一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結)   作:A.K

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怒れる復讐者

その人生に喝采を

その身に永遠の安らぎを────


最終話:破壊の英雄

 日本にて行われた破壊者と霧崎千切による最終戦闘。

 それは1日の中の一時間だけであり、されど一つの地域の山や朽ちた街を全て消し去り更地に変えた。 そのたった1時間の頂上決戦の同時期、世界中のエネルギーセンサーがこの両者の反応を捉えており、計器が完全に吹っ切る程のそのエネルギー観測地は日本。それにより亡国と日本政府は対応に追われた。

 エネルギーは1時間を経ったあとに消失し、後日調査結果を両者は世界に向けてこの件をこのように伝えた。

 

 

 今回の件で確認されたエネルギー反応は榊澪と、元IS委員会委員長である霧崎千切の両者のものである。現場に急行した当時のIS及びEOSパイロット達の事情聴取から、元々戦闘が起きた土地に霧崎千切が潜伏しておりそれを榊澪が月面から発見し戦闘が行われた。

 榊澪も霧崎千切も最後の発見から目撃情報が無く、この衝突を未然に防ぐことは不可能であり、通常ISや改良型EOSの全防御機構を貫通する攻撃の前に、現場のIS及びEOS搭乗者達は手足が出せないでいた。両者の一度の攻撃が戦略兵器級のものであった為に、我々は現場の搭乗者達の生命を優先して待機させた。

 戦闘は榊澪が勝ち、霧崎千切を捕縛した後地球圏から脱出。地球圏脱出を確認した数十秒後に地球圏から離れた宙域に強烈な爆発を起こした後に両者の反応は途絶え、両者のいた宙域がその後より異常な空間湾曲を起こした。その結果から両者を死亡扱いとする。

 

 

 これが両者の出した結果だった。

 あの後、束が自らISを制作し直接その宙域に向かったが、その宙域は辿り着いた時には目視出来る程に宇宙空間が湾曲しており、立ち入り禁止宙域化としていた。だが、束は諦めずにISのセンサー・コア反応・コアネットワーク......全てを繰り出し探しだそうとしたが反応は捉えれず。結局その宙域には異常な宇宙の景色が広がるだけ。

 束は地球に帰還した後、澪の関係者達にその事を話した。榊澪は確実に死んだ────と。 

 関係者達はそれに対して、多くの者達は悲しみを表した。しかし、少数の......澪が自身を化物だと言い続けてその身を傷続け、勝手に死んだ事を怒る者達も居た。地球全体では、澪が世界を救った英雄だと賛美される中の出来事だ。

 

 

 時は流れ、世界からISが原因で発生した男女差別は消え去り、今やIS技術は様々な分野にて多大な貢献をしていた。現在世界中で使われているISには束が配布したISコアであり、今まで言われて来たISコア......今では『真性ISコア』と呼ばれるのだが、霧崎が開発に成功した量産型ISコアの改良発展型の第二世代型量産ISコアを搭載している。

 量産型ISコアには無かったコア人格を二世代型コアは有しており、コア人格も搭乗者との意思疎通を可能としている。

 

 

 人は────人類は遂に宇宙にて新たな拠点を得た。

 終戦から10年後、ISと世界中の宇宙関連企業による一大プロジェクトである『M計画』────正式には『ムーン・フロンティア・プロジェクト』と呼ばれる月面にて人類が住める都市を築き上げる計画が成功。

 この月面都市は宇宙放射線への対策も、落下する可能性があるだろう隕石への対策も出来ている。IS大戦にて生まれた新技術における特殊装甲剤、大量生産が可能となった第二世代量産型ISコア、宇宙における空気の確保、宇宙に向ける人々の想いが生み出す情熱による革新が......あの惨劇を生き延びた全ての人々の手によって完成したのだ。

 そして、人類は更なる新天地を目指す。宇宙という果てしない夢の世界を突き進む為に、IS技術を使用した外宇宙を目指す『外宇宙航行艦』の建造も開始され始め、人類の未来は眩いものである。

 

 

 

「大戦が終わって10年。

 世界は変わったぜ......澪」

 

 

 そこはあの澪が霧崎と戦った跡地。

 あの後、この跡地は平和公園として整地され、その整備維持費は多くの国から出されている。今やあの凄まじい戦闘の跡はない。そんな地に一人の男が、その銅像の前に座り込んでいる。

