校した恭也の存在に本気で驚いて、慌てて部屋に閉じこもった。
それはあっという間の出来事であったが、彼の眼は誤魔化されなかった。
大切な妹の瞳が再び涙で赤くなっていたこと。
妹の大切にしていたリボンが、片方なくなっていたこと。
この時点で恭也はいじめだと判断したが、さらに閉じ篭った妹の部屋から「お母さんから貰った大切なリボンなのに…」とすすり泣く声を聞いて確信した。
そしてその日の家族会議で、なのはを虐める相手をやっつけることとなったのだ。
そして今。公園の片隅になのはを連れてった少女が一人。
妹はどこか怯えていてそして――泣き出した。
「なのはを泣かせたな!!」
恭也の体は直ぐに動いた。幼い少女だから殴ることはしないが、なのはの前から突き飛ばす。
芝生の上のそこは坂だったため、コロコロと少女は転げ落ちた。
「なのは大丈夫か?辛かったよな、今すぐ仇をとってやるから」
「えっ?え?」
何処か困惑気味の妹の涙を指で拭うと、恭也は転がり落ちた少女に近づいた。
「うちの妹を虐めるってことは、覚悟は出来てるんだろうな!!」
眼を回しながら座り込む少女に、二度とこんな事はしないと誓わせる為、強い怒気を放ちながら右手を握りこみ――
「ち、違うの!!待ってなの!!」
何故か後ろからなのはに抱き止められた。
「なのは、どうして止める。今も虐められて泣かされてたんだろ?」
怒気を抑えながら抱きつく小さな手を外させると、なのははぶんぶんと首を横に振る。
そして恭也の事を見上げて言った。
「虐めで泣かされたんじゃないの。嬉しくって…泣いちゃったの。ずっと、一人ぼっちで寂しかっ
たから…一緒にアソボって言ってくれて……」
「なのは…」
泣きじゃくりだしたなのはの告白に、恭也は何も言えなかった。
「お母さんたちに迷惑かけたくなかったから……ぐすっ、いい子でいなくちゃならなかったの。公園の…みんなも、もう声も掛けてくれなくて……それなのに、また、声を掛けてくれて……一緒にアソボって……ぐすっ、落としちゃったリボンも綺麗にしてくれて……ずっと、ずっと寂しかったのっ!!」
「そっか…気付けなくってごめんな」
支離滅裂になりはじめたなのはを、恭也はギュッと抱きしめてやる。
父親が怪我をしてからずっと耐えていたのだろう。堰を切って泣き出した幼い妹の頭を撫でながら恭也は反省した。
「リーア!!リーア!!耳!!耳!!」
恭也が芝生の下から聞こえた声に振り向くと、座り込んだ少女に親のような女性が慌てて帽子を被せていた。
そう言えばと、なのはの思いを知る切欠を作ってくれた少女を思い出し、突き飛ばしたことを思い出して冷や汗が流れた。
せっかく出来たなのはの友達が居なくなるんじゃないかと、罪のない少女に怪我をさせてしまったのではないかと。
「なのは、ちょっといいかな?」
泣き止まない妹を少し放すと、今度はなのはと手を繋いで、恭也は芝生の下の少女の元へと向かう。
少し情けないがその小さな手から勇気を貰って。
そして、辿り着いた先の少女は――
『――!!――!!』
英語だろうか?何を言っているのかは分からなかったが、何故だかどこか嬉しそうな顔をしていた。
今回も読んでくださりありがとうございました。
みんな分かっていた気と思うけどなのは登場。
ついでに恭也暴走w
なのはさんの性格、ちょっとした変化ぐらいは起きそうです。おきないかもしれませんが。
あとリアン君の行動は半分ぐらい狼時と同じですw