“古”の決闘者 作:笹もち
前書きでの挨拶をお許しください。勝手が分からないものでして。
この小説は以前に温めて書いていたものを修正、加筆しております。もし誤字やプレイングに問題があるなら指摘していただくと笹もちの経験値はアップします。
では以後お見知りおきを。
一葉の一度目、二度目の人生の中身は少しずつ明かされていきます。
今話は十代様との決闘です。よければ読んでいただけたら嬉しいです。
遊戯十代LP:4000
場 スパークマン
フレイム・ウィングマン
伏せ 無し
手札2枚
紅 一葉LP:3600
場 見習い魔術師
伏せ 無し
手札5枚
十代のデュエルタクティクスは非常に高いと感じるとともにどこか危うさを感じる。決闘への熱い思いはデッキに宿る魔物を見れば一目瞭然なのだが、熱い思い自体は悪くはない。
むしろ称賛に値するだろう。だが魔物に愛されている人間は必ず運命を狂わされ、命の重さを問われる。いずれ命を賭けて決闘する場面もあるかもしれない。
「俺はカードを二枚伏せてターンエンドだぜ!! 驚いたなー、見習い魔術師なんていう面白いカード持ってるなんてなっ!!」
「見習い魔術師もそうだけど、個性豊かなデッキだ」
もし、今この決闘を通じて魔物の姿を見えるように覚醒を促せば楽になることもある。だが魔物に愛されても本人自身に才能が無ければ覚醒はしないだろうけど。やれることはやってみようか。
「俺のターン!!」
デッキトップに手を置き、目を瞑る。神官アクとしての人生からの相棒達。石板からカードに変われど、身体が朽ちても魂が生き続ける限りは同じデッキを使い続けてきた一葉。
「ドロー!!」
最高の一手。十代が魔物に愛され、運命力を持つというならばこの一葉も同じだろう。唯一の違いは運命に翻弄され続けてきたことくらいである。
「魔導戦士ブレイカーを召喚!! 効果発動、このカードに魔力カウンターを一つ置き、取り除くことによってフィールド上の魔法・罠カード一枚を対象に破壊する! 十代の伏せている右側のカードを破壊させてもらう!!」
【魔導戦士ブレイカー】
効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻1600/守1000
(1):このカードが召喚に成功した場合に発動する。
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
(2):このカードの攻撃力は、このカードの魔力カウンターの数×300アップする。
(3):このカードの魔力カウンターを1つ取り除き、
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
その魔法・罠カードを破壊する。
真紅の甲冑を纏う魔導戦士。片手に握られたサーベルから放たれた閃光は凄まじい勢いで十代のフィールド上の伏せカードを破棄する。
「なっ!! 俺のヒーローバリアが……!」
破壊されたヒーローバリアはフリーチェーンのカード。チェーンしなかったということはまた別の狙いでもあるのか。
「……俺が引いた一枚はこの決闘を勝利へと導く。手札より――ディメション・マジックを発動」
見習い魔術師の背後に大きな棺が現れる。見習い魔術師は一葉と十代に手を振ってから棺の中にいそいそと入っていく。棺の中から見習い魔術師の断末魔が聞こえてくるので十代の表情が青くなる。
断末魔が止むのと同時に棺の中から見習い魔術師ではなく――。
漆黒の魔法服を纏う魔術師が現れた。浅黒い肌に銀髪。右手に握られた杖は禍々しいほどに存在感を放つ。その魔術師の姿はかつての神官アクの友に似つかないでもない。
漆黒の魔法服を纏っているのも関わらず白く清く正しいオーラを放っているのは魔法を扱う者の中でも邪悪な心、力を持たずに正しく力を使う術を身に付けているからだろう。
「こ、これって……」
「ディメションマジックの効果は自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択した自分のモンスターをリリースし、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。俺は見習い魔術師をリリース、そして――」
――俺が召喚したのはブラック・マジシャンだ。
【ブラック・マジシャン】
通常モンスター
星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100
魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。
「だがこれで驚くのはまだ早い。ディメンション・マジックにはもう一つ効果がある!! フィールド上のモンスター1体を破壊することが出来る!! 俺が選ぶのはフレイムウィングマンだ!!」
フレイム・ウィングマンの背後に棺が出現し、中から伸びてくる無数の手でフレイム・ウィングマンを引きずり込んだ。
「あ、兄貴のモンスターが!! やっぱりオベリスク・ブルーは伊達じゃないッス……だからやめた方が良いって言ったのに…」
「……っ」
「バトルだ!! ブラック・マジシャンでスパークマンを攻撃!!
