一般人15歳で〝ちょっと〟変わった彼のIS生活(完結) 作:A.K
その意思がある限り。
意思は光である。
だからこそ
宇宙に星が有るのだろう。
光たる星は未来。
それ故に私は手を伸ばし
掴んだその手を離さない。
ISコアから黄金の波動が放たれた。
それは束をすり抜け、RAYを弾き飛ばす。
束は初めて見る現象、それと共に検知される圧倒的エネルギー値に驚く。軽く検知されただけでも超新星爆発を優に超えるエネルギーが、コアから今この瞬間も解き放たれている。未開ににて未知の光景が、束の目の前で起きていた。
コアは空高く飛び立ち、一際強く光り輝いた。余りの輝きに束は勿論RAYであっても目を逸らした。
「俺は」
そう頭上から声が聞こえる。
それはまた語る。
「俺を想う人の為に生きる。
罪も咎も全部宿して前へ行こう。」
各所に黄金の結晶、白い装甲の肌。
人を、ISを超えたRAYをも超える。
しがらみを超え、呪怨さえ吸収して前へ進む為の身体。
「その前に邪魔をするお前がいる。
だから、ぶっ倒して俺は未来へ行くッ!!」
◆
原点は新生した澪の姿を見て、今まで感じたことの無いゾクゾクする程の感謝を感じている。何故か?
「見た事ないっ!!
俺も見た事のない未知の姿!!!!」
数百世紀先の時代でも見た事のない、計測出来ない文字通り『未知』の存在。原点たる自分から派生した世界だとしても、そこから自己を超えるかも知れない己自身が出たのだ。喜ばないはずがない。まあそれでもまだ自分の方が上だと確固した自信と、直感が働いてるのだが。
「フィー、博士を此処に」
「うわっ!?」
間もなく始まる天井知らずの大決戦から束を護るべく、全力の防御フィールドを展開する。
「博士も罪な人だ。
あんなやり方では誰だって同意するしかないじゃないか。いつからだい?」
原点は割と本気で気になっていた。
色々な世界を渡ってきた。その中でもこの世界線のような破壊と憎悪的な己が居るような世界線で束が澪と結ばれる事は見たことが無いし可能性は皆無であると判断していた───────今までは。
平和、共闘、混沌.......破壊世界線以外でなら確認は出来ていた。しかし、こうして1例目が出たことがあまりにも興味深かった。
「──れー君に、初めて会って私の発言に肯定してくれた時だよ。あんな真っ直ぐ、ストレートに言ってくれたのは初めてだった。親からも無かったのに、れー君はちゃんと言ってくれた。赦してくれた。こんなの好きになっちゃうじゃん!!」
恋バナとかいう甘ったるいものにあまり耐性がない為、砂糖の山を飲むような甘ったるさと思いの外純粋な気持ちを話され原点は戸惑った。
篠ノ之束はその他の追随を許さない圧倒的能力により、あくまでも一般の認識領域から出ない人間では受け止めることが出来なかった。1を知って1を生むのが一般人であるなら、1を知って100を生むのが『天災』篠ノ之束である。元親友たる織斑千冬も近しい能力を持つ故からであり興味深いだけ、正面から受け止めれることは無かった。それ故負い目が有り興味深く己に対してドストレートな発言をしてくれる澪という存在、それは余りにも効きすぎたのである。普通ならそれで!?となるのだろうが、そこは天災だからこそなのかズレていると考えればいい。
「あー、もう始まるから。そこから先は本人に言ってやりなよ。」
高まる力の波動。
黄金色と暗い闇の黒色。それが今、弾けた。
◆
金色の流星が月空を駆ける。
それに併走するように全てを塗りつぶす闇が駆ける。
「っおお!!!」
「っ!?」
金色を纏う拳が漆黒の脚と衝突。それだけで星が崩壊するエネルギーが放たれ、世界に亀裂が入る。ただでさえ不安定になり閉じようとしていた世界が、戦闘により最早維持する事が出来なくなっている。ただ澪は束が原点によって完璧に護られているのを理解してるから、その力を大いに振るうことが出来ている。
「
円と十字架を合わせたような浮遊固定部位『サンクロスユニット』から、金色の爪が射出される。黄金の風は夜の闇を払うように明るく照らし、邪悪なるものを蹴散らす。
「壊滅廻槍」
それは滅びそのものだ。エネルギーや空間諸共消し飛ばす滅びの一撃。滅びの螺旋と黄金の風が衝突。余波で空間の歪みが強くなる。さすがに不味いか?と考えた澪に原点から『この空間の維持は任せとけ』と通信が入り、ギアを更にあげた。
互いに光速1歩手前。しかし秒間数十回の撃ち合い、分間数百もの攻防が行われる。
「てめぇが俺から産まれ、俺を本当に心配していたのは理解していた。」
「っ.......そうです!貴方はもう充分苦しんだ!悶え、地獄の業火に焼かれ.......血の獄で蝕まれ続けていた!誰にも分からなかった、今の今までその心の底を誰にも覗かせなかった!
