二つの紅い瞳の邂逅が終わった翌日の夜、夜の渓谷から姦しい黄色い声が響く。そこでは暗殺者として育てられた少女達が一時の休息を過ごしていた。
渓谷の中にある隠された秘湯で旅の疲れと襲撃の緊張を解している。数は全員で四人。それぞれが異なる個性を持った美少女達だ。
入浴が終わり、男子チーム達に交代を告げに行く際にポニーテールの少女が一つゲームを思いつく。気配を消してヒッソリと近づき、男子チーム達が普段どんな話をしているか盗み聞きしようという悪巧みだ。
「ね、面白そうじゃない?」
赤みがかかった茶髪をポニーテールに束ねた少女が仲間達に共犯を促す。皆で覗けば怖くない、という心理は理解できる。
「でもポニィ。チーフにはバレるんじゃ…」
小柄な体格には不釣り合いなほど豊かな胸をしたショートボブの茶髪に榛色の瞳の少女が不安そうに呟く。チーフと呼ばれる少年は彼女達の仲間の中でも一つ抜けた実力を持つ。その不安は概ね正しい。
「大丈夫大丈夫!遊びなんだし、一度でいいからチーフに雑魚め!って言ってみたかったんだ〜。ね、行こうよツクシ!コル姉も!」
コル姉と呼ばれる抜群のスタイルをした金髪碧眼の少女はやれやれといった感じで笑う。本名はコルネリア。苦笑しつつもその企画の楽しさに少し惹かれているといった様子だ。
「面白そうだけど……ねえ、アカメはどうする?」
「私はいい」
予想通りの言葉に思わず鼻で息を吐く。この黒髪の美少女はお風呂から上がってからずっとブツブツ呟きながら書物ともう一つ別の紙に書かれた文字列とにらめっこしている。いや、正確には襲撃が終わってからずっとだ。人から貰ったというその紙にはとある物語とアルファベットが書かれているという事を字が読めるコルネリアだけは知っていた。
「じゃ、私もいいかな。二人で行っておいでよ。私達は此処で待ってるから」
「えー。皆で行こうよー」
「でも、此処を空にするわけにもいかないでしょ?私達はいいから行っといで」
「うーん、それもそっか……じゃ、ツクシ。行こ!」
「う、うん!」
物音をほぼ立てず、二人の少女が森の中へと消える。いなくなったのを確認するとコルネリアはアカメの隣に腰掛ける。
「昨日からなに読んでるの?アカメ」
「読んでいない。読むために勉強しているところだ」
勉強ねぇ、と少し不思議そうに妹分を見やる。確かに文字を知らないのだから物語が読めないのは当たり前だ。しかしもう彼女は言葉を知らない乳飲み子ではない。単語の知識はちゃんとある。ならば文字の発音が解れば読めるはずだ。
「ねえ、アカメ」
「?何だ?」
「コレ、なんて発音する?」
「e(エ)だ」
「じゃあコレとコレでは?」
「da(ダ)だ」
「うーん……」
正しく発音できている。なら一体なぜ未だににらめっこを続けているのか……
ーーーーあら?