遊戯十代LP:4000→3100
「くっ!! スパークマンが破壊され、墓地に送られた時に罠発動――ヒーローシグナル!!」
【ヒーロー・シグナル】
通常罠
(1):自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊され
墓地へ送られた時に発動できる。
手札・デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。
「ヒーローシグナルの効果でデッキからE・HEROバブルマンを守備表示で特殊召喚するぜ!! 特殊召喚に成功して手札とフィールド上にカードが無い場合、デッキからカードを二枚ドローする!!」
【E・HEROバブルマン】
効果モンスター(準制限カード)
星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200
(1):手札がこのカード1枚のみの場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。
この効果は自分の手札・フィールドに他のカードが無い場合に発動と処理ができる。
「っ!! だが魔導戦士ブレイカーの攻撃は残っている! ブレイカーでバブルマンを攻撃!! そしてカードを二枚伏せてターンエンドだ。やるな……十代」
「……ああ、こ、これも戦術のうちだぜ! でもまさかブラック・マジシャンを見られるなんて思いもしなかったぜ!! かなりのレアカードじゃんか!!」
「俺のマイフェイバリットの一枚だ。デッキ全てがマイフェイバリットだけど」
「ははっ!! それは俺もだぜ、一葉!! でも……この決闘に勝つのは俺だけどな!!」
気迫十分。十代を纏う雰囲気が変わった。ここからが勝負の分け目になる。ここで会ったのも運命の巡り合わせなのかもしれない。会ってまだ時間は経っていないのに十代からは無限の可能性を感じ取れる。
かつてのファラオである――アテム王がそう感じさせてくれたように。
「ここからが本番だぜ!! 俺のターン…ドロー!!」
ワクワクが止まらない。相手のフィールドにはモンスターが二体。それも伝説の決闘者が使っていたとされるブラック・マジシャン、テレビ画面で見たのとは少々見た目が違うけれども攻撃力2500は大きい。
それに比べて俺のフィールドはがら空き、このまま何もしないと次のターンでブラック・マジシャンの攻撃を受ければ危ない。ここからが本番、もっとこの決闘を続けたい、一葉がどんなモンスターを出してくるのか気になる。
だからこそ応えてくれ、HERO達。一緒に闘ってくれ。十代の思いに応えるかのようにデッキが脈打つ。それはまるでデッキに眠るカード達、全てが十代の味方をしているようだ。
「へへっ。来たぜ、一葉。勝利に近づく一手が!! ミラクル・フュージョンを発動!! 墓地のスパークマンとフレイム・ウィングマンを除外!! 閃光のHERO、ここに光臨!! 現れろ、シャイニング・フレア・ウィングマン!!」
「――ッ! 融合モンスターを融合するのか!」
【E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン】
融合・効果モンスター
星8/光属性/戦士族/攻2500/守2100
「E・HERO フレイム・ウィングマン」+「E・HERO スパークマン」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついた
カード1枚につき300ポイントアップする。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
銀色の鎧を纏う天使のようなHEROが地に降りる。その輝きはHEROという枠を超えているのではないかと思うくらいに。
エクストラデッキに入れるか迷っていた一枚の融合モンスター。万丈目との決闘で出せればと悩み抜いて入れてみたが正解だった。だけど油断は出来ない。十代は一葉の伏せている二枚のカードに視線を走らせる。あの伏せカードが攻撃反応型の罠かそれとも――いや考えていても何も始まらない。
心なしか、手が震えていた。これは恐怖、いや違う。強敵と戦えて嬉しいという感情、武者震いだ。一葉は万丈目よりも強い。それもレベルは数段、それ以上だな。
「シャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃力は自分の墓地に存在するE・HEROと名のついたカード一枚につき300ポイントアップする!! 墓地のE・HEROの数は3枚、攻撃力は900ポイントアップする! いくぜ! シャイニング・フレア・ウィングマンでブラック・マジシャンを攻撃!」
「強いな、強い……! だけど俺のブラック・マジシャンをそう簡単に倒させるわけにはいかない! 罠発動、和睦の使者! このターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、自分のモンスターは戦闘では破壊されない」
「な、なにいいい!! ここで和睦の使者かよ!?」
「マイフェイバリットは守らないとな!!」
