一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
そこに既にその者の意思はない
だが、そこにその者が生きた証があり
証は全てを証明する
曰く、それは下手をすれば人類全てが滅んでいたかもしれない『最終戦争』とも呼ばれ、第二次世界大戦より下回るがかつて無い程の死者を出した『IS大戦』が勃発から三年目にして漸く終戦を迎えた。
そんな地球は今現在、荒れた都市や経済、復興に忙しく動き回っている。だが、IS大戦の原因となる人物が一人だけまだ世界の何処かにいる為、世界中でその人物を探していた。
「ついに来た......か」
その人物、IS委員会委員長『霧崎千切』は日本に居た。勿論捜索地域に日本も含まれており、全国各地ほぼ毎日捜索されているが現在もこうして逃げ切っている。 では何故逃げきれているのか?理由としては霧崎自身が原因となる。霧崎が起こしたISテロ......澪が居た街に今居るのだ。テロ当時、主犯である霧崎は勿論IS委員会と女権団のメンバーは日本政府に干渉、女権団のスパイと賄賂を使いその街をあらゆる記録上から消し去った。それから数年。街だったこと自体がもう忘れ去られているのだ。そこに霧崎は目を付けた。
消し去った街は今や雑草に覆われ、かつての面影はない。崩壊寸前の家屋の中で霧崎は生活している。
『主人よ』
崩壊寸前の家屋から出て来た霧崎を迎えたのは、ドールズのファランクスである。
「ファランクス、貴方はもう去りなさい。
好きに生き、誰かの為に生きなさい。」
『......だが』
霧崎はハイパーセンサーを徹して感じていた。月の裏側から溢れ出す膨大なエネルギー反応を、それは地球にある全てのISは勿論、Eセンサーを搭載しているものなら完全に捉えている。
「ファランクス。アレは三年前とは別次元、三年前の貴方はまだエクスカリバーとの連携で勝てました。
三年間という期間にアレは完全に貴方を超えています。さらにエクスカリバーは亡国により消失、あの時はエクスカリバーを使えたから良かった。だけど、今や連携による攻撃ができない以上まともな戦闘にもなりません......早く『主人、すまない』......?」
ファランクスがそう言った時だ。Eセンサーが捉えた反応が爆発的に増大し、位置情報がこの名も無き街を示していた。霧崎はアレ......澪が来たことを理解し、同時にファランクスの本体ごと両断されていること知った。両断されたファランクスが爆発し、それに霧崎は巻き込まれるが微動だに動しなかった。それに対して何も思わない訳では無い......だが、まずは目前の問題を片付けるのが先と思考を変えた。 センサーは1km程は常に張っている。だが、その範囲内には居なかった。ISコア反応はまずここ周辺地域にはまず無い。では何処から?
そう考えてた霧崎は爆炎の中でその顔面を捕まれ投げ飛ばされる。
「うあっ!?」
爆炎から投げ飛ばされたい霧崎はPICの応用による空中蹴りで衝撃を緩和し、空に上がり街全体を索敵しそれを捉える。ファランクスの事を頭の片隅において、あまりにも異質なソレを見た。
それは自分の様に人に近い外見をしているが、それはもっと人に近い存在だった。霧崎自身独学で澪の様な存在になる方法は融合兵士計画を基に辿り着いた進化の方法の一つに、全てを捨てて進化する方法があった事を認知していた。しかし、それはあまりにも愚行な行為であることと霧崎自身思っていた。
全ての生物は生きたいと願い、自ら命を捨てる行為に恐怖を持つ。それは霧崎だって同じだ。果たす目的があるから、その先にある事を果たす為に今まで過ごしてきた。 霧崎には分からないが、澪は霧崎を殺して復讐を果たすことが人生の終わりだと決め付けている故に出来たのだ。
「まさか、あの手段を?」
「■■」
霧崎と数百メートル離れ、爆炎の中からその双眸を向けている頂きに辿り着いた澪。その姿は人間9:IS1の割合の姿をした霧崎とは違う。まさに人間とISの割合が5:5で、ISと人間の融合という形をまさに表現していた。
その背にある非固定浮遊部位の翼、語られることがない名称『廃翼』が澪の周りに漂う黒煙を吹き飛ばす。その掌底から閃光を放ち......それが槍の形状に成り代わる。
「■■......■■■■■!」
上空にいる霧崎に向けて槍を投擲、空いた手にまた槍を作成し投げる。その間僅か0.1秒、その神業とも呼べる投擲を霧崎は目にして心の中でやるなと呟く。そんな感想と裏腹に槍を素手で簡単に払い、弾かれた槍が街に落ちては爆撃かと思えるほどの衝撃を出した。
翼を広げた澪は、その内側にあるエネルギーを放出。出力を上げ、本格的に戦うための準備だ。これに対して霧崎は先程と同じ様に素手で待ち構えた。 一瞬の間をおいて閃光を発し、ガード体勢を取った霧崎を殴り抜いた。強過ぎた威力は大気を震わせ、周辺地域一体に甚大な被害を出す。衝撃波が瓦礫まみれの名も無き街を襲い、残っていた建築物も全て崩れ去る。
「────っはぁ!