よく見ると物語が書かれた紙には多くの線が引かれている。この線には一体どんな意味があるのか。
「うーん……もがな…………言わずもがな……何かの変形か?それとも発音が間違っているのか……ダメだ、わからない」
「………………あ〜」
近づいた事でブツブツ呟いていた内容がようやくわかった。字が読めても意味がわからなかったため、本の内容が理解できなかった。それで読み方が間違っているのではないかと逡巡していたというわけだ。
「アカメ、それは言うまでもなく、とかそういう意味の言葉よ。発音は合ってるわ」
「………………!コル姉はコレが読めるのか!!」
「ええ、ロウセイの村で文字を習ったから」
「なら、この言葉の意味を教えてくれ!一体なんの事か全くわからないんだ」
線が引かれている字を指差し、教えを請いてくる。内容は、《無聊》、《一縷の望み》、《老獪》、《炯眼》など、なるほど確かにそのまま読んだだけなら意味がわかりにくいものばかりだ。これなら確かに読めなくても不思議はない。
「アカメ。ちょっと見せて」
書物を受け取り、書かれている物語を読む。それは少し変わった英雄譚。英雄譚とは基本的に完全無欠の戦士が主役となる事が多い。だがこの主人公は違う。欠点や弱点が多くあり、そしてそれ以上の優しさや仲間を思う強さを持つ少年だった。
「素敵な話ね……ねえアカメ、これ誰に貰ったの?パパ?」
「違う。けど言えない」
「言えない?」
「それがこの物語と文字を教えてもらう条件だったから」
「怪しい人じゃないの?」
「それは大丈夫。その人、帝国軍人だったから」
「軍人?」
「うん、あのエスデス軍のエンブレムを持ってた」
「エスデス軍!?」
田舎者の自分達も知っている音に聞こえたあの最強の軍。そこに属している人間は皆、鬼のごとき強さを持つと聞いている。帝国に属しているという点では自分達の先輩と呼べる人物だ。
「そんな人といつ会ったの!?」
「昨日の夜、白狼河の近くで。なんで来たのかは知らない」
「ヘェ〜。どんな人だったの?」
「歳は若かった。多分二十代前半くらい。それと……」
「それと?」
少し考え込んだ後、あの素直でない男の行動やねじ曲がった優しさを思い出したのか、クスッと笑ってコルネリアを見上げる。
「凄く変な人」
コルネリアは思わず息を呑んだ。それなりに長い付き合いの中で基本的に無表情な彼女のこんな笑顔を見たのは初めてだったから。
それから色々話を聞いた。敵であるはずの自分にアドバイスをくれた事、暖かい肉を食べさせてくれた事、無償で文字を教えてくれた事。本を書いてくれた事、全てを。
話を聞きながらコルネリアの目からウロコが何枚も落ちる。そんな人がいる事にも少なからず驚いたが、今まで父の言う事に絶対服従だった事を自覚させられた事に最も驚かされた。
「ね。その人どうだった?強い?」
「強い。今までやりあった誰よりも」
「あ、やっぱ強いんだ。アカメより強かった?」
「もう全然。私なんて足だけであしらわれた」
「へー!!」
何度目の心からの驚愕だろう。アカメのキルランクはNo.7。自分達の中では最も低い数字だが、それは8年前の試験、それも妹という足手まといを抱えてでの話。今現在の実力でいえば彼女は恐らくNo.3である自分の次か、下手をすれば同等の強さを持つ事にコルネリアは気づいていた。そのアカメが子供扱いされたというのは俄かに信じがたい話だ。父ですら難しいかもしれない。
「一体どんなゴリラなんだか。ガイよりゴリラだったりして」
「いや、線は細かったぞ?綺麗なヒトだった」
「キレイぃ?!」
アカメがこんな形容詞を使ったところは初めて見た。他人を見た目で形容するという事自体、この花より団子な少女には珍しい事なのだが、それ以上に意外な形容詞を聞いた事で思わず変な声が出てしまった。あまり男性に使う表現ではないから尚更だ。
ーーーー綺麗な男の人ねぇ……そんな人、いるのかしら
