魔法少女リリカルなのは 罰則の偽り人   作:猫月

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プロローグ5 平穏で幸せな日々

「いってきまーす!!」

「あ、待って。私も行くよ」

「はい。気をつけて行ってらっしゃい」

リアンとリーナが玄関から元気良く飛び出していく。

こちらに来た時よりもだいぶ明るいのは、三週間前に友達ができたからだろう。

「これなら少し無理しても大丈夫かな?」

けれどいまだに月村親子には紹介できていなかったから、元気に遊びに行く我が子の姿を見てそんな事を考えた。

 

 

 

魔法少女リリカルなのは 罰則の偽り人  プロローグ5  平穏で幸せな日々

 

 

 

 

飛び掛られて、転がって、回っていた世界が落ち着いたら、じゃれついてきた子が心配そうにこちらを見ていた。

その子の手はギュッと小さな手を握っていて、小さな手の持ち主の栗色髪の少女は少し嬉しそう。

泣き腫れたその瞳が、今は澄んだ色をしているようで、リアン自身も嬉しくなった。

「気持ちは晴れたみたいだね!!とっても綺麗な目になったよ!!」

嬉しくって声に出して伝えると、白Tシャツ少年に何故か頭を下げられた。

『―――!!』

何を言っているのかはやっぱりさっぱり分からない。だから少女を見て、リーナを見上げる。

リーナは何て伝えようか考えた末、

「どうにも、一緒に遊びたかったようですよ?」

と言ってくれた。

ならこれはお願いだろうか。

少年が頭を下げながらの言葉は微妙な発音の英語で、知ってる言葉が混じっている。

「ごめん―――ともだち――――妹―――今から」

そしてじゃれついてきた事から。つまりは―――皆で追いかけっこをしよう!!

そうリアンは理解した。

 

 

隣では恭也が頭を下げて謝っていた。

それこそ土下座をしそうな勢いで。それでも立ったままだったのは、ずっとなのはの手を握っていたからだ。

なのははそれが嬉しかったから、何も言わないまま握り続けた。

「本当に申し訳ない」とか「恩を仇で返してしまって」とか一生懸命頭を下げてくれて。

良い子じゃなくて、迷惑をかけてるのに、私のためって分かって本当に嬉しかった。

こんだけしっかり謝ってるんだからきっと伝わるはず。そう思ってなのはが少女の方を見ると、小首を傾げていた。

あれはきっと伝わってない。なのははそれに気が付いたが、頭を下げた恭也は気付かないままだ。

『――――』

一緒に居た女性がなのはの知らない言葉で少女に話しかける。

それを聞き取った恭也は、言葉の中に英語を交え始めた。

そして――少女の輝かんがばかりの笑顔と共に、

「鬼は誰にする?」

女性の苦笑交じりの声が聞こえた。

 

「え?」「は?」

高町兄弟の絶句する声が重なる。

それはそうだろう。どうして謝っていて、友達になってと頼んでいて、そんな言葉が返ってくるというのか。

そんな二人の反応に女性は満足したようだった。

「さっきの事はこの子気にしてませんよ。だから遊んでやってください。友達なんでしょ?」

困惑する二人に確りと説明してくれる。

最初から通訳してくれなかったのは、もしかして怒ってたからだろうか。

なのははそう思いながらも少女に手を伸ばして、

「私はなのは。よろしくなの」

「俺は高町恭也だ。よろしく頼む」

兄の恭也は頭を下げる。

「恭也となのは―――」

女性は少女に何かを伝えて、

「リーア!!」

少女は自分の事を示して言った。

多分それが彼女の――リーアちゃんの名前なのだろう。

「よろしく、リーアちゃん!!」

なのはが嬉しそうに名前を呼ぶと、その手をとって返してくれた。

「ヨロシク、ナノナノ!!キョンキョン!!」

不思議な呼び方と共に。

「なのなの?」

なのはが自分を指差すとリーアはこくんと頷く。

「キョンキョン?」

次に兄を指差すと再びこくんと頷いた。

 

 

 

 

 

それが、なのはの初めて出来た友達との出会いだった。

それからの三週間は、なのはの幼い頃の一番幸せな日々だったと言える。

家に帰れば母が甘えさせてくれて、兄が構ってくれて、姉が本を読んでくれた。

病院では大分良くなった父が話を聞いてくれた。

外に出れば初めての友達が一緒に遊んでくれた。

リーアちゃんとは未だに言葉が通じないけど、それでも砂場で遊んだり、ブランコ乗ったり、木登りしたり、山で迷子になったり、狐と遊んだり、一緒にするのは何でも楽しくて、なのはは幸せだった。

リーアちゃんと遊ぶといつも良い子ではいられなかったけど。それを叱ってくれて、その後で抱きしめてくれる家族が居て幸せだった。

そして三週間目の最後の日――大好きな父親が自宅療養という形で帰ってきた。

なのははそれが嬉しくて、二、三日の間付っきりになった。

 

 

そしてそれ以降、彼女は初めてできた友達の姿を見ることは無かった。

 

 

 




これまで読んでくださってありがとうございました。
一応プロローグはここまででですが、これ以降はアンチヘイト色が強くなりそうなので、自分のブログのほうでやりたいと思います。
思っていた以上にそういう事に過剰反応を示す方もいるようなので。

興味があったら是非覗いてやってください。アドレスは目次の場所にブログに移転次第貼る予定です。
こちらにはアンチヘイトじゃない形で、また何か投稿できたらいいなと思っております。

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