はあ......はあ......!」
霧崎は目前の澪を鋭く睨み付けた。今の一撃で両腕が消し飛び、久しく感じた痛みにキツイものを感じていた。 直感的にまだ底があることを理解し、このままでは己を追い越す事も感じ取る。霧崎は戦女神の姿を模したIS化して腕を直し、手刀を繰り出す。
手刀は澪に少し掠り、その身体を傷つけた。その後に続けて見えない斬撃が澪を斜めに切り裂きその動きが止まる。これは霧崎の作り出したISコアが持つ単一仕様能力である。
単一仕様能力『虚構之道』︙単純にいえば攻撃手段で手か足を振るう、近接武器による近接攻撃を行うことで起きる後出しの斬撃。その斬撃は見えなくさらに範囲が広く、斬れ味も凄まじいものである。しかし、SEの消費量が桁外れに多い部類でもあった。その威力は保証されるが、一回ごとに消費されるSEは全体の20%と燃費食いもいい所。だが、その欠点を霧崎は克服している。それは澪のG機関の模造......否、上位互換の模造品をその身体に埋め込んである。
いくら外部からの情報遮断をされているとて、内部から直接情報を得られてしまっては為す術もない。
澪の中から出た後、得た情報から改善箇所を見つけた上で作り上げたもう一つのG機関は澪の物を上回る出力を誇る。それによりこの単一仕様能力の弱点を克服したのだ。
「......切断じゃ意味が無いか」
だが単一仕様能力『虚構之道』と澪との相性は悪かった。切断面はすぐに修復され、傷跡は消え去り動きが再開し始める。グググ......と動き、左腕を伸ばし淡々とこちらを見るその様はゾンビである。もっとも、ゾンビはゾンビでも次元が違うのだが。
霧崎は単一仕様能力を使用した乱撃を繰り出し、澪を細切れにしようとする。しかし、その乱撃は体に届く前に何かに弾かれ無力化され霧崎自身に攻撃が返された。霧崎はそれを一蹴して防ぐ。既に目の前に両手に構えた槍を霧崎に向ける澪がおり、両腕をクロスさせるように振るい斬撃でそれを防ぐ。
「自動固定、予測範囲索敵......完了。回避ルート固定」
再度仕掛けてきた澪の暴風とも呼べる連撃を、瞬時に出した回避ルートに沿って簡単に避けていく。
「左腕にAIS爆烈弾倉装填」
右腕がボコリと盛り上がり掌底からは銃口が覗く。
「超爆発」
澪の懐に入った霧崎は顔面目掛けて掌底を叩き付け、零距離砲撃を繰り出した。対IS用の爆裂弾の強い閃光と爆発が澪を襲い、回転しながら吹き飛んだ。霧崎は直ぐに追撃をする為、己の武器を展開する。
膨大なエネルギーを纏う3m級のAIS仕様ランス『カーマ』、それを構え神速にて澪に攻撃を叩き込む。山に叩きつけられた澪はPICで体制を整えて、瞬時加速で霧崎に近づいた。
◆
今、世界のあらゆるIS・EOS乗り達が急いで日本に向かっていた。それは日本のとある土地にて榊澪の膨大なエネルギーとIS反応が検知され、それと同等かそれ以上のIS反応が検知された。
世界各国のIS・特定のEOS乗り達は『榊澪ともう一つの反応個体の討伐』の任務を受けて日本に向かっていた。日本政府もそれを諸諾していた。平和になろうとしている時代の節目に、強過ぎる力は要らないのだ。
それに対して亡国は拒否し、亡国側の人員に澪の保護任務を発令させた。
比較的日本近海に居た亡国ゴースト隊。その現在の一番隊隊長である三年前と比べより美しく、より強く成長した篠ノ之マドカはバイタルチェックを済ませカタパルトデッキに向かっていた。
「全く、あの馬鹿......反応があるのは分かってたが生きている事ぐらい連絡しろッ!」
「マドカ大佐!亡国ロシア基地よりお姉ちゃんの部隊......更識部隊が、中国基地より凰部隊、日本基地より滞在していた福音隊が先行しているようです!」
「アイツら......分かった。それと、大尉は止めろと言ったはずだぞ簪少尉?」
「それはそうとして、さっさと行きましょうお二人方?