身近でギリギリ思い当たるのがチーフであるナハシュだが怜悧すぎてそういう対象には見れない。いくら磨き抜かれた鋭いナイフが美しくても所詮はナイフ。綺麗と思うより先に怖いと思ってしまう。
変態チックなグリーンはもちろん、ガイなど論外だ。ゴツゴツしくて暑苦しく、好みの対極にいるため散々の告白も全て袖にしている。
「それよりコル姉。この言葉の意味を教えて欲しい」
「ああ、ハイハイ。えっとこれはね……」
その男の事は一旦頭の隅にやり、アカメに文字を教える。
数日後、普段姉のように頼られ、可愛がるのは自分であるが故に、愛されたい願望を持つ金髪碧眼の少女が自分の好みにどストライクな容姿を持つ、人と才気を愛する美丈夫に出会い、その事を真実だと知る。
▼
ラクロウの街、トウシ町。
人口はダントツに多く、一見街は賑わっている。
その賑わいの中、異様な空気を発している地域がある。
先頭を歩くのは燃えるような緋色の髪を背中まで伸ばし、首元をネックウォーマのようなもので隠した美女。すれ違えば誰もが振り返るその美貌もその一団を目立たせている要因の一つではあったが、最大の原因はそれではなかった。
彼女が纏っているその服。軍服のみを見ても一般人はその軍人の所属などはわからない。しかし、彼女の胸に刻まれたそのエンブレムは帝国民であれば誰もが知るものだった。
それはエスデス軍の紋章。知っているものはデモンズエキスのトレードマークと知っている。そして知らない者でもこのエンブレムが最強を誇る証だという事は知っている。
それに加えて彼女の堂々とした所作。隙のない佇まいに凜とした空気がその異常さを際立たせる。歩く姿がすでに強者。誰が見ても特級の使い手と分かる。それが彼女……いや、彼の発するオーラがこの威容の最大の原因だった。
彼がここまで一見愚挙に見える行動をしているのは幾つか理由がある。一つは一向に合流出来ないババラを呼び寄せるため。エスデス軍の人間がこのタイミングでラクロウにいるという事は真っ先に自分を連想させるはず。ヘタをすれば中央に伝わりかねないデメリットはあるが、確実にババラの判断の方が早いと判断しての行動だった。
そしてもう一つが周囲警戒及び情報収集に当たっているチェルシー達が活動しやすいようにする為だ。変装の帝具を持つチェルシーとその護衛にファンを充てている為、とくに心配はしていないけれど、注意はこちらに向けていた方が彼女達が安全だし、何より異常事態が起これば敵も必ず動く。それを見逃すほど間抜けな鍛え方はしていない。
ーーーー餌にするなら間違いなく俺が適任。
その考えの元、フェイルは傍らに控えるタエコと共に活動していた。
「師父…」
警戒に引っかかる奴を注意深く観察しながら歩みを進めているとタエコが師の袖を掴む。何だ、と視線で返答するとこちらに近づく老婆が一人。
ーーーー来たな…
「すみません、軍人様。少し道を尋ねたいんじゃが…」
人の良さそうな顔つきの婆がメモを取り出し、こちらに近づいてくる。軍人もにこやかにそれに答える。
「はい、どうかしましたか?お婆さん」
「此処に孫が住んでおりましてな。地図と住所はあるんじゃが道がわからなくて…」
老婆が地図と白紙の上に書かれた住所を見せる。緋色の髪の軍人もそれに合わせて背を屈めた。
[ターゲットは誘い出した。天狗党は既に全滅。宿はあけがらす。そこで待つ]
地図の中に小さく書き込まれた文字を読み取り、一度頷いた。周りに聞こえない程度の声でババラが呟く。
「襲撃者の強さは恐らく羅刹四鬼クラス。決して油断するな」
「わかったよお婆さん。この道を突き当たりに行って右のタバコ屋のすぐ側だ」
「ありがとう。軍人様。これで夜までに孫に会えます」
一度深く頭を下げ、路地の向こうへと消えていく。その様子を姿が見えなくなるまで見届けた後、タエコに振り返った。
「合流時間は今夜、場所はあけがらす。それまで俺たちはエスデス軍の人間として行動する。B地点でキャンプの設置と炊き出しの手伝いをしておけ。話はもう通してある」
「了解した。師父は?」
「責任者として俺も同行する。金も渡さなきゃならないしな。行くぞ」
