“古”の決闘者 作:笹もち
武藤静楓LP:4000
場 クイーンズ・ナイト
ジャックス・ナイト
伏せ 無し
手札2枚
紅 一葉LP:4000
場 ブラック・マジシャン・ガール
伏せ 2枚
手札2枚
ブラック・マジシャン・ガールを持つ一葉。デッキ自体はブラック・マジシャンを主軸に作られた魔法使いデッキである。生ける伝説ともされる武藤遊戯もこの二枚のカードを扱っていたとされるが、何も一葉の持つ二枚が同じものだとは限らない。
神官アクとして共に過ごした友人達と己の魂に刻まれた記憶を忘れぬ為にこのデッキを構築したのだ。カード自体を手に入れるため、幼い頃に山を越え川を越え大陸を渡った彼に死角などない。多少はアルカナナイトジョーカーにビビリはしたものの今も一葉の脳内には静楓を倒すための戦術が練られる。
「ドロー!! 闇の誘惑を発動! カードを二枚ドローし、手札から見習い魔術師を除外!!」
【闇の誘惑】
通常魔法
(1):自分はデッキから2枚ドローし、手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。
迷わず除外される見習い魔術師は涙目で一葉を睨みつけながらディスクの中へと消えていく。今の状況では見習い魔術師を召喚しても攻撃にまでは至らない。お互いのライフの均衡状態を壊すためにはより強力なカードが必要だといえる。
だからこそ攻めなければいけない。彼女に強さというものを見せるには守りという耐える姿勢など微塵も感じさせないとこを見せつけよう。
「さらにここで永続罠発動――永遠の魂!!」
凄まじい音とともに一葉の背後に古代の石版のようなものが地面から現れる。その石版に刻まれているのは最上級魔術師。
「っ……ま、まさか」
「その、まさかだ。永遠の魂の効果によって手札よりその姿を現す! 最上級魔術師、ブラック・マジシャン!!」
【永遠の魂】
永続罠
「永遠の魂」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):以下から1つを選択してこの効果を発動できる。
●自分の手札・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。
●デッキから「黒・魔・導」または「千本ナイフ」1枚を手札に加える。
(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。
(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。自分フィールドのモンスターを全て破壊する。
【ブラック・マジシャン】
通常モンスター
星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100
魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。
「ブラック…マジシャン…」
石版の中からその姿を現すは浅黒い肌に銀髪の漆黒の魔法服を纏う魔術師。その存在感は圧倒的ともいえる。幼い頃、兄が絶対的なピンチの時に必ず使っていたエースカード。多少の見た目は違えどその力を知っている静楓は息を呑むのも忘れ見惚けた。
「バトルだ、ブラック・マジシャンでクイーンズ・ナイトを攻撃!! 続いてブラック・マジシャン・ガールでキングス・ナイトを攻撃だ!!」
強い絆で結ばれし師弟は高エネルギーの魔導波でクイーンズ、キングスという戦士達をフィールドからその姿を消す。これで静楓のフィールドはがら空きとなった。このまま次のターンを終えれば勝敗は決まったも同然。だがここで終わらないという、なんとなくそんな風に一葉は感じる。
まだ彼女の目は一葉を見つめ、その確固たる意志を示そうとしているからだ。そんな彼女がこの決闘を安易に、それもまだ本気の一欠片しか見せていないのに終わるわけがなかった。
「俺はこれでターンエンドだ。これで終わるわけじゃ――」
「――ふふっ、ないよ。当然!!」
彼女はそう笑顔で言うとデッキからカードを力強く引いた。
「私のターン! ドロー!!」
デッキは私に応えてくれた。幼い頃からの迷いを消す後押しをしてくれるように、背中を押してくれるように。フィールドはモンスター、魔法罠ともに無し。次のターンに二体の攻撃を決められた負けるという状況を覆せるくらいの決闘者はお兄さんか海馬さんくらいだろう。
それでも私も決闘者の端くれ、このくらいの状況を少しでも変えて次に繋げる一手を引き当てられるくらいにデッキからも力を貸してもらえた。今日という日は負けられない。この小さなきっかけを出会いを日に私は変わるんだ。
「ターン、エンド!!」
「エンド宣言…まさか本当に勝負を……諦めたのか?」
そう彼は問いかける。私は無言のまま彼を見つめる。
一瞬の油断が勝負を決めるときがあると海馬さんが言っていた。今はまさにそんな時だと静楓は確信する。
「ドロー!! バトルだ、ブラック・マジシャンで直接攻撃!!」
武藤静楓LP4000→1500
ブラック・マジシャンの容赦ない攻撃は私を貫く。ソリッドヴィジョンとわかっていても精神的なダメージは大きい。それでも静楓は自分のフィールドを見つめるとともに一枚のカードを掲げ、ディスクに叩きつけた。
一枚のカードがディスクに叩きつけられた瞬間に静楓のフィールドに異変が起こる。突如として黒い小さな穴が現れ、次第に大きくなると怨嗟の声が響く中から漆黒の使者現れフィールドを支配する。
「っ…な、これは――」
「私は戦闘ダメージを受けたとき、冥府の使者ゴーズを特殊召喚したわ。効果発動、受けたダメージと同じカイエントークンを特殊召喚!」
【冥府の使者ゴーズ】
効果モンスター
星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500
自分フィールド上にカードが存在しない場合、
相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」