その身を焦がす程の怒り、痛みに貴方は何時も苦しんでいた───なのに、なぜまだそれでも前へ進もうとするのです!?貴方はもう立ち止まって休むべきなのです!!」
黄金の一撃と漆黒の一撃がぶつかり、世界が激しく揺れるがそれでも互いに止まらない。止まれない。
「それが本心で言ってる事だって分かる。
確かに俺はもう止まるべきだった。そうだったんだよ。」
「そうです!!もう貴方はッ!!!!!!!!」
「でもまた、俺は前へ歩む理由が出来た。」
「っ、そうやってまた傷つく気ですか!?」
一振で月程度なら簡単に切れるほどの黄金光剣、同じ様に月程度なら全てを飲み込んで消し去ってしまう闇の剣がぶつかった。
「貴方は無理やりでも、意識を無くしてでも止めないとずっと傷つく!確かに貴方が私の存在証明固定の必須要素であるからというのもあります、しかしそれ以上に貴方は少し動くだけでも結果的に致命的な迄に傷つく!!この世界で1番貢献した人間が、この世の誰よりも傷付くのは私が許せない。
だから私は貴方を何があろうと、何をしようとここで止める!!!!」
苛烈な閃光が走り、盛大に爆発する。
黄金の流星が、闇の彗星とぶつかった。
「それでも俺は進む。
その気持ちも、全部宿して俺は行く。」
◆
どうしてなのか。
私は目の前にいる己のオリジナルが理解出来なかった。
オリジナルの細胞が持つ記録、オリジナルが持っていた記憶の始まりから終わりまでの情報。その中にあったのは痛みと絶望ばかりだった。絶望する前の記憶は憎悪によって、復讐の炎によってその大部分が破壊尽くされていた。
同情した。哀れんだ。悲しんだ。
これが生物が持つ一生であっていいのか?
ダメだダメだダメだ!!!!!!
