一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
本編完結以降、更新予定はありませんでしたがこちらの不手際で本編の途中で挟むものとかが未投稿のまま終わらせてしまい、これは勿体ないと思ったので投稿します。
EX幕となります。
EX01⋮罪世界
私は篠ノ之箒。
篠ノ之家の次女であり、世界に名高い『天災』篠ノ之束の妹だ。
姉はISという女性にしか使えない強化スーツ......という宇宙に行く為の物を作った。
私には好きな男が居る。とても大切で、私を助けてくれた男だ。その名は織斑一夏、その姉である織斑千冬こと千冬さんはISにて世界最強と呼ばれる存在であり私が通うISについて学ぶ世界最高峰のIS専門学校であるIS学園、その一年一組の担任でもある。
「千冬......さん?」
某日。突然のIS学園占領事件が発生、その数日後の明朝午前5時あたりだろうか。大規模な戦闘がIS学園の到る場所で起きた。私は寮の特別室に学園を占領しにきた武装した委員会の女達に監禁され、その部屋の窓から外の景色を見ていた。
この場所からはとある人物達の死闘が見れたのだ。
一人は千冬さんで、カスタム仕様の打鉄を駆っていた。
もう一人は、2番目のIS男性操縦者である榊澪だった。その身に纏うのは異常なISである『名前無き破壊者』と呼ばれる機体───だったはずだ。あの男は何かと一夏に対して強く当たり、馬鹿げた程の威圧感をほぼ常に周りに晒している為に学園内の生徒から異常な程に嫌われていた。私も奴を嫌っていた者達の一人だ。
「嘘......だ。千冬さんが、そんなわけが!?」
両者の戦闘は異常だった。その全てが通常のISを凌駕し、IS出力試合専用設定解除によるリミッターの解放による本気の殺し合いに息を呑む。
IS学園から暫く経った榊澪の動きは、まだ在学中だった頃よりもひと目で分かる程に精錬され、機体も至る所が変化していた。最初は榊澪が圧倒していたが途中で千冬さんがくり出す猛攻撃により推されていたが......異常な程に強くなった榊澪の手に押し返されていた。
そんな時だ。何故か一夏が突然現れたのだ。
千冬さんはそれに驚き、その時に隙が出来て榊澪に虚を突かれた形で襲撃を受けた。一夏は千冬さんの目の前に立ち荷電粒子砲を放つ......しかしそれすら榊澪はその手に持つ剣で四散させつつ真っ直ぐに速度を落とさず突っ込む。私が一度瞼を閉じたその間に何が起きたのか、千冬さんが剣で刺し貫かれていた。
「遂に死ぬんだあの女。」
「っ!?」
私以外誰もいないはずの部屋から、私以外の声が聞こえた。それも、酷く聞き覚えのあるその声が。
「姉さん......?」
「ひっさしぶり〜箒ちゃん元気?」
私の姉である『天災』篠ノ之束が、いつの間にか音も立てずにこの部屋の中に侵入していた。
「ど、どうやって此処に?
廊下には見張りがいた筈では......」
「この襲撃の対応でこの寮にいた奴らはほぼ全員駆り出されて、その殆どが死んだよ。
数人だけこの部屋の周りにいたけど、束さんの手でこう......トンッとやって気絶させたよ。」
まあいいか。そう言った姉さんは私を突然担いだ。私は姉さんが何をしてるんだと一瞬思考を停止している間に、その身はいつの間にか消えた窓を超え空を舞っている。地面に落ちる......そう思ってたがこれまたいつの間にか先に落下するだろう地面にて待って居た姉さんにキャッチされる。
「ちょっと走るからね」
「えっ?ちょ、きゃっ!?」
物凄い勢いで景色が変わる。どう見たって60kmは出てるのでは?いや、それよりもだ。
「姉さん!何故貴女は今ここに来たのですか!?」
「ん〜?」
「先ほど千冬さんが榊澪に刺されたんですよ!?
