DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》 作:アルファるふぁ/保利滝良
「へ~、色々と事情があるんだな」
茶を啜りながら、ナガイは言った
実際、このギルギル・カンには事件が数多く見られる
これでナガイは、ここは異世界だという結論に至った
茶を喉に通す
ムスッとした表情でナガイを睨むミユキ
ニコニコと笑顔を浮かべる男
車椅子に座った、虚弱そうな女性
三人の視線などそ知らぬ顔で茶を啜り続けるナガイ
実際、情報を貰った後は放浪するつもりだったナガイは、元来の性格もあって失礼な態度で接していた
ミユキが口を開く
「で、お前は何者だ!ナガイ、教えろ!」
「異世界人だ」
「馬鹿を言え!」
まるで当たり前だと言わんばかりに言い返したナガイに、ミユキは食って掛かる
しかし嘘ではない以上、ナガイもどうしようもない
怒りに四人がつくテーブルを叩くミユキの暴挙を、茶を飲みつつ眺めるだけ
「落ち着きなさいミユキ、その人は嘘をついているようには見えません」
ここで、今まで黙りきっていた、病弱そうな女性がミユキに声を掛けた
「姉さん、でも・・・」
反論をしようとしたミユキだったが、言葉を詰まらせ口を止めた
姉には頭が上がらないのだろう
「リキさん、ちょっと席を外してもらえませんか?」
「わかりました」
リキと呼ばれたにこやかな男性は、その場をあっさりと離れた
この村ではあまり重要な人物ではないのだろうか
リキが席を立ち、そのままスロープを降りていく
塔の屋上に、風が吹いた
茶菓子を砕いて小鳥にあげながら、ミユキの姉サユキはナガイを見つめる
「凶暴なお顔ですね、まるであの骸骨皇帝のよう・・・」
「姉さん、また?あれはそんな恐いものではないさ」
さらりと言い放つサユキに、ミユキは反論する
「なんだ、その骸骨皇帝ってのは?」
コップを置いて身を乗り出すナガイ
流し目でそれを見ながら、ミユキは答えた
「魔神のことだよ」
「へえ・・・」
得心したように座り直し、また茶を啜り始めるナガイ
ポットから勝手にお代わりを注ぎ、また飲む
「あれは守り神などという都合の良いものではありません・・・ナガイさん、貴方ならそれを理解してくれるはずですね?」
ミユキからコトの顛末を大体聞いたサユキは、じっとナガイを見つめる
「さあな、俺はちょっとここら辺には詳しくねぇ」
茶菓子を摘まみ、口に放り込む
また一口茶を口に含み飲み込んだ後、ナガイは付け足した
「だが悪魔を神様に仕立て上げるなどという妙な儀式は、昔から存在する」
「出鱈目を!魔神様はそのような存在じゃない!魔神を侮辱するのはこの村を侮辱するのと同じだ!」
「落ち着きやがれや」
一睨みするナガイ
流石に頭に来たらしい
まるで刃物のような眼力は、ミユキを一瞬怯えさせるには充分すぎたようだった
固まってしまうミユキ
それに気付き、ばつの悪そうに頭を掻くナガイ
「・・・この塔の支柱は、魔神様の杖の一部って言われているんだよ」
「杖?」
「そうです」
我に帰ったミユキが、ナガイに魔神の話を始める
「杖が塔の支柱にできるのですからかなりの大きさなのでしょう」
サユキの憶測に納得しつつ、ナガイは再びコップを手に取った
「やぁ、どうでしたか?」
あ?
こいつは確か・・・リキ、だっけか
「どうだったって・・・何がだよ?」
「いえ、あの姉妹との話ですよ」
「魔神とやらのオトギバナシ聞かせて貰ったよ、だからどうしたってんだ」
なんだこいつ、いつもニコニコとして・・・
「明日からは村の祭りなんです、楽しんでいって下さい」
・・・なんだったんだアイツは