こんな状態なのに前へ進んで、結果的とはいえ世界を救ったのに一人だけこんな目に遭うのはあってはならない。だから閉じ込める。私の中に。
だから───────
◆
「眠れ、黒曜大黒天宙.......!」
俺の目からしてもヤバイとわかる。
闇みたいじゃない。今俺の目に映る黒いモノは間違いなく『漆黒の闇』だ。空間すら食い潰す、これはさすがにやばい。どういう訳かRAYの体各所が光の反射をしない程......黒に染まる。そのままRAYから溢れ、世界を埋める終末の波を回避する。しかし、意志を持った様にその全てが俺に向かって来る。これは正しく単一仕様能力だ。ここに来て能力を開花し、その牙を向けてきた。
RAYの言葉は本心であると理解できている。俺を思っての行動であるというのも。だからこそそれに感謝しよう。その想いに応えよう。
新型ISコア『神の心臓』、従来通りだが出力開放状態の『G機関』。
それに連なる第3の動力を起動させる。第3の動力である体の各所にある黄金結晶が眩く光る。
「『黄金希望機関』起動ッ!!」
『黄金希望機関』、それは感情・精神反応エネルギー出力超高密度結晶機関。正と負の感情、その両方を取り込み超弩級エネルギーを精製する。G機関の様な永続的に超高出力では無く、精神や感情消費するため短期間に爆発的な勢いの出力が成される。 あくまでも名前通り正の精神や感情に超絶的な反応を示す機関であり、それによって出力は感情の昂り+正の感情により上がる。故に恒常的な超出力とはならない。だがしかし第二世代ISですらコレを取り付け起動すれば、単機で地球の大半を1時間とかからずに制圧できる程にその性能は上がる。尚その場合は搭乗者の安全は無いものとする。
既にトンチキも良い所の機関だが、それが頭・両肩・両腕・胸部・両膝.......計8つ存在する。
正確に示すと『神の心臓』『G機関』『黄金希望機関×8』をエネルギー源にして俺は活動する。今の俺は超弩級天文学的数、超新星爆発一つや十幾つじゃ済まないエネルギーを内包しているのと同じなのだ。さらに言えばこの黄金希望から生まれたエネルギーには一つの特性が存在していた。
「うおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」
脚部にエネルギーを纏って更に金の戦爪をその上から覆い、高く高く飛翔する。 舞い上がり濁流の如く迫る破滅の闇を見て、その向こう側にいるRAYに飛び込む。
それまさに地に落ちる黄金彗星の如く。
「極星光!!!!!」
黄金希望機関から生まれたエネルギーは、それまで破壊特化であった負の特性に対し創造に近い正の特性を持っていた。このエネルギーを転用すれば物体の補填修復、簡単な物体の創造等が可能になっている。サンクロスユニットから展開される金の戦爪はこれにより生成され展開される。
だからこそ、今のRAYにはこの力が1番役に立つ。
破壊と創造、正と負は表裏一体。ぶつかり合えば消滅、それかそれに優る方が残る。
「ぶ、ち、ぬ、けぇぇぇぇ!!!!!」
F.C.S.は今も搭載されている。更に底上げされ、その蹴りは対消滅を超え破壊を上回った。
「っ!? 」
ぶち抜いた先にあったのは空間を破りながら迫り来る黒い壁.......恐らくあのエネルギーを使用した極太ビームなのだろう。それがぶち抜いた瞬間既に目の前にまで来ていた。
「借りるぞ織斑ァァ!!」
あんまりいい思い出がない、一夏とあのクソ教師が使っていた技を真似る。手刀の構えを取り、黄金結晶の一つが融解して腕を多い結晶の刀を形成する。その上から金戦爪を多数纏い完成する。
「星震刀晶───────
星が震い、そのまま地を裂き星を一刀両断出来るほどのエネルギーを内包する。そのエネルギーを解放し、それを結晶の刀身に全て凝縮。
──────────抜刀ッ!!」
星の息吹が吹き荒れる。闇の壁とぶつかりほんの僅かに拮抗するも、難なく壁を越えRAYにそれが届───────かない。こちらが出来ることは向こうも出来る、そう言わんばかりにRAYも両腕から光剣を展開してこちらの攻撃を受け止めながら接近していた。