 

 

 

「亡国の人達はみんなの為に頑張って今日も生きてるよ。 澪の行いの果てに、世界は前よりもしっかりとした世界になった。遂に月に都市も作って......凄いぜ。

 だから俺は────織斑一夏は、澪のお陰で平和になった世界をこれからも見守っていくよ。」

 

 

 その男────織斑一夏は、そう言って拡張領域から花束を取り出しそれ銅像の前に置く。そして、その織斑一夏の背後には二人の女性が立っていた。

 

 

「本ッ当に澪は色々な物を破壊したよな。

 俺を含めた世界中の人々の精神性を、男女間の亀裂を、世界を。全て、全て......破壊したから世界は良くなった。

 一方間違えれば滅びの道に進んでいたけど、なんとか世界が良い方向に向かってくれて良かったよな。」

 

 

 一夏はそう言ってから周りをぐるりと見渡す。

 

 

「見てくれよ。ここは澪の為に作られた平和公園だってよ。あの時、世界中で最も嫌われた人間だった澪が今では世界で最も尊重され敬愛されてるんだぜ?

 逆に俺は今ではほんの少しだが、殺そうとしてくる奴らがいるけど......まあこれも俺の罪だけどな。」

 

 

 この公園一面に咲くは今はシオンという紫色をした花が、季節が秋になればイチョウが公園を彩る。花言葉は......シオンは『あなたを忘れない』、イチョウは『鎮魂』の意味を持つ。

 人々は願っているのだ。激動の時代を、波乱の生涯を駆け抜けた一人の男に安らぎを。そして、その活躍により世界を破壊した男を忘れないと。

 

 

「俺は行くよ......じゃあな。」

「行くわよF。じゃあね澪、また来るわよ。」

「今度は私もなにか持ってくるよ榊よ......さて、行くぞF。」

「分かってるよH、R。」

 

 

 三人のその姿を上空から見下ろす者達が居た。

 

 

「世界は多くの犠牲の元に救われた。」

────だけど......まだ

「世界は定まりきらない不安定な状態。もう少し見てみようか。彼が居た、破壊の自分が居たこの世界を」

────もう1度道を踏み外したら......そうしたら......

「そうしたら?その時はもう今のこの世界の人々に委ねるしかないさ。」

────ですが!

「それが我々だ。

天上の存在である神が今の人間に手を出さないように、人以上の存在である我々も手を出してはならないんだ。だからこそ、我々はこの世界を見守るんだよ。」

 

 

 

 

 

 澪のその生涯はほんの少しの人間にしか知られていない。澪の分かっている時点の情報公開も、澪と霧崎の戦いが終わってから2年も後のこと。

 その時になり、日本政府は榊澪という人間は一度日本政府により戸籍から何もかも消されていた事を公表。その一連として、榊澪と名乗る前に使っていた本名と住んでいた市町村、その市民達の情報消去に霧崎千切と数代前の日本政府内の特定の人々がこの件に絡んでいた事も公表した。

 無論、これには世界中から非難が殺到した。既にこの件に絡んでいた人々はその多くが死亡し、数名だけが逮捕され裁判にかけられる事が決まった。

 澪の人生はその後、謎の人物『M』という者により本にされ世界中の人々にその生涯が伝わった。

 ISによって全てを奪われた一人の男の復讐談として、長期に渡り語り告げられる。そして、全てを破壊してこの世界を導いたとして近代の英雄として讃えられた。ここに本人が居たら苦笑しながら「俺は英雄じゃない」と言うだろう。

 

 

 

 何処までも続く宇宙に上がる夢

 輝かしい未来に溢れた黄金の時代

 もう何処にも存在しないと言われたそんな夢

 

 だが......それを破壊する者が居た

 

 絶望と悲劇の涙を流すだけの時代を

 醜く陰湿な闇と虚構の時代を

 黒く戯れた偽りの平和を 

 その手で破壊する

 

 時代を塗り替えた者『破壊の英雄』

 英雄の名は『榊澪』

 

 その人生を復讐で満たし

 後悔など何一つ無く

 その短い人生を駆け抜けた

 

 

 

 

 一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活

   ────────完────────

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