「了解。しかしこれって軍人の仕事なのか?」
「今の帝国じゃあんまやらねえけどな。エスデス軍のイメージアップの為に俺が何度か引き受けた仕事でマジであったんだよ。このご時世、飢えた人間は腐る程いるからな。エディは一切参加しなかったけど」
面倒ごとは全部俺に押しつけてたからな〜、とぼやく。とことん戦い以外に興味のない人間だった。
「チェルシー達にはどうやって伝える?」
「ほっとけ。特に隠密行動しているわけでもない俺の宿泊先の情報くらい自分で掴めないでどうする。それが出来なきゃ今夜奴らは野宿で充分だ」
▼
同時刻、狼達のターゲットである一団も街に入っていた。男子陣達は情報収集及び、標的の確認の為、外で活動している。より良い休息を取る為に高級宿を手配したゴズキはアカメ達を連れて街を歩いていた。
その足がふと止まる。引き連れている少女の一人がある一点を見つめ、足を止めていたからだ。視線の先には職もなく、金もない痩せ細った人間達。
「此処もだ……」
呆然とした様子で呟かれる声には優しさと哀れみが多く含まれている。こんな人間、今の帝国には溢れかえっている。すっかり慣れてしまったゴズキは何とも思わないし、ゴズキに洗脳されている少女達も深刻には考え込まないが、アカメだけは違った。
「こんな大都市での生活でもあんなに厳しいのだろうか……」
「本当だ……私たちの村とは全然違う」
ゴズキは心の中で盛大に舌打ちする。あんなカスにいちいち構ってはいられないが、ココで思っている事を正直に言う訳にはいかない。思考停止にさせない為、彼女らに行っている洗脳は比較的緩いものだ。ちょっとしたキッカケでその封は破られかねない。ここでの対応を間違える訳にはいかない。
「ま、仕方ねえわな。貧富の差ってのはどこにでもあらぁな。そして戦争が始まっちまったらその格差はさらにデカくなる。俺たちが平和を守る事が彼らを救う唯一の手段なのさ。あとは政治家がなんとかしてくれる」
「そ、そうだね!頑張らなきゃ!」
少女達の顔に安堵が戻る。取り敢えずの対応は概ね出来ただろう。
しかしゴズキは見逃さなかった。自分の言葉を鵜呑みにせず、飢えた人間達を見つめる紅い瞳の少女を。そして本当にそれでいいのか、と疑わしげな目をしている碧眼の少女も……
ーーーーコイツらのメンタルはまだ染まりきってねえな。ま、今は問題ねえけど
時間の問題だと決めつけ、前を向こうとすると再び意識が持っていかれる。鉄と鉄がぶつかる盛大な音が辺りに鳴り響いたからだ。
「麦粥の炊き出しですよーーーー!!皆様ご自由にお召し上がりくださーーーい!!」
中性的なアルトの声が辺りに響く。その声はまるで上質な金管楽器のように美しく、よく通る声だった。声を出したであろう人物は緋色の髪を後ろに束ねた美女。粥を作ったのは彼女だったのだろう。珠のような大粒の汗を流しながら鍋をかき混ぜている。そのすぐそばで黒髪を後ろに束ねた少女が器に粥を持っている。
音に反応するように貧民達がわっとキャンプに集まる。そのあまりの勢いに設置されたテントが潰れてしまいそうだ。
「押さないで!!まだまだたっぷりありますからーー!!」
地域の人間も手伝ってはいるがどうみても手が足りない。言葉や態度の端々に殺気が見え隠れする。
しかしそこで働く人間達は皆真摯な眼差しをしており、飢えた民を救おうとする気概があった。その事に気づいたのは少女達の中では2名のみ。
「彼らを手伝ってくる。宿には先に行っておいてくれ」
その紅い瞳を輝かせ、アカメが彼らのテントへと向かう。ゴズキが止める間もなかった。こうなってはもう止めようがない。子供達はともかく、自分があまり目立つわけにはいかない。
「しょうがないわね、私も行ってくるわ。アカメだけじゃ道とか不安だし。パパ。先に宿に入ってていいよ」
「あ、ああ。頼む、コルネリア」
やれやれと言った様子でコルネリアもアカメの後に続く。
そう、気づいたのはこの二人。狼の教えを受け、間接的にその思想を理解した人間達だった。