貴女と千冬さんは親友でしょう!?」
「ん?ああ。もうアレは親友でもなんでもないよ。
腐り切ったアイツはもう親友じゃない。」
「でも一夏が!?」
「いっくんは大丈夫。彼が必ず生かしてくれる。
時間が無いから説明するよ。私がここに来たのは箒ちゃんを救う為、それともう一つ。暮桜のISコアを取りに来たんだよ。
私の娘達をこれ以上好き勝手に使わせない為にね」
姉さんは空いてる手にほんのりと光るISコアを取り出して見せ、すぐ様懐にしまった。
「ちょっと口閉じて。舌噛むよ。」
学園の森林箇所に入り、走り続ける姉さんの前に身に覚えの無い建物が見えて来てすぐ様その入口まで辿り着いた。
「アレは『特施』って呼ばれるこの学園において、特定の人物にだけ存在が認知されている特別な施設だよ。
地下には巨大なIS訓練用の施設があって、榊君はここでこの学園の生徒会長と特訓をしてたんだよ。それも、入学した次の日から既に行ってた。ここはある意味あの子にとってISの基礎になった場所なんだよ......下ろすよ。」
下ろされた後、私達は施設の中に入った。
「一応非常時だからこうして入ってるけど、普通なら入った瞬間警報機鳴り響いてその変に仕掛けてある迎撃射撃の罠が起動するんだけどね。」
「では何故ここに来たのです?」
「ここにはIS訓練施設や特別寮なんかが設備されてるんだけど......っと、そこの地下行きのエレベーターのスイッチ押して箒ちゃん。 何故か危険印が入ってても戸惑わないでそのまま押してね?」
指示通り私はスイッチを押す。するとエレベーターが来て私達は入るが、その中の広さが異常だった。中は人が20人程が入れそうな大きさで、中には銃火器の類が壁に数多く設置されていた。姉さんは中に入り、一番下のスイッチを押すとエレベーターは普通に扉を閉めて下に降り始めた。
「ここは緊急避難用の特殊移動の役割を持ち、なおかつ敵の迎撃用武器の貯蔵庫でもあるんだ。先にここに居た人達もこの施設の中にある幾つかあるこのエレベーターで同様に最下層から逃げたんだ。」
「姉さん......貴女はこの最下層に何があるか知ってるんですか?」
「うん。何せこの施設の至る所の設計と建築はこの束さんが務め、IS技術を積み込んだ世界で一番安全な脱出経路を作り上げたからね。ここから逃げる善の人々の為に。」
姉さんの言ってる事が分からなかった。姉さんは完全に身内か気に入った人物達にしかその優しさを見せること無く、他人に対してはどこまでも排他的な人だ。そんな人が他人の為......?
そうこうしていると最下層にたどり着き、その眼前に広がる光景に目を奪われた。
「これが私が開発した2人乗り人参ロケット。
水中でも空中でも無音で!光学迷彩にて視認出来ない!マイクロ人参ミサイルにレーザ砲台をも搭載した最強最速の人参だよ!」
人参だった。まさかの機械仕掛けの大きい人参がそこにはあった。
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姉さんから聞いたものは信じられないものばかりだった。
世界最大の国際的非公式組織『亡国企業』に、その旗艦『ゴースト』。IS委員会と女権団の悪質な犯罪の数々。そして、全ての始まりである『白騎士事件』の真相とその発端、千冬さんと姉さんの犯した罪の数々。
訳が分からなくなった。今まで信じて来た者が、結果の大半が悪であると。あれほど嫌っていた榊澪の行動こそが一つの正義であり、今の世の中の解決策の結果だと。この時代を動かす悪意の被害者達の存在。
それに加担していた織斑と篠ノ之家の罪......知らない内に人が死ぬ原因を作り上げていたと知れば混乱してしまう。
私が現在いる所は亡国企業旗艦ゴースト。その中の姉さん専用のラボで、その中にある休憩室にて説明を受けてた。
「姉さんは何故ここにいるんですか?」
「......私とあの女が起点で起きたこの時代の被害者、その全てに対する贖罪だよ。」
「それは榊澪が使うISもその一つなんですか?」
私の言葉に無言の姉さんに、今までの怒りをぶつけるように言い放つ。
「そのISによって千冬さんは......!
貴女はそう言っても結局の所人を殺してるじゃないですか!?
そのISで!私も家族と会えなくなり、一夏とも別れてしまった。結局貴女は今も昔も何も変わってない!」
「────うん。確かにその通りだよ。」
「なら!」
「でもね箒ちゃん。前と今じゃ確実的に違うものが私にはあるんだよ。それが何かわかる?」
唐突的な問に何も言えなくなる。私から見れば今も前も変わりがない。いつまで経っても周りに迷惑をかける天災の時の如き人間だ。
「それは『罪悪感』だよ。
それが有るか無いか、それだけで人は大きく変わることが出来る。私がそうだよ。とはいっても信用出来ないと思うけどね。」
罪悪感。それに対して私はあっと思う。確かにそうだ。私が見てきた姉さんはその全てが罪悪感を感じないように振る舞う、無邪気な子供そのものだった。一旦心を沈めよう。
人は成長と共に精神性の向上により罪悪感を覚える。姉さんはこれらの一件でこれを得たというのか......?
