それでは、どうぞ!
私、アリス・マーガトロイドは肌を刺すような冷たさで目を覚ました。
「うっ・・・。確か、私・・・?あっ」
そうだ。5か月くらい前に、柚子のブレスレットとクリアウィング・シンクロ・ドラゴンの共鳴に巻き込まれ、どこかへ飛ばされてしまったんだったわ・・・。
「ここ、どこかしら?」
その声に応えるように、眠っていた柚子が体を起こした。
「アリス!良かった~。あなたが一緒なら安心だわ!って、さむっ・・・」
「あんまりあてにされても困るんだけど・・・。というか、ユーゴは?」
柚子が答えるよりも早く、寝転がっていた少年―ユーゴが体を起こす。
「ああ~、よく寝た!てか、さっきのは誰に向かって言ってたんだ?まだあれから一日も経ってねぇぞ?」
「誰でもいいでしょ。てか、ナチュラルに心を読まないでよ。さとりじゃあるまいし」
「サトリ?なんだそれ、うめぇのか?」
「確か妖怪じゃなかったっけ?塾で子供たちが話してた気がするわ」
「ま、いいか。さっさとここから出ようぜ!」
「ええ。いつまでもここにいたら凍死しそうだしね」
「魔法使いって寒さ感じるのかしら・・・?」
「感じるわよ。食事とか睡眠は要らないけど、大体普通の人間なのよ」
なんて話をしながら、様々な装置の間を進んでいく。一体なんの装置なのかしら、これ?
「でも、本当にここどこかしら?」
「やたら広くない?それに変な機械あるし、寒いし」
「でかいコンピュータがあるならこんくらい寒いとこ珍しくねぇぞ。回路冷やさないとオーバーヒートしちまうからな。って、おっ!」
「どうしたの、ユーゴ?」
「見てみろよ、これ!」
ユーゴが見つけたのは箱に詰められた無数のデュエルディスクだった。あと、何台かDホイールも混ざってるわね。
「すげぇ!これ、最新型のディスクじゃねぇか!幾らぐらいすんのかな~?」
「ユーゴ!そんなことしてる場合じゃないでしょ!」
「痛っ!?」
柚子がどこからか取り出したハリセンでユーゴをしばいた。次元が違ってもこの芸は共通なのね・・・。
「わーったよ。真面目にやりゃいいんだろ?」
「そうね。早くここから出ないと」
突如部屋が明るくなり、敵愾心に満ちた叫び声が部屋に響いた。
「そんなことはさせんよ!そのエリアに入ってしまったんだ。生きて帰れると思うなよぉ!?」
そこにいたのは神経質そうな、悪役面の男だった。まったく・・・どうしてユーゴといると面倒ごとに巻き込まれるのかしら。
「その台詞は小物の特徴だぜ、おっさん!」
「おっさんではない、ジャン・ミシェル・ロジェだ。貴様らの名は?」
「俺はユーゴ!こっちがアリスと柚子」
「律儀に名乗る必要あるの、これ?」
「融合?なるほど、アカデミアの増援というわけか。それにそのブレスレット!これはいい土産だなぁ!」
「融合じゃねぇ、ユーゴだ!」
「突っ込むところそこなの!?」
「漫才やってる場合じゃないでしょ、もう・・・」
「色々気になることはあるけど、話はあなたを倒してじっくりきかせてもらうわ」
そう言ってディスクを展開させた私に応じて、ロジェもデュエルの態勢に入る―。
「ちょっと待ったぁ!アリス、このデュエル俺がいかせてもらうぜ!」
そう言いながらユーゴがバイクからディスクを取り外し腕に装着する。そういう使い方が出来るのは便利ね。
「どちらでも構わん!私が勝ったらその女を渡してもらうぞ!」
「俺が勝ったら、出口教えてもらうぞ!」
「なんで私!?というか、なんでバイクに乗ってデュエルするの!?」
柚子の訴えは男たちには届かない。この世界においてデュエルは何事にも優先するのであった。
「あの麻呂眉といい、こいつといい・・・。アカデミアは変態集団なのかしら・・・?」
「
ロジェ LP 4000
ユーゴ LP 4000
ロジェ「私のターン!フィールド魔法『ディジタリズム・チェス・ボード』を発動!その効果により、デッキから『キャスリング』を手札に加える!さらに!『ディジタリズム・チェス・ボード』第二の効果を発動!相手はデッキからモンスターカードを手札に加え1000ダメージを受ける!さぁ選べ!」
鈍色の金属で構築されたチェス盤が出現する。ピカピカ光ってることから機械とかで出来ていることがわかる。
ア「チェスデッキね。存外いい趣味してるじゃない」