今は早く榊君の保護がせねばなりません!」
マドカ隊に所属するのは専用IS『打鉄弐式』更識簪少尉、専用IS『ラファール・リヴァイブS式』山田真耶中尉である。IS学園から脱出し、亡国に合流した後からずっとゴースト隊に所属し続けていた。
『一番隊出撃して下さい。』
「行くぞ!」
「「はい!」」
◆
澪との戦闘が始まり『既に30分』経った。未だに何があっても喋らず、ただ淡々と攻撃を仕掛けてくる澪に霧崎は戸惑いを隠せずにいた。
「このっ、鬱陶しい!」
「■■■!」
気味が悪い。単純にそう思う霧崎だが、幾ら目的の為にやって来た事が悪だとしてもこれは果たして善からなる行動なのかと疑った。自分が悪だと理解していても目の前の澪が善の立場だとしても......と、考えていた時だ。澪の動きが更に加速し、その体の表面に歪みが出始めた。
G機関から抽出されるエネルギーには幾つかの特性がある。その中にエネルギー自らに重力作用が働き、高密度にすれば空間を曲げることさえ可能なのだ。それ故に機関内部にある重力緩和機構とISのPICによる作用で、何重にも和らげた上でエネルギーとして使用している。
故に、この現象は高純度のエネルギーが溢れかえっている事の表しなのだ。霧崎が使用するG機関から抽出されるエネルギーにはこの作用は────無い。余りにも危険すぎるこの特性は、下手をすれば己に牙を向く。それ故にその特性を消す程の緩和機構を付けたのだ。
澪は掌底から荷電粒子砲を放ちそれを霧崎は回避した────のだが、その放たれた光線に引き寄せられたのだ。
「あっっ、っう......光線を中心に重力作用で引き寄せたの?」
無理やり直撃され溶けた右肩を直しながらそう言う。
霧崎は澪の動きが加速し、計測されるエネルギー量が膨大になってきている事に危機感を感じていた。周辺地域は幸い無人の街と森だけなのでそもそも人が居ない。だが、先日まであった森は見事に更地になっていた。
しかし、10km圏内に次々にISとEOSが集ってきている。霧崎は幾ら己が強いからと言って、澪と戦闘している最中に邪魔されるのは面倒臭い......だがそれを防ぐ手段が無いのだ。
メキメキ......
