魔法少女リリカルなのは 罰則の偽り人   作:猫月

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プロローグ4 妹

 

 

 

 

なんで私に構うんだろう?

 

公園の端の芝生の上で、セカセカと何かを準備する桜色の少女を見て彼女は思う。

 

また嫌な事されるんだろうかと怖くはあったが、アイロンの掛かった昨日落としてしまったリボンと、片言の『ゴメンナサイ』で何となくついてきてしまった。

 

「!!」

 

何か声をあげて少女がばっと振り向く。その瞳には期待の色。

 

そしてその色は、昨日鼠を渡された時のと一緒で、栗色髪の少女はきつく目をつぶった。

 

「……ん?」

 

差し出していた手にはいつまで経っても何の変化もなく、違和感を感じたのは頭の上。

 

輪のようなものが乗っているのはもしかして蛇だろうか……不安に思いながらも取り外して目の前に持ってくる。

 

カサカサとした感触に恐々と眼を開ければ、そこにあったのはシロツメクサで出来た花の冠だった。

 

「これって…私に?」

 

言葉が――いや、身振りが伝わったのか笑顔で頷かれる。

 

予想外の嬉しい出来事と、

 

『――――』

 

続けて聞こえた、生まれて初めて貰ったその言葉に、栗色髪の少女――高町なのはは涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは  罰則の偽り人  プロローグ4  妹

 

 

 

 

 

 

 

「行って…きます」

 

何処か沈んだ声で家を出てく妹を見送ると、高町家の長男高町恭也は慌てて後を追った。

 

家族が忙しい中、何でこんな事をしているかというと、妹のなのはが苛められているかもしれないからだ。

 

病院に居る父にも、仕事で忙しい母にも、一緒に手伝いをしてくれている美由希にも許可は取ってある。

 

むしろ今まで相手に出来なかった分、しっかりと頼むと頼まれてしまった。

 

「恭也――頼む」

 

とわざわざ人工呼吸器のマスクを外してまで頼むほど。

 

父も母も美由希も俺も迂闊だった。

 

あんなに幼いなのはを放置して、何が大丈夫だというのだろう。

 

幼い妹の笑顔をいつから見てないんだろう。

 

それに気づいた時家族みんなが愕然となり、そして今回の事態に早めに気付けたことに安堵した。

 

 

 

 

なのはの違和感に恭也が気付いたのは二日前だ。

 

いつものように父の着替えを準備して、簡単な昼ごはんを準備してるとなのはが帰ってきたのだ。

 

その格好はどこか砂まみれで、妹の瞳は赤く充血していた。

 

「なのは!?どうしたんだそれ、怪我はないのか!?」

 

「うん大丈夫――ちょっと……転んじゃっただけなの」

 

恭也が訊ねるとなのははそれだけ答えて、それ以上訊かれたくないかのように洗面所へと向かう。

 

一体どんな転び方をすればそんなに汚れるのか。明らかな嘘だと分かったが、中学生の恭也はどうしようもなかった。

 

「父さんと母さんに相談してみるか」

 

とりあえず戻って来たなのはの手当てだけを行うことにして、両親に相談してみることにした。

 

 

 

なのはの事を家族に話すと皆不安がった。

 

「今日はどうだった?」

 

夕飯時に美由希がそれとなく、なのはに訊ねたがいつもと一緒と作り笑顔で誤魔化された。

 

なのはが眠った後に母と美由希と家族会議を行うと、なのはを良く見といてくれと恭也は頼まれた。

 

 

次の日も、朝早くから出かけたなのはは昼頃に帰ってきた。

 

自主休校した恭也の存在に本気で驚いて、慌てて部屋に閉じこもった。

 

それはあっという間の出来事であったが、彼の眼は誤魔化されなかった。

 

大切な妹の瞳が再び涙で赤くなっていたこと。

 

妹の大切にしていたリボンが、片方なくなっていたこと。

 

この時点で恭也はいじめだと判断したが、さらに閉じ篭った妹の部屋から「お母さんから貰った大切なリボンなのに…」とすすり泣く声を聞いて確信した。

 

そしてその日の家族会議で、なのはを虐める相手をやっつけることとなったのだ。

 

 

 

 

 

そして今。公園の片隅になのはを連れてった少女が一人。

 

妹はどこか怯えていてそして――泣き出した。

 

「なのはを泣かせたな!!」

 

恭也の体は直ぐに動いた。幼い少女だから殴ることはしないが、なのはの前から突き飛ばす。

 

芝生の上のそこは坂だったため、コロコロと少女は転げ落ちた。

 

「なのは大丈夫か?辛かったよな、今すぐ仇をとってやるから」

 

「えっ?え?」

 

何処か困惑気味の妹の涙を指で拭うと、恭也は転がり落ちた少女に近づいた。

 

「うちの妹を虐めるってことは、覚悟は出来てるんだろうな!!」

 

眼を回しながら座り込む少女に、二度とこんな事はしないと誓わせる為、強い怒気を放ちながら右手を握りこみ――

 

「ち、違うの!!待ってなの!!」

 

何故か後ろからなのはに抱き止められた。

 

「なのは、どうして止める。今も虐められて泣かされてたんだろ?」

 

怒気を抑えながら抱きつく小さな手を外させると、なのははぶんぶんと首を横に振る。

 

そして恭也の事を見上げて言った。

 

「虐めで泣かされたんじゃないの。嬉しくって…泣いちゃったの。ずっと、一人ぼっちで寂しかっ

 

たから…一緒にアソボって言ってくれて……」

 

「なのは…」

 

泣きじゃくりだしたなのはの告白に、恭也は何も言えなかった。

 

「お母さんたちに迷惑かけたくなかったから……ぐすっ、いい子でいなくちゃならなかったの。公園の…みんなも、もう声も掛けてくれなくて……それなのに、また、声を掛けてくれて……一緒にアソボって……ぐすっ、落としちゃったリボンも綺麗にしてくれて……ずっと、ずっと寂しかったのっ!!」

 

「そっか…気付けなくってごめんな」

 

支離滅裂になりはじめたなのはを、恭也はギュッと抱きしめてやる。

 

父親が怪我をしてからずっと耐えていたのだろう。堰を切って泣き出した幼い妹の頭を撫でながら恭也は反省した。

 

 

 

 

「リーア!!リーア!!耳!!耳!!」

 

恭也が芝生の下から聞こえた声に振り向くと、座り込んだ少女に親のような女性が慌てて帽子を被せていた。

 

そう言えばと、なのはの思いを知る切欠を作ってくれた少女を思い出し、突き飛ばしたことを思い出して冷や汗が流れた。

 

せっかく出来たなのはの友達が居なくなるんじゃないかと、罪のない少女に怪我をさせてしまったのではないかと。

 

「なのは、ちょっといいかな?」

 

泣き止まない妹を少し放すと、今度はなのはと手を繋いで、恭也は芝生の下の少女の元へと向かう。

 

少し情けないがその小さな手から勇気を貰って。

 

そして、辿り着いた先の少女は――

 

『――!!――!!』

 

英語だろうか?何を言っているのかは分からなかったが、何故だかどこか嬉しそうな顔をしていた。

 

 




今回も読んでくださりありがとうございました。

みんな分かっていた気と思うけどなのは登場。
ついでに恭也暴走w
なのはさんの性格、ちょっとした変化ぐらいは起きそうです。おきないかもしれませんが。

あとリアン君の行動は半分ぐらい狼時と同じですw
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