『ディジタリズム・チェス・ボード』
①1ターンに1度、デッキから魔法・罠1枚を選択して手札に加えることができる。
②1ターンに1度、相手はデッキからモンスターを1体選択して手札に加え、1000ダメージを受ける。このターン、この効果で手札に加えたカードおよび同名カードの効果は発動できない。
「なら有難く使わせてもらうぜ!俺は『
「相手がドロー以外でモンスターを手札に加えたとき、手札のこのカードは特殊召喚できる!現れろ、『パペット・キング』!」ATK 2800
「私はカードを3枚伏せてターンエンドだ!」
ロジェ LP 4000
手札 1
場 『パペット・キング』ATK 2800
『ディジタリズム・チェス・ボード』
リバース×3
ユーゴ「1ターン目から攻撃力2800か!面白れぇ!俺のターン、ドロー!」
「魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動!あんたの場の魔法・罠カードを全て破壊するぜ!」
「なんだと!?」
ア「容赦ないわね・・・」
「俺の場にモンスターがいない時、手札のベイゴマックスは特殊召喚できる!」ATK 1200
「そしてベイゴマックスの召喚に成功したことにより、デッキからチューナーモンスター『SR赤目のダイス』を手札に加え、そのまま召喚!」ATK 100
「そして赤目のダイスの効果発動!ベイゴマックスのレベルを6に変更する!」
「行くぜ!レベル6となったベイゴマックスに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!」
「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」ATK 2500
「そのモンスターではパペット・キングは越えられん!」
「攻撃力で勝るだけがデュエルじゃねぇ!魔法カード『ヒドゥン・ショット』!墓地のSRを除外し、その枚数分だけ相手のカードを破壊する!俺はベイゴマックスを除外してパペット・キングを破壊する!」
墓地から飛び出した鉄のコマが火花を散らしながら突進し、相手のキングに激突。まるでダルマ落としのように芯を抉り抜き、爆発させた。ソリッドヴィジョンの本気を見たわね。まぁ実際のチェスだとキングが取られることは無いのだけれど。
「馬鹿な!?こんなことがあってたまるか!」
「何でも有りあるのがデュエルだぜ!バトルだ!クリアウィング・シンクロ・ドラゴンでダイレクトアタック!旋風のヘル・ダイブスラッシャー!」
「ぐぉおおおお!?」ロシェ LP 4000→1500
ユーゴのドラゴンが己の翼を刃とし、主の敵を両断する。
「こいつで王手だ!魔法カード『オーヴァード・チューン』!自分のシンクロモンスターの攻撃力を1000ポイント下げ、もう一度バトルを行う!」
『オーヴァード・チューン』
速攻魔法
①自分フィールドに存在するシンクロモンスターが戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。そのモンスターの攻撃力は1000ダウンし、もう一度攻撃することができる。
『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』ATK 2500→1500
己の力を風に変え、再びクリアウィングは飛翔する。
「この私がっ!負けるだと!?」
「そういうこった!行け、クリアウィング!旋風のヘルダイブ・スラッシャー!」
再びクリアウィングの翼がロシェを切り裂き、彼のディスクが0の数字を刻んた。
「ぬわぁあああ!」ロシェ LP 1500→0
勝者 ユーゴ
「これは酷い」
「まさか後攻ワンキルで沈めるとはね・・・」
「まぁな!こんくらい朝飯前だぜ!」
「ぐっ・・・」
「さぁて。出口教えてもらおうか!」
「あぁ出してやるさ!」
そう言ってロジェは懐から取り出したボタンを押した。その瞬間、地響きのような音と共に床が崩れる。重力に従い、落下を始めた私たちの視界に移ったのは―
「海!?」
「ここ、船の上だったのね」
「きゃあああああ!?」
「はっはははは!落ちろ、落ちろ!みんな落ちてしまぇえええええ!」