澪の非固定浮遊部位の翼からそのような音が漏れ始め、数秒の内にその翼の節々が拡張され一回り大きくなった。始めから澪の目から出ていた赤い液体もさらに溢れ出す。ヘッドギアと同化していた頭部装甲が弾け飛び、その下にあった爛々と真紅に輝く装甲が顕にされる。
最終段階フェーズ2移行
限界時間が半分を切ったことで、枷が外されたのだ。
そんな時、この場より1km範囲内までISとEOS混成部隊が到達していた。霧崎は聞こえてきた開放回線で、この場に来た連中が澪側の者達だと理解する。
「澪っ、アンタ何処に行ってたのよ!」
「やっと見付けたと思ったらヤベェなこれ」
「榊君、君を保護しに来ました!」
澪は仲間の声など既に聞くこともないと言うのに
「■■■■■!」
澪は頭部の輝く装甲から一筋の光線を空高く撃ち放つ。そして、それは周辺地域に絨毯爆撃の様に降り注いだ。澪からの攻撃に虚をつかれ動きが鈍った澪側の人々は、その攻撃を何とかギリギリの所で避けた。
霧崎はその間にも迫り来る澪の攻撃を何とか避けながらも注告のつもりで開放回線で喋る。
「貴方達が何のつもりで来たのか知らないけど、もうそこの彼には私を殺す以外の事は出来ない。」
「何をっ!?」
「彼は私を殺す為に、復讐を果たすために『全てを捨てた』のよ。
精神・魂・意識......その全てを失って、今ここにいる。私を殺す事を邪魔をするような人が現れれば、纏めて殺そうとする。そうでしょう?」
澪がもう1度先程の攻撃を放ち、また光線の雨が降り注ぐ。もうこの地域の地上は爆撃にされされ、溶かされて隕石が落ちたかのような大穴になっている。霧崎は光の雨を掻い潜り、その胴体にランスによる一撃を与える。その一撃は澪の胴体を貫通し、血のようなエネルギーが吹き出す。ランスを引き抜こうとした時に違和感を感じ、その理由に気付いた。
「いつの間に......?」
四肢が半ばまで切断されてたのだ。霧崎は直ぐに修復を開始するが、瞬間的な速さで直る筈なのに────二秒、三秒と時間を掛けても半ばまでしか直らない。
その間にも澪は槍を引き抜き、それを霧崎に対して投げ返す。その剛力と圧倒的な速さから生まれる一撃はその身を貫通し、地面に突き刺さった所で耐久性を上回る衝撃により自壊した。
澪の攻撃は続き、光線の雨は振り続けた。それにより一人、また一人と戦場から離脱していく。そんな時、また一つ......膨大なエネルギー反応をまき散らしながらISが一機飛翔して来た。
「オォォォォォッッ!」
男性特有の低い声。だがハッキリと聞こえ、なおかつ覇気のある叫び声だ。それを聞いて誰かが言った。
「......い、一夏?」
元IS学園にいた者達はその姿を見て驚いた。
織斑一夏は澪と福音の襲撃した第2次IS学園襲撃事件の後、その姿を世界から眩ませ生存不明状態だったからだ。そしてそのISだ。以前一夏が纏っていたのは『白式』という白を基調にしたISであり、今の様な銀色に輝いてはなかった。そして、表示された名前は『夏の思い出』
「単一仕様能力『儚き一時の夢』起動!」
一夏はサマーメモリーの単一仕様能力を起動し、頭部装甲が展開された後にその銀色の体がさらに強く光り輝く。光は降り注ぐ光線に触れ、その光線を弾いた。無論霧崎に飛んで行く光線は除く。
「ここにいる亡国所属のIS乗り・EOS乗りに通達!
全機、全力で此処から撤退しろ!」
一夏はサマーメモリーの単一仕様能力を発動させながらそう叫び、すぐ様数人から「何故だ!」と言われる。
「開放回線を聞いて、事実を認めたくないのは分かる。だが悪いが今そこに居るのは榊澪という人間は『外殻』だけであり、中身はもう何も無い。
意思がなく、魂もない。正真正銘......中身はカラッポで外側だけ澪の『外殻』なんだ。もう俺達のことさえ分かってない。いや、そこの奴以外は人としての認識さえ無い。」
「でも、一夏はどうするの!?」
「いいから逃げ、ぐっ!?
俺の単一仕様能力が持つ間に......!早く!」
一夏の必死な説得に応じた亡国メンバーは、急いでこの場から離脱を開始した。だが、離脱するメンバーに対して澪と霧崎が光線と射撃を放つ。しかし、それを一夏の単一仕様能力で防ぐ。
「澪は構わんが......アンタは!」
「あら?私の射撃を防げるのね......「■■■!」ぐっ!?」
「うおォォォォォォ!」
澪の根源たる敵
世界最強の弟
復讐に身を落とした者
最後の戦いは混沌を極める。
次回予告
願いの果て
そこに見るのは何か
次回=復讐者の果て【後編】=