(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、
受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
【カイエントークン】
星7/光属性/天使族/攻2500/守2500
これでブラック・マジシャン・ガールによる追撃はなくなった。
「ターンエンド…だ」
逆転へのプロセスが形成されていく。決闘者とはいえ、人間たるものなにかしらで油断するときはある。誰がフィールドがら空きで魔法罠が無い極限の状況下でこそ発揮するカードがあると思うのだろう。否、予想は出来ない。
静楓は艶やかな唇を曲げ笑みを浮かべる。これでチェス盤はひっくり返された。一葉さんの伏せカードが気になるとこだけれど受け手に回ったとこで今の状況が悪い風になるとも思えない。
「ドロー!! 私は――」
このターンで一気に決めてみせる。そう意気込んだ瞬間に一葉さんの口元が微かに緩むのが分かった。強者特有の雰囲気が場を支配する。鋭い眼光がフィールドに当てられると同時に高らかに片手を上げ、彼は叫んだ。
「速攻魔法発動、光と闇の洗礼!! デッキより――」
彼に言葉を遮られるのと同時に伏せカードを発動された。光と闇の洗礼、私の表情が青ざめていくのが分かる。不味いという感情よりも先にフィールドに変化が起きた。
ブラック・マジシャンが眩い光に包まれてその姿を変える。より強力なものへと。主を守らんとより強靭な肉体へと。杖を構える姿は魔術師を超えた魔術師。息を呑むのも忘れ――ただ見惚れてしまう。
「最上級マジシャンよその身を変え降臨し征服せよ、来い! 混沌の黒魔術師!!」
【光と闇の洗礼】
速攻魔法
自分フィールド上の「ブラック・マジシャン」1体をリリースして発動できる。
自分の手札・デッキ・墓地から「混沌の黒魔術師」1体を選んで特殊召喚する。
【混沌の黒魔術師】
効果モンスター
星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600
「混沌の黒魔術師」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンのエンドフェイズに、
自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動する。
その相手モンスターを除外する。
(3):表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。
なぜこのタイミングで混沌の黒魔術師を出したのか私には分からない。もしかして手加減されていたのだろうか。永遠の魂を発動したターンに光と闇の洗礼を発動して次のターンにブラック・マジシャンを復活させれば私の戦意も削がれていたのに。
いや違う。先に黒魔術師を出していたらゴーズのトークンの攻撃力は黒魔術師と同じ、私は彼にダメージを与えられたかもしれない。冥府の使者ゴーズもしくは攻撃反応型のモンスターを場に出されることを彼は読んでいた。相手の先のプレイング、さらにその先を読むことなんて不可能に近い。背筋が凍るような感覚がする。
経験の差は明らか。決闘者の器としても未熟な私が三銃士を従えるのはまだ早かったんだ。それでも一つの目標は出来た。
「バトル!! 冥府の使者ゴーズでブラック・マジシャン・ガールに攻撃!!」
紅 一葉LP4000→3600
「私はこれでエンド!」
「エンドフェイズに混沌の黒魔術師の効果を発動。墓地に存在するディメンション・マジックを手札へ加える」
私の敗北は決まったも同然。ゴーズとカイエントークンでは次のターンを耐え凌げられない。ディメンション・マジックが手札に加わった以上、最早これまで。つい下を俯きそうになる。
俯きそうになるのを咎めるようにゴーズが私を澄んだ瞳で真っ直ぐと見つめてきた。ソリッドヴィジョンなのにまるで生きているかのように前を向けと顔を上げて最後まで闘えと伝えてくる。そう、まだ負けてない。手札にこの一枚のカードがある限りまだ希望はある。
「俺のターン!! ドロー!! 静楓さん、きみは弱くない。充分に強い。デッキを信じきれなかったからカード達も主に力を貸そうと思わなかったんだろう。でも今は違うだろ?」
「ん、違う…なんだか清々しい気分。私はそれ以前に一葉さんがこんなに強いって知っていたら決闘しなかったんだけどね」
「決闘は自分の気持ち次第で変わる。今日の決闘もお互いの気持ちがぶつかり合った末の結末。――ラストだ、決めさせてもらう。自分の墓地の闇属性モンスターが三体の場合のみ、コイツを召喚することが出来る。冥府の断罪龍よ全てを焼き尽くせ、ダーク・アームド・ドラゴンを特殊召喚!! 墓地の闇属性モンスターはブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガール、熟練の黒魔術師だ」
【ダーク・アームド・ドラゴン】
効果モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。
自分のメインフェイズ時に自分の墓地の闇属性モンスター1体を
ゲームから除外する事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
思わず息を呑む。まだこんなモンスターを隠し持っていたなんて。禍々しいほどの黒い鱗に憎しみや怒りを表現した黒龍は凄まじい咆哮をフィールドに響かせた。足がすくんでしまう。
ソレから身を庇うように背を向けるゴーズとトークン。まるで意思を持って主を守らんとする従者のように見えた。
「ブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガールを除外し、静楓さんの冥府の使者ゴーズとカイエントークンを破壊する!!」
ダーク・アームド・ドラゴンの咆哮とともにフィールドに小さな黒い穴が出現し、冥府の使者ゴーズとカイエントークンは声を上げる間もなく吸い込まれた。
「そ、そんな…!!」
「混沌の黒魔術師で静楓さんにダイレクトアタック!!」
武藤静楓LP1500-2800=0