「自分も落としてどうするのよ!?もう!スペルカード【試験中「レベルティターニア」】!」
私はディスクを介してではなく、自身の魔力でスペルを発動。巨大化させた2体の人形で柚子とユーゴ、Dホイール、あとロジェをキャッチする。
「アリス空飛んでる!?それにこの人形なに!?」
「すげぇなこいつ!肌触り最高だぜ!」
「空を飛び、カードを実体化させるだと!?」
「とりあえずアカデミアについて、あなたが持っている情報を全部吐きなさ、いっ!?」
「『デストーイ・マッド・キマイラ』!」
ロジェを尋問しようとした私にロケットのようなものが射出された。咄嗟に下に飛んで回避すると、私の上を通過して、壁に当たり、炎をあげて爆発した。
「やっぱ当たんないか」
「非殺傷設定されてる威力じゃないわね、これ。殺す気?」
「まぁ邪魔するならそれもやむなし、だね。僕の要求は一つ。そいつを渡してよ。回収命令が出てるんだ」
「随分と状況把握が早いのね。お断りしますって言ったらどうするの?」
「君とデュエルする・・・といきたいとこだけど、僕『ファーニマル・ウィング』使ってるからデュエルは出来ないんだよねぇ。だから強硬手段に出させてもらうよ!『デストーイ・チェーン・シープ』!『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』!」
素良が呼び出したモンスターが爆薬と丸鋸を雨あられとぶっ放す。非殺傷設定だと見た目通りの凶器ね、これ。
「スペルカード【呪符「ストロードールカミカゼ」】!」
とりあえず弾幕を纏わせた人形たちを突撃させて、凶器を迎撃する。閉鎖された空間で圧縮された爆風が吹き荒れた。
「まさかこれも迎撃されるかぁ・・・。けどね!『デストーイ・チェーン・シープ』!」
禍々しい羊が鎖を放つ。もちろん、さっきの凶器もセット。人形と弾幕で迎撃しつつ、鎖を回避した。
「もらったよ!」
「っ!?しまった!」
私が避けた鎖がロジェに巻き付き、引き寄せようとする。ティターニアが離すまいと力を籠めると―
「『デストーイ・シザー・タイガー』!」
素良が新たに呼び出した虎のぬいぐるみが、腹のハサミでティターニアの腕を切り飛ばした!?
「ティターニア!」
「酷い・・・」
「なんと言われようとミッションはこなす!行け、僕のモンスター達!」
素良の指示に従い、全てのデストーイが自分たちに備え付けられた武装を片っ端からこっちにぶちこんできた。
「くっ!【操符「乙女文楽」】!」
大玉から人形を生み出して、光線や弾幕をまき散らす。このスペルなら大体のものは防げる。
けど、肝心の素良にはこの激突で出来た爆炎に紛れて逃げられてしまった・・・。
「まさかスペルで攻撃を相殺することになるとはね・・・。すぐ直してあげるわね、ティターニア」
「なんだこの能力バトルもん・・・。てか、あいつ逃がしちまったな」
「とにかくみんな無事だったし、それで良しとしましょう」
「うん!」
「そうだな」
真横にはこの戦闘のどこかで出来たらしい大穴が開いていたので、それをティターニアたちと一緒にくぐって外に出る。
「うわぁ綺麗・・・」
そこに広がっていたのは輪のようなモニュメントと、それを囲むたくさんの道路や建物が夕日に照らされている、そんな美しい街だった。
「あ、ここネオ童実野シティか!」
「え、ホント!?」
「あぁ!自分の生まれ故郷見間違うかっての!」
とりあえず何もわからないまま飛ばされたってわけじゃないみたいね。それなら案外なんとかなるかも!
ア「非殺傷設定リアル・ソリッドヴィジョン・・・。そろそろアカデミアがホントに軍隊染みてきたわね・・・」
ユ「しゃーねーよ。この次元にはデュエル中、ダイナマイトで吹っ飛ばすリアリストがいたらしいからな。デュエルとリアルファイトは切っても切れない仲なんだよ!」
柚「だとしたら恐ろしいわね・・・。うん、次回予告しましょう!」
ユ「おう!」 ア「ええ、わかったわ」
ア「とりあえず船から脱出した私たちは、ユーゴがお世話になっている孤児院に転がり込むことができたの。そんな暫しの休息の中、孤児院にやってきた一人の青年。彼のデュエルは驚嘆すべきものだったわ!」
次回「黒き旋風」
ユ「お楽しみはこれからだぜ!」