「必ず、貴方を.......はぁっ、止めます」
「それは出来ない相談だなぁ!!」
「っ、このわからず屋!!」
「それで結構!!」
視界に収まるRAYの体、少しだがひび割れらしきものが見えそこから光が漏れ出ている。崩壊が加速している。俺が居ないから、俺から生まれ俺そのものであったRAYは器がかけた容器のように中身が抜けていく。存在という命が。
「そこまで止めたいのか」
「ふーっ……ふーっ!!」
RAYの闇とも呼べる黒に怒りの赤が加わり、見覚えある赤黒の雷を放ち始める。もう言葉は不要、か。
「もう心配される事ない様に、俺の力を示そう。」
「────ッッッ!!!!!!!」
言葉にならない叫びと共にRAYからこれまで以上のエネルギーが溢れ、触れた周囲空間ごと破壊する。情報にある俺の───RAYの段階変化……じゃないな。アレはそういう自壊システムであって意思のある今は出来ない。
ならば、意図的な暴走か。
「……」
RAYはもう止まらない。止められない。
その為に全力全開の、それ以上の力で止めようとしてくる。ならば、こちらが力を抜いては無作法というもの。だからこそ全力で行こう。
「 イグニッションスタート!!」
今、星が誕生する。
◆
その白い肌の様な装甲、それが白色金に染る。
リンリンと、鈴のような音が鳴る。
先程までのギラつく黄金では無く、静かにそこに存在するような存在感。
「単一仕様能力『天廻・太極之星』」
不気味までに静かに発光し、正拳突きの構えをとった澪にRAYは構わず突貫する。それだけで空間が喰い破られ、世界が悲鳴をあげる。その速度により最早回避は不可能。
しかし、澪がそう呟いたその時既にRAYは空間ごと殴り抉った。それを見た原点すら一瞬何が起きたか理解出来ずにいた。幸い原点は澪の発言が聞こえていたから、自分に似た技術を使っていると理解出来たそれ故に正解にたどり着いていた。
「成程」
「何が起きたの?」
流石の束もこの一連の光景による答えに、未だにたどり着いていなかった。
「至って簡単だ。全機関のエネルギーを全て身体に回し、バグった能力上げをする.......それがあの光だ。それに加えて時結晶の力により引き出された事象干渉が果たされた。」
「んん?あの発光現象は強化形態って感じなのは分かるんだけど、事象干渉?言わいる因果逆転みたいな事をしたって事?」
束の視点では、最初にRAYが先に動いて直撃は免れなかった。しかし実際の所はあとから動いたはずの澪が放った一撃がRAYに直撃していた。
「まあそうだな。元々あったISコアの搭乗者の願いを叶えようとする行動、それがそのまま単一仕様能力として作用している。さらに機体スペックや様々な要素が加わった事による結果がこの因果逆転って事。」
「……まさかここまで至るのは予想不可能だよ。もう武器要らないとかなんなのさ!?拳で空間ごと殴り抜く!?超人バトルとかじゃないでしょ!?というか単一仕様能力ここに来て発現したの!?」
「ハッハッハ。何を今更.......この場にいる連中全員人外レベルの超人だろうが。」
束は澪が起こす現象の再現、それが出来ると思ってしまった事に白目を向きそうになる。束の中でも対消滅による応用技術はそれこそ遥か先のものだ。束からしても素材さえあれば理論上数十年先、なんとか出来るだろうってレベルである。時結晶の加工に成功してる時点で『おまえは何を言っているんだ?』となるのだが、たまたま加工出来てしまったからしょうが無いだろうとは本人の言い分である。
「面白い……俺を瞬時的に解析し、俺の中に眠るシステムの数々を把握してそこから現状生み出せる技術を再現した所か。」
「ねえ君あとどのぐらい技術持ってるの?」
「特異点系、概念再現系、天体現象再現系、次元干渉系……まあまだこれ以外に色々と。」
流石に魂魄系という魂そのものに関しては言うのを原点は辞めた。これに関しては得た世界でも禁忌と呼べる技術であった為、己の中に留めておく事にした。
