遊星さんの誕生日である今日を、二年越しの復帰の日とさせていただきます。
遊星さん!モクバ!誕生日おめでとう!
それでは、どうぞ!
ネオ童実野シティモーメント研究所。ネオ童実野シティで使用されるエネルギーの100%を生み出すモーメント『フォーチュン』を有するシティの心臓部。その中心に一人の青年が立っていた。逆立った黒髪に黄のラインが入っているという一度見たら忘れることのなさそうな髪形をした彼の名は不動遊星。このモーメント研究所の所長である。部下を思いやる姿勢から研究員たちからの信頼は盤石である。
― のだが。そんな彼は今、研究員総掛かりで研究所から追い出されようとしていた。
「み、みんな一体どうしたんだ??」
「今日ばっかりは絶っ対!帰ってもらいますからね!」
「そうですよ!大体所長は働きすぎなんです!なんですか75連勤って!?」
「い、いや俺は大丈夫なんだが・・・。睡眠も食事も取っている」
「へぇ・・・。昨日は何を食べましたか?」
「カップラーメンとカ〇リーメイト。あと数秒チャージだな」
「睡眠時間は?」
「昨日と一昨日で5時間だ」
「やっぱりー!!人間のしていい生活じゃありませんぞ!」
彼らの愛を込めたスクラムで、研究所の外に押し出された遊星。扉を閉めながら、研究員たちが全員で叫ぶ。
「「「不動所長!誕生日おめでとうございます!!」」」
それを聞いた遊星は一瞬目を見開いた後、嬉しそうに微笑んだ。
「そうか、今日は7日か。すっかり忘れていたな」
彼は夜空を見上げながら言葉を紡ぐ。満天の星が輝く空に彼は自身の相棒であった龍の姿を重ねる。そうして、暫くぼうっとしていた彼は近づいてきたDホイールの駆動音で現実に引き戻される。聞き間違えるはずがない。その音は彼にとってかけがえのない仲間、十六夜アキのDホイール『ブラッディ・キッス』のエンジン音だった。
遊星の横にDホイールを停めたアキは、遊星に寄り添うように立って星空を見上げる。
「やっぱりここにいたのね遊星」
「最近忙しくてな。日付感覚が飛んでいた」
「全く・・・。もう少し自分を大事にして」
「研究所の皆にも言われたよ」
「そうよ。貴方のことを心配する人は沢山いるんだから」
「ああ。気をつけるよ」
「それなら良いわ。それでね、遊星・・・。ちょっと付き合ってくれない?」
「どこに行くんだ?」
「ふふっ、内緒よ」
「わかった。楽しみにしておくよ」
Dホイールに跨り、どちらからともなくエンジンを始動させる。街並みは光の奔流となって視界を流れ、二人の体を風が包み込む。
「改めてだけど遊星、今日って七夕でもあるのよね」
「そうだな。マーサは全員の短冊を飾ってから俺の誕生日会を開いてくれたよ。短冊も笹も手作りだったのが懐かしいな」
「なんか良いわね、そういうの。遊星はどんな願い事を書いてたの?」
「皆が笑っていられるように、だな」
「貴方らしいわね。そういえば遊星、七夕の伝説は知ってる?」
「ああ。今年はよく晴れているから、彼らも喜んでいると思う」
「案外ロマンチックなのね」
「ふっ、そうだな」
それぞれの思惑を胸に二人は疾走する。
(言えるわけないわよね。私たち織姫と彦星みたいね、なんて)
この後、サプライズで集結していたチーム5Dsのメンバーと共に朝まで騒いだのはまた別のお話