私はどこで間違えたのだろう。何故私の大切な物は全て消えていくのだろう。私はただ家族で幸せに暮らしたかっただけなのに。
全て?いや、まだ残っているじゃないか。愛すべき娘が。だが、隣に立つのは私ではない。
「パパ!」
娘が、エルが私を呼ぶ。泣かないでくれ、エル。お前の涙は見たくないんだ。
ルドガー、後は託した。エルを・・・任せたぞ、必ず・・カナンの地へ・・・・
その日、とある分史世界で1人の骸殻能力者が消滅した。
そして審判は人間の勝利に終わった。多くの犠牲を伴いながら
その後の新しい世界には、彼の娘であり相棒の少女の姿があった。彼から教わった歌を口ずさみながら・・・
「ん?」
「どうした、オリジン。」
カナンの地にて、クロノスは急に上空に顔を向けたオリジンに問い掛ける。
「いや、どうやら魂が1つ別の世界に流れていったみたいなんだ。」
「なんだと!?ならば早く連れ戻した方が.・・・」
「ううん、あのままにしておこう。分史世界であれほど辛い目にあったんだ。正史世界の彼が審判を乗り越えたご褒美さ。別の世界でなら彼も幸せを手に入れられるかもしれないし。」
オリジンの判断にクロノスは頭を抱えた。
「全く、勝手にしろ。」
「すまないね、クロノス。」
「言った筈だ。時間はある。説教ならたっぷりしてやる。」
そして彼の、ヴィクトルの魂は流れ着く。艦艇の意志を宿した少女が戦う世界へ。
「う、うぅ・・・」
此処はいったい・・・私は死んだ筈では?ならば此処は死後の世界というやつか?にしては質素だな。それよりも先程から揺れているのはなんだ?
ヴィクトルが部屋の窓から外を見る。するとーーー
「なんだ、これは?」
辺り一面大海原だった。つまり自分は船に乗っていることになる。ヴィクトルは困惑していた。死んだ筈の自分が何故船に乗っているのか。更に周囲を見渡すと部屋の隅にアタッシュケースを見つけた。
(私か寝ていた部屋にあったのだから恐らく私のだろう。)
彼はそう考え、アタッシュケースを開けた。すると中からは見慣れたものや日用品が入っていた。クランスピア社から貰った銃やハンマー。かつて自分が殺した兄の双剣。いずれも自分でカスタマイズし強化した物。そしてかつての最強の骸殻能力者であったビズリーを殺した際に奪った時計までが入っていた。
「まさかこれまであるとはな。ん、これは・・・紅茶か。・・・・いやちょっとまて。何故私はこの文字が読めた!?こんな文字見たこと無い筈だ。それなのに「NOoooooooo!!」な、なんだ?」
突然の大声に多少驚いたが気になったので部屋の外に出てみることにした。
部屋の外では船員のような男性に不思議な格好をした少女2人がクレームをつけていた。いや正確には長髪の少女を短髪の少女がたしなめているので騒いでいるのは実質1人である。
(紅茶か・・・)
「何の騒ぎだ?」
私が声を出すと周囲が更に注目しだした。まぁ全身真っ黒で仮面までしていたら当然か。
「すみません、お客様。こちらの不手際で・・」
「ほらお姉さま。他の人にも迷惑になってますから。」
「ウゥ、ワタシのティータイムが・・・」
「ふむ、ではお嬢さん。これを。」
私は落ち込んでいる少女に何故か持っていた紅茶の茶葉を渡した。
「OH!これは!」
「君、これで彼女達に紅茶を。」
「は、はい!ありがとうございます!」
「では私はこれで。」
「Wait!待って下サイ!」
そのまま部屋戻ろうとしたが呼び止められたので顔だけ向ける。
「何か?」
「どうして初対面の相手に紅茶を?」
「ふむ。それくらい気にするな。それより姉なら妹を困らすな。」
そう言うと少女は項垂れてしまった。いかん、自分の過去の事を少し思い出してしまったか。
「まぁ、年頃の女の子ならばおしとやかに。ということだよ。」
その言葉に少女は顔を紅く染めたがヴィクトルは気付くこと無く立ち去った。
部屋に戻り、ヴィクトルは横になっていた。自分の置かれている状況を整理しているのだ。
(見たこと無い文字、船、服装。もしや此処はエレンピオスでもリーゼ・マクシアでもない世界なのか?ならば何故私は此処にいる?審判は終わったのか?)
と、そこまで考えていると・・・
「うおぉ!?」
突如砲撃音が響き、船が揺れた。何かに襲撃されたようである。
「くっ、異世界でも不運は続くのか!」
彼は愚痴を溢しながら武器を装備し、部屋の外に飛び出した。
外に出ると客が逃げ惑い、船員が避難誘導をしていた。そこの船員に話を聞くことにした。
「何があった?」
「深海棲艦と艦娘が戦ってるんです!」
「深海棲艦?それに艦娘?」
「知らないのですか!?いや、それより此方側は危険ですので早く避難を!」
そう言われたので少し離れた所で戦いを見ていた。船を守っていた側は途中ピンチに陥ったが、先程出会った少女達の介入により形勢逆転した。
「ふむ、あれが艦娘。やはりこの世界は・・・!?」
遠くに再び人影が見えた。装備しているものから恐らく深海棲艦側だろう。彼女達も気づいたようだが敵は6。此方側は怪我をしている者もいるし護衛対象もある。圧倒的不利だ。・・・・・やるしかないか。
「お客様!?」
船員の制止を無視し、手すりを飛び越える。その瞬間に金色の時計を掲げる。すると彼の周囲が輝き、腕と顔の一部が変化し、巨大な槍が出現した。これが彼の骸殻、クォーターである。
『なっ!?』
その場の艦娘が驚愕の声をあげた。深海棲艦も僅かに目を見開いた。見たこともない存在が突然現れたのだから。
「アナタは、さっきの。」
「久しぶりだな。そしてよく頑張った、あとは私に任せなさい」
「でも「心配無い」・・?」
そこまでは優しく、まるで父が娘に語りかけるような声だった。だが---
「----すぐに終わる。」
最後の瞬間、そのセリフには優しさの欠片もない、あるのは純粋な殺気だけであった。
次回、初戦闘!もうあいつだけでいいんじゃないかな?