「本当にそれ化学技術なの?特に特異点系とかいうの。」
「───特殊なエネルギーを媒介する必要があるが、太陽系を飛び出した人類達の技術だ。
まああの進化の徒連中には付き合ってられんが。」
原点は脳内にあの光景を思い浮かべる。
あの何処までも大きく成長していく、大いなる進化の化身とその信徒達。その技術は特異点の形成、領域支配と万物を手に操る。あの出会いは事故的なものだ。あちらとこちらの技術交換を果たし、世界の広がりを感じた。だが、あの次元世界とそれに連なる██が織り成すカオスは進化の化身と密接な関係であると思えた。……そこまで考えて原点は考えるのをやめた。あの意志に引っ張られては戻れなくなる。
「どういうこと?」
「……忘れてくれ」
アレと関係を結べば、いずれ来る宇宙そのものとの戦乱に巻き込まれる。その因果は何処まで伸びるか分からないが、これだけは己だけでいいと原点は考え再び澪に視線を向ける。
「終わりが近いな。」
原点から解析して得た技術再現。そして澪の今までの経験、神の心臓とG機関に加え黄金希望機関による可能性の未来から取得され、時結晶によって引きずり出される未知数という夢と希望の現実への変換。
それでも原点には未だ及ばず、しかし今の澪は間違いなく枝分かれした可能性存在の中で1番強い。絶望に落ち、そこから立ち直って星になった希望の光は何処までも輝き続ける。それこそ闇を払ってしまうように。
「見せてくれ、羽ばたく希望……その光を。」
◆
周りの全てが遅い。
いや……自分の周りだけ早く、速く、疾く。全てが光の様に通り過ぎ去っていく。
RAYも『ほぼ同じ』領域に入るが、俺には届かない。数値で表すならRAYが100で俺は10000ぐらい違う。それでも死にものぐるいで迫ってきている。
「───────ッッッ!!!!!!!」
もうRAYの罅割れた体は痛々しい、もう終わらせてやる。その苦しみを終わらせてやる。だから、もっと凄まじき力をみせてやる。俺の全てを解放しよう。
今の俺が持つ切り札たる、至高の一撃を放つ解放コードを詠唱する。
「神を超え」
背中のサンクロスユニットから極大の方陣が多数展開される。その一つ一つが超新星爆発同等のエネルギーを内包し、その数は目に見える範囲ほぼ全て.......数を数えることが馬鹿になる程。この一連の流れにより生まれた衝撃でRAYは10光年程吹き飛ばされる。
今の奴なら数秒は掛かる。
「悪魔を超え」
マントラを象る黄金希望機関七基から赤青黄茶緑金銀……合計7つの光が放たれる。展開された方陣も同じ様に発光し、共鳴して力が高まる。その波動だけで地球上なら世界が終わりを迎えようとする程の衝撃が発生、しかしまたもや原点から『耐えてやるから構わずやれ』と言われ続行し完成させる。
「全てを超えて頂へ」
太極に至った。
人類史上最高、原点以外の知的生命が放てる至高の一撃。完成すれば、距離も壁も関係なく目標に必ず当たり殺す拳。サンクロスユニットから俺の体を固定する為の次元連結杭が空間とその次元そのものを穿ち、放つ準備が出来た。
「天ノ至拳弓」
名の通り己の体を弓とし、拳を矢とする。
引き絞った拳に宿る力、それを殴る様に振るうと宿る力がRAY目掛けて飛んでいく。既にRAYが0.5光年程の距離に居たから、その飛んできた物体に宿る力に驚いた表情が見えた。今なら分かるが、RAYが扱うあの漆黒の物体及びエネルギーは『暗黒物質』と呼ばれる今の世界においても未だあまり判明してない宇宙にしかないソレ。ソレをエネルギーとして生成、俺と同じように利用している。
暗黒物質を纏って突撃したそれは移動攻撃、攻防一体のそれはそれこそ今の地球側の技術でも耐えれる手段は無いし破ることも出来ない。しかし、俺が放ったそれは平然と突き破る。
何が起きたか分からない表情、無情にもそのまま消えていく。しかし最後の最後に何を思ったかは分からなかったが安堵の顔をしていたのは見えた。そのままRAYは1片たりとも残ること無く消えた。