「落ち着いて聞いてね。
手はなんのためにあると思う?」
「......手ですか?」
私が考えていると姉さんはそう言う。
「手は何かを作り、自分や誰かを傷付ける事が出来る。そして、悲しみを生む。この時代の多くはそれらが占めて私もこの手で多くの悲しみを作り、広げたんだ。
だけどね。私は榊君を見て、多くの人達に教えて貰った。私は他人を求め、そして分かったんだ。
手は誰かと手を取るために。
手は悲しみを生むだけではない。
手は誰かと繋ぐために。
手は決して傷付けるだけではない。
手は誰かと友情を、人生を作り上げる。
手は繋がりを断ち切り、悲しませるだけではない。
手は、決して悲しみだけ生むだけじゃないって分かったんだ。」
「っ......姉さん」
「箒ちゃんが私に怒る理由は分かってるつもりだよ。
それだけ私がやって来た事は許され無い事だし、その罪を永遠に背負い続けるって決めてるから。」
一体いつからだ。姉さんがここまで変わり、心境が変化したのは。これでは私が子供じゃないか......いや、実際まだ子供と呼ばれる年齢ではあるが。
「姉さん。」
「なにかな箒ちゃん?」
「私はこの話を聞いてもやはり貴女を許す事は出来ません。貴女のせいで家族は崩壊し、一夏とも一度は完全に別れてしまった。」
私の目の前にいる姉さんは見るからにして元気が無い罪人そのものだった。
「うん。だからこそ私が......「だからこそだ姉さん。」......?」
嫌いだった。私の人生を滅茶苦茶にしたISを造り上げた姉さんを、今まで私に対して笑顔で何かしらの物を与え続けた姉さんに対して私は目を合わせる。こうして自分の意思で姉さんと目を合わすのはもう何年ぶりだろうか。
「その贖罪。私にも手伝わせて頂きませんか。」
初めてだった。姉さんの顔がニッコリとした笑顔じゃなく、悲しみと拒否の表情を浮かべたのは。だからこそ悲しくなった。だからこそ私は心の底から助けたい思ったのだ。
「駄目だよ!?これは箒ちゃんには関係ないし、もし背負ったらこれから一生辛い事になるんだよ!?」
「何を言ってるんです?私は篠ノ之箒、篠ノ之家の次女にして篠ノ之束の妹です。」
初めてだった。ここまで姉さんを助けたいと思ったのは。幼い頃から、笑顔で私を助けてくれた。笑顔で、いつもニコニコしてて、どんな時でも私に対して味方でいてくれた。ISの事で拒否していた私の誇りであり、大切な家族。
「だって!これは私のっ!」
「姉さんは私に様々な事をしてくれました。泣きそうな時に心を支えてくれ、一夏とどう接していいか分からない時アドバイスを......
だからこそ、今度は私が姉さんを支える番です!
私も、姉さんの罪の一部なんです。だからこそその罪を、私にも背負わせて下さい!」
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あれからどれ程経ったか。
私は正式に亡国企業に入隊し、ゴースト隊に所属する事となった。最初は嫌な目で見らる事を覚悟していたが、隊の皆は「認識してるのなら大丈夫だ!」「頑張ろうぜ!」「よろしくね!」等罵倒されることを覚悟していたが逆に歓迎のムードでたじろいだ。
そして私は姉さんを支える為にその罪を一緒に背負い生き続けた。その為に力を、精神を鍛え鋭く強化して来た。
戦争が起きた。
IS大戦と呼ばれる後に終末大戦とも呼ばれ、人類史上最低な戦いが。
姉さんは人目のつかない私が住む姉さん専用のラボで盛大に泣いていた。私のせいだ、ごめんなさいと。
私は姉さんから受け取った力がある。
第4.5世代型IS『紅天』
本当は『紅椿』と呼ばれるISだったらしいが、榊澪......澪の機体のシステムを一つ搭載したのだ。FCCと呼ばれる感情による力を直接出すことが出来る特定才能を持つ者だけが扱える物だ。
私は鍛えた。単純だが感情の『怒り』に関しては私は通常より抜き出た物があった。だからこそ、それをコントロールする事が可能になったからこそ姉さんは搭載したと言った。
私はこのISを『誰かを守る為のIS』と捉えている。
私はこのISを持って贖罪を行い、誰かを救う為にこのISという刃を振るう。姉さんの『手』が届かない所まで、悲しみを生まないために。
私は世界を見た。
そこに悲劇があった。
そこには確かにISによる悲しみと、憎しみが広がっていた。見たことが無い悲しみの世界があった。
ISを使って人は殺されていた。
姉さんがかつて言っていた。
ISは宇宙に行く為の翼で自分の娘だと。
ISを使った同性たる女達が無勝手に人を殺している。
許せなかった。
姉の夢がこんなにも汚されている事に。
同時に理解した。
これが澪の見て来た人生にて、奪われた世界だと。
全てを奪われて来た澪の世界だと。
罪の世界だと。
「これがあいつが見て、生きてきたものなのか!?
巫山戯るな!!
ああクソッ、これ程の世界を生きて来た者を私はッ」
やることが増えた。
罪を理解し、分かってしまったからこそ決意しなければならない。
「やってやる!
もうお前の様な奴をこれ以上出さない為に!
私はこの刃を振るうぞ澪ッ!」
私は振るおう。
この刃で世界を、ISを、姉さんを守る為に。
これ以上アイツの様な被害者を出さない為に。
「一夏、お前は今何処にいるんだ......?
私は戦い続けるぞ。罪なき誰かの為に。」
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