DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》 作:アルファるふぁ/保利滝良
イシカワは、ゲットマシンを降りた
人を見付けたからである
近くの森へ機体を隠し、そして歩き出す
木の幹で体を支えながら、その下を見た
海岸だった
紛うかたなき海岸線に、木製の小屋がぽつりぽつりといくつも建っている
ご丁寧に、近くには小舟が無数に浮いている
漁師の村だということは一目でわかった
「かーちゃん、帰ったぞー!」
「どうだいアンタ、やっぱりダメかい?」
数隻の船が、沖の方からゆったりと流れてくる
船を漕いでいる男とその妻と思わしき女が大声で会話していた
「だぁーめだぁ!巨獣どもにビビっちまって魚はどいつも散っちまってるよ!」
男は空の壺を振りながら首を振る
女を初めとした船の帰りを待っていた村人も、暗い顔で肩を落とした
「諦めてはいけません」
キレイな青の頭髪をした女性が、沖の方で呟いた
「この浜の魚は貿易の要です・・・獲れなければ村は良くて人口半減、最悪全滅です」
「しかしよお、シズメ様・・・」
「原因を絶つ、その為の準備くらいはさせてもらっています」
村人の反論を諭しながら、シズメと呼ばれた女は小屋に入っていった
「・・・ほお?」
木陰から眺めていたイシカワは、村へと歩みを進めた
あのシズメって女、十中八九戦闘マシーンでその巨獣をどうにかするつもりだろ
で、村の向こうは何があるんだ?ゲンゾウ爺さんからもらった地図が正しけりゃ、ここはギルギルカンの端だ
キノコの傘の端でもある
で、この方角ならキノコの茎が向こうにあるはずだ
茎のトコにゃ国があるらしい・・・
いや、特にどっかの国へ行こうとは思っちゃいない
ただフラフラするなら、いっそのこと目立つ所に行けば楽しいだろ
「よぉ、お困りのようだなぁ?」
「あ、あんだオメェ、余所もんか!?」
おっと、ファーストコンタクトは失敗か?高圧的過ぎたか
まあいいや
「巨獣が邪魔で漁ができないのか?」
とりあえず単刀直入だ
面倒にグダグダやるのは趣味じゃねえ
「だからどうしたんだよ、オメェにゃ関係無いだろ」
「俺は戦闘マシーンを持ってる」
「本当ですかっ!?」
うぉッ!な、なんだよ
び、ビックリしたじゃねえか、迷惑な・・・
「し、失礼しました・・・私はシズメと言います」
ほお、本当に髪が青いな・・・光の角度で普通じゃない光り方する黒髪だとばかり考えていたが
「この村の村長をやっております・・・旅の方、お名前をうかがっても?」
ああ、
「イシカワだ」
「イシカワさん、お願いがあります」
言わなくてもわかる
海のバケモノ共を退治すりゃ良いんだろ?
「俺に任しとけ、必ずアンタらに旨い魚を獲らせてやれるようにすっからよ!」
へへ、人助けってのも、久し振りな気がするぜ
いや、最初にゲッターに乗った時も、人助けしてたわけか
やっぱりゲッターロボは正義の味方だな!今の見た目は歴代屈指の狂暴機体だけど
「ありがとう、ございます・・・!」
「おお、本当かニイチャン!」
「やったよ、なんとかなりそうだ!」
「やったやったぁ!またせがれにうまいもん食わせてやれるぞ!」
な、なんだよそんなにチヤホヤしやがって・・・て、照れるじゃねえか
ま、まあいいか
「明日、明朝に海に飛び込んで暴れさせてもらう」
軽く作戦を立てとくとするか
「津波に巻き込まれんなよ」
ま、注意点もこれくらいにして、
「ところでイシカワさん、今晩はお宿はどこへ?」
「ああ、ねえなぁ」
ゲットマシンのシートで寝るのもしんどいし、腹も減ってきたな
どっか宿にでも・・・そういや俺って一文無しじゃねえか!クソッ、金も無けりゃ物もねえ・・・かなりヤバい状況なんじゃねえのかコレ!?
「では宜しければ、今晩は私に家に泊まって頂けませんか?」
・・・はぁ?
シズメは身を清めていた
湯で自分の体を流し、汚れを落とす
殿方に肌を見せるのならば、肌染み一つ許すわけにはいかない
そのために体を流しているのだ
それを意識すると、シズメの体は熱くなっていく
多分お湯の製だけではないのだろう
「・・・イシカワさん・・・」
寝間着のシズメが、イシカワのいる部屋へと入っていく
「失礼致します」
それに対し片手で払うようにしたイシカワは、開幕こう言った
「おいアンタ、体売って戦闘マシーンのパイロットでも買おうとしてたんだろ」
「・・・はい」
「そんくらい貧しいのか」
「はい・・・」
「・・・そうか・・・」
目を床に向け浮かない顔をしたシズメに、布団の上で胡座をかきながらイシカワは言った
「安心しろ、必ず巨獣は始末してやる」
口の端を吊り上げ、犬歯を見せながら笑うと、イシカワはもう一言付け足した
「それまで操はとっとけ」
「はい・・・!・・・ありがとう、ございます」
夜が深まっていった
「ところで、布団が一つしかないのは・・・なんでだ?」
「きょ、今日は添い寝をさせていただきます・・・」
「・・・マジかよ、オイ」