消える時、口を動かし何か呟いた。しかし、それを理解することは出来なかった。だけどそれが安らぎであることに変わりないと信じたい。
◆
方陣も全て消え、黄金希望機関の出力も最低値まで下がる。今の攻撃にこの世界が耐えたが、それでももう崩壊が始まり次元収縮も始まっていた。
「良くやったな」
原点が束を引き連れてやって来てそう言うが、それでもその言葉には『あれぐらい当然だろ』と言わんばかりの意味が込められていることに気付く。あえては言わない。だが、「おう」とだけ澪は応える。
「色々言いたいが……「れーくん!!」おっと!?」
天照を纏った束が澪に抱きつく。
この時すでに空間内の重力も消えていて、物質的法則が消えようとしている。
「ただいま」
「おかえり」
「───フィー、アレを」
澪の視界に『穴式世界移動機インストール完了』と、なにやら物騒どころかとんでもないものが勝手にぶち込まれた通知が入った。
「この世界に居場所が無いことは理解してるな?」
「ああ。今の人類に俺は毒でしかない。それに束ももう戻るつもりはなかったらしいしな。」
原点が一息ついてから「この世界は宇宙へ旅立つ。」と言ってから、「もうお前達も旅立つ時だ。」とも言う。さらに景色が急激に暗くなっていき、澪のセンサーで感じられる範囲内の空間そのものが『無』に還っていくのを知覚する。既に1000km範囲まで空間が消えている。
「時間が無い、これ以上の言葉は不要だろ。
使用方法は理解してるな?」
原点の言葉に頷き、先程入れられた機能を起動。澪と束を包む様にエネルギーフィールドが形成され、二人の前方空間が歪んで穴が出来た。
「この世界の人類は幼年期の終わりを迎えた。
子供は宇宙を知り、太陽系を飛び出し外宇宙へ。
お前達の手出はもう必要ない。だからこそ、この世界から旅立つんだ。」
起動したシステムに沿って移動先の次元を選定、そのまま決定し後は目前の穴に入るだけだ。
「これから先、起きるのはどれも未知、それを知る事はなんだと思う?」
原点の問に束がすぐ応える。
「決まってるじゃないか、素晴らしい事だよ。」
「分かってるじゃないか。では、さらばだ。」
───次元移動開始
◆
無へ還る世界の中、澪と束を見送った原点。
その瞳に映る世界を目に焼き付けていた。
「主、どうなされました?」
「んっ。ただ珍しい体験だったなと。」
原点はこの世界での出来事を思い出す。
「いわゆる『破壊』の俺がこの世界だ。最終的に全てを破壊尽くす、人類が産んだ大厄災になるのがどの世界でもその選択に入った場合確定していた。」
「───確かにどう足掻いてもこの世界ようにはならず、世界の次元障壁もろとも事象の彼方に消し飛ばすのが当たり前でしたね。」
破壊に特化した榊澪の世界結果。
その最終的末路は何時だって世界を滅ぼし、『挙げ句の果て宇宙諸共次元崩壊を起こし全てを破壊』というものだ。その為多次元世界線に影響しないように世界線の接続を切って、その世界は無かった事になる。
破壊の世界線において榊澪のISには『G機関』が必ず搭載され、精神や感情に干渉するシステムが高確率で導入される。実はこの2つの組み合わせは絶大であり、それによってより破壊に特化し攻撃性が極大化してしまう。
さらに言えば名前と形状は世界線によって変化するも、榊澪が乗るISはサードシフト以上の形態移行が可能であり理論上限界が無い。これにより貪欲に破壊を望む搭乗者にあわせ、IS側もより破壊に特化して空間や次元といったものまで干渉する様になる。それが、破壊世界線の榊澪という人物───────だった。これまでは。
「本当に初めて見た。VTS事件の時、もしくはもう少し前の時点で世界が滅びを迎えても可笑しくなかった。
最終的には攻撃性だけ見れば俺の次位だし、ISコアも最初期オリジナルでは無い新型オリジナル。尚且つエネルギー源が3種合計10基、俺から技術スキャンを行った事で生成された他世界の技術が影響して全体的な性能も俺の次。