「くうううッ! 惜しいぜ! せっかく攻撃できると思ったのにな…。カードを一枚伏せてターンエンド!」
ここで決められなかったのは悔しいけどこっちにはシャイニング。フレア・ウィングマンがいる。この攻撃力を簡単に上回れるとも思えない。でも、もしかしたらディメンション・マジックみたいなカードで破壊される可能性だってある。
一葉の決闘者としての底が知れない。同い年とは思えない強さだ、本当に同じ年なのかな。というか……な、なんだ俺の隣りに白い羽をつけたクリボーが見えるんだけど。どういうことなんだ。十代は焦る。隣りでふわふわと浮かぶハネクリボーに。
『クリクリ~!!』
「も、もしかしてお前も一緒に戦ってくれるのかハネクリボー!!」
どうやら覚醒は促せられたらしい。
一葉はそう内心でホッとしてほほ笑む。十代の強さはもしかしたら運命力を抜きにしても凄まじいかもしれない。ここで魔物を目視できるようになったのは今後、十代ににとっては利になるのは間違いない。
後の問題はどうやってこの場面を乗り切るかなんだが。攻撃力3400を上回るモンスターはあれど、フィールドに出す条件が困難な上に今の状況で引けるとも思えない。
「パ…パ。あの…カード」
「あのカード…?」
「う…ん」
ペラが指差すのは伏せている一枚のカード。速攻魔法、黒・爆・裂・破・魔・導だ。念のためにブラフになるかと伏せておいたものだが、なぜ今の状況でこのカードなのだろう。
これ以上は言わぬという顔で背後にくっつくが意味が分からない。もしここでキーカードになる一枚を引くことが出来れば、とは思う。
デッキを信じ、デッキを愛すれば彼らはどのような時でも応えてくれる。他のデッキに浮気すれば応えてはくれないけど。
「俺のターン! ドロー!! こ、これは……」
デッキが応えてくれた。これほど嬉しいことはない。歓喜のあまり、血を吐きそうなほどに一葉は嬉しかった。そして十代のフィールドのシャイニング・フレア・ウィングマンを見つめる。
銀色のフェイスから流れ落ちる汗が見えた。どうやら彼はこれから起きることに予想がついたらしい。さすがは魔物というべきか一葉は苦笑いを浮かべる。
「魔導戦士ブレイカ―をリリースし、俺はブラック・マジシャン・ガールをアドバンス召喚する!!」
「ブブブブブブラック・マジシャン・ガールぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!?」
「おお、すげえ! ブラマジだけじゃなくて、ガールまで持ってたのか!! でもそれじゃあ、俺のシャイニング・フレア・ウィングマンには敵わないぜ?」
一人だけ別の意味で興奮しているので無視する一葉。確かにブラック・マジシャンとブラマジガールだけでは敵わない。でもそれは単体で、という意味だ。彼らが、マハードとマナが誰よりも強い絆で結ばれている師弟だと知っているからこそ一枚の伏せカードの出番だ。
「リバースカードオープン!! 黒・爆・裂・破・魔・導を発動!!」
【黒・爆・裂・破・魔・導】
速攻魔法
(1):元々のカード名が「ブラック・マジシャン」と
「ブラック・マジシャン・ガール」となるモンスターが
それぞれ自分フィールドに存在する場合に発動できる。
相手フィールドのカードを全て破壊する。
「自分フィールド上にブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガールが存在する場合に発動できる! 相手フィールド上のカードを全て破壊させてもらう!!」
「うわああああああ!! 俺のフィールドがああああ!」
師弟による力を合わせた凄まじい火力は十代のフィールドを呑み込み、塵一つ残さない……はずだった。
「……なんでハネクリボーが涙目でフィールドを吹っ飛んでいるんだ」
「――ごめん、ハネクリボー許してくれ!! 俺は黒・爆・裂・破・魔・導にチェーンしてクリボーを呼ぶ笛を発動していたぜ……。ハネクリボーがフィールドから墓地に送られたことによって、このターンの俺が戦闘によって受けるダメージは0だ!!」
【ハネクリボー】
星1/光属性/天使族/攻300/守200
(1):フィールドのこのカードが破壊され墓地に送られた場合に発動する。
ターン終了時まで、自分が受ける戦闘ダメージは全て0になる。
「っ……悪運が強すぎだ! 俺はこのままターンエンドだ…」
どうなっているんだろう。十代が魔物に愛されているのは分かっているし、運命力も凄まじいのも理解しているけれどもあまりにも強運すぎるのもどうかと思う。
この決闘で自分の運を全て使いはたしているようにしか見えない。いや、むしろ運を使い切ってしまったと一葉は考える。
「まだまだこれから!! ドロー…!! あ、あれ……?」
「ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールで直接攻撃!!」
「そ、そんなああああああ!!!?」
遊戯十代LP:3100→0
だから言わんこっちゃなかったのに。
黒・魔・導・波を受けて綺麗に吹き飛ぶ十代を一葉は苦笑いを浮かべながら手を差し伸べに行った。
辛口な感想・評価お待ちしておりますね。
辛口過ぎると涙目なりますがお気になさらず。