その2人の様子を油断ならない目で睨むゴズキ。
ーーーーあまりいい兆候じゃねえな……
アカメはともかく、コルネリアまでこちらの指示を聴かず動いたのは初めてだ。かけていた安全ピンが外れかけているのかもしれない。
「お父さん?」
残された2人の不安げな瞳がゴズキを見上げる。一度頭を振り、切り替え、笑顔を見せる。
「ああ、悪りぃな。もうすぐ宿だ。行こうぜ」
内心の疑心を最も自分を妄信している少女達二人に悟られないように注意しつつ、宿へと向かった。
▼
ーーーーあっつ…
吹き出る汗を拭いながら鍋の前に立つ。薄着をしたい所だがあまり脱ぐと骨格で男とバレる。まあバーナーナイフの熱に慣れているフェイルであれば耐えられない暑さではない。それに難民達は絶えまなくやって来る。まだまだ粥はあるとはいえ、どんどん新しく作らなければパンクする。
ーーーー大局的に見ればあんま意味ねえ行為なんだけどな
こんな事は所詮焼け石に水だ。根本を改善しなければ貧しさというのは解決されない。そんな事はこの万能のかつての副将軍は百も承知だ。政治の面でも世渡りが下手なエスデスの面倒を見ていたのは彼なのだから。それも一つの真実だと言うことは理解している。
しかしそれは所詮飢えたことのないご立派な部屋で勤務をする政治家の真実だ。かつて戦闘力しかない子供二人で食うや食わずの旅をしていたヴァリウスは貧民の真実をその身で体感していた。本当に飢えている時、未来の事を思う余裕などない。たった一杯の水が、一杯の粥が未来を繋げる。貧民というのは基本的にしぶとい。本当に危ない所を脱したら2度とそうならない為になんらかの行動を起こす。
かつての自分がそうだったように。
救われた事など一度もなかったけれど、危険種の肉を自分が食べず、大事な相棒に全て与え、エスデスを飢えさせた事がないというのは己の誇りの一つだった。
後になってその事に気づいたエスデスがヴァリウスを問い詰めた事がある。するとまるで成人女性に太陽はどちらから登るのか、と聞かれたような、何当たり前の事を聞いてるんだお前は、という呆れた顔をして答えた。
『もしエディが弁当持ってて俺がエディの目の前で腹へって死にかけて倒れたら、お前どうする?』
『………………ヴァルに全部あげる』
『そーゆー事』
それだけ言って礼を言わせる隙もなくその場を去った事をエスデスは未だ鮮明に覚えているというのはまた別の話だ。
目の前の今を助けるために行動するという事をヴァリウスは信条としている。今を生きられず、どうして未来を生かす事が出来るだろうか。
「師父!」
鋭い声が背中にかかり、思考が停止する。はいはい、わかってますよ。
「あの!」
鍋から器に粥をよそっている最中に声がかかる。手を止めずに声で対応する。
「はいはい!ちゃんと全員分ありますから!列に並んで待っててください!」
「あ、そうじゃないの」
予想を否定された事でようやく話しかけてきた相手に興味を持った。視線を向けると腕まくりをして細く白い腕を見せる金髪の少女と麦粥をチラチラ見る黒髪の少女2人が目に入る。確かに2人とも健康的で飢えているという様子はない。
ーーーー?あの黒い方、どっかで見たような…………ダメだ、忘れた
「もしお邪魔でなければお手伝いをさせて欲しいの。ダメ?お姉さん」
「いいの?給料なんて出ないよ?」
「いいのよ、ヒマだし。困った時はお互い様でしょ?」
フッと笑みを浮かべ、鍋の火を止める。この国にまだこんな若者がいた事が少し嬉しかったのだ。それに今は猫の手でも欲しい。
「タエ」
「はい」
「この二人を配膳係に。お前は私を手伝いなさい。じゃ、2人ともよろしくね」
『はい!!』
操り人形だった彼女らが少しずつ殻を破り、新たな黒狼と金狼として生まれ変わろうとしている事を炎狼が知るのはもう少し先の話……
狼菌の感染者がどんどん増えていきますね。感想、評価、よろしくお願いします。活動報告でローレライについての事も書いてあるのでよろしくお願いします!