世界を壊した……しかし、新時代を創成するとは大したもんだよ。」
原点は新しい可能性の誕生に心を震わせ、悶え、笑った。いつぶりだろうと思う。ここ数千年破壊世界線を見て来た中で初めて見たこの結末に笑わずにはいられなかった。
絶望の中に希望はある。
破滅の中に創造がある。
「ありがとうこの世界の俺よ。
ありがとうこの世界の束博士。
ありがとうこの世界の相棒、そして地球の仲間達。」
だからこそ感謝した。
原点一人の干渉では変わらない、それはこれまでがそうだった。結局変われたのはこの世界に住む榊澪と絡んでくれた人々による可能性の誕生、そして巡り会わさる運命。あと一つ言えば……
「なんやかんや、あんな表情初めて見たな。」
恋を知って愛を知覚した束博士の顔を、原点は見る前に皆の前から去ってしまったから何れ見れると思えたその顔を見れたことが何よりも嬉しかった。
暫くして数十km圏内まで消滅し始めたので原点はフィーに声をかける。
「行くか」
「……次は何処に行きますか?」
「思うがままに何処にでも、さあ行こう!」
◆
人類は地球を飛び立ち、月に住む。
母なる大地を飛び立って、人類の活動圏は月を超えてさらに太陽系全体に拡がった。それは束が最後に人類へ残した『RABBIT.ALL.OVER.SKILL』通称『兎の書』と呼ばれる束が持ち、今まで考案した全ての技術と今の人類が出来るだろう可能性的技術を纏めた黄金の英智が束が出発後に解き放たれた影響がある。それにより今まで以上に他惑星へのテラフォーミングや移住が本来の3分の2の期間で安全に実行出来るようになった。
そうしてIS誕生から半世紀が経った。
地球・月・火星・水星・木星の惑星を始め、その周辺宙域には多数のスペースコロニーが建造されそこに人が住む。
勿論の事、平和ばかりでは無い。
まず宇宙に存在する未知の細菌やウィルスといった未知の脅威、宇宙の自然現象等の自然災害への対策と対応。
次に複数の衛星・惑星やコロニー群を含んだ超巨大組織が誕生、それによるいざこざで血が流れることがあった。しかし、それは過去の醜いIS大戦の結果を踏まえて同じ過ちを繰り返さないよう迅速に対応し問題解決に進んだ。
さらに人類は太陽系を飛び出し未知なる宇宙へ挑む。
この時ISが誕生し2世紀、人類は宇宙へ対応し新たな能力を幾つも開花。さらに進んだナノマシン技術により肉体レベルも上昇し、今では寿命は余裕で200年を超える。肉体的衰えもある程度克服した人類は未知という黄金を求める。
その人類を見守るもの達が居る。
「ついに太陽系外に行く時が来たか。」
『夏の守護者』織斑一夏。
OGIS『夏の思い出』やその他数多の影響(主に束)により完全不老擬似不死存在となり、今でも抜かれることの無い力を保ち現人類最強の存在として君臨。
「果たしてどこまで行けるか」
「それはアイツらが切り開くことよ」
『夏天の両翼』織斑箒・織斑鈴音。
両者共にOGIS稼働影響や後天的処置により織斑一夏同様の存在に至り、ついでに織斑一夏とゴールイン。燻っていた一夏への恋心を先にゴールインしていた鈴が突っつき、箒もなんやかんやあって結ばれたのである(なお世間体)。
両者共に一夏に次ぐ存在として人類の守護を行ってきた。
「俺達が護り続けよう。
あの戦いが起きない様に、寄り添って行くんだ。」
その日、人類はゆりかごから飛び出した。
IS大戦後から始まる『黄金の時代』、太陽系地球外惑星に移住が始まった『太陽の時代』。ISが生まれて二世紀、その日ついに人類は太陽系というゆりかごを飛び出し外宇宙へと羽ばたいた。
世紀の天災『篠ノ之束』からなるISによる混沌。
起点の破壊者『榊澪』からなる破壊からなる創成。
両者の線が結ばれてから始まった人類にとって史上最大の躍進はまだまだ続いていく。
幼年期は終わり、これから人類は無限の荒野へ突き進む。そこに希望があるのか、絶望があるのかは分からない。しかし、そこにある何よりも眩しい未知である事は確かなのだ。
「いくよれーくん!」
「手を離